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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

改変性の個別事例②

【イラスト】

本件利用の具体的内容は、翼竜を切除し、ティラノサウルスについて、全体の色調を黄、赤系統の色調に変更し、首から背にかけて連続した突起物を加えるなどして輪郭を変え、写実的かつ緻密に描かれていた目、鼻孔、口腔、舌、歯、足、爪等をぼかし、肌の襞の模様や陰影をはっきりと判別できず、かえって別個の模様を浮き上がらせるようなものにしている。しかし、本件著作物における、首を捻り右正面を向いて大きく口を開け歯をむき出したティラノサウルスという基本的な構図、その輪郭、目、鼻孔、口腔、舌、歯、足、爪等の細部の描写自体は残存したままである。
右認定の事実によれば、○○は、本件利用によって、本件著作物の表現を変更しあるいは一部切除してこれを改変したものと認めるのが相当である。したがって、本件利用は、著作者である被控訴人の承諾又は著作権法の定める適用除外規定に該当する事由がない限り、本件著作物について被控訴人が有する同一性保持権を侵害するものというべきである。
<平成110921日東京高等裁判所[平成10()5108]>

原告イラストは,①「特徴に乏しい建物」,羽が小さく脚部が二本の風車が,それぞれ描かれ,②境界線を曖昧にして,にじみだすような筆致で,各名所旧跡をデフォルメして描かれているのに対して,被告イラストは,①パゴダ風の建物,イスラム風の建物,万里の長城,雲,羽が大きく脚部が台形状の風車が,それぞれ描かれ,②シャープな描線が用いられ,個々の名所旧跡も写実的に表現されている点において,相違する。
(略)
原告は,原告イラストの作成に当たり,個々のイラストについて,すべての境界線が曖昧な,にじみだすような筆致で描き,メルヘン的な雰囲気を醸し出すことにより,主題を強調しようとしていることがうかがわれる。これに対し,被告らは,被告イラストを作成するに当たり,原告イラストの筆致を変更したり,個々のイラストの内容を一部変更するなどした。
したがって,被告イラストを作成し,これを使用して被告新聞広告を掲載した行為は,原告イラストの表現に変更,切除その他の改変を加えているので,原告イラストについての原告が有する同一性保持権を侵害したものということができる。
<平成151112日東京地方裁判所[平成14()23479]>

一般に,イラストは,線描のみならず,その色調の違いのみによっても見る者に異なる印象を与えるから,色の選択は,基本的には,イラストレーターが自己の作風を表現するものとして,イラストレーターの人格的な利益に関わるというべきであり,本件各イラストの色を変更した被告○○の行為は,著作者である原告の意に反する改変に当たり,本件各イラストについての原告の同一性保持権を侵害したというべきである。
(略)
イラストの大きさ,特に,他のイラストとの関係で認識される相対的な大きさについても,色調と同様,その違いによって見る者に異なる印象を与えるから,その選択は,イラストレーターが自己の作風を表現するものとして,イラストレーターの人格的な利益に関わるものであるということができる。
<平成191116日東京地方裁判所[平成19()4822]>

