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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作隣接権▶実演家の権利

[実演の意義]
▶平成250719日東京地方裁判所[平成24()16694]
原告らの主張する「実演」の内容は明確ではないが,モデルの動作,ポーズ等が実演に当たると主張するものであるとすれば,上記動作等が著作物に当たらないことは前記のとおりであるから,モデルが上記動作やポーズを取ることは,「著作物を…演ずる」ことに当たらず,「実演」には当たらない。
また,原告らが,本件ファッションショーを「実演」として主張するものであるとしても,原告らは,本件ファッションショーが「シティとリゾートのパーティースタイル(都会的な女性のドレスアップコーディネートとリゾートラグジュアリーパーティースタイル)」をコンセプトとするものであること,安価なブランドを用いて高級感を演出したものであること等を主張するのみで,本件ファッションショーが「実演」に当たる理由につき,前記「原告らの主張」の①ないし⑦の点が著作物に当たること以外に具体的主張をするものではない。そして,本件ファッションショーのうち,上記①ないし⑦の点に,背景写真を除いていずれも著作物性が認められないことは前記でみたとおりである。また,背景写真に著作物性が認められるとしても,その展示が「著作物を…演ずる」ことに当たるものではない。したがって,これらの点により,本件ファッションショーが「著作物を…演ずる」ものに当たるものとは認められない。
本件ファッションショーの,本件映像部分に表れている部分以外の具体的内容については明らかではなく,本件各証拠及び弁論の全趣旨を総合しても,本件ファッションショーが「これらに類する行為で,著作物を演じないが芸能的な性質を有するもの」に当たるものとは認められない。

[実演家の人格的利益]
▶昭和531108日東京地方裁判所[昭和51()7651]
もとより、直接的には財産権の侵害に向けられた行為であつても、その侵害の態様及び程度いかんによつては、同時に被害者の名誉をも毀損し、これに対して精神的苦痛を与える場合がありうることは、容易に想定しうるところであり、このような場合には被害者において人格権侵害に基づく責任を追及しうることはいうまでもない。たしかに、著作権法には実演家としての人格権的利益を保護すべき旨の特別規定は存しないけれども、実演家であるが故に、本来一般人として享受しうべき不法行為法による人格権の保護をも否定されなければならない合理的根拠は全く見出しえない。
[]本件は、「実演家人格権」(90条の290条の3)が法制化させる以前の事案だが、実演家の(一般的)人格権的利益について参考になる箇所を含んでいる。

▶平成110827日東京地方裁判所[平成9()25997]
本件CDは、その音質及び録音内容が、原告の歌唱力について誤った印象を与えるほど劣悪であるとは認められないから、本件CDの製造、販売が、原告の名誉を毀損するものとは認められない。

▶平成28216日東京地方裁判所[平成25()33167]
CDの廃盤には様々な場合があることがうかがわれるのであって,本件廃盤処置が直ちに原告Aの名誉権又はその他の人格権を侵害するとは到底認めることができない。

[実演家人格権]
▶令和41226日知的財産高等裁判所[令和4()10059]
そうすると、一審被告会社には、本件専属契約終了後、本件グループ名についてのパブリシティ権を行使する権原がないというべきである。また、本件契約書の記載やその他の事情を総合考慮しても、一審被告会社が、本件専属契約の終了後において、本件グループ名の排他的使用権を有すると認めることはできない。
なお、このことは、実演家人格権である氏名表示権(著作権法90条の2)についても同様であり、本件専属契約終了後において、一審被告会社に、一身専属権である実演家人格権としての氏名表示権、すなわち、本件グループの実演時に本件グループ名を表示するか否か等を決定する権利が帰属することはないから、一審被告会社は、本件グループ名について氏名表示権を行使することもできない。

