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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

差止請求

【法112条の法意】

著作権法1121項は,著作権者は,その著作権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる旨を規定する。同条は,著作権の行使を完全ならしめるために,権利の円満な支配状態が現に侵害され,あるいは侵害されようとする場合において,侵害者に対し侵害の停止又は予防に必要な一定の行為を請求し得ることを定めたものであって,いわゆる物権的な権利である著作権について,物権的請求権に相当する権利を定めたものである(。)
<平成160311日東京地方裁判所[平成15()15526]>

著作権法1121項において,著作権者等は,その権利を「侵害する者や侵害するおそれのある者」に対して,「その侵害の停止又は予防を請求することができる」と定められ,同規定は,著作権侵害が発覚した後の事後の損害賠償だけでは適切な法益の保護を図ることが困難であると認められる場合に限り,相手方が善意・無過失であっても,侵害の停止や予防を請求することができることを規定したものであり,さらに,同条1項のみでは著作権あるいは著作者人格権が保護されない場合があることにかんがみて,同条2項において,侵害行為の停止や予防を請求する際に,侵害の行為によって作成された物等の廃棄,その他侵害の停止・予防に必要な措置を講ずることができる旨定められているものである。
<平成160611日東京地方裁判所[平成15()11889]>

著作権法112条が,著作権等を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができると規定する趣旨は,著作権等が無体物に関する権利であり,かつ,独占的な権利行使を内容とすることから,著作権等の侵害の救済のためには,損害賠償だけでは不十分であり,侵害行為を直ちに停止させる必要があることに由来する。したがって,著作権,著作隣接権の侵害又は侵害のおそれが認められるならば,著作権者等は,差止請求権を行使できると解することが法の趣旨に沿うというべきである。
<平成240131日知的財産高等裁判所[平成23()10009]>

著作権者が,その著作権を侵害するおそれのある者に対し,著作権法1121項に基づく差止請求をするについては,不法行為である著作権侵害を理由とする損害賠償請求をするのと同様に,著作権者において,自らが著作権者である事実と,著作権侵害ないしそのおそれに係る事実を主張立証する責任があるところ,著作権者が主張立証すべき事実は,故意ないし過失及び損害額を除けば,不法行為に基づく損害賠償請求訴訟と異なるところはない。
そうすると,著作権法1121項に基づく差止請求権は,不法行為に基づく損害賠償請求権と同様,弁護士に委任しなければ訴訟活動をすることが困難な類型に属する請求権であるということができる。そして,本件のように,著作権者が著作権法1121項に基づく差止請求をする訴えの提起を余儀なくされ,その訴訟追行を弁護士に委任した場合には,その弁護士費用は,事案の難易その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内で,著作権侵害ないしそのおそれと相当因果関係に立つ損害であると解される(最高裁昭和44227日第一小法廷判決,最高裁平成24224日第二小法廷判決参照。)。
<平成251030日東京地方裁判所[平成24()33533]>

控訴人は著作権侵害の事実を争っており,また,控訴人が現在もなお控訴人各写真の画像データを保有している可能性が十分に認められる以上,現在侵害行為がなされていないとの一事をもって,将来二度と侵害行為を行わないと断定することはできないから,控訴人には,著作権法1121項にいう「侵害のおそれ」が存すると認めるのが相当である。
<平成231031日知的財産高等裁判所[平成23()10020]>

原告は,著作権法1122項に基づき,侵害の停止又は予防に必要な措置として,本件作品からの本件風景映像動画の削除を請求する。ところで,同項によれば,この請求は,独立してすることはできず,侵害の停止又は予防の請求に附帯してしなければならないが,原告は,複製,頒布の停止又は予防を請求していない。そうであるから,独立してした上記請求に係る訴えは,不適法である。
<平成250829日東京地方裁判所[平成24()32409]>