原告は,本件書籍に使用された本件イラスト類1~6につきサイズの変更(縮小),色の変更及びトレーミング(トリミング。イラストの一部のカット)を行ったこと,本件イラスト類19につき大型ポスターとした上でシールを貼るための丸枠内に別の画像をはめ込んだことが原告の同一性保持権を侵害する旨主張する。
そこで判断するに,まず,本件イラスト類1~6については,原告主張のとおり大きさの変更等がされたと認められる一方,これらイラスト類は,小学校の社会科の授業で用いる教材のために紺瑠璃杯,五弦琵琶,安土城と城下町,矢じり等の道具,吉野ヶ里遺跡及び大仙古墳を描いたものであり,独立して観賞の対象とされるのではなく,他の多数のイラストや図表等と共に教材に掲載されること,カットされたのは安土城周辺の風景,木のクワの柄の一部,吉野ヶ里遺跡のうち左方の住居及び柵,大仙古墳周辺の住宅地等であり,サイズ変更及び一部カットの後も描かれた対象が安土城等であると認識できること,カラーからモノクロ又は2色刷りに変更されたのは社会科作業帳・6年生別冊資料などごく一部であること,以上の事実が認められる。
上記事実関係によれば,本件イラスト類の作成に当たっては,学習対象への児童の関心を引いて理解を深めるという教材の目的や,教材の限りある紙面に多数のイラスト等を掲載するという利用態様に照らし,掲載箇所の紙幅等を考慮してサイズや色を変更したり,一部をカットしたりすることが当然に想定されていたとみることができる。そうすると,本件イラスト類1~6につき上記のようにサイズを変更するなどした被告らの行為は同一性保持権の侵害に当たらないと判断するのが相当である。
次に,本件イラスト類19についてみるに,本件イラスト類19は,A4判の理科学習ノートの口絵部分に見開き(ほぼA3判の大きさ)で掲載するものとして,原告が被告らの依頼により作成したこと,動植物の四季の変化の様子を1枚に描いたものであり,シールを貼るための円形の枠が十数か所設けられていること,被告らは,これをA1判相当に拡大した上,上記の枠に替えて別の画像をイラスト中に埋め込んで,授業で使用できる掲示用資料(ポスター)を作成したことが認められる。
上記事実関係に照らすと,本件イラスト類19に加えられたサイズ及び画像の変更は,学習用教材であることを考慮しても,その内容及び程度に照らし原告の意に反する改変というほかない。したがって,本件イラスト類19については同一性保持権侵害が成立すると判断すべきものである。
<平成28623日東京地方裁判所[平成26()14093]>

被告イラストは,パンダの黒く示されている足及び耳について灰色の線で縁取られている部分があり,パンダの目の部分が黒一色で表され,白い部分がないほか,大きい方のパンダの耳の形が半円に近い形であり,2頭の鼻と口を示す線がより太く表されており,本件イラストと相違している部分があるところ,これらは原告に無断で変更されており,原告の意に反して変更されたと認められるから,被告行為は,原告の同一性保持権(著作権法20条1項)を侵害するものである。
<平成31313日東京地方裁判所[平成30()27253]>

【ゲームソフトに登場する人物の絵柄の変更】

本件ビデオは、本件ゲームソフト【注:架空の高校「きらめき高校」における恋愛シミュレーションゲーム。登場人物である藤崎詩織は、優等生的で清純なさわやかな印象を与える性格付けがされている。本件ゲームソフトにおいて藤崎詩織が性的行為を行うような場面は存在しない】において、男子生徒が藤崎詩織から愛の告白を受けた最終場面の続編として設定され、清純な女子高校生と性格付けられていた登場人物の藤崎詩織が、伝説の樹の下で、男子生徒との性行為を繰り返し行うという、露骨な性描写を内容とする、10分程度の成人向けのアニメーションビデオとして制作されている。
確かに、本件ビデオにおいては、藤崎詩織の名前が用いられていないが、①本件ビデオのパッケージにおける女子高校生の図柄と、本件ゲームソフトのパッケージにおける藤崎詩織の図柄とを対比すると、前記認定した共通の類似点がある他、さらに、後髪を向かって左側になびかせている点、首をやや左側に傾けている点、頭頂部に極く短い髪を描いている点、髪の毛に白色のハイライトを付けている点など細部に至るまで酷似していること、②本件ビデオのパッケージにおける「どぎまぎイマジネーション」というタイトルの選択、各文字のデザイン及び色彩、青い波形の背景デザインなど、本件ゲームソフトのパッケージにおける各部分と類似していること、③本件ビデオにおいて、「本当の気持ち、告白します。」と表記され、本件ゲームソフトとの関連性を連想させる説明がされていること等の事実から、本件ビデオの購入者は、右ビデオにおける女子高校生を藤崎詩織であると認識するものと解するのが相当である。
以上によると、被告は、本件ビデオにおいて、本件藤崎の図柄を、性行為を行う姿に改変しているというべきであり、原告の有する、本件藤崎の図柄に係る同一性保持権を侵害している。
<平成110830日東京地方裁判所[平成10()15575]>

