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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

罰則

【著作権法違反罪の幇助行為の該当性】

Winnyは,1,2審判が価値中立ソフトと称するように,適法な用途にも,著作権侵害という違法な用途にも利用できるソフトであり,これを著作権侵害に利用するか,その他の用途に利用するかは,あくまで個々の利用者の判断に委ねられている。また,被告人がしたように,開発途上のソフトをインターネット上で不特定多数の者に対して無償で公開,提供し,利用者の意見を聴取しながら当該ソフトの開発を進めるという方法は,ソフトの開発方法として特異なものではなく,合理的なものと受け止められている。新たに開発されるソフトには社会的に幅広い評価があり得る一方で,その開発には迅速性が要求されることも考慮すれば,かかるソフトの開発行為に対する過度の萎縮効果を生じさせないためにも,単に他人の著作権侵害に利用される一般的可能性があり,それを提供者において認識,認容しつつ当該ソフトの公開,提供をし,それを用いて著作権侵害が行われたというだけで,直ちに著作権侵害の幇助行為に当たると解すべきではない。かかるソフトの提供行為について,幇助犯が成立するためには,一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況が必要であり,また,そのことを提供者においても認識,認容していることを要するというべきである。すなわち,ソフトの提供者において,当該ソフトを利用して現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識,認容しながら,その公開,提供を行い,実際に当該著作権侵害が行われた場合,当該ソフトの性質,その客観的利用状況,提供方法などに照らし,同ソフトを入手する者のうち例外的とはいえない範囲の者が同ソフトを著作権侵害に利用する蓋然性が高いと認められる場合で,提供者もそのことを認識,認容しながら同ソフトの公開,提供を行い,実際にそれを用いて著作権侵害(正犯行為)が行われたときに限り,当該ソフトの公開,提供行為がそれらの著作権侵害の幇助行為に当たると解するのが相当である。
<平成231219最高裁判所第三小法廷[平成21()1900]>

【著作権等侵害罪】

著作権法11312号にいう「著作権を侵害する行為によって作成された物を情を知って頒布する行為」が同法1191号【注:現1191項】にいう著作権の侵害に当たるとした原判断は、正当である。
<平成744最高裁判所第三小法廷[平成6()582]>

弁護人は,送信可能化権侵害罪は,中央のサーバーを介して情報が発信されることを予定した構成要件であるから,本件のようなP2Pの事案には適用されない旨主張している。
しかし,著作権法にいう「自動公衆送信装置」とは,サーバーやホストコンピュータに限られるものではなく,およそ公衆からの求めに応じて自動的にそこに入力されている映像,音響,文字等を送信するものをいうのであるから,たとえ個人が所有するパソコンであっても,そこに存在するソフトの動作等により上記のような機能を有しているのであれば,「自動公衆送信装置」に該当する。そして,Winnyは,そのネットワーク内でダウンロードが要求されれば,自動的に目的のファイルを送信する機能を有するプログラムソフトであるから,これをダウンロードして使用していた被告人のパソコンが「自動公衆送信装置」に該当することは明らかである。
弁護人の主張は,著作権法の構成要件を恣意的に解釈したものに過ぎず,失当である。
<平成161130日京都地方裁判所[平成15()2018]>

被告人3名が,他の共犯者らと共謀して行った判示各犯行は,インターネットサイト(以下「本件サイト」という。)のサーバコンピュータ内に,違法にアップロードされた漫画等の書籍データのリンクを掲載するなどして,不特定多数の者に対して書籍データを自動送信可能な状態にしたものである。本件サイトには,利用者による違法なアップロードと投稿を助長するための様々な仕組みがあり, 犯行は常習的なものである。著作権を侵害された者は44名,書籍は68点に上り,被告人3名において本件サイトを利用者の多いものに成長させていたこともあって,書籍の販売価格とダウンロード回数を掛け合わせた額は約3931万円に及んでいる。その全額が著作権者が得られるはずであった利益ではないにせよ,多くの財産的な損害が発生していると認められるし,著作権には人格的な利益も含まれており, 多数の著作権者らに総体として大きな損害が発生していると認められる。なお,検察官は,本件サイトによる推定損害額を具体的に主張し,著作権協会の関係者の心情等も主張しているところ,この犯行は親告罪であり,告訴されていない被害に係る損害や著作権者以外の者の心情を量刑上考慮することはできないが,判示各犯行が,同種事案の中でも際立って 大規模で社会に大きな影響を及ぼす行為の一環としてされたものであり,その結果として,起訴に係る多くの損害を発生させていることは考慮に値する。このように,判示各犯行は同種事案の中でも相当悪質で結果も重大なものであるといえる。
<平成31117大阪地方裁判所[平成29()4356]>
【注:主文「被告人Aを懲役3年6月に,被告人Bを懲役3年に,被告人Cを懲役2年4月に処する。」(執行猶予はつかなかった)】

本件各犯行は,被告人と共犯者らが,他のウェブサイト上に違法にアップロードされていた多数の漫画や雑誌の画像データをインターネットを通じて収集し,Aが開設した「K」と称するウェブサイト上に,いわゆるアフィリエイトによる収益を目的として,その画像データを対価なく閲覧する目的でKにアクセスする者が目当ての著作物を検索しやすいように体系化して,権利者に無断でアップロードすることを反復継続する中で敢行された。著作物やその出版等により権利者が収益を上げる構造が破壊されることで,著作者の創作意欲や,不特定多数人が著作物に触れる機会を生み出す意義を有する出版等の企業活動が減退し,ひいては優れた著作物が広く社会に共有されることによる文化の発展が阻害されるという社会的悪影響を招くおそれが大きい犯行であり,その悪質性は軽視できない。
<令和2318日福岡地方裁判所[令和1()1008]>

被告人らは,漫画雑誌の画像データを著作権者及び出版権者に無断でインターネット上のウェブサイトで公開し,不特定多数の者が無料で閲覧できるようにして,著作権者及び出版権者に損害を与えている。主要な漫画雑誌の画像データを継続的にアップロードする中での犯行であり,著作物の収益構造を破壊するという意味において,著作権等の保護制度を根本から揺るがせかねない悪質な犯行というべきであって,厳しい非難に値する。
<令和元年125日福岡地方裁判所[令和1()854]>

【独占的利用権者の告訴権】

映画著作物の著作権者から著作権の一部譲渡を受けたのではなく(著作権法611項参照)、独占的にビデオグラムの形態により複製・頒布・上映することを許諾されたいわゆる独占的ビデオ化権者であっても(同法631項参照)、著作権者の許諾を得ていない者によって当該映画著作物がビデオ化され、著作権が侵害された場合には、刑訴法230条にいう「犯罪により害を被った者」に当たり、告訴権を有すると解するのが相当である(最高裁昭和451222日第三小法廷判決参照)。
<平成744最高裁判所第三小法廷[平成6()582]>

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