【将来発生する著作権に基づく差止の可否】

著作権法112条は、著作権を侵害するおそれがある者に対し、その侵害の予防を請求することができる旨規定しているから、既に著作権が発生している場合には、たとえ侵害行為自体はいまだなされていない段階においても、予測される侵害に対する予防を請求することができることはいうまでもない。
問題は、請求の根拠となる著作物が口頭弁論終結時に存在しておらず、将来発生することとなる場合にも将来の給付の訴えとして差止請求を求めることができるかという点にある。
民事訴訟法226条【現135条。以下同じ】は、将来の給付の訴えについて、予めその請求をする必要がある場合にはこれを認めているが、この訴えが認められるためには、その前提として、権利発生の基礎をなす事実上及び法律上の関係(請求の基礎たる関係)が存在していることが必要であり、したがって、将来発生する著作権に基づく差止請求を無条件に認めることはできない。
しかし、新聞の場合について考えてみると、当該新聞が将来も継続して、これまでと同様の一定の編集方針に基づく素材の選択・配列を行い、これにより創作性を有する編集著作物として発行される蓋然性が高く、他方、これまで当該新聞の発行毎に編集著作権侵害行為が継続的に行われてきており、将来発行される新聞についてもこれまでと同様の編集著作権侵害行為が行われることが予測されるといった事情が存する場合には、著作権法112条、民事訴訟法226条の各規定の趣旨、並びに新聞は短い間隔で定期的に継続反復して発行されるものであり、発行による著作権の発生をまってその侵害責任を問うのでは、実質的に権利者の救済が図れないこと、新聞においては、取り上げられる具体的な素材自体が異なっても、一定の編集方針が将来的に変更されないことが確実であれば、編集著作物性を有するものと扱うことによって法律関係の錯雑を招いたり、当事者間の衡平が害されたりするおそれがあるとは認め難いことに鑑み、将来の給付請求として、当該新聞が発行されることを条件として、予測される侵害行為に対する予防を請求することができるものと解するのが相当である。
<平成61027日東京高等裁判所[平成5()3528]>

被告は,本件番組のうち,別紙記載の各番組以外のものは,現存する著作物ではなく,未だ制作されていない各番組について,公衆送信の差止めが認められるべきではない旨主張する。確かに,上記の番組については,未だ制作,放送されていないものをも含むと解されるが,従前から継続的に,原則として毎週,一定の曜日及び時間帯に,同一番組名で,著作物性を有する番組が放送されており,特段,放送を中止しなければならない事情は認められないから,今後も同様の形態,構成で企画・制作され,少なくともある程度の期間は放送が続けられる蓋然性が高く,また,将来,それらの番組が制作された場合に,いずれも著作物性を有するものと推認される。そして,それらの番組が制作,放送された後に差止請求をするのでは,違法状態を排除することができないというべきである。したがって,同記載の各番組以外の番組については,将来,制作,放送されるものについても,具体的に著作権侵害のおそれがあると認められる。
<平成240131日知的財産高等裁判所[平成23()10009]>

【改変後の利用行為の差止の可否】

著作権法1121項は,著作者人格権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができることを定めたものであるところ,被告○○寺による仏頭部のすげ替え行為は,E4の意に反する改変に当たり,E4が存しているとしたならばその著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為に該当するが,他方で,被告○○寺が仏頭部のすげ替え後の本件観音像を公衆の観覧に供していることは,改変後の行為であって,E4の著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為に当たるものとは認められないから,同条項により,原告が本件観音像を公衆の観覧に供することの停止請求をすることはできないものと解される。
<平成210528日東京地方裁判所[平成19()23883]>

同一性保持権は,著作者の意に反する著作物及びその題号を「変更,切除その他の改変」をする行為のみを侵害行為としており,これらの改変がされた後の利用行為は侵害行為とされていない(著作権法20条)。また,著作権法113条1項が同一性保持権の侵害とみなす行為として規定しているのは,同一性保持権の侵害行為によって作成された物を情を知って頒布する行為のほか,頒布目的の所持や頒布の申出,業としての輸出やその目的の所持等の行為にとどまり,上映,複製,公衆送信及び送信可能化は含まれていない。そうすると,本件各著作物について被控訴人が有する同一性保持権に基づいて請求することができるのは,本件映画の複製物の頒布の差止め(控訴人は,同一性保持権を侵害する本件映画を自ら製作した者である上,本件映画が同一性保持権を侵害する旨判断した原判決にも接しているから,頒布時に情を知っていることは明らかである。)にとどまり,本件映画の上映,複製,公衆送信及び送信可能化の差止めを求めることはできない。
<平成281226日知的財産高等裁判所[平成27()10123]>

