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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

複製の射程範囲

【「複製」の意義】

著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいうと解すべきである(。)
<昭和5397最高裁判所第一小法廷[昭和50()324]>

既存の著作物に依拠し,その表現上の本質的な特徴の同一性のあるものを作成する行為のうち,新たな思想又は感情の創作的な表現が加えられていない場合は,複製に当たる。
<平成170428日大阪高等裁判所[平成16()3684]>

既存の著作物につき,その表現上の本質的な特徴を損なわない限度において,具体的表現に修正,増減,変更等の改変を加えた場合,当該改変により,思想又は感情の創作的な表現が新たに加わり,二次的著作物が創作されるに至っていなければ,それは既存の著作物からの改変があったとしても,「複製」(著作権法2条1項15号)であると評価される(。)
<平成28627日知的財産高等裁判所[平成28()10005]>

著作物の複製とは,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表現することなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうと解するのが相当である。
<平成281110日知的財産高等裁判所[平成28()10050]>

「盗作」とは,一般に,他人の作品の全部又は一部を自分の作品として発表することをいうが,これを著作権法上他人の著作権に触れる行為に当たるか否かという観点から定義すると,「他人の既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを,無断で,自己の作品中に再製させること」と解される。
<平成131011日東京地方裁判所[平成12()2772]>

【複製の作成部数】

著作権法21条は,「著作者は,その著作物を複製する権利を専有する。」と規定し,著作権者が著作物を複製する排他的な権利を有することを定めている。その趣旨は,複製(有形的再製)によって著作物の複製物が作成されると,これが反復して利用される可能性・蓋然性があるから,著作物の複製(有形的再製)それ自体を著作権者の排他的な権利としたものと解される。
そうすると,著作権法上の「複製」は,有形的再製それ自体をいうのであり,有形的再製後の著作物及び複製物の個数によって複製の有無が左右されるものではない(。)
<平成250930日東京地方裁判所[平成24()33525]>

本件サービスにおいては,書籍をスキャナーで読みとり,電子化されたファイルが作成されており,著作物である書籍についての有形的再製が行われていることは明らかであるから,複製行為が存在するということができるのであって,有形的再製後の著作物及び複製物の個数によって「複製」の有無が左右されるものではない。
<平成261022日知的財産高等裁判所[平成25()10089]>

【複製と他の利用行為】

複製物の利用目的がない複製行為であっても,複製権の侵害となり得る場合があることは明らかである(。)
<平成190530日東京地方裁判所[平成17()24929]>

【一部複製】

言語の著作物の複製ないし翻案は,当該著作物の一部についても成立し得るというべきである。しかし,そもそも複製ないし翻案は「著作物」を基に行われるものであるから(著作権法21条,27条),複製ないし翻案されたと主張される当該部分が,その部分だけで独立して,著作権法211号にいう著作物であると認められることが必要となるのは,当然というべきである。
<平成130927日東京高等裁判所[平成13()542]>

著作物の複製とは,著作物に依拠して,その表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを有形的に再製する行為をいい,著作物の全部ではなく,その一部を有形的に再製する場合であっても,当該部分に創作的な表現が含まれており,独立した著作物性が認められるのであれば,複製に該当するものと解される。
<令和元年1226日知的財産高等裁判所[令和1()10048]>

そもそも,ある作品等の一部につき,複製等がされたとして著作権侵害を主張する場合においては,当該作品等の全体が著作物に該当するのみでは足りず,侵害を主張する部分自体が思想又は感情を表現したものに当たり,かつ,当該部分のみから,作成者の個性が表現として感得できるものであることを要するものと解するべきである(。)
<平成240928日東京地方裁判所[平成23()1434]>

【同一性の程度】

著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいうところ(最高裁昭和5397日第一小法廷判決参照)、複製というためには、第三者の作品が漫画の特定の画面に描かれた登場人物の絵と細部まで一致することを要するものではなく、その特徴から当該登場人物を描いたものであることを知り得るものであれば足りるというべきである。
<平成9717 最高裁判所第一小法廷[平成4()1443]>

著作物の複製(著作権法21条,2115号)とは,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいう(最高裁昭和5397日第一小法廷判決参照)。ここで,再製とは,既存の著作物と同一性のあるものを作成することをいうと解すべきであるが,同一性の程度については,完全に同一である場合のみではなく,多少の修正増減があっても著作物の同一性を損なうことのない,すなわち実質的に同一である場合も含むと解すべきである。
<平成170517日東京地方裁判所[平成15()12551]>

