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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

渉外関係・国際契約

【専属的合意管轄】

修正サービス契約6条(i)は,「トラスト及び△△は,それぞれ,本契約から生じる又は本契約に関連する全ての法的手続のため,ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所又はニューヨーク市に置かれるニューヨーク州裁判所の専属的裁判管轄に服する。」と定めている。被告会社は,同条項の「トラスト」との記載は単なる誤記にすぎず,同条項は被告会社と△△間の専属的裁判管轄の合意を定めたものであるから,本訴請求について我が国の裁判所は管轄権を有しないと主張する。
しかし,国際裁判管轄の合意は,その合意に係る管轄地に所在しない当事者に大きな不利益を与えることになることから,書面によって合意されなければならないとされており(民事訴訟法3条の7),同合意の存在は当該書面の記載に基づいて慎重に行うことが相当であるところ,修正サービス契約6条(i)は,専属的管轄合意の主体を,被告会社とは別の法人である「トラスト」と明示しており,被告会社のスペルの誤りなどではないから,その記載から合意の主体が被告会社であると認めることはできない。
修正サービス契約は,英文で起草された国際的な取引に関する企業間の契約書であり,各条項については,契約当事者がその文言について慎重に精査・検討した上で合意されたと考えるのが自然である。しかも,専属的裁判管轄の合意において,合意の主体は最も基本的かつ重要な要素の一つであることを考慮すると,修正サービス契約6条(i)に規定する専属的裁判管轄の合意主体はその文言に従って「トラスト」であると認めることが相当である。
<令和元年1113日東京地方裁判所[平成28()39687]>

【国際裁判管轄】

我が国に住所等を有しない被告に対し提起された不法行為に基づく損害賠償請求訴訟につき,民訴法の不法行為地の裁判籍の規定(民訴法5条9号【現3条の38号に相当】,本件については旧民訴法15条)に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するためには,原則として,被告が我が国においてした行為により原告の法益について損害が生じたとの客観的事実関係が証明されれば足りると解するのが相当である。けだし,この事実関係が存在するなら,通常,被告を本案につき応訴させることに合理的な理由があり,国際社会における裁判機能の分配の観点からみても,我が国の裁判権の行使を正当とするに十分な法的関連があるということができるからである。
本件請求①【注:本件警告書が日本に送付されたことにより上告人の業務が妨害されたことを理由とする不法行為に基づく損害賠償】については,被上告人が本件警告書を我が国内において宛先各社に到達させたことにより上告人の業務が妨害されたとの客観的事実関係は明らかである。よって,本件請求①について,我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定すべきである。
(略)
本件請求②【注:被上告人が日本において本件著作物についての著作権を有しないことの確認】は,請求の目的たる財産が我が国に存在するから,我が国の民訴法の規定する財産所在地の裁判籍(民訴法5条4号【現3条の33号に相当】,旧民訴法8条)が我が国内にあることは明らかである。
ところで,著作権は,ベルヌ条約により,同盟国において相互に保護されるものであるから,仮に,被上告人が本件著作物につきタイ王国における著作権を上告人と共有しているとすれば,日本においても,被上告人のタイ王国における共有著作権が保護されることになる。被上告人がタイ訴訟において本件著作物についてタイ王国における著作権を共有していると主張している事実は,本件請求②の紛争としての成熟性,ひいては確認の利益を基礎づけるのに十分であり,本件請求②の確認の利益を否定した原判決には,法令の解釈適用を誤った違法がある。
よって,本件請求②については,我が国の裁判所に国際裁判管轄があることを肯定すべきである。
(略)
本件請求③ないし⑥は,いずれも本件請求①及び②と併合されている。
ある管轄原因により我が国の裁判所の国際裁判管轄が肯定される請求の当事者間における他の請求につき,民訴法の併合請求の裁判籍の規定(民訴法7条本文【現3条の6に相当】,旧民訴法21条)に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するためには,両請求間に密接な関係が認められることを要すると解するのが相当である。けだし,同一当事者間のある請求について我が国の裁判所の国際裁判管轄が肯定されるとしても,これと密接な関係のない請求を併合することは,国際社会における裁判機能の合理的な分配の観点からみて相当ではなく,また,これにより裁判が複雑長期化するおそれがあるからである。
これを本件についてみると,本件請求③ないし⑥は,いずれも本件著作物の著作権の帰属ないしその独占的利用権の有無をめぐる紛争として,本件請求①及び②と実質的に争点を同じくし,密接な関係があるということができる。よって,本件請求③ないし⑥についても,我が国の裁判所に国際裁判管轄があることを肯定すべきである。
<平成1368最高裁判所第二小法廷[平成12()929]>