【差止の射程範囲】

控訴人は、被控訴人らに対し、本件書籍に掲載されている本件写真の複製及びそれに関連する記述の削除を請求するところ、右書籍中への本件写真の複製の掲載が控訴人の著作権を侵害するものであることは前記のとおりである。
しかしながら、右書籍中の控訴人指摘の削除箇所のうち、写真以外の文章の部分については、それ自体控訴人の写真著作権を侵害するものではないし、本件写真と不可分一体としてこれと切り離して無意味となるようなものとは認められない(他の類似の写真をもって代替することで、その意味内容を保持することは可能である)以上、右部分に関する差止請求はそもそも理由がないというべきである。
(略)
なお、控訴人の右請求は、既に発行された書籍中の削除箇所指摘部分の削除を求めるものとも解する余地があるが、不特定多数の読者の手に渡り被控訴人らの支配の及ばない書籍につき当該部分を削除することは不可能を強いるものというほかないから、失当というべきである。
<平成90130日仙台高等裁判所[平成7()207]>

以上によれば、被告らが被告書籍を出版した行為は、原告出版社らの著作権及び著作者人格権を侵害するから、原告出版社らは被告らに対し、侵害行為の停止及び予防を求めることができる。
そして、原告出版社らの著作権及び著作者人格権の侵害に該当する記載は被告書籍の一部に存するにとどまるが、別紙記載のとおり、侵害部分は被告書籍の全体にわたっており、しかも、非侵害の部分と不可分であるから、被告書籍全体について差止め等を求めることができると解するのが相当である。
<平成101029日東京地方裁判所[平成7()19455]>

被告書籍は,本文459頁,並びに,江戸遺跡資料,江戸遺跡参考文献及び索引120頁で構成されており,原告絵画の複製物は,被告書籍の258頁下欄に掲載されている。このように,被告書籍において,原告の著作権を侵害する部分は全体のうちの1頁にすぎない。しかし,被告書籍は,上記各頁がハードカバーで一体として製本されており,被告書籍をこのまま販売又は頒布し,あるいは増刷発行すれば,原告絵画について原告が有する著作権の侵害を不可避的に伴うものである。また,被告は,原告絵画の著作物性を争っており,被告からは,本件口頭弁論終結時までに,被告書籍中,上記頁を削除して被告書籍を販売又は頒布し,あるいは増刷発行する予定であるなどの主張,立証も全くない。
以上からすれば,被告は,原告絵画の複製物を掲載した被告書籍を販売又は頒布し,あるいは増刷発行するおそれがあり,この被告の行為は,不可避的に原告の著作権を侵害するものであるから,同被告書籍の販売,頒布又は増刷発行の差止めを求める原告の請求は理由がある。
<平成180323日東京地方裁判所[平成17()10790]>

本件写真の著作権を侵害している箇所は,本件書籍のごく一部分である。しかし,本件書籍が本件写真を口絵に掲載して,全体として一冊の本として出版発行されている限りは,本件書籍の出版により,原告の意思に反して本件写真の無断複製物を頒布することになるのであるから,本件写真を掲載した本件書籍の印刷・出版発行の差止めを認めざるを得ない(換言すれば,本件写真が掲載されている部分を削除すれば,本件書籍を頒布することは可能である。)。ただし,本件書籍はノンフィクションの書物であって,写真部分と文章部分は可分であり,本件書籍の大半を占める文書部分とその余の写真部分は,本件写真の著作権侵害とは無関係な部分であることからすれば,本件写真の著作権を侵害している箇所に限って,その廃棄が認められるというべきである。
<平成181221日東京地方裁判所[平成18()5007]>

原告は,被告らに対し,原告プログラムに係る翻案権に基づき,被告プログラムの翻案の差止めを求めている。そこで,被告らが,被告プログラムの翻案行為を現に行い,又は,これを行うおそれがあると認められるか否かにつき検討するに,まず,被告らが,被告プログラムを改変する行為を現に行っているとの事実を認めるに足りる証拠はない。また,被告プログラムを翻案する行為には,広範かつ多様な態様があり得るものと考えられる。ところが,原告の上記請求は,差止めの対象となる行為を具体的に特定することなく,上記のとおり広範かつ多様な態様を含み得る「翻案」に当たる行為のすべてを差止めの対象とするものであるところ,このように無限定な内容の行為について,被告らがこれを行うおそれがあるものとして差止めの必要性を認めることはできないというべきである。
<平成230128日東京地方裁判所[平成20()11762]>