著作物複製の有無は、創作にかかる具体的表現が製作物中に利用されたか否かにあり、末節において多少の修正等が施されていても、当該作品が原作の再現と感知させるものはなお複製とみるのが相当であ(る。)
<昭和540709日神戸地方裁判所姫路支部[昭和49()291]>

同一性の判断にあたっては、複製であると主張されている被告図面と原告図面を比較することになるが、その際、両図面が全く同じであることは必要でなく、原告図面の内容及び形式を覚知させるに足る同一性があれば、同一性の要件を満たすものといえる。したがって、異なる部分があったとしても、それが、量的あるいは質的に微細であって、図面全体の同一性が損なわれる程度のものでなければ、右部分の存在は、同一性ありとの判断に影響を及ぼすものではない。
逆に、同じ部分があるとしても、異なる部分の存在により、量的あるいは質的に別の著作と観念される程度に至ったものは、複製ということはできない。
<平成120308日名古屋地方裁判所[平成4()2130]>

【同一性の検討方法】

複製権侵害が認められるためには、被告ソフトの表示画面と原告ソフトの表示画面とが実質的に同一であること、換言すれば、被告ソフトの表示画面から原告ソフトの表示画面の創作的表現形式が直接覚知、感得できなければならないと解されるが、そのように評価できるためには、少なくとも、両表示画面の共通する表現形式において、原告ソフトの著作者の思想又は感情が創作的に表現されていなければならないというべきである。そこで、原告ソフトの表示画面において、思想又は感情が創作的に表現されているかどうかは、被告ソフトの表示画面から原告ソフトの創作的な表現形式を直接覚知、感得することができるかどうかを検討するに当たって、両表示画面の共通する表現形式を抽出した後に、当該共通する表現について検討することとする。
<平成120330日大阪地方裁判所[平成10()13577]>

複製権の侵害が問題とされる場合には,当該表現物と複製物と主張されている対象物のうち,同一性を有する部分の創作性の有無が検討されるのであるから,プログラムを複製されたと主張する場合には,自己のプログラムの表現上の創作性を有する部分と,対象プログラムの表現との同一性が認められることを主張する必要がある。すなわち,複製物であると主張する対象において,アイディアなどの表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,同一性を有するにすぎない場合には,既存の著作物の複製に当たらない(最高裁平成13628日第一小法廷判決参照)ことから,通常,表現の同一性のある部分を抽出して,同部分の表現の創作性の有無を検討することによって,著作物性及び複製権侵害の有無が並行して判断されるのである。
<平成191128日東京地方裁判所[平成19()7380]>

【彫刻の鋳型製造】

被告は,平成10年ころから,高岡市内の会社が「ロストワックス鋳造法」(作家が制作した原型を鋳物として,ロウで型をとって鋳型を製造し,原型と同じものをブロンズで複製する鋳造法。複雑な原型でも精巧に複製でき,鋳型さえ作れば安価に大量生産が可能であるという利点がある一方で,複製品が,原型よりも1000分の20収縮するという欠点がある。)により無断で複製したブロンズ像を,渡辺美術の名称で販売していた【管理人注:被告の当該行為を「著作権(複製権)の侵害行為に当たる」と認定した】。
<令和2114日大阪地方裁判所[平成30()7538]>

【画像の精度や大きさ等】

本件写真には,複数の人物が表示されているが,画像が不鮮明であることからその詳細は不明であり,原告表現物に類似するとは認められない。
<平成30927日東京地方裁判所[平成29()6293]>

被告プロフィール画像として表示される画像の画質が粗いため,本件写真の上記各部分の本質的特徴を感得することができないとはいえない。
<令和元年1226日知的財産高等裁判所[令和1()10048]>

被告各写真は,いずれも,本件各写真と画素数が異なるとしても,被告ウェブサイト上で販売対象である本件各商品の形態を示すものとして掲載されており,限定的な大きさで表示されるものとして作成されたと推認され,実際にそのように表示されていると認められることからすれば,本件各写真に修正等を加えた新たな創作的表現であるというのではなく,本件各写真と実質的に同一のものとして,本件各写真に依拠して有形的に再製されたものであると認めることができる。
<令和元年918日東京地方裁判所[平成30()14843]>