【漫画コマ割りの配置の変更】

カット37において原カット()の配置が変更されていることは、著作権法201項にいう「改変」に当たるものである。
<平成120425日東京高等裁判所[平成11()4783]>

【劇場用映画】

著作者の人格的利益を害しない程度の変更は同一性保持権の侵害とはならないものと解すべきところ、一般的にいつて16ミリカラーフイルムを8ミリカラーフイルムに縮小したからといつて、これを映写した場合を考えると、16ミリカラーフイルムで表現された著作者の創作意図に変更を及ぼし、ひいて著作者の人格的利益を害するものとは解されない(。)
<昭和520228日東京地方裁判所[昭和44()1528]>

ビスタサイズの劇場映画をビデオに複製したり、テレビ放映するに際しては、トリミングしてスタンダードサイズに改変する必要があることは右に述べたとおりであるとしても、映画監督の了解なしに行って良いかどうかは別の問題である。一般に、映画監督は、撮影する映画の視聴者に与える影響等を考慮して、スタンダードサイズとするか、ビスタサイズとするか、シネマスコープサイズとするかを考慮した上で選択しているものであり、そのサイズの改変は、当該映画の映画監督が事前又は事後に了解を与えていた場合や、同意を得ないでの改変も正当化されるような特段の事情が認められない限り、著作権法201項に規定する「意に反」する「改変」に該当し、監督の著作者人格権を侵害するものであるからである。
(略)
控訴人は、本件映画がビデオ化されること、ビデオ化される際には、トリミングが行われることについて了解を与えていたこと、ビスタサイズの映画がビデオ化される際には、スタンダードサイズにトリミングされることが当時では通常であったこと、Aが、本件映画の製作総指揮として、本件映画の編集、ダビング、特殊撮影や、合成部分の仕上げ等の業務を行い、このようなAの編集等の参与について控訴人が特段の異議も述べていなかった事情を総合すると、本件改変行為当時としては、Aが、監督としての控訴人の了解を得ないでトリミングをしても差し支えないと判断し、その行為に出たとしても、本件改変行為当時としては、その行為は、妥当なものでなかったということはできず、著作権法2024号の「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」に該当するものと認めるのが相当である。
(略)
一般に、テレビ・コマーシャルの挿入が必要であるとしても、著作者である監督の了解を得ないで行われたその挿入は、当然に正当化されるものではなく、その挿入の回数、時間、挿入箇所等の内容によっては、当該劇場映画が視聴者に与える印象に影響を及ぼすものと認められるから、その態様如何によっては、著作権法201項に規定する「意に反」する「改変」に該当する場合があると解される。本件では、具体的なテレビ・コマーシャルの挿入箇所の指定につき、Aが、控訴人の了解を得たことを的確に認めることのできる証拠はない。
しかし、本件では、控訴人が本件映画のビデオ化、テレビ放映などの二次的利用を広く承諾していたものであり、その中には、当然、民間放送でのテレビ放映も含まれ、しかも、テレビ放映の際の6箇所のテレビ・コマーシャルの挿入部分の指定も、前記トリミング及び改変と同様、本件映画の製作総指揮として編集等を実質的に取り仕切ったAにより慎重な配慮に基づいて行われたものであり、その回数、時間、挿入箇所等を併せ考えても、これらのテレビ・コマーシャルの挿入箇所の指定は、控訴人の了解の範囲内にあるものと認められるから、著作権法2024号に規定する「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ない改変」に該当するものと認めるのが相当である。
<平成100713日東京高等裁判所[平成7()3529]>

【記録映像】

被告らは,本件DVテープ【注:「本件映像」(原告が世界各地を取材してデジタルビデオテープ(テープ本数15本、撮影時間約25時間)に記録した世界の鉄道動画)が記録されたDVテープのこと】が膨大な量であることからすれば,これを編集することは,著作物の利用の目的及び態様に照らしてやむを得ない改変に該当する(著作権法2024号)と主張する。
しかしながら,本件映像は,元々,公表することや放送番組に利用することを予定して撮影されたものではなく,また,本件作品並びに本件DVDを作成するために,合計約25時間に及ぶ本件映像を取捨選択して,約46分間の映像に編集していることからすれば,このような編集行為が「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ない」改変に該当すると認められないことは,明らかであり,被告らの前記主張は,採用することができない。
したがって,本件映像を編集した本件DVDを作成することは,原告の本件映像についての同一性保持権を侵害すると認められる。
<平成220421日東京地方裁判所[平成20()36380]>

