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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

編集著作物

【編集著作物性一般】

著作権法によって保護されるのが、「表現したもの」すなわち現実になされた具体的な表現のみであることからすれば、思想又は感情自体に保護が及ぶことがあり得ないのはもちろん、思想又は感情を創作的に表現するに当たって採用された手法や表現を生み出す本(もと)になったアイデア(着想)も、それ自体としては保護の対象とはなり得ないものというべきである。そして、この理は、対象が編集著作物であっても同様であると解すべきである。
すなわち、著作権法は、編集著作物について、「編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護する。」(121項)と規定しているものの、編集物もまた、「著作物」の一種にほかならず、そこでは、著作物性の根拠となる創作性の所在が素材の選択又は配列に求められているというだけで、前述した「著作物」の意義に鑑みれば、たとい素材の選択又は配列に関する「思想又は感情」あるいはその表現手法ないしアイデアに創作性があったとしても、それが「思想又は感情」あるいは表現手法ないしアイデア(以下、これらをまとめて「発想」ということがある。)の範囲にとどまる限りは、著作権法の保護を受けるものではなく、素材の選択又は配列が現実のものとして具体的に表現されて、はじめて、表現された限りにおいて、著作権法の保護の対象となるものと解すべきである。逆に、編集著作物にあっては、その素材の選択又は配列に関する発想において創作性を有しなくても、これに基づく現実の具体的な素材の選択又は配列に何らかの創作性が認められるなら、その限りにおいて著作権法の保護を受け得ることになるのである。
<平成121130日東京高等裁判所[平成10()3676]>

編集著作物とは、英語単語帳、職業別電話帳のように単なる事実、データーを素材にして編集したものか、百科事典、新聞・雑誌、論文集のように既存の著作物を素材にして編集したもので、一定の方針あるいは目的の下に多数の素材を収集し、分類・選択し、配列して作成された編集物でなければならない。従つて、本件で問題となつているような商業広告が編集著作物と認められるためには、例えば、多数の商業広告を収集して、一定の方針あるいは目的の下に分類・選択し、配列して作成された編集物でなければならず、本件広告のようにたつた一つの広告に過ぎないものは「編集物」とはいえず、編集著作物とは認められない。
<昭和600329日大阪地方裁判所[昭和58()1367]>

現行著作権法が「素材」との表現を用いたことにより、単なる事実、データ、用語等の選択・配列についても、創作性があれば、これに編集著作権を認めることができるようになったと考えられるのである。
<平成50830日東京地方裁判所[平成3()6310]>

素材の選択又は配列に創作性の認められる編集物が著作物として保護されるのは、素材の選択又は配列に著作者の個性が何らかの形で現れていれば、当該編集物としての思想又は感情の創作的表現が認められるためであると解されるところ、具体的な編集物に記載、表現されているものの内、その選択、配列の創作性が問題とされる素材が何であるか、どのような意味での選択、配列の創作性が問題となるかは、当該編集物の性質、内容によって定まるものである。
<平成100529日東京地方裁判所[平成7()5273]>

著作権法121項は、編集物でその素材の選択又は配列に創作性のあるものを著作物(編集著作物)として保護する旨を規定するが、これは、素材の選択・配列という知的創作活動の成果である具体的表現を保護するものであり、素材及びこれを選択・配列した結果である実在の編集物を離れて、抽象的な選択・配列方法を保護するものではない。当該編集物が何を素材としたものであるのかについては、当該編集物の用途、当該編集物における実際の表現形式等を総合して判断すべきである。
<平成120323日東京地方裁判所[平成11()16101]>

編集著作物における創作性とは,それが著作物(同法211号)として保護される趣旨及び効果等にかんがみると,当該編集物に従来見られないような高度の創作性が認められることまでを意味するものではないが,当該選択又は配列に編集者の創作活動とその成果が表れており,かつ,それが同種の編集物の分野においてありふれたものではないと認められる程度に当該編集物に特有の個性を帯有するものであることを要するものと解するのが相当である。
<平成190628日名古屋地方裁判所[平成18()3944]>