▶平成28216日東京地方裁判所[平成25()33167]
原告Aは,被告らが,①MP3,AAC又はWMA等の圧縮フォーマットを利用して本件楽曲の音声を圧縮して配信したこと及び②本件楽曲12曲を曲毎に配信したことが,いずれも本件楽曲についての同一性保持権を侵害する旨主張する。
そこで検討するに,音声の圧縮によって本件楽曲の音質が一定程度変化することについては被告らも認めるところであるが,配信時のデータの圧縮に伴う技術的な制約によるものであって「やむを得ないと認められる改変」(法90条の3第2項)に当たるというべきである上,原告Aが本件契約後の平成22年12月27日に被告Bに送信したEメール中に「圧縮をやって頂きたいと思っておりました。」「引き続き圧縮をお願いできますでしょうか?」などの記載があることからすれば,原告Aも,本件楽曲の圧縮を了承していたことが推認される。こうした事情に照らせば,上記①の行為について,原告Aの同一性保持権を侵害するものということはできない。なお,本件楽曲はいずれも独立の楽曲であり,原告Aが本件CDにおける本件楽曲の配列を工夫したとしても,この点は実演家の同一性保持権の保護範囲に含まれるものではないから,上記②についても原告Aの同一性保持権を侵害するものとは認められない。

[ワン・チャンス主義]
▶平成160521日東京地方裁判所[平成13()8592]
著作権法9221号において有線放送による放送の同時再送信の場合に実演家の著作隣接権が及ばないこととされているのは,同号の規定が実演家が放送を許諾しているかどうかを区別せずに一律に有線放送による同時再送信について権利が及ばないとしていることに照らせば,実演の無形的利用については当初の利用契約によって処理すべきものとするいわゆるワン・チャンス主義の観点から,放送の段階についてのみ権利行使を許容する趣旨であると解される。したがって,実演家は,放送事業者から十分な対価を得ていたかどうかにかかわりなく,有線放送事業者の行う同時再送信について著作隣接権に基づき二次使用料を請求することはできないものと解され(る。)

▶平成170830日知的財産高等裁判所[平成17()10009]
著作権法922項は,「放送される実演を有線放送する場合」に実演家の有線放送権は及ばない旨規定するが,同規定の趣旨は,実演家ないし実演家の団体である原告芸団協が,契約に基づき,放送の同時再送信についてその利用の対価として「補償金」を受けることを禁止する趣旨であると解することはできないから,本件各契約が著作権法に違反するものということはできない。

[実演家の二次使用料を受ける権利]
▶昭和570531日東京地方裁判所[昭和54()2971]▶昭和600228日東京高等裁判所[昭和57()1624]
著作権法951項によれば、二次使用料を受ける権利は、右規定における「当該実演に係る実演家」すなわち放送又は有線放送に用いられた商業用レコードに収録された実演を行なつた実演家に帰属すべきものと定められていることが明らかである。そして、同条は「当該実演(著作隣接権の存続期間内のものに限る。)に係る実演家に二次使用料を支払わなければならない。」と規定し、二次使用料を受ける権利は、商業用レコードに収録された実演についての著作隣接権が存続する期間内存続することを定めており、この点からみても、二次使用料を受ける権利が、商業用レコードに収録された実演と無関係にすべての実演家に帰属すべきものと解する余地はない。
したがつて、同法951項の立法の沿革が原告ら主張のとおりであり、その立法の趣旨において、労働者としての実演家のいわゆる機械的失業に対する補償の意味があつたとしても、商業用レコードに実演が録音されているかどうかにかかわりなく音楽実演家のすべてに二次使用料を受ける権利が与えられていると解すべきとする原告らの主張は、現行法の規定の文言を無視するものであり、到底採用できない。(中略) 現行著作権法は右のような分配手段の導入によつて実演家一般の機械的失業に対する補償の機能を果たすことを期待する一方、二次使用料の権利の本来の帰属自体は放送等に使用された商業用レコードに収録された実演に係る実演家にあることを当然の前提としつつ、そのままでは実質上行使される余地がなくなるであろう右二次使用料を、実際に行使することのできる実効あるものとするために、指定団体が結成されることを期待しているものであるというべく、このような著作権法上の仕組みに照らせば、被告が商業用レコードに録音される実演を行なつていない実演家の団体にも二次使用料を分配しているとしても、そのことによつて、被告が、すべての実演家が二次使用料を受ける権利を有することを自認したことにはならないことはいうまでもない。

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