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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

判例に見るコンテンツ契約の解釈と留意点

【コンテンツ契約の非要式性】

少なくとも,控訴人主張の肖像権,プライバシー権,名誉権,著作権,パブリシティ権等に係る契約であれば,当事者の合意によって契約は成立し,契約書等の書面の作成は,契約成立の要件ではない。
<平成180228日知的財産高等裁判所[平成17()10110]>

【契約の成否】

本件共同事業は,本件合意書に基づくものであるところ,本件合意書に控訴人及び被控訴人のいずれも押印していない。したがって,控訴人と被控訴人とは,本件合意書の締結には至らなかったものと認められる。
そして,本件証拠上,ほかに,本件共同事業に関し,控訴人と被控訴人との合意の存在を直接裏付ける書面等の客観的な証拠は,存在しない。
(略)
このように,被控訴人は,当事者双方の捺印のある契約書に基づき,本件各作品を含むコンテンツを提供する契約を締結している。この点に鑑みれば,被控訴人において,それらのコンテンツ提供契約とは異なり,本件商品に関する著作権等の権利を共同で所有するという重要な事項を含む取引につき,それに関する合意の事実を明示する両者の捺印がされた書面等を取り交わすこともなく,合意に至ることは,考え難い。
<平成28217日知的財産高等裁判所[平成27()10115]>

相手方の利用許諾権限の有無を確認する注意義務

被告○○は,本件出版契約において,被告△△から,「被告△△は,本著作物が他人の著作権その他の権利を侵害しないことを保証する。」との保証を得ていること(から),被告○○には,著作権侵害についての過失がない旨主張する。
しかし,被告○○が,被告△△との間に,上記のような保証を内容とする契約を締結していても,原告らが転載を許諾したか否かを調査,確認する義務を免れるものではないというべきであ(る。)
<平成140415日東京地方裁判所[平成13()22066]>

第三者が著作権を有する著作物の利用について契約を締結する場合,当該契約の相手方が当該著作物の利用を許諾する権限を有しないのであれば,当該契約を締結しても当該著作物を利用することはできないのであるから,当該契約の当事者としては,相手方の利用許諾権限の有無を確認する注意義務があるというべきであり,これを怠って当該著作物を利用したときには,当該第三者に対する不法行為責任を免れないというべきである。
<平成230711日東京地方裁判所[平成21()10932]>

第三者が著作権や著作隣接権を有する著作物の利用について契約を締結する場合,当該契約の相手方が当該著作物の利用を許諾する権限を有していなければ,当該契約を締結しても当該著作物を利用することはできない。
したがって,当該契約の当事者としては,相手方の利用許諾権限の有無を確認する注意義務があるというべきであり,これを怠って当該著作物を利用した場合,当該第三者に対する不法行為責任を免れないと解される。
これを本件についてみるに,被告○○は,本件再委託契約の締結時において,被告△△がレコード製作者及び実演家の各著作隣接権を有しないことを認識していたと認められるところ,被告○○らは,被告△△の利用許諾権限に疑義等を抱かしめるような事情はなかったと主張するのみで,被告○○において,著作隣接権者に問い合わせ,又は本件契約書を確認するなどの方法によって,本件CD及び本件楽曲についての被告△△の利用許諾権限を確認した等の主張はないし,証拠上もこうした事実を認めることはできない。
そうすると,被告○○は,本件CDの無断レンタルや本件楽曲の無断配信について少なくとも過失があると認められるから,原告に対し,被告△△らとの共同不法行為が成立する。
<平成28216日東京地方裁判所[平成25()33167]>

【契約関係の合理的解釈】

本件事案は,長期間にわたり契約関係にあった当事者が,必ずしも明確に定めてこなかった事柄が問題となり,それが原因となってパブリシティ侵害行為,著作権侵害行為及び不正競争行為(いずれも法的性質としては不法行為)として損害賠償等が請求されている,というものである。
そうすると,権利侵害の成否や損害額の算定の判断に当たっても,契約関係にない権利者と侵害被疑者との間の訴訟におけるものとは異なり,契約関係にあった当時の事情を踏まえた合理的な意思解釈が必要とされる。
<令和2220日知的財産高等裁判所[平成31()10033]>

【キャラクター商品化における使用料率】

漫画その他のキヤラクターを商品に使用することを許諾する契約において、その使用料はキヤラクターが使用される商品の販売価格の少なくとも3パーセントを下らない額で定められているのが業界の慣行であることが認められる(。)
<昭和510526日東京地方裁判所[昭和46()151]>

【印刷製本契約】

一般に,印刷・製本契約を締結した出版社と印刷業者との間では,印刷業者は,出版社の許諾を得ない限り,印刷用データの再利用をすることができないとの商慣行が存在していると認めるのが相当である。(中略)
以上を踏まえると,原告と被告○○印刷との間の原告書籍に関する印刷・製本契約では,上記の商慣行にのっとり,被告○○印刷は,原告の許諾を得ない限り,本件印刷用データの再利用をすることができないとの黙示の合意がされたと認めるのが相当であり,そうでないとしても,被告○○印刷は,印刷・製本契約に付随して,原告の許諾を得ない限り,本件印刷用データの再利用をすることができないとの義務を信義則上負うと解するのが相当である。
<平成29112日大阪地方裁判所[平成27()718]>

【不安の抗弁権】

継続的取引契約により当事者の一方が先履行義務を負担し,他方が後履行義務を負担する関係にある場合に,契約成立後,後履行義務者による後履行義務の履行が危殆化された場合には,後履行義務の履行が確保されるなど危殆化をもたらした事由を解消すべき事由のない限り,先履行義務者が履行期に履行を拒絶したとしても違法性はないものとすることが,取引上の信義則及び契約当事者間の公平に合致するものと解される。いわゆる不安の抗弁権とは,かかる意味において自己の先履行義務の履行が拒絶できることであると言うことができる。そして,後履行義務の履行が危殆化された場合としては,契約締結当時予想されなかった後履行義務者の財産状態の著しい悪化のほか,後履行義務者が履行の意思を全く有しないことが契約締結後に判明したような場合も含まれると解するのが相当である。
<平成190405日知的財産高等裁判所[平成18()10036]>

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