仮に,編集著作物における素材それ自体に価値が認められたり,素材の収集に労力を要するものであったとしても,素材それ自体が著作物として保護されるような場合を除き,それらの素材や労力が著作権法により保護されるものではない。したがって,仮に,原告がデータの収集に相当の労力を費やし,その保有するデータに一定の価値を認め得るものであるとしても,当該データ自体に著作物性が認められるものでない以上,それらの労力やデータが,原告各図表の編集著作物としての著作物性を根拠付けるものとはなり得(ない。)
<平成220127日東京地方裁判所[平成20()32148]>

著作権法により編集著作物として保護されるのは,著作権法121項に規定するとおり,編集物に具現された素材の選択又は配列における創作性であって,素材それ自体の価値や素材を収集するために費やした労力は,それ自体が著作権法によって保護されるものではない。
したがって,仮に,原告が本件調査のために相当の労力を費やし,本件調査によって得られた情報ないし原告において算定した各種の推測値に高い価値を認め得るとしても,そのことをもって原告図表の創作性の根拠とすることはでき(ない。)
<平成220225日東京地方裁判所[平成20()32147]>

【適法要件】

被控訴人は,本件パネルの内容が,中野好夫著「蘆花徳冨健次郎」)や熊本市制九十周年記念「徳冨蘆花展」の図録に酷似しており,創作的表現には当たらないし,また,本件パネルが,上記の二つの書籍の複製品又は翻案品に当たり,複製権や翻案権に抵触している可能性があるから,著作権上の保護の対象にはならない旨の主張をする。
しかし,証拠によると,本件パネルの解説パネルにおいて,解説文の一部に上記「蘆花徳冨健次郎」中の表現の一部と似た部分があることや,写真の一部に上記「蘆花徳冨健次郎」や上記「徳冨蘆花展」の図録に掲載された写真と同一の素材を用いたものがあることが認められるものの,このことは,本件パネルの編集著作物としての創作性の有無に影響を与えるものとはいえず,本件パネルは,編集著作物として著作権法上保護されるものと解されるから,被控訴人の上記主張は採用できない。
<
令和3629日知的財産高等裁判所[令和3()10027]>

【ビジネスソフトの表示画面の選択と配列】

一般にビジネスソフトウェアにおいては,ディスプレイ上に表れる表示画面は,常に一定ではなく,利用者がクリックやキー操作を通じてコンピュータに対する指令を入力することにより,異なる表示画面に転換する。このような一定の画面から他の画面への転換が,特定の思想に基づいて秩序付けられている場合において,当該表示画面の選択と配列,すなわち牽連関係の対象となる表示画面の選択と当該表示画面相互間における牽連関係に創作性が存在する場合には,そのような表示画面の選択と組合せ(配列)自体も,著作物として著作権法による保護の対象となり得るものと解される。
この場合,個々の表示画面自体に著作物性が認められるかどうかにかかわらず,表示画面の選択又は組合せ(配列)に創作性が認められれば,著作物性を認めることができるというべきである。そして,編集物における素材の選択・配列の創作性が著作者により1個のまとまりのある編集物として表現されている集合体を対象として判断されることに照らせば(著作権法121項),このような表示画面の選択と相互間の組合せ(配列)は,牽連関係にある表示画面全部を基準として,選択・配列の創作性の有無を検討すべきものである。
<平成140905日東京地方裁判所[平成13()16440]>

