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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

編集著作権の侵害性(個別事例)

【英単語辞典】

被告が被告辞典に収録した文例の選択は、新聞、雑誌を資料としたほか、各種の辞典、英語に関する文献を基準、参考として行われたものと認められるところ、これらの多くの資料の一つとして「要語集」が使用され、そこからも一部の相当数の文例が選択されたものと認めざるをえない。
右の「要語集」から一部の文例を選択した行為は、新聞、雑誌から文例を選択した行為と同視すべきものではない。なぜなら、新聞、雑誌は、英語の語法について一定の方針の下に文章が選択され、編集されたものではないことが明らかであるから、その膨大な文章中から特定の語法の文例を選択することは、独自の創作性を有する選択行為であって、何ら新聞、雑誌の編集者の編集行為に依拠したものではないが、先行する同種の辞典中に掲げられている特定の語法の文例を同じ語法の文例として自己の編集する辞典に取り込む行為は、当該辞典の編集者が行った選択行為に依拠したものというべきだからである。
ところで、一般に、学術的著作物においては、先人の学術的研究の成果、すなわち先行する学術著作物を参照し、これを参考として、後行の著作が行われることが多く、むしろ、良心的な学術的著作物ほど、右のように同種文献を参照し、参考とする度合が高いものというべく、その結果、著作物の内容も相当似かよったものとなることがありうるところである。そして、このこと自体は、学問の性質上、社会的に相当な行為であって、当然に許容され、これをもって、先人の学術的著作物を模倣したということはできない。編集著作物においても同様に、先人の学術的編集著作物を参考とした上で、自ら素材の選択を行った結果、相当似たものとなることがありうる。素材の選択の幅が限られている場合には、同一のものを選択しなければ、いずれか一方の学術的価値に疑問を生じることにもなりかねず、これをもつて先行の選択行為を模倣したというのは適当でない。これに対し、素材の選択の幅が広く、先人の著作物を参考とした上で、なお独自の選択を行うことがいくらでも可能であり、異なる素材を選択しても、それが適切なものである限り学術的価値をそこなうおそれがないときまで、安易に先人の選択した素材をそのまま又は一部修正して利用することは、その素材の選択に費やされた先人の努力に只乗りすることであり、学術的著作物といえども、先人の選択行為を模倣したとのそしりを免れないものというべきである。このことは、英和辞典の編集においても当てはまり、文例の選択に関していえば、慣用的文章については右の前者の選択の幅の狭い場合に該当し、慣用的でない文章については右の後者の選択の幅の広い場合に該当するというべきである。
以上の観点に立てば、被告が「要語集」に収録された文例のうちから相当数の文例をそのまま又は一部修正して被告辞典に収録した行為は、原告の文例の選択に依拠し、これを模倣したもので、その限度で、原告の有する「要語集」についての編集著作権を侵害するものといわなければならない。
<昭和590514日東京地方裁判所[昭和50()480]>
【控訴審も参照】
ところで、言語辞典のような編集物の編集活動は、主として、それ自体特定人の著作権の客体となりえない、社会の文化資産としての言語、発音、語意、文例、語法などの言語的素材を当該辞典の利用目的に即して収集、選択し、これを一定の形に配列し、所要の説明を付加することなどから成り立つものであるが、例えば見出し語に対する文例が多数ありうるものであって、選択の幅が広いというように、当該素材の性質上、編集者の編集基準に基づく独自の選択を受け容れうるものであり、その選択によって編集物に創作性を認めることができる場合と例えば見出し語に対する文例選択の幅が狭く、当該編集者と同一の立場にある他の編集者を置き換えてみても、おおむね同様の選択に到達するであろうと考えられ、したがってその選択によって編集物に創作性を認めることができない場合がある。そして、後者の場合、先行する辞典の選択を参照して後行の辞典を編集しても、それは共通の素材を、それを処理する慣用的方法によって取り扱つたにすぎないから、特に問題とするに足りないが、前者の場合において、後行の辞典が先行する辞典の選択した素材をそのまま又は一部修正して採用し、その数量、範囲ないし頻度が社会観念上許容することができない程度に達するときは、その素材の選択に払われた先行する辞典の創造的な精神活動を単純に模倣することによってその編集著作権を侵害するものというべきである。
<昭和601114日東京高等裁判所[昭和59()1446]>

【漢方薬便覧】

控訴人書籍漢方薬便覧部分は,漢方薬の148の処方名を掲載したほか,多数の生薬の中から「ヨクイニンエキス」のみを大分類「漢方薬」に分類するものとして選択した上,漢方3社が製造販売する薬剤がある漢方処方名については,当該漢方処方名に属する漢方3社の薬剤を全て選択し,漢方3社が薬剤を製造販売していない漢方処方名については,臨床現場における重要性や使用頻度等に鑑みて個別に薬剤を選択したというのであるから,薬剤の選択に控訴人らの創作活動の成果が表れ,その個性が表れているということができ,上記のような考慮から薬剤を選択した上,歴史的,経験的な実証に基づきあえて50音順の原則を崩して配列をした控訴人書籍漢方薬便覧部分の薬剤の配列には,控訴人らの創作活動の成果が表れ,その個性が表れているから,一定の創作性があり,これと完全に同一の選択及び配列を行った被控訴人書籍漢方薬便覧部分の薬剤の選択及び配列は,控訴人書籍のそれの複製に当たるといわざるを得ない。
<平成250418日知的財産高等裁判所[平成24()10076]>

【ネーミング辞典】

原告は,原告編集方針の下で収録する見出し語の選択を行い,自ら構築したカテゴリー別に配列して編集著作物としての原告書籍を制作したものであるが,原告書籍と被告書籍とを対比すると,それぞれの見出し語のほとんどは実質的に同一であり,原告見出し語(1234語)のうち原告書籍のみにあるものは25語,被告見出し語(1213語)のうち被告書籍のみにあるものはわずか4語であるに過ぎないのであるから,両者の素材の選択については極めて類似性が高いといわざるを得ず,カテゴリー別の分類においても共通点が多いことも併せれば,被告書籍からは,原告書籍の素材の選択及び配列における表現上の本質的同一性を看取することができるというべきである。そして,被告が原告書籍を参照して被告書籍を編集したことからすれば,被告は,原告書籍に依拠して被告書籍を作成したものといわざるを得ないから,結局,被告書籍は,少なくとも原告書籍の翻案に当たるというべきである。
<平成27326日東京地方裁判所[ 平成25()19494]>

新聞】

新聞は、社会において日々生起するさまざまな出来事を迅速に、かつ幅広く伝達するための刊行物であるから、素材の選択によって編集著作物としての創作性を有するものと評価し得ることの最も重要な要素は、まず、収集された素材である多数の記事に具現された情報の中から、一定の編集方針なり、ニュース性等に基づき、伝達すべき価値のあるものとして、どのような出来事に関する情報を選択して表現しているかという点に存するものと解される。また、配列についていえば、選択された情報(記事)がその重要度や性格・内容等に応じてどのように配列されているかという点にあるものと解される。
被控訴人新聞が編集著作物性を有するものと認められるのも右の趣旨によるものであるから、控訴人文書の作成・頒布が被控訴人新聞の編集著作権を侵害するものであるか否か、すなわち、控訴人文書が被控訴人新聞の翻案であるか否かは、控訴人文書が被控訴人新聞に依拠して作成されたものであるか否か、その内容において、当該記事の核心的事項である被控訴人新聞が伝達すべき価値のあるものとして選択し、当該記事