【ゲームソフト(特殊なメモリーカードの使用)】

本件ゲームソフトの影像は,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものとして,著作権法2条1項1号にいう著作物ということができるものであるところ,本件メモリーカードの使用は,本件ゲームソフトを改変し,被上告人の有する同一性保持権を侵害するものと解するのが相当である。けだし,本件ゲームソフトにおけるパラメータは,それによって主人公の人物像を表現するものであり,その変化に応じてストーリーが展開されるものであるところ,本件メモリーカードの使用によって,本件ゲームソフトにおいて設定されたパラメータによって表現される主人公の人物像が改変されるとともに,その結果,本件ゲームソフトのストーリーが本来予定された範囲を超えて展開され,ストーリーの改変をもたらすことになるからである。
<平成13213最高裁判所第三小法廷[平成11()955]>

本件編集ツールによって編集された本件メモリーカードを使用して,本件裸体画像を表示することは,本件ゲームソフト中の「かすみ」のコスチュームの映像を改変するものであって,原告の本件ゲームソフトに対して有する同一性保持権を侵害するものと解するのが相当である。なぜなら,通常市販されているメモリーカードを使用した場合には,「かすみ」の使用可能なコスチューム数の最大値は6であって,本件裸体画像を表示することはできないところ,本件メモリーカードを使用することによって,上記コスチューム数の制限を超え,本件裸体画像を表示することが可能になるからである。
<平成140830日東京地方裁判所[平成13()23818]>
【控訴審も同旨】
ユーザーが,通常にプレイした場合,対戦画面において「かすみ」が本件裸体影像で対戦相手と戦闘することはないのに対し,本件メモリーカードを使用すると,「かすみ」が本件裸体影像で対戦相手と戦闘することができるようになるものであり,これは,本件ゲームソフトの対戦画面の影像ないしゲーム展開が,本来予定された範囲を超えたものである。したがって,本件メモリーカードの使用は,本件ゲームソフトを改変し,本件同一性保持権を侵害するものというべきである(。)
<平成160331日東京高等裁判所[平成14()4763]>

モンタージユ写真(パロディー)