被告侵害仏画が,いずれも彩色画又は紺地金泥画であり,細部まで描き込まれたものであるのに対し,被告の制作に係る線描画が,いずれも細部における表現を省略又は簡略化したものであり,原告仏画を複製又は翻案したものと認められないものであることに鑑み,被告侵害仏画の塗り絵用下絵が制作される可能性があるとしても,これが,原告らの著作権法28条に基づく二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(複製権,翻案権)を侵害するものであるとは認められず,上記塗り絵用下絵の制作の差止めを認めることはできない。
<平成241226日東京地方裁判所[平成21()26053]>

1審原告は,原告製品に係る翻案権に基づき,1審被告に対し,被告製品(当初版・2006年版),被告製品(現行版)及び被告製品(新版)の翻案の差止めを請求している。
そこで検討するに,著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものであり,このような翻案行為の態様は,複製行為と比べると,広範かつ多様なものがあり得ると解されるところ,1審原告の請求は,差止めの対象となる被告製品の翻案行為を具体的な態様のものに特定するものではないから,「翻案」に当たる全ての態様の行為を差止めの対象とするものといえる。
しかるところ,1審被告について,このように行為態様が無限定な内容の翻案行為について差止めの必要性があるものと認めることはできないから,1審原告の翻案の差止請求は理由がない。
<平成28119日知的財産高等裁判所[平成26()10038]>

原告表現物を複製又は翻案する行為には,広範かつ多様な行為があるところ,原告の請求は,絵画の著作物である原告表現物を絵画上複製するという行為がされていない本件において,差止めの対象となる行為を具体的に特定することなく,広範かつ多様な態様な行為のすべてを差止めの対象とするものといえ,自動公衆送信又は送信可能化の差止めについても,その差止めの対象自体を複製物又は翻案物とすることから,同様のものといえる。このような無限定な内容の行為について,被告会社がこれを行うおそれがあるものとして差止めの必要性を認めるに足りる立証はされていない。
<平成30927日東京地方裁判所[平成29()6293]>

【差止請求権の代位行使の可否】

上記契約書の条項によれば,原告との間の契約については,①「著作権管理契約書」と題されたものであり,②Aが原告に対してオリジナル人形の著作権の利用許諾をライセンシーに与える権限を授与する旨の条項(1条,3条)のほか,ライセンシーへの許諾についての細目を定める条項が置かれているが,原告自身がオリジナル人形の複製物を製造又は販売することを前提とした条項は全く置かれておらず,③原告は,ライセンシーから受領した使用料の中から,一定割合の金銭を自己の報酬として控除した残額をAに送金することとされており(9条,10条),日本におけるオリジナル人形の著作権の利用による売上げの多寡について,原告自身は全く危険を負わないこととなっている。
これらの点に照らせば,オリジナル人形の著作権につき,原告が上記契約によりAから授与された権限は,日本におけるライセンシーを開拓し,ライセンシーに対してAに代わって著作権の利用を許諾し,ライセンシーからロイヤリティを受領してAに送金するということに尽きるものであって,原告自身がオリジナル人形の複製物の製造ないし販売をすることにつき許諾を受けることは全く内容とされていない。
(著作権に基づく侵害差止請求権の代位行使の可否)
ところで,著作権者から著作物の独占的使用許諾を得ている使用権者については,著作権者に代位して当該著作物の著作権に基づく侵害差止請求権を行使することができるという見解が存在する。これは,特許権における独占的通常実施権者が特許権者に代位して特許権に基づく侵害差止請求権を行使することができるとの見解にならって提唱されているものと解されるが,著作物の独占的使用許諾を得ている使用権者であれば,特許権における独占的通常実施権者と同様に,当該著作物の模倣品の販売等の侵害行為により直接自己の営業上の利益を害されることから,独占的使用権に基づく自らの利益を守るために,著作権者に代位して侵害者に対して著作権に基づく差止請求権を行使することを認める余地がないとはいえない。
しかしながら,本件においては,原告は,上記認定のとおり,オリジナル人形につき,著作権者から著作権の独占的な利用許諾を得ている者ではなく,単にライセンシーに対する許諾付与業務及びライセンシーからのロイヤリティの徴収業務を委任されているというだけであり,オリジナル人形の著作権を侵害する模倣品等が販売されたとしても,それにより直接自己の営業上の利益を害される関係にあるものではない。したがって,原告が,Aに代位してオリジナル人形の著作権に基づく差止請求権を行使することは,認められないというべきである。
なお,仮に,原告とAの間の上記契約12条【注:「(原告)はAの著作権を侵害する可能性のある者には,利用許諾を与えてはならない。(原告)が日本においてAの著作権の侵害又は侵害のおそれを発見した場合には,(原告)はAに通知し,当該侵害から著作権を防御するようすべての可能な手続を進めるものとする。侵害の場合には,本契約の当事者は,著作権を防御するために合理的な手段を講じるよう協力しなければならない。」と規定されている】を,Aの著作権に基づく侵害差止請求権を原告が行使することを認めた条項と解することができるとしても,そのように著作権に基づく差止請求権について著作権者が契約により他者に行使させることを認めることは,弁護士法72条において弁護士以外の者の法律事務の取扱いが禁じられ,信託法においても訴訟信託が禁止されていること(信託法11条),及び,著作権等管理事業法上,著作権等の管理事業を営もうとする団体が登録制とされて種々の義務を負うなど事業上一定の制約を受けるものとされていること等の法制度の趣旨に反するものといわざるを得ない。したがって,上記契約の条項を根拠に,Aから契約上その権限が付与されているとして,原告がAの著作権に基づく差止請求権を行使することも,認められない。
したがって,いずれにしても,原告がAの著作権に基づく差止請求権を行使することは認められないというべきである。
<平成140131日東京地方裁判所[平成13()12516]>