【著作権に基づく差止請求の準拠法】
(注)ベルヌ条約5条
(1) Authors shall enjoy, in respect of works for which they are protected under this Convention, in countries of the Union other than the country of origin, the rights which their respective laws do now or may hereafter grant to their nationals, as well as the rights specially granted by this Convention.
(1) 著作者は、この条約のもとで保護される著作物に関し、本国以外の同盟国において、この条約が特に付与する権利のみならず、その国の法令が自国民に現在与えており又は将来与えることがある権利を享受する。
(2) The enjoyment and the exercise of these rights shall not be subject to any formality; such enjoyment and such exercise shall be independent of the existence of protection in the country of origin of the work. Consequently, apart from the provisions of this Convention, the extent of protection, as well as the means of redress afforded to the author to protect his rights, shall be governed exclusively by the laws of the country where protection is claimed.
(2) これらの((1)の)権利の享有及び行使には、いかなる方式(の履行)も条件とされない。かかる享有及び行使は、当該著作物の本国における保護の存在とは独立したものとする。それ故に、この条約に規定するものを除き、保護の範囲及び権利保護[保全]のために著作者に与えられる法的救済の手段については、専ら、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる

著作権に基づく差止請求は,著作権の排他的効力に基づく,著作権を保全するための救済方法というべきであるから,その法律関係の性質を著作権を保全するための救済方法と決定すべきである。著作権を保全するための救済方法の準拠法に関しては,ベルヌ条約5(2)により,保護が要求される国の法令の定めるところによると解するのが相当である。本件において保護が要求される国は,我が国であり,上記差止請求については,我が国の法律を準拠法とすべきである。
<平成160531日東京地方裁判所[平成14()26832]>

著作権に基づく差止請求については,「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」5(2)により,「保護が要求される同盟国の法令」の定めるところによることとなり,我が国の著作権法が適用される。
<平成240711日東京地方裁判所[平成22()44305]>

控訴人○○社の差止請求は,同控訴人が北朝鮮の法人であり,また,北朝鮮の著作物についての著作権に基づく請求であるという点で,渉外的要素を含むものであるから,準拠法を決定する必要がある。
我が国が加入しているベルヌ条約5(2)3文は,「したがつて,保護の範囲及び著作者の権利を保全するため著作者に保障される救済の方法は,この条約の規定によるほか,専ら,保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。」と規定しているところ,この規定は,著作権の「保護の範囲」及び「著作者の権利を保全するため著作者に保障される救済の方法」という単位法律関係について,「保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる」という準拠法を定める抵触規則であると解される。そして,著作権に基づく差止請求の問題は,「著作者の権利を保全するため著作者に保障される救済の方法」であると性質決定することができるから,ベルヌ条約によって保護される著作物の著作権に基づく差止請求は,同条約5(2)により,保護が要求される同盟国の法令,すなわち同国の著作権法が準拠法となる。もっとも,本件においては,北朝鮮の著作物が我が国との関係でベルヌ条約3(1)()によって保護される著作物に当たるか否かが争われており,このような場合にベルヌ条約5(2)の抵触規則を適用して準拠法を決定することができるのかどうかが問題となり得るところである。しかしながら,ベルヌ条約の加盟国数は,平成2010月現在,全世界163か国にも及んでおり,我が国とこれら多くの加盟国との間においては,著作権に基づく差止請求という法律関係については同条約5(2)の定める抵触規則が適用されること,この抵触規則は,世界の多くの加盟国において適用される国際私法の規則となっていること,及び著作権の属地的な性質からすれば,保護が要求される国の法令を準拠法とすることに合理性があること等に鑑みれば,ベルヌ条約で保護されない著作物についても,上記抵触規則を適用ないし類推適用して保護が要求される国の法令を準拠法と指定することが相当である。
したがって,ベルヌ条約によって保護される著作物に当たるかどうかが争われている北朝鮮の著作物に係る著作権に基づく差止請求についても,ベルヌ条約5(2)の定める抵触規則が適用ないし類推適用されるから,控訴人○○社の差止請求については,我が国の著作権法が適用されると解すべきである。
<平成201224日知的財産高等裁判所[平成20()10012]>