ところで、本件写真は、右のように本件モンタージユ写真に取り込み利用されているのであるが、利用されている本件写真の部分(以下「本件写真部分」という。)は、右改変の結果としてその外面的な表現形式の点において本件写真自体と同一ではなくなつたものの、本件写真の本質的な特徴を形成する雪の斜面を前記のようなシユプールを描いて滑降して来た六名のスキーヤーの部分及び山岳風景部分中、前者についてはその全部及び後者についてはなおその特徴をとどめるに足りる部分からなるものであるから、本件写真における表現形式上の本質的な特徴は、本件写真部分自体によつてもこれを感得することができるものである。そして、本件モンタージユ写真は、これを一瞥しただけで本件写真部分にスノータイヤの写真を付加することにより作成されたものであることを看取しうるものであるから、前記のようにシユプールを右タイヤの痕跡に見立て、シユプールの起点にあたる部分に巨大なスノータイヤ一個を配することによつて本件写真部分とタイヤとが相合して非現実的な世界を表現し、現実的な世界を表現する本件写真とは別個の思想、感情を表現するに至つているものであると見るとしても、なお本件モンタージユ写真から本件写真における本質的な特徴自体を直接感得することは十分できるものである。そうすると、本件写真の本質的な特徴は、本件写真部分が本件モンタージユ写真のなかに一体的に取り込み利用されている状態においてもそれ自体を直接感得しうるものであることが明らかであるから、被上告人のした前記のような本件写真の利用は、上告人が本件写真の著作者として保有する本件写真についての同一性保持権を侵害する改変であるといわなければならない。
のみならず、すでに述べたところからすれば、本件モンタージユ写真に取り込み利用されている本件写真部分は、本件モンタージユ写真の表現形式上前説示のように従たるものとして引用されているということはできないから、本件写真が本件モンタージユ写真中に法【注:旧著作権法】301項第2【注:現321項に相当】にいう意味で引用されているということもできないものである。そして、このことは、原審の確定した前示の事実、すなわち、本件モンタージユ写真作成の目的が本件写真を批判し世相を風刺することにあつたためその作成には本件写真の一部を引用することが必要であり、かつ、本件モンタージユ写真は、美術上の表現形式として今日社会的に受けいれられているフオト・モンタージユの技法に従つたものである、との事実によつても動かされるものではない。
そうすると、被上告人による本件モンタージユ写真の発行は、上告人の同意がない限り、上告人が本件写真の著作者として保有する著作者人格権を侵害するものであるといわなければならない。
なお、自己の著作物を創作するにあたり、他人の著作物を素材として利用することは勿論許されないことではないが、右他人の許諾なくして利用をすることが許されるのは、他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴をそれ自体として直接感得させないような態様においてこれを利用する場合に限られるのであり、したがつて、上告人の同意がない限り、本件モンタージユ写真の作成にあたりなされた本件写真の前記改変利用をもつて正当とすることはできないし、また、例えば、本件写真部分とスノータイヤの写真とを合成した奇抜な表現形式の点に着目して本件モンタージユ写真に創作性を肯定し、本件モンタージユ写真を一個の著作物であるとみることができるとしても、本件モンタージユ写真のなかに本件写真の表現形式における本質的な特徴を直接感得することができること前記のとおりである以上、本件モンタージユ写真は本件写真をその表現形式に改変を加えて利用するものであつて、本件写真の同一性を害するものであるとするに妨げないものである。
<昭和55328最高裁判所第三小法廷[昭和51()923]>

本件モンタージユ写真からは、本件写真の本質的な特徴部分、すなわち、雪の斜面をシユプールを描いて滑降してきた六名のスキーヤーの部分及び山岳風景の特徴部分を感得することができるものである。
右事実関係のもとにおいて、上告人が、被上告人の同意を得ないでした本件モンタージユ写真の作成、発表は、たとえ、本件モンタージユ写真がパロデイと評価されうるとしても、被上告人が著作者として有する本件写真の同一性保持権を侵害する改変であり、かつ、その著作者としての被上告人の氏名を表示しなかつた点において氏名表示権を侵害したものであつて、違法なものである、とした原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。
<昭和61530最高裁判所第二小法廷[昭和58()516]>

写真・画像】

本件著作物は本件ウェブサイト上に掲載するために撮影された肖像写真であって,被告による放送に先んじて既に本件ウェブサイト上に掲載され,公開されていたものであるところ,番組において本件著作物における顔の部分は改変されていないにしても,本件著作物が,日本の国旗とコロラド州旗を背景に,テンガロンハット(いわゆるカウボーイハット)をかぶり,西部独特のジャケットを着たA元総領事の上半身の写真であるのに対し,放映された写真の中には,A元総領事の肩から上の部分だけをトリミングしてその周りに黒っぽい色の楕円形の背景を配したものがあること,(中略)などの諸事情を総合すれば,被告の公衆送信及び本件各地方ネットワーク局の各公衆送信における本件著作物の氏名表示権及び同一性保持権の侵害による損害額(慰謝料)としては,60万円と認定するのが相当である。
<平成170324日東京高等裁判所[平成16()3565]>

被告は,何人かが本件写真を白黒にし,上下左右の一部を切除して作成された被告写真をそのまま複製したものである。しかし,著作物を一部改変して作成された同一性保持権を侵害する複製物をそのまま複製し,本件のように,自らのホームページに掲載する行為も,客観的には,著作物の改変行為であり,著作権法201項の同一性保持権侵害行為に当たるというべきである。
<平成190412日東京地方裁判所[平成18()15024]>