【年度版時事用語辞典/紙面レイアウト】

著作権法121項は、「編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護する。」と規定し、旧著作権法のように著作物が利用されることを編集著作物の保護の要件としていず、事実やデータ等の著作物でないものも、編集物の素材となることを前提としている。しかしながら、そのことから、編集著作物の複製物、例えば書籍に具体的に記載、表現されているものの全てが選択、配列の創作性が問題となる素材となり得るものではない。
即ち、素材の選択又は配列に創作性の認められる編集物が著作物として保護されるのは、素材の選択又は配列に著作者の個性が何らかの形で現れていれば、当該編集物としての思想又は感情の創作的表現が認められるためであると解されるところ、具体的な編集物に記載、表現されているものの内、その選択、配列の創作性が問題とされる素材が何であるか、どのような意味での選択、配列の創作性が問題となるかは、当該編集物の性質、内容によって定まるものである。
本件知恵蔵は、今日の社会において用いられている用語の意味内容を分野毎に解説することを目的とした年度版用語辞典であって、その性質、目的からみて、数多ある用語の中から選択された用語とその解説が収集され、これを、経済、政治等の大分類の中の貿易、日本経済、財政、あるいは国会、内閣・行政、地方自治、外交、防衛等の一定の分野毎に、かつ、各分野の中では「新語話題語」及び「用語」欄に分け、「用語」欄は更に中分類して配列されるとともに、これを補足、説明する「F情報」や図表・写真、これらの用語の背景となった社会の傾向の解説記事(「ニュートレンド」)が選択配列されている点に、本件知恵蔵の編集著作物としての創作性が存在すると認められる。してみると、本件知恵蔵の創作的選択及び創作的配列の対象となった素材は、あくまで、右「新語話題語」及び「用語」欄に記載された用語とその解説、「F情報」の記述、図表・写真及び「ニュートレンド」の記述であると解するのが相当である。
他方、原告が本件知恵蔵の素材であると主張する柱【注:版面の周辺の余白に印刷した見出しのこと】、ノンブル【注:頁数を示す数字のこと】、ツメ【注:検索の便宜のために辞書等の小口に印刷する一定の記号等のこと】の態様、分野の見出し、項目、解説本文等に使用された文字の大きさ、書体、使用された罫、約物【注:文字や数字以外の各種の記号活字の総称】の形状は、確かに本件知恵蔵の紙面に記載、表現されているものであるけれど、本件知恵蔵の年度版用語辞典という著作物としての性質、目的から考えれば、編集著作物としての本件知恵蔵の創作の対象となった素材とはなり得ない。また、原告が記事の一つに挙げる「分野見出し」も、本件知恵蔵の右素材の選択又は配列の基準となるものではあるが、それ自体は、収集された素材群が社会事象のどの分野に属するかを示すいわば枠組みに過ぎず、この種の用語辞典において50音順、いろは順等の音別配列でなく、事項別配列を採用する限り、何らかの「分野見出し」を掲げることは当該書籍にとって必要不可欠であるから、「分野見出し」という紙面構成上の記載をもって本件知恵蔵の素材とすることはできない。
そして、本件知恵蔵の素材であると認められる右「新語話題語」及び「用語」欄に記載された用語とその解説、「F情報」、図表・写真及び「ニュートレンド」に関して、どの用語を取り上げるか、どの解説を採用するか、どの用語との関係でどの図表・写真を採用するかという内容の選択に関与したのが原告であることを認めるに足りる証拠はなく、右素材の選択について、原告の創作的関与を認めることはできない。
また、本件知恵蔵の中での右のような素材の配列の創作性とは、右に見たように、本件知恵蔵の年度版用語辞典という性質及び目的の観点から考えれば、素材である用語とその解説、F情報、写真、図表、ニュートレンド等の素材をどのような大分野、分野に系統的に分類し、各分野の中で、「新語話題語」「ニュートレンド」「用語」に分類し、「用語」欄では更に中分類したかという、いかなる分類、順序で配列したかに見出すべきであって、原告がかかる意味における素材の創作的配列を行ったと認めるに足りる証拠はない。
原告は、本件知恵蔵の紙面における「新語話題語」「用語」「ニュートレンド」「F情報」及び写真・図表の配列を主張する。なる程、本件知恵蔵の「新語話題語」「用語」の掲載された頁を、開いたときに認識できる余白部分と文字や写真・図表の位置、文章が何段組みで、1行何字、1段何行で印刷するかを決定することを、国語的な意味では、素材である用語とその解説、写真・図表の「配列」と表現できないわけではない。また、これらの紙面上の配列(レイアウト)は、読者の読み易さ、紙面構成上の工夫や美的感覚に基づいて採用されたものであり、その決定、採用までには知的活動が行われ、創作的なものということができる余地もある。しかし、一定の分類法によって配列されることによって、検索の便を図るとともに、相互の関連性が示された各用語の意味の文字による解説とそれを補うための写真・図表という表現された内容こそに価値がある年度版用語辞典という本件知恵蔵の性質、目的に照らせば、著作物としての本件知恵蔵の素材の選択、配列の創作性は、前記のような素材を前記のとおりどのように分類し、どのような順序で配列したかにあるのであって、原告主張のような紙面上の余白と文字や写真・図表の配置、文字を何段組みで1行何字、1段何列とするか等は、編集物である本件知恵蔵の創作性に何らかかわるものではない。そのことは、本件知恵蔵に依拠してその文字による用語解説、写真・図表による補足を、そのまま分類、順序を全て維持しつつ、原告が主張するような具体的な紙面における余白の配置、段数、1行の文字数、1段の行数、文字の大きさ、書体等は全て本件知恵蔵とは異なるものとした書籍を作成することは、編集著作物である本件知恵蔵の複製に当たると解されることからも明かである。してみると、原告の主張する「配列」は、本件知恵蔵の場合、編集著作物としての創作性の対象となる「配列」に当たるものではないから、原告の主張する「配列」を、本件知恵蔵の編集著作物としての創作的配列と見ることはできない。
<平成100529日東京地方裁判所[平成7()5273]>