【「侵害停止予防の必要措置」(法1122項)該当性】

被告書籍は、ほぼその全体にわたり、原告著作物を複製したもので、しかも複製部分は被告書籍のかなりの部分を占めるから、右複製部分を削除した上で被告書籍を発行することは不可能ということができる。したがって、原告は、被告書籍の全体の印刷、製本、販売及び頒布の差止めを求めることができるというべきである。
(略)
著作権法1122項は、「侵害の行為を組成した物、侵害の行為によって作成された物又はもっぱら侵害の行為に供された機械若しくは器具の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置を請求することができる。」と規定しているところ、被告書籍の印刷、製本、販売及び頒布の禁止並びに被告書籍の廃棄はもちろん、訴外会社(同社は被告会社の委託により被告書籍を卸売、小売していることが認められる。)から回収して廃棄すること、被告書籍の半製品及びその印刷の用に供した原版フィルムの廃棄、その原稿の電磁的記録が入力されているMOディスクその他の記録媒体から右記録を消去することは、いずれも、同項所定の侵害の停止又は予防に必要な措置と解されるから、これらを求める原告の請求は、いずれも理由がある。
<平成130123日東京地方裁判所[平成11()13552]>

被告の設置したカラオケ装置は,原告の管理著作物を演奏する目的で使用されており,それ以外の音楽著作物を演奏することはほとんどなかったと認められるので,カラオケ装置は,著作権法1122項にいう「もっぱら侵害の行為に供された機械」に相当し,撤去請求の対象となると解するのが相当である。この点につき,被告は,今後カラオケ装置を使用する予定はないと主張するが,差止め等の必要性がないというためには,単に主観的な言明のみでは足りず,侵害のおそれがないことを保障する客観的な状況を必要とするところ,被告は,カラオケを使用できなくなったことにより客が来店しなくなったと主張する一方,本件店舗の営業を継続していることに照らすと,本件についてはなお差止め及び侵害行為に使用した物件を撤去する必要性があると認められる。
<平成131001日名古屋地方裁判所[平成13()3153]>