被告は,本件写真から被告各写真を作成するに際し,①被告写真1及び同3については,色調をカラーからモノクロに変更したこと,②被告写真1については,更に縦横の比率も変更されていること,③被告写真5については,後に被写体であるB議員の両目部分に目隠し様の白いテープを貼り付けたことをいずれも認めており,これらは著作者である原告の意に反する改変であると認められる。
<平成230209日東京地方裁判所[平成21()25767]>

本件各画像における色彩は,本件各画像の創作性を基礎づける重要な表現要素の一つであり,カラー画像である本件各画像を白黒画像に改変することは,著作者の許諾が認められない以上,著作者の意に反する改変(著作権法201項)に当たるものというべきである。
(略)
本件画像1における色彩及び色調の明暗は,その創作性を基礎づける重要な表現要素の一つであるから,著作者の許諾なくカラー画像である本件画像1を白黒画像にするとともに,明暗を反転させる改変を行うことは,著作者の意に反する改変(著作権法201項)に当たるものである。
(略)
控訴人は,図版や学術雑誌等とは異なる通常の単行本である控訴人書籍の編集上の必要性を根拠として,控訴人各画像における本件各画像の改変が,著作権法2024号の「やむを得ないと認められる改変」に当たる旨を主張する。
しかしながら,そもそも,控訴人各画像の控訴人書籍への掲載は,被控訴人の許諾なくその著作物たる本件各画像を複製するものであって,控訴人各画像を控訴人書籍に掲載すること自体が許されない行為であり,編集上の必要性なるものによって,本件各画像の改変が正当化されるべき理由はない。
<平成240425日知的財産高等裁判所[平成23()10089]>

被告は,原告が本件写真を画像データ化した原告画像をインターネットのウェブサイトからダウンロードし,原告画像の2羽のペンギンのうち,右側のペンギン及びその背景のみを切り出すトリミング処理をしたものと認められるから,被告の上記行為は,原告の同一性保持権の侵害に当たるものと認められる。
<令和元年1226日知的財産高等裁判所[令和1()10048]>

【写真集(編集著作物)】

控訴人は,本件写真集は対応する日付による花の写真の順序に殊の外意味があり,無作為に並べ替えるのではその意味が全く失われてしまう性格のものであるから,花の写真の配信が毎週1枚のみでしかも各配信日に対応すべき花の写真が用いられないことは同一性保持権侵害になると主張し,これに対し被控訴人は,著作権法20条の同一性保持権を侵害する行為とは他人の著作物における表現形式上の本質的特徴を維持しつつその外面的な表現形式に改変を加える行為をいい,他人の著作物を素材として利用してもその表現形式上の本質的特徴を感得させないような態様においてこれを利用する行為は同一性保持権を侵害しない,等と反論する。
よって検討するに,著作権法20条は同一性保持権について規定し,第1項で「著作者は,その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し,その意に反してこれらの変更,切除その他の改変を受けないものとする」と定めているところ,平成15527日ころまでに控訴人から本件写真集の個々の写真の著作物及び全体についての編集著作権の譲渡を受けた被控訴人が,各配信開始日に,概ね7枚に1枚の割合で,控訴人指定の応当日前後に(ただし,正確に対応しているわけではない)配信しているものであって,いわば編集著作物たる本件写真集につき公衆送信の方法によりその一部を使用しているものであり,その際に,控訴人から提供を受けた写真の内容に変更を加えたことはないものである。
そうすると,著作権法201項が「変更,切除その他の改変」と定めている以上,その文理的意味からして,被控訴人の上記配信行為が本件写真集に対する控訴人の同一性保持権を侵害したと認めることはできない(毎日別の写真を日めくりで配信すべきか否かは,基本的には控訴人と被控訴人間の契約関係において処理すべき問題であり,前記認定の事実関係からすると,そのような合意がなされたとまで認めることもできない)。
上記によれば,控訴人が被控訴人に譲渡した本件写真集は著作権法12条にいう編集著作物性を有するものの,被控訴人がなした上記配信行為が同法20条に基づき控訴人が有する同一性保持権を侵害したということはできない(。)
<平成200623日知的財産高等裁判所[平成20()10008]>

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