【英単語集】

「要語集」は、3000前後の標準的なアメリカ語の単語、熟語、慣用句を使用頻度に従って選び出した上、これらを見出し語としてアルフアベツト順に配列し、各見出し語に続けて、その日本語訳を付し、その大部分のものについて、見出し語を用いた慣用句、文例及びこれらの日本語訳を付し、場合により、見出し語の発音記号、見出し語の各日本語訳に対応する英語による言換え、語法の簡単な説明等をした「註」、「注意」等をも付したアメリカ語に関する英和辞典の一種であること、並びに右の文例は、昭和21年ころから昭和29年ころまでの間にわたり、ニユーズ・ウイーク、タイム、リーダーズ・ダイジエスト、ニユーヨーク・タイムズ等の雑誌、新聞やわが国の大学入試問題等に掲載された文章の中から、原告自身が適切であると考えたものを選択したものであることが認められる。
右の事実によれば、「要語集」は、原告がアメリカ語を素材にしてその選択と配列に創意をこらして創作した一個の編集著作物と認めることができる。
原告は、「要語集」に掲げられたアメリカ語の新しい語法及び文例について著作権及び著作者人格権を有する旨主張するけれども、アメリカ語の新しい語法を示すものとして原告が集録した単語、熟語、慣用句は言語それ自体を表記したに過ぎないものであつて、原告の思想又は感情の表現ではないことが明らかであるし、文例も原告が創作したものではないから、原告の右主張は失当である。
なお、単語、熟語、慣用句、文例等の日本語訳及び見出し語の英語による言換えは、原告の知的活動の結果表現されたものであると考えられるが、いずれも、日常的によく用いられている単語、熟語、慣用句又は短文の英語を日本訳又は他の英語に置き換えたものであつて、長い文章の翻訳と異なり、英語の語意を正しく理解する能力を有する者であれば、誰が行つても同様のものになると認められるから、原告のみの創作的表現ということはできない。
<昭和590514日東京地方裁判所[昭和50()480]>

【ネーミング辞典】

編集著作物(法12条1項)における創作性は,素材の選択又は配列に,何らかの形で人間の創作活動の成果が表れ,編集者の個性が表れていることをもって足りるものと解される。
そして,原告書籍は,ネーミング辞典であるから,1234語の原告見出し語とこれに対応する10か国語及びその発音のカタカナ表記を主要な素材とするものであって,これを大,中,小のカテゴリー別に配列したものであると認められるところ,原告従業員らは,こうした素材,とりわけ見出し語の選択及び配列を行うに当たり,幻想世界に強い興味を抱く本件読者層が好みそうな単語を恣意的に採り上げて収録語数1000から1200語程度のコンパクトで廉価なネーミング辞典を編集するという編集方針の下,収録語の取捨選択を行い,構成等を適宜修正しつつ自ら構築したカテゴリー別に配列してネーミング辞典として完成させたものであるということができる。
したがって,原告書籍は,原告従業員らが素材の選択と配列に創意を凝らして創作した編集著作物に当たると認められる。
<平成27326日東京地方裁判所[ 平成25()19494]>

