佐渡の人形 Okesa Doll 佐渡市



説教人形・のろま人形・文弥人形の三つあり、いずれも昭和52年(1977)に国の重要無形民俗文化財に指定されている。

(文弥人形)

今から300年以上前の延宝年間(1673ー81年)のころ、大阪、京都で人気を集めていた日本最古の浄瑠璃といわれる「文弥座」が、享保以前、元禄に近いころ佐渡に渡り、盲人の座敷語りとして語り継がれるようになった。文弥節は岡本文弥(元禄7年(1694)1月11日61歳大坂で死去)の創始といわれる。
そして明治3年(1870)、小木町の説教人形使い大崎屋松之助と、文弥節の太夫佐和田町沢根の伊藤常盤一(1839~1905)が協力してつくり出された。佐渡の人形芝居は一新した。「連目が単純な合戦物から近松門左衛門の時代物に変わり筋書きがおもしろくなり、人形の頭も前後左右に動くように工夫され動作と表情が複雑になって人気を博した」。
舞台が御殿風なので御殿人形。また御殿によって舞台を上段と下段に区別するので上段人形ともいう。
哀切を極める古浄瑠璃にのって演じられ、典雅な趣を持つが、人形はやはり素朴である。演しものには、「源氏烏帽子折」「出世景情」「義経千本桜」「国姓爺合戦」など十余曲が伝承されている。
潟上の一度照造(1878~1962)は文弥人形の使い手であったが、能面、文弥人形の頭の製作も巧みであった。
大正時代末期ころから後継者が減り、終戦頃には消滅の危機を迎えたが、昭和52年(1977)に島ぐるみで保存しようと佐渡人形芝居保存会が設立。この年に、国の重要無形民俗文化財に指定された。
現在では佐渡の人形芝居といえば文弥人行をさすようになった。



(説教人形)

享保年間(1716ー36年)には、やはり上方から説経節の語りに併せて演じられる『説教人形』芝居が伝わった。演目は合戦物が多く、人形の頭、衣装、使い方は簡単で古風なものだった。
『説教人形』は、近世以来、佐渡の庶民の娯楽としてうけつがれてきたもの。説教節の弾き語りに合わせて、裾から手を差し込んでつかう突込式の人形を操る。「熊野合戦」「酒呑童子」など十曲近い演目があり、現在、新穂村瓜生屋にある広栄座だけが、昔ながらの唯一伝統を守り伝えている。



(のろま人形)

文弥人形や説教人形の幕間狂言として行われるのが『のろま人形』で、享保年間(1716~36)佐渡に移入されたという。江戸時代初期、江戸の和泉太夫一座にいた道化人形使いの野呂松勘兵衛が『野呂松勘兵衛』と名づけて始めたのが最初といい、このこっけいな人形が江戸ではのろま人形といわれ、たいへんもてはやされた。
主役の道化の「木之助」のほか、「下の隠居」、「お花」、「仏師」の4個で構成され、主人公が木之助というところから「木之助人形」とも呼ばれている。
のろま人形芝居は役者自身がセリフを使うところに特徴がある。台本がないので役者は臨機応変にその場で近所の出来事などを取り入れて台詞とした。使い手同士の佐渡弁丸出しの台詞と下ネタがかった話は珍しくおもしろい。
「生地蔵」「木之助座禅」など数曲の外題があり、狂言風に演ぜられるが、かなり卑属で泥くさい。ことに主人公の木之助は逸物を付けているものもあれば、逸物だけ桐の木で穴をあけ、役者が水が含んで股間から小便を観客に放出するという仕組みのものもある。

尾崎紅葉が明治32年(1899)7月に来島し、「野呂松がのそりと出た夏の月」と詠んだのは有名な話である。
現在、新穂地区に「廣栄座」・「末廣座」・「新青座」の3つの座を残すのみとなり、島内を中心に出張上演している。

島の子供たちが、のろま人形をまねて、土をひねって首とし、目鼻を描いて竹串にさし、紙で作った着物などを着せて遊んだ。この首人形の作者で有名だったのか河原田(現佐和田)に住んでいた佐々木与吉(1863ー1936)で郷土人形の玩具も作った。
また新穂の広栄座に保管される乳人かしら・船若・雷源・神翁・ことわり人形・白太夫(以上説教人形)・木之助・下の隠居・お花・仏師(以上のろま人形)の計10個の人形首は、県の有形無形文化財に指定されている。いずれも江戸時代中期(18世紀)のものである。

🔶のろま人形句碑
明治32年(1905)夏、明治の文豪尾崎紅葉が佐渡へ来島して約1か月足らず滞在した。そして7月30日、地元の郷土史家山本静古の案内で、「のろま人形芝居」を見物した。帰途紅葉が語ったのが「野呂松が のそりと出たり 夏の月」の一句である。
昭和5年(1930)、静古の筆で、この句を詠んだ場所に石碑が建設された。紅葉の足跡を記念する文学碑であるが、また佐渡の人形芝居をひろく紹介する記念碑でもあり、人形の供養塚でもある。尾崎紅葉にはこの他「おし並ふ 野呂松が 顔の露涼し」がある。





新穂歴史民俗資料館

@じゃらん

  • 〔所在地〕佐渡市新穂瓜生屋492
  • 〔問い合わせ先〕 0259-22-3117
  • 〔アクセス〕
  • 〔駐車場〕 普通車 100台
  • 〔営業時間〕 8:30~17:00
  • 〔定休日〕 月曜日休(祝日の場合開館、翌日休),12月~2月休
  • 〔特徴〕トキの資料が豊富な資料館。 また、説教人形やのろま人形などの郷土芸能資料や新穂出身の土田麦僊ら芸術家の遺作も展示している。


佐渡人形芝居保存会定期公演
  • 〔開催日〕11月20日(日)
  • 〔開催場所〕佐渡島開発総合センター(佐渡市両津湊198)
  • 〔問い合わせ先〕 0259-58-9112 (一財)佐渡文化財団
  • 〔WEB〕 https://sado-bunka.or.jp/topics/event/1224/








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