【著作者の死後における人格的利益保護のための差止請求及び謝罪広告請求の準拠法】
(注)ベルヌ条約6条の2(2)前段:「前項の規定に従って著作者に認められる権利[著作者人格権のこと]は、当該著作者の死後においても、少なくともその財産的[経済的]権利が消滅するまでは、存続するものとし、保護が要求されている同盟国の法令により権限が付与される人又は団体によって行使できるものとする。」(The rights granted to the author in accordance with the preceding paragraph shall, after his death, be maintained, at least until the expiry of the economic rights, and shall be exercisable by the persons or institutions authorized by the legislation of the country where protection is claimed.
(注)ベルヌ条約6条の2(3):「本条によって認められる権利を保護[保全]するための法的救済の手段については、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。」(The means of redress for safeguarding the rights granted by this Article shall be governed by the legislation of the country where protection is claimed.

著作者の死後における人格的利益の保護のための差止請求及び謝罪広告請求は,著作者の人格的利益すなわち著作者の権利を保全するための救済方法というべきであるから,その法律関係の性質を著作者の権利を保全するための救済方法と決定すべきである。著作者の権利を保全するための救済方法の準拠法に関しては,ベルヌ条約6条の2(3)により,保護が要求される国の法令の定めるところによると解するのが相当である。本件において保護が要求される国は,我が国であり,上記差止請求及び謝罪広告請求については,我が国の法律を準拠法とすべきである。なお,ベルヌ条約6条の2(2)により,上記請求権を行使すべき者も,保護が要求される国である我が国の法律によって定められる。
<平成160531日東京地方裁判所[平成14()26832]>

【著作権侵害に基づく損害賠償請求の準拠法】
(注)法の適用に関する通則法17条:「不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による。ただし、その地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときは、加害行為が行われた地の法による。」

著作権侵害を理由とする損害賠償請求の法律関係の性質は,不法行為であり,その準拠法については,法例111項によるべきである。上記損害賠償請求について,法例111項にいう「原因タル事実ノ発生シタル地」は,被告小説の印刷及び頒布行為が行われたのが我が国であること並びに我が国における著作権の侵害による損害が問題とされていることに照らし,我が国と解すべきである。よって,同請求については,我が国の法律を準拠法とすべきである。
(略)
著作者人格権侵害を理由とする損害賠償請求の法律関係の性質は,不法行為であり,その準拠法については,法例111項によるべきである。上記損害賠償請求について,法例111項にいう「原因タル事実ノ発生シタル地」は,被告小説の印刷及び頒布行為が行われたのが我が国であること並びに我が国における著作者人格権の侵害が問題とされていることに照らし,我が国と解すべきである。よって,同請求については,我が国の法律を準拠法とすべきである。
<平成160531日東京地方裁判所[平成14()26832]>

控訴人会社は日本法人であり,控訴人会社サイトは日本語で記述され,本件クライアントソフトも日本語で記述されていることからは,本件サービスによるファイルの送受信のほとんど大部分は日本国内で行われていると認められる。控訴人会社サーバがカナダに存在するとしても,本件サービスに関するその稼動・停止等は控訴人会社が決定できるものである。以上からすると,控訴人会社サーバが日本国内にはないとしても,本件サービスにおける著作権侵害行為は,実質的に日本国内で行われたものということができる。そして,被侵害権利も日本の著作権法に基づくものである。
上記の事実からすれば,本件においては,条理(差止請求の関係)ないし法例111項(不法行為の関係)により,日本法が適用されるものというべきである。
<平成170331日東京高等裁判所[平成16()405]>
【注】本件で問題となった「本件サービス」とは、控訴人会社が所定のカナダ法人と提携することにより、利用者のパソコン間でデータを送受信させるピア・ツー・ピア技術を用いて、カナダ国内に中央サーバ(「控訴人会社サーバ」)を設置し、インターネットを経由して控訴人会社サーバに接続されている不特定多数の利用者のパソコンに蔵置されている電子ファイルの中から、同時に控訴人会社サーバにパソコンを接続させている他の利用者が好みの電子ファイルを選択して、無料でダウンロードできるサービスのことである。