【新聞】

被控訴人新聞の紙面は、報道記事、社説・論評が主要な部分を占め、その他に各種相場表、広告等によって構成されているところ、被控訴人の従業員である編集担当者は、そのもとに集められた多数の記事等の中から、被控訴人新聞の一定の編集方針に従い、またニュース性を考慮して、情報として提供すべきものを取捨選択し、その上で各記事等の重要度や性格・内容等を分析し、分類して紙面に配列しているものであって、被控訴人新聞のこのような紙面構成は、編集担当者の精神的活動の成果の所産であり、また被控訴人新聞の個性を形成するものであるから、特定の日付けの紙面全体は、素材の選択及び配列に創作性のある編集著作物と認めるのが相当であ(る。)
<平成61027日東京高等裁判所[平成5()3528]>

【職業別電話帳】

タウンページの職業分類は、検索の利便性の観点から、個々の職業を分類し、これらを階層的に積み重ねることによって、全職業を網羅するように編集されたものであり、原告独自の工夫が施されたものであって、これに類するものが存するとは認められないから、そのような職業分類体系によって電話番号情報を職業別に分類したタウンページは、素材の配列によって創作性を有する編集著作物であるということができる。
<平成120317日東京地方裁判所[平成8()9325]>

【音楽アルバム】

「アルバム」は、複数の曲が一定の数だけ集められ、特定の順序で配列されて収録されたものであるが、これは、アルバム製作者が、一定のコンセプト、イメージ等に基づいて、複数の曲の中から、収録する一定数の曲を選択し、その配列の順序を決定した上で製作するものであって、編集著作物となりうるものである。
<平成70222日東京地方裁判所[平成6()6280]>

【製品カタログ】

原告カタログは,USカタログの各題号を大分類とした上,日本の住宅事情,生活習慣,原告担当者の経験に基づく米国コーラー社らしさに関する認識その他の事情を考慮してUSカタログにおける中分類の一部を選択した上でこれと異なる順に配列し,各中分類に含まれる製品及び小分類の一部を選択して配列したものであり,ページごとの構成は,製品を2列及び5行に配列する構成その他の基本的な構成を決めた上で,適宜写真を挿入するなどしてこれを変化させた構成を設けたものと認められる。
したがって,原告カタログに掲載する製品の分類,選択及び配列に作成者の個性が表現されているということができるから,これら選択及び配列は,思想又は感情を創作的に表現したものと認めるのが相当である。
<平成28216日東京地方裁判所[平成26()22603]>

【工事関連リスト】

既存の素材であっても、一定の方針あるいは目的のもとに、これを分類、選択、配列する行為に創作性があれば、これを編集著作物として著作権の保護が与えられるところ、右JAMICシステムのうち、控訴人らが著作権を有すると主張する工事別分類項目表及び工事分類項目別メーカーリストは、いずれも建築・資材設備に関するカタログの分類、保管、検索を容易にするという目的のもとに作成されたものであり、工事別分類項目表においては、工事項目を通常の建築用語を用いて、大項目、中項目、小項目とカタログの分類、保管、検索が容易であるように順次分類配置したものであって、工事項目の分類、選択、配列に創意と工夫が存するものと認められ、また、工事分類項目別メーカーリストにおいては、工事別分類項目表に従い、これと関連付けてカタログの検索が容易であるようにメーカー名を分類、配置したものであって、その分類、選択、配列にも創意と工夫が存するものと認められるから、著作権法12条に規定する編集著作物に当たるものである。
<平成71017日東京高等裁判所[平成5()2747]>
【注】本件で問題となった「JAMICシステム」とは、「建築設計業務、施工業務の実施に必要な建材・設備資材のカタログ情報を整備して業者に提供することを目的とするシステムであって、建材・設備資材等のメーカーのカタログを収集し、別途に建築工事について分類項目表を作成し、他に50音別メーカーリスト、工事分類項目別メーカーリスト等を作成し、右カタログを右分類項目表に従って分類し、専用のボックスに整理保管し、随時資料の差替えを行っていくという建築資材専用のファイリングシステム」のことで、その中の「工事別分類項目表」がJAMICシステムの中核をなす。

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