ポジ写真のデジタルデータ化

職業写真家が撮影したポジ写真を,CD-ROMに収録するためにA3サイズに拡大印刷しても明瞭さが維持できる程度の高解像度(約350dpi/120mm×95mm)のデジタル画像データにする行為は,ポジ写真をその内容において実質的同一性を維持したままデジタル画像データにする行為であるから,ポジ写真の複製行為ということができる。
(略)
また,当初の写真と比較して,撮影の構図,撮影対象の配置等を変えずに,また,カンプやプレゼンテーションのためであれば特段使用に支障が生じない程度の低解像度(約72dpi/120mm×95mm)の本件ウェブ用画像データを作成して本件ウェブサイトに掲載する行為は,外面的に表現形式が変化するものではなく,また,表現についての本質的な部分を変更するものではないから,やはりポジ写真と実質的に同一の別のデジタル画像データを作成する行為というべきであり,ポジ写真の複製行為ということができる。
<平成170329日大阪地方裁判所[平成14()4484]>

被告が,本件交付ポジフィルム写真の一部について,デジタルデータ化し,サーバに蓄積する過程で,CD-ROMに保存した事実は,当事者間に争いがなく,これによれば,デジタルデータ化の作業を行って,その結果得られた本件デジタルデータをハードディスクその他の記憶媒体に保存したこと,更にCD-ROMにも保存したことは,いずれも上記ポジフィルム写真に係る複製権を侵害するものであると認められる。
<平成190530日東京地方裁判所[平成17()24929]>

音楽CDのMP3形式への変換

音楽CDをMP3形式へ変換する行為は,聴覚上の音質の劣化を抑えつつ,デジタル信号のデータ量を圧縮するものであり,変換された音楽CDと変換したMP3形式との間には,内容において実質的な同一性が認められるから,レコードの複製行為ということができる。したがって,音楽CDをMP3形式で複製することは,同音楽CDに複製された音楽の著作物の複製行為である。
<平成150129日東京地方裁判所[平成14()4237]>

【オブジェクトプログラムのROMへの収納】

本件オブジエクトプログラムは本件プログラムの複製物に当たり、訴外○○らの本件オブジエクトプログラムを他のROMに収納した行為は、本件プログラムの複製物から更に複製物を作出したことに当たるから著作物である本件プログラムを有形的に再製するものとして複製に該当する。
<昭和571206日東京地方裁判所[昭和54()10867]>

本件オブジエクト・プログラムは本件プログラムに用いられているアツセンブリ言語を開発用コンピユーターを用いて機械語に変換し、ROMに収納したものであり、右変換は機械的に行われることが認められ、そうすると本件オブジエクト・プログラムは本件プログラムの複製物にあたるということができる。そして、被告が本件オブジエクト・プログラムを原告のROMから取り出し、その一部を改変して本件PC基板のROMに収納する行為は、結局本件プログラムの複製物を有形的に再製するものとして本件プログラムの複製に該当するというべきである。
<昭和590126日大阪地方裁判所[昭和57()4419]>

