Kaneda Copyright Agency ホームに戻る
カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

不法行為▶一般不法行為論[ゲームシステムの流用]

平成27624日知的財産高等裁判所[平成26()10004]
当審も,被控訴人ゲームの配信行為が不法行為に該当するとは認められないと判断する。その理由については,原判決のとおりであるから,これを引用する。 
控訴人は,「ガチャ」,「クエスト」,「デッキ」,「バトル」,「合成」の五つの要素を絶妙なゲームバランスをもって相互に関連づけて組み合わせている点や,野手,投手ともに能力に関連する情報を三つに絞り,情報を付与することとした点に,ゲームシステムとしての特色があり,そのような控訴人ゲームシステムは,法的保護に値すると主張する。
しかし,控訴人が主張するような各ゲームにアレンジして適用することが可能な「控訴人ゲームシステム」とは,ゲームのルールというアイデアというべきところ,各種知的財産権関係の法律で保護の対象とされていないそのような無形のアイデアが,不法行為上保護すべき法益と認められるためには,単に,そのようなゲームシステムと全く同一のものは従前存在せず,それが控訴人に営業上の利益を生み出しているというのみでは足りず,そのような一般に公開されているゲームシステムのルールないしアイデアを他の同業者が採用して独自にゲームを製作することが禁じられるという規範が,法的規範として肯定できるほどに成熟し,明確となっていることが必要であると解される。しかし,控訴人の主張からは,「膨大な時間と労力をかけて検討を尽くして」という具体的な内容は不明であり,その立証もないし,仮にそのようなものが存在するとしても,控訴人が主張するゲームシステムが,それによって控訴人が利益を得ているということを超えて社会における法的に保護されるべき利益とされるべきような事情は認められず(なお,控訴人ゲームシステム自体,先行する他のゲームシステムにも存する五つの要素について,各要素の相互の関連付けを新たに構築することによって開発されたというものであるし,控訴人ゲームについて選手の能力の情報を三つに絞ったのは,先行する「プロ野球オーナーズリーグ」も同様である),そのような検討により編み出されたゲームとしての工夫が,著作権法や不正競争防止法等の知的財産権関係の各法律による保護を超えて,不法行為法上の保護法益として認められるだけの特段の事情があるとは認められない。したがって,控訴人の主張自体によっても,控訴人の主張するゲームシステムをもって,一般不法行為法上保護すべき法益と認めることはできない。また,被控訴人に自由競争の範囲を逸脱するような行為があったことを認めるだけの事情も見当たらない。したがって,控訴人の主張は採用することができない。

▶令和3929日知的財産高等裁判所[令和3()10028]
控訴人は,多大な費用,時間と労力をかけて原告ゲームを制作し,これを配信して営業活動を行っていたところ,被控訴人は,原告ゲームの各種データをほぼ全面的にデッドコピーした上で,各画面のキャラクター,アイコン等や用語を一部改変して被告ゲームを制作し,控訴人の販売地域と競合する日本国内において配信し,これによって本来必要となる多大な費用,時間と労力を免れたものであり,このような被控訴人の行為は,自由競争の範囲を逸脱した不公正な行為に当たり,著作権法が規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的保護に値する控訴人の営業上の利益を違法に侵害したものというべきであるから,控訴人に対する一般不法行為を構成する旨主張する。
しかしながら,控訴人の主張する法的保護に値する控訴人の営業上の利益とは,原告ゲームの各種データを独占的に利用して,営業を行う利益をいうものと解され,当該利益は,著作権法が規律の対象とする著作物の独占的な利用の利益にほかならず,これと異なる法的保護に値する利益であるものと認めることはできない。
また,本件においては,被控訴人による被告ゲームの制作及び配信行為が,自由競争の範囲を逸脱し,又は控訴人の営業を妨害し,控訴人に損害を加えることを目的とするなどの特段の事情は認められない。
したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。

一覧に戻る

https://willwaylegal.wixsite.com/copyright-jp