著作権侵害に基づく損害賠償請求の性質は,不法行為であると解されるから,通則法附則34項により,同法の施行日(平成1911日)前に加害行為の結果が発生した不法行為によって生ずる債権については法例111項により「原因タル事実ノ発生シタル地」の法律が,通則法の施行日以後に加害行為の結果が発生した不法行為によって生ずる債権については通則法17条により「加害行為の結果が発生した地」の法律が,それぞれ準拠法となる。
そして,本件において,原告が著作権侵害であると主張する行為は,原告設計図から被告各商品を製造する行為であるところ,当該行為は台湾で行われていることからすれば,「原因タル事実ノ発生シタル地」(法例111項)及び「加害行為の結果が発生した地」(通則法17条)ともに台湾であると認められ,台湾法が準拠法となると解される。
<平成230302日東京地方裁判所[平成19()31965]>

原告は中華人民共和国法人であり,被告は日本法人であるから,準拠法が問題となるところ,著作権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求については,本件において,原告が本件各原版の複製権又は翻案権が侵害され,被告各DVDが販売されたと主張するのは我が国であるから,「原因タル事実ノ発生シタル地」(法例111項),「加害行為の結果が発生した地」又は「加害行為が行われた地」(法の適用に関する通則法17条)として,日本法が準拠法となる。
<平成230711日東京地方裁判所[平成21()10932]>

著作権侵害に基づく損害賠償請求については,「法の適用に関する通則法」17条により,不法行為地すなわち被告が本件商品を頒布した地の法である日本法が適用される。
<平成240711日東京地方裁判所[平成22()44305]>

【不当利得返還請求の準拠法】
(注)法の適用に関する通則法14条:「事務管理又は不当利得によって生ずる債権の成立及び効力は、その原因となる事実が発生した地の法による。」

不当利得返還請求については,本件において,原告が被告により本件各原版が複製され,被告各DVDが販売されたと主張するのは我が国であるから,「その原因となる事実が発生した地」(法の適用に関する通則法14条)として,日本法が準拠法となる。
<平成240228日知的財産高等裁判所[平成23()10047]>

【著作権譲渡に関する準拠法】
(注)法の適用に関する通則法7条:「法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。」
(注)法の適用に関する通則法13条:1 動産又は不動産に関する物権及びその他の登記をすべき権利は、その目的物の所在地法による。」「2 前項の規定にかかわらず、同項に規定する権利の得喪は、その原因となる事実が完成した当時におけるその目的物の所在地法による。」
(注)法の適用に関する通則法36条:「相続は、被相続人の本国法による。」

著作権の譲渡について適用されるべき準拠法を決定するに当たっては、譲渡の原因関係である契約等の債権行為と、目的である著作権の物権類似の支配関係の変動とを区別し、それぞれの法律関係について別個に準拠法を決定すべきである。
まず、著作権の譲渡の原因である債権行為に適用されるべき準拠法について判断する。(中略)著作権移転の原因行為である譲渡契約の成立及び効力について適用されるべき準拠法は、法律行為の準拠法一般について規定する法例71項【現通則法7条に相当】により、第一次的には当事者の意思に従うべきところ、著作権譲渡契約中でその準拠法について明示の合意がされていない場合であっても、契約の内容、当事者、目的物その他諸般の事情に照らし、当事者による黙示の準拠法の合意があると認められるときには、これによるべきである。控訴人の主張する本件著作権の譲渡契約は、アメリカ合衆国ミズーリ州法に基づいて設立された遺産財団が、我が国国民である控訴人に対し、我が国国内において効力を有する本件著作権を譲渡するというものであるから、同契約中で準拠法について明示の合意がされたことが明らかでない本件においては、我が国の法令を準拠法とする旨の黙示の合意が成立したものと推認するのが相当である。
次に、著作権の物権類似の支配関係の変動について適用されるべき準拠法について判断する。一般に、物権の内容、効力、得喪の要件等は、目的物の所在地の法令を準拠法とすべきものとされ、法例10条【現通則法13条に相当】は、その趣旨に基づくものであるが、その理由は、物権が物の直接的利用に関する権利であり、第三者に対する排他的効力を有することから、そのような権利関係については、目的物の所在地の法令を適用することが最も自然であり、権利の目的の達成及び第三者の利益保護という要請に最も適合することにあると解される。著作権は、その権利の内容及び効力がこれを保護する国(以下「保護国」という。)の法令によって定められ、また、著作物の利用について第三者に対する排他的効力を有するから、物権の得喪について所在地法が適用されるのと同様の理由により、著作権という物権類似の支配関係の変動については、保護国の法令が準拠法となるものと解するのが相当である。
そうすると、本件著作権の物権類似の支配関係の変動については、保護国である我が国の法令が準拠法となるから、著作権の移転の効力が原因となる譲渡契約の締結により直ちに生ずるとされている我が国の法令の下においては、上記の本件著作権譲渡契約が締結されたことにより、本件著作権は遺産財団から控訴人に移転したものというべきである。
<平成130530日東京高等裁判所[平成12()7]>

