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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

編集著作権・データベース著作権▶総論

▶平成28224日知的財産高等裁判所[平成27()10062]
一般に,編集著作権とそれを構成する素材の著作権は,別に観念することができ,また,それぞれ別個独立して譲渡の対象となり得るものであるとはいえるが,編集著作権を有する者と素材の著作権を有する者が同一である場合に,編集物の著作権を譲渡するとき,編集著作権のみを譲渡する趣旨であるのか,それを構成する個々の素材の著作権を含め譲渡する趣旨であるのかは,個別具体的な契約締結に至る経緯,契約内容,その他の事情により,判断されるべきものである。著作権法61条2項を類推又は準用して,編集著作物に該当する編集物に係る著作権の譲渡契約において,編集物を構成する素材の著作権を譲渡する旨特掲されていないときは,これが譲渡人に留保されたものと推定するべきであるとする控訴人○○の上記主張は独自の見解であって,採用の限りでない。

▶平成28224日知的財産高等裁判所[平成27()10062]
編集著作物を出版するについて,編集物を構成する素材の著作権者から使用許諾を受けるのみならず,編集著作権者からも使用許諾を受ける必要があるとしても,上記各使用許諾は法的には別個独立の契約であるから,編集物を構成する素材についての使用許諾を解約するにつき,その意思表示を契約当事者ではない編集著作権者と共に行わなければならない理由はない。
また,編集著作権者と編集物を構成する素材の著作権者は,著作権を共有しているわけではないから,編集物を構成する素材についての使用許諾を解約するにつき,共有著作権者ではない編集著作権者の同意を得なければならない理由はない。

[「編集権」「編集構成権」なる権利は認められるか]
平成130829日東京高等裁判所[平成13()147]
控訴人が編集権及び編集構成権の具体的内容として主張するもののうち、特殊小型変形版の大きさ及びソフトカバーの表紙仕上げを採用し、右頁に物語を配し、これに相応する絵を左頁に配し、右頁の右下方に小さなカットを挿入し、活字配列を左右9行を基本とし、表紙に各物語のシンボルとなる絵を描き、最上段に「名作アニメ絵本シリーズ」又は「アニメ昔ばなしシリーズ」を配し、右側にタイトル番号を付し、裏表紙に出版するシリーズ本の内訳一覧広告を掲載するなどの構成を採用したという点については、これらの構成自体、いずれも思想等の表現ではなく創作に係る要素もないから、著作物とは認められず、素材の選択又は配列によって創作性を有する場合に編集著作物(同法121項)として著作物性が認められるかどうかが問題となるにすぎない。また、控訴人が編集権及び編集構成権の具体的内容として主張するもののうち、物語内容、絵等に独自の翻案をした点は、新たに付加された部分に創作性がある場合に二次的著作物(同法2111号)として保護される範囲が問題とされる。このように、著作権法は、翻案に創作性がある場合は二次的著作権により、素材の選択又は配列によって創作性を有する場合は編集著作権により、それぞれ著作物として保護を図ることを予定しており、同法上明記されたこれらの権利とは別個に、控訴人の主張する編集権及び編集構成権という法令上の規定を欠く権利を解釈上認めるべき法的根拠はない。

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