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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

不法行為▶一般不法行為論

平成23128最高裁判所第一小法廷[平成21()602]
著作権法は,著作物の利用について,一定の範囲の者に対し,一定の要件の下に独占的な権利を認めるとともに,その独占的な権利と国民の文化的生活の自由との調和を図る趣旨で,著作権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,独占的な権利の及ぶ範囲,限界を明らかにしている。同法により保護を受ける著作物の範囲を定める同法6条もその趣旨の規定であると解されるのであって,ある著作物が同条各号所定の著作物に該当しないものである場合,当該著作物を独占的に利用する権利は,法的保護の対象とはならないものと解される。したがって,同条各号所定の著作物に該当しない著作物の利用行為は,同法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。

▶平成240808日知的財産高等裁判所[平成24()10027]
著作権法は,著作物の利用について,一定の範囲の者に対し,一定の要件の下に独占的な権利を認めるとともに,その独占的な権利と国民の文化的生活の自由との調和を図る趣旨で,著作権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,独占的な権利の及ぶ範囲,限界を明らかにしている。また,不正競争防止法も,事業者間の公正な競争等を確保するため不正競争行為の発生原因,内容,範囲等を定め,周知商品等表示について混同を惹起する行為の限界を明らかにしている。
ある行為が著作権侵害や不正競争行為に該当しないものである場合,当該著作物を独占的に利用する権利や商品等表示を独占的に利用する権利は,原則として法的保護の対象とはならないものと解される。したがって,著作権法や不正競争防止法が規律の対象とする著作物や周知商品等表示の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。

▶平成26926日大阪高等裁判所[平成25()2494]
現行法上,創作されたデザインの利用に関しては,著作権法,意匠法等の知的財産権関係の各法律が,一定の範囲の者に対し,一定の要件の下に排他的な使用権を設定し,その権利の保護を図っており,一定の場合には不正競争防止法によって保護されることもあるが,その反面として,その使用権の付与等が国民の経済活動や文化的活動の自由を過度に制約することのないようにするため,各法律は,それぞれの知的財産権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,その排他的な使用権等の及ぶ範囲,限界を明確にしている。
上記各法律の趣旨,目的にかんがみると,ある創作されたデザインが,上記各法律の保護対象とならない場合には,当該デザインを独占的に利用する権利は法的保護の対象とならず,当該デザインの利用行為は,各法律が規律の対象とする創作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではないと解するのが相当である(以上の点につき直接に判示するものではないが,最高裁判所平成16年2月13日第二小法廷判決,同裁判所平成23年12月8日第一小法廷判決参照)。

平成291116日東京地方裁判所[平成28()19080]
特許法,意匠法,商標法,著作権法又は不正競争防止法により保護されていない形状,構造,デザイン等を利用する行為は,上記の各法律が規律の対象とする利益とは異なる法的に保護された利益を侵害したり,自由競争の範囲を逸脱し原告に損害を与えることを目的として行われたりするなどの特段の事情が存在しない限り,違法と評価されるものではないと解するのが相当である。

平成28929日大阪地方裁判所[平成25()10425]
被告らは,原告が被告らから持ち出された設計図を使用してトレーラーを製造販売したとして,原告が,新たな設計図を創造するという困難を一切負わず,それに必要な労力や費用を負担することもなく,被告らの財産的効果にただ乗りして利益を上げたことが不法行為を構成すると主張する。
被告ら自身,被告らの設計図は電子データとして保管されており,そのデータが持ち出されて使用されたと主張していることからすると,被告らの上記主張が,有体物たる設計図についての被告らの所有権に基づく排他的支配権能が侵されたという趣旨でないことは明らかである。したがって,被告らの上記主張は,無体情報としての設計図の記載を原告が無断で取得・使用したことが不法行為を構成するとの趣旨であると解される。
ところで,無体情報としての設計図の利用に関しては,現行法上,それに化体された技術上又は営業上の情報を保護する観点から不正競争防止法が営業秘密として保護し,また,その記載の創作性を保護する観点から著作権法が図形の著作物としての保護を与える場合があることにより,一定の要件の下に排他的な使用権ないし使用利益を認めているが,その反面として,その使用権等の付与が国民の経済活動や文化的活動の自由を過度に制約することのないようにするため,各法律は,それぞれの知的財産権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,その排他的な使用権等の及ぶ範囲,限界を明確にしている。
上記各法律の趣旨,目的に鑑みると,設計図に記載された無体情報の利用行為が,上記各法律の保護対象とならない場合には,当該設計図上の無体情報を独占的に利用する利益は法的保護の対象とならず,その利用行為は,上記各法律が規律の対象とする無体情報の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではないと解するのが相当である(以上の点につき直接に判示するものではないが,最高裁判所平成23年12月8日判決参照)。
本件での被告らの上記主張は,設計図について営業秘密の不正取得・使用等をいうものではなく,また,著作物としての保護をいうものでもない。したがって,被告らの上記主張の趣旨が,原告が被告らの設計図を無断で取得・使用等すれば,成果へのただ乗りの観点から直ちに不法行為が成立するというのであれば,設計図上の無体情報を独占的に利用する利益を被告らが有するというに等しいから,そのような利益は,たとえ被告らの設計図が多大な努力と費用の下に作成されたものであったとしても,上記の知的財産権関係の各法律が規律の対象とする無体情報の利用による利益とは異なる法的に保護された利益とはいえない。 もっとも,被告らの上記主張は,原告の無断取得・使用等行為によって,被告らが設計図を使用して営業活動を行う利益を侵害されたとの趣旨であると解する余地があり,その趣旨であれば,営業秘密の保護や著作物の保護とは異なる法的に保護された利益を主張するものと解される。ただし,我が国では憲法上営業の自由が保障され,各人が自由競争原理の下で営業活動を行うことが保障されていることからすると,他人の営業上の行為によって自己の営業活動を行う利益が侵害されたことをもって不法行為法上違法と評価されるためには,その行為が公序良俗違反とみられる程度までに自由競争の範囲を逸脱する場合であることを要すると解するのが相当である。

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