著作権の譲渡について適用されるべき準拠法を決定するに当たっては,譲渡の原因関係である契約等の債権行為と,目的である著作権の物権類似の支配関係の変動とを区別し,それぞれの法律関係について別個に準拠法を決定すべきである。著作権の譲渡の原因である債権行為に適用されるべき準拠法については,法例71項【現通則法7条に相当】により,当事者の意思に従って定められるべきものであり,本件契約は,準拠法をスペイン法とする合意がされたから(本件契約第10条第1項),これに従うべきことは当然である。また,ダリの死亡による財産の相続は,法例26条【現通則法36条に相当】により,被相続人の本国法であるスペイン法による。
これに対し,本件著作権の物権類似の支配関係の変動について適用されるべき準拠法は,スペイン法ではなく,我が国の法令であると解される。すなわち,一般に,物権の内容,効力,得喪の要件等は,目的物の所在地の法令を準拠法とすべきものとされ,法例10条【現通則法13条に相当】は,その趣旨に基づくものであるが,その理由は,物権が物の直接的利用に関する権利であり,第三者に対する排他的効力を有することから,そのような権利関係については,目的物の所在地の法令を適用することが最も自然であり,権利の目的の達成及び第三者の利益保護という要請に最も適合することにあると解される。著作権は,その権利の内容及び効力がこれを保護する国(以下「保護国」という。)の法令によって定められ,また,著作物の利用について第三者に対する排他的効力を有するから,物権の得喪について所在地法が適用されるのと同様の理由により,著作権という物権類似の支配関係の変動については,保護国の法令が準拠法となるものと解するのが相当である(東京高裁平成13530日判決参照)。
スペイン国及び我が国は,いずれも文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約パリ改正条約の同盟国であるから,同条約3(1)(a)及び我が国著作権法63号により,スペイン国民であったダリの本件著作物に係る本件著作権は,我が国においても保護される。我が国において保護される本件著作権の物権類似の支配関係の変動については,保護国である我が国の法令が準拠法となることは上記のとおりであるところ,我が国の法令は,著作権の移転の効力が原因となる譲渡契約の締結により直ちに生ずるとしているから,ダリと被控訴人が本件契約を締結したことにより,第三者に対する対外的関係において,ダリ作品に係る本件著作権は,ダリから被控訴人に移転したものというべきである。
<平成150528日東京高等裁判所[平成12()4759]>

著作権の移転について適用されるべき準拠法を決定するに当たっては,移転の原因関係である契約等の債権行為と,目的である著作権の物権類似の支配関係の変動とを区別し,それぞれの法律関係について別個に準拠法を決定すべきである。
まず,著作権の移転の原因である債権行為に適用されるべき準拠法について判断するに,法の適用に関する通則法7条により,第一次的には当事者の選択に従ってその準拠法が定められるべきである。そして,フランス法人である原告協会と会員(大部分がフランス人)との間の著作権移転に関する契約については,フランス法を選択する意思であったと解される。
次に,著作権の物権類似の支配関係の変動について適用されるべき準拠法について判断するに,一般に,物権の内容,効力,得喪の要件等は,目的物の所在地の法令を準拠法とすべきものとされ,法の適用に関する通則法13条は,その趣旨に基づくものである。著作権は,その権利の内容及び効力がこれを保護する国の法令によって定められ,また,著作物の利用について第三者に対する排他的効力を有するから,物権の得喪について所在地法が適用されるのと同様に,著作権という物権類似の支配関係の変動については,保護国の法令が準拠法となるものと解するのが相当である。このように,著作権の物権類似の支配関係の変動については,保護国である我が国の法令が準拠法となるが,著作権の移転の効力が原因となる譲渡契約の締結により直ちに生ずるとされている我が国の法令の下においては,原告協会と会員との間の著作権移転に関する契約が締結されたことにより,著作権は会員から原告協会に移転することになる。
<平成251220日東京地方裁判所[平成24()268]>