本件店舗は、社交飲食店であると認められるところ、その営業の性質と、被告が平成1425日から継続して管理著作物を使用してきたことに照らせば、被告が、将来にわたって、前記の方法により、管理著作物を使用し続ける蓋然性は高いものと認められる。
よって、原告の、①奏者をしてエレクトーン、シンセサイザーその他の楽器により演奏させる方法、②奏者による楽器の伴奏に合わせて客又は従業員をして歌唱させる方法、及び、③カラオケ機器を操作して歌詞の文字表示を再生する方法による、管理著作物の使用差止めの請求は、理由がある。
本件店舗において、前記の方法により使用されている楽曲は、少なくともその過半数が管理著作物であると認められ、本件店舗内に設置されている別紙物件は、上記方法による管理著作物である楽曲の使用において用いられるものと認められ、また、別紙物件が、楽曲演奏や歌唱時の伴奏、歌唱時の楽曲の歌詞の文字表示以外の用途に用いられていることは、主張上も証拠上もうかがわれない。
以上に照らせば、被告による管理著作物の使用による著作権侵害行為の停止及び予防に必要な措置として、別紙物件の本件店舗からの撤去を求める原告の請求は、理由がある。
原告が再三にわたって著作物利用許諾契約の締結を促しても、被告が応じてこなかったという経緯に照らせば、被告が、判決により管理著作物の使用を差し止められても、これに従わず、また、別紙物件を本件店舗から撤去されても、別のエレクトーン、シンセサイザー等の楽器類やカラオケ機器を搬入して、管理著作物の使用を継続するおそれは高いものといわざるを得ない。
よって、原告の、本件店舗へのエレクトーン、シンセサイザーその他の楽器類並びにマイク、アンプ、スピーカー及びモニターテレビ等の組み合せからなるカラオケ機器の搬入差止めの請求は理由がある。
<平成180206日大阪地方裁判所[平成17()7734]>

被告書籍は,本文459頁及び索引そのほか120頁で構成されており,原告絵画の複製物が被告書籍の258頁下欄に掲載されていることは上記のとおりである。原告は,被告書籍全体の廃棄を求めているものの,原告の著作権を侵害するのは上記頁だけであるから,著作権侵害行為の停止又は予防に必要な措置としては,被告書籍の上記頁中,原告絵画を複製して掲載した部分の廃棄を認めることで十分であり,被告書籍全体の廃棄を認める必要はない。
<平成180323日東京地方裁判所[平成17()10790]>

被告書籍の総頁数は238頁であり,著作権侵害が認められた箇所は,第2章のうち0.5頁,第4章のうち2頁,第5章のうち3頁,第6章のうち2.5頁の合計8頁であることが認められる。
以上のとおり,原告書籍等の著作権を侵害している箇所は,被告書籍の一部分である。しかし,被告書籍が著作権侵害箇所を掲載して,全体として一冊の本として出版発行されている限りは,被告書籍の出版により,原告らの意思に反して原告書籍等の無断複製物ないし翻案物を頒布又は販売することになるのであるから,著作権侵害箇所を掲載した被告書籍の印刷・出版発行の差止めを認めざるを得ない。ただし,著作権侵害箇所とその余の箇所は可分であり,被告書籍の大半を占める部分は,原告らの著作権を侵害しない部分であることからすれば,原告らの著作権を侵害している箇所に限って,その廃棄が認められるというべきである。
<平成190830日東京地方裁判所[平成18()5752]>
【控訴審<平成200212日知的財産高等裁判所[平成19()10079]>も同旨

本件店舗におけるピアノ演奏で演奏された楽曲のほとんどは管理著作物であったことが認められるから,本件店舗に備え置かれたピアノは,主として1審原告の演奏権を侵害する管理著作物の無断演奏に使用されていたと認められる。もちろん,ピアノは,本来,管理著作物以外の楽曲の演奏の用にも供し得るものではあるが,現実の使用態様が主として管理著作物の無断演奏に供されるもので,その状態が今後も継続するおそれがある場合に,1審原告がその撤去を求めることは,本件店舗における1審被告による演奏権の侵害を停止又は予防するために必要な行為に該当する(著作権法1122項)。
(略)
他方,1審原告が撤去を求めるその他の楽器,すなわちウッドベース,ドラムセット,ギター,パーカッション,ベースについては,ライブ奏者であれば自ら使用する楽器を持参し,本件店舗備え付けの楽器は使わない場合も多いと推認され,また,これらの楽器が貸切営業においても使用される可能性が否定できず,専ら著作権侵害の行為に供された機械又は器具であるとまでは認めることができない。
<平成200917日大阪高等裁判所[平成19()735]>

原告は,著作権法112条2項に定める著作権等の侵害の予防に必要な措置として,本件各写真等のデータの廃棄に加えて,その実態の報告,紙媒体による侵害の有無に係る調査及び報告を求めるが,本件各写真等のデータの廃棄を超えて,被告にそのような調査及び報告をさせることが本件各写真等の複製及び公衆送信に係る差止請求権の実現のために必要な範囲内のものであるとはいえないから,上記のような調査及び報告の必要性を認めることはできない。
<令和元年918日東京地方裁判所[平成30()14843]>

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