坂口安吾 Ango Sakaguchi 新潟市



1906年(明治39)10月20日〔生〕 - 1955年(昭和30)2月17日〔没〕

日本の小説家、評論家、随筆家として、昭和の戦前・戦後にかけて活躍した近現代日本文学を代表する作家の一人である。太宰治、織田作之助らとともに戦後の無頼派を代表する人物である。
安吾は1906年(明治39)新潟市の坂口仁一郎の12番目の子として生まれ、本名を炳五といった。安吾というペンネームは新潟中学時代、学校をサボってばかりいる炳五にたいし漢文の先生が「お前は己に暗い暗五だ」と言ったのをそのまま安吾に転化したという。
落第を避けて新潟中学を退学すると、東京に出て私立豊山中学(東京都文京区)に転校した。
代用教員となるが、21歳の時教員を止めて東洋大学の印度哲学科に入学した。
安吾の初作品『木枯らしの酒倉から』を書いたのは1931年(昭和6)であった。戦前の安吾は作家としてはパットしない不遇な時代であった。
大流行作家になるきっかけは、1946年(昭和21)『新潮』に書いた『堕落論』や『白痴』などで、終戦直後の虚脱状態にあった人々に衝撃を与えた。
『堕落論』では、戦争が敗戦で終わった混乱の中で、崩れた天皇制や家族制度など戦前戦中の価値観にすがろうとしている人たちに、「生きよ、堕ちよ」と呼びかけた。タテマエ、旧秩序を捨て、「堕ちることで人間に生き返ろう」というのだった。

私生活では若くから神経衰弱を患い、さらには自らの自殺願望を見つめながらヒロポン等の覚せい剤、睡眠薬を中毒患者として常用した。殺到する依頼原稿をさばく為にヒロポンがかかせず多用した。東大病院へ入院したこともあった。50本入りの「缶ピース」は執筆作業に欠かせなかった大の愛煙家でとしても知られた。

坂口安吾は酒をこよなく愛する作家で、酒に関する随想を複数残している。安吾にとって姉が嫁いだ村山家のある松之山町(現在の十日町市)は縁のある土地となっており、酒の蔵元だった村山家で作られた酒、「越の露」は安吾が愛した日本酒として知られている。
銀座老舗の「ルパン」には、太宰治、織田作之助など、のちに無頼派と呼ばれるようになった作家たちのほか、木村伊兵衛、濱谷浩、秋山庄太郎といった写真家がいた。坂口安吾も足しげく通い他の作家と交流を深めていった。
1947年(昭和22)3月、安吾が妻三千代と初めて会ったのも、新宿のバー「チトセ」であった。

安吾が学校をサボっては新潟海岸の海と空と風の中で過ごした場所には、20トンもある自然石が設置され、「ふるさとは語ることなし」という安吾の自筆を刻んだ碑が建っている。
この言葉は、死の直前の1955年(昭和30年)1月、新潟の知人に宛てた3枚の色紙の一枚に書かれていたも言葉である。
晩年、安吾は何かと理由をつけ新潟に戻っていたという。夜、暗くなって実家の近く、砂山にあった塔に登り、海に向かって大声で咆えていたという。
この言葉には、愛すべきふるさと新潟に対する安吾の思いが込められていたと思われる。

1955年(昭和30)2月17日、群馬県桐生町市の借家で脳出血のため48歳で死んだ。


1906年(明治39)10月20日、新潟市に坂口仁一郎の五男として生まれる。本名は坂口 炳五(さかぐち へいご)。
1931(昭和6)年「風博士」が注目され一躍文壇にデビューする。
1947(昭和22)、梶三千代(後の坂口三千代)と出会い、同棲生活を始める。
1952(昭和27)2月、桐生市に転居。亡くなるまでの約三年を過ごした。
1953(昭和28)、長男綱男が生まれ、三千代との結婚届を提出する。
1955(昭和30)年2月17日48歳、桐生市の自宅にて脳出血で倒れ、死去。

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(没後)
☯2005年(平成17)、安吾忌にあわせ、新潟市により安吾賞創設の宣言がなされた
☯2009年(平成21)、新潟市は旧市長公舎を活用し、遺品・所蔵資料等の調査研究を進めるとともに、様々なテーマによる展示を行う安吾 風の館がオープンした
☯2019年(令和元)、敗戦直後の1945年9月に、敗戦の意味や戦後の新聞社の使命を記した直筆の手紙3通が見つかる
☯2020年(令和2)、坂口安吾「明治開化 安吾捕物帖」ドラマ化、「明治開化 新十郎探偵帖」としてNHKでドラマ化決定。主演は福士蒼汰が務める。
☯2022年(令和4)、坂口安吾、幻の探偵小説「盗まれた一萬圓(まんえん)」発見 全集未収録、文芸誌掲載
☯2023年(令和5)、坂口安吾が最晩年過ごした地 桐生市で初の「安吾忌」開催



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🔶墓所
🔶記念館

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