【(独占的)利用許諾に関する準拠法】
(注)法の適用に関する通則法7条:「法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。」
(注)法の適用に関する通則法81項:「1 前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。」

本件では,本件写真の著作物性,著作者及び著作権者について争いがあるが,文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約5(2)によれば,著作物の保護の範囲は,専ら,保護が要求される同盟国の法令の定めるところによるから,我が国における著作権の帰属や有無等については,我が国の著作権法を準拠法として判断すべきである。我が国とアメリカ合衆国は,ベルヌ条約の同盟国であるところ,本件写真は,アメリカ合衆国において最初に発行されたものと認められ,その著作物性と同国の国民である原告Aが著作者であることが認められるから,同国を本国とし,同国の法令の定めるところにより保護されるとともに(ベルヌ条約2(1)3(1)5(3)(4)),我が国においても著作権法による保護を受ける(著作権法63号,ベルヌ条約5(1))。
また,本件では,原告Aは,原告会社に対し,本件独占的利用許諾権を付与したのであるから,このような利用許諾契約の成立及び効力については,当事者が契約当時に選択した地の法を準拠法とし(法の適用に関する通則法7条),他方,選択がないときは,契約当時において契約に最も密接な関係がある地の法が準拠法である(法の適用に関する通則法81項)。そして,本件独占的利用許諾権の付与が譲渡と同じ法的性質であると解したとしても,譲渡の原因関係である債権行為については同様に解するのが相当である。
そこで検討するに,本件独占的利用許諾権の付与は,原告Aがハワイ州公証人の面前において自ら署名した宣誓供述書をもって行ったものであり,その相手方である原告会社が同州に所在する会社であることも併せると,アメリカ合衆国ないしハワイ州の法を選択したものと解するのが相当である。
そして,アメリカ合衆国著作権法101条は,「『著作権の移転』とは,著作権または著作権に含まれるいずれかの排他的権利の譲渡,モゲージ設定,独占的使用許諾その他の移転,譲与または担保契約をいい,その効力が時間的または地域的に制限されるか否かを問わないが,非独占的使用許諾は含まない。」と規定するから,本件独占的利用許諾権の付与は同条にいう「著作権の移転」に含まれる。また,同法204()は,「著作権の移転は,法の作用によるものを除き,譲渡証書または移転の記録もしくは覚書が書面にて作成され,かつ,移転される権利の保有者またはその適法に授権された代理人が署名しなければ効力を有しない。」と規定するが,原告Aは,自ら署名した宣誓供述書をもって,本件独占的利用許諾権を付与したのであるから,本件独占的利用許諾権の付与は効力を有すると解される。
<平成241221日東京地方裁判所[平成23()32584]>

【契約解除の準拠法】
(注)法の適用に関する通則法7条:「法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。」

上記各請求【著作権に基づく差止請求及び著作権侵害に基づく損害賠償請求のこと】の先決問題としての本件解除の有効性については,「法の適用に関する通則法」7条により,当事者が契約当時に選択した地の法による。
本件販売契約に準拠法の定めはないが,本件販売契約上,本件商品は原告が製造し独占的に日本国内に輸入し,被告に対して独占的に供給し,被告が被告の頒布ルートを通して日本国内において独占的に頒布することとされていたこと,専属的合意管轄裁判所として東京簡易裁判所又は東京地方裁判所が指定されていること,本件販売契約当時既に締結され,原告及び○○もその内容を認識していたと認められる本件頒布契約においては,準拠法として「日本国著作権法並びにその他の日本法」が明示されていることなどを総合すると,本件販売契約締結当時,原告及び○○は,本件販売契約の準拠法を日本法とすることを黙示に選択していたものと認められる。
したがって,本件解除の有効性についても,日本法が適用される。
<平成240711日東京地方裁判所[平成22()44305]>

【職務著作物性の準拠法】

職務著作に関する規律は,その性質上,法人その他使用者と被用者の雇用契約の準拠法国である米国著作権法の職務著作に関する規定によると解すべ(である)。
<平成3128日東京地方裁判所[平成28()26612]>

職務著作に関する規定の準拠法については,その性質上,法人その他使用者と被用者の雇用契約の準拠法国における著作権法の職務著作に関する規定によるものと解される。
<令和3218日東京地方裁判所[平成30()28994]>

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