RAMへのデータ等の蓄積】

著作権法における「複製」とは、「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」を意味し(同法2115号)、プログラムやデータを磁気ディスクやCD-ROMに電子的に記録し、コンピュータの出力装置等を介して再生することが可能な状態にすることも、右「複製」に含まれることは明らかである。
ところで、RAM(ランダム・アクセス・メモリー)とは、コンピュータにおける作業データ等を保存する集積回路であり、一般に「メモリー」と称されるものである。通常、コンピュータ上でデータ等を処理する際には、ハードディスク等のファイルからデータ等がRAMに移され、作業時にはコンピュータの中央演算処理ユニット(CPU)によってRAM上のデータ等が処理され、処理が終了してファイルが閉じられると右データ等はRAMから元のハードディスク等に再び移されることになる。このように、RAMにおけるデータ等の蓄積は、一般に、コンピュータ上での処理作業のためその間に限って行われるものであり、また、RAMにおけるデータ等の保持には通電状態にあることが必要とされ、コンピュータの電源が切れるとRAM内のデータはすべて失われることになる。右のような意味において、RAMにおけるデータ等の蓄積は、一時的・過渡的なものということができ、通電状態になくてもデータ等が失われることのない磁気ディスクやCD-ROMへの格納とは異なった特徴を有するものといえる。
そこで、RAMにおけるデータ等の蓄積について、右のような特徴を踏まえた上で、著作権法上の「複製」に当たるか否かについて検討することとする。
著作権法は、著作物を利用する行為のうち、無形的な利用行為については、公になされるものに限って、著作者が右行為を行う権利を専有するものとし(同法22条ないし26条の2)、他方、有形的な再製行為(複製)については、それが公になされるか否かにかかわらず、著作者が右行為を行う権利を専有するものとしている(同法21条)。すなわち、著作権法は、著作物の有形的な再製行為については、たとえそれがコピーを一部作成するのみで公の利用を予定しないものであっても、原則として著作者の排他的権利を侵害するものとしているのであり、前記のような著作物の無形的な利用行為の場合にはみられない広範な権利を著作者に認めていることになるが、これは、いったん著作物の有形的な再製物が作成されると、それが将来反復して使用される可能性が生じることになるから、右再製自体が公のものでなくとも、右のように反復して使用される可能性のある再製物の作成自体に対して、予防的に著作者の権利を及ぼすことが相当であるとの判断に基づくものと解される。
そして、右のような複製権に関する著作権法の規定の趣旨からすれば、著作権法上の「複製」、すなわち「有形的な再製」に当たるというためには、将来反復して使用される可能性のある形態の再製物を作成するものであることが必要であると解すべきところ、RAMにおけるデータ等の蓄積は、前記記載のとおり一時的・過渡的な性質を有するものであるから、RAM上の蓄積物が将来反復して使用される可能性のある形態の再製物といえないことは、社会通念に照らし明らかというべきであり、したがって、RAMにおけるデータ等の蓄積は、著作権法上の「複製」には当たらないものといえる。
右のような結論は、次に述べるとおり、プログラム(著作権法2110号の2)に係る著作者の権利に関する著作権法の規定との関係からも裏付けられる。
すなわち、プログラムをコンピュータ上で使用するに当たっては、これをいったんコンピュータ内のRAMに蓄積すること(ローディング)が不可欠であるから、プログラムの使用行為とそのRAMへの蓄積行為とは、不可分一体の関係にあるといえるところ、著作権法は、プログラム著作物に関して、著作者がこれを使用する権利を専有する旨の規定を置いていない。しかも、同法1132項は、「プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によって作成された複製物を業務上電子計算機において使用する行為は、これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知っていた場合に限り、当該著作権を侵害する行為とみなす。」と規定しているところ、同条項は、プログラムを使用する行為のうち、一定の要件を満たすものに限って、プログラムに係る著作権を侵害する行為とみなすというものであるから、プログラムを使用する行為一般が著作権法上本来的には著作権侵害にならないことを当然の前提としているということになる。してみると、著作権法は、プログラムの使用行為及びこれと不可分一体の関係にあるプログラムのRAMへの蓄積行為については、同法1132項の場合を除いて、違法でないとの前提に立っているものと解されるところ、その理由は、RAMへの蓄積行為が前記のような一時的・過渡的な性質であるため、著作権法上の「複製」に当たらないことにあると解するのが相当である。
<平成120516日東京地方裁判所[平成10()17018]>

【その他】

原告は,被告がブラウザを用いて本件プログラムにアクセスし,その情報を被告のパソコンのモニタに表示させ,表示された情報のスクリーンショットを撮り,当該スクリーンショットの画像ファイルを紙である別件乙3に印刷したことが,プログラムの著作物である本件プログラムの複製に当たると主張する。
法にいう「複製」とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製することをいうが(法2115号),著作物を有形的に再製したというためには,既存の著作物の創作性のある部分が再製物に再現されていることが必要である。
これを本件についてみると,紙である別件乙3に記載されているのは画像であって,その画像からは本件プログラムの創作性のある部分(指令の表現自体,その指令の表現の組合せ,その表現順序からなる部分)を読み取ることはできず,本件プログラムの創作性のある部分が画像に再現されているということはできないから,別件乙3の印刷が本件プログラムの複製に当たるということはできない。 <平成241130日 東京地方裁判所[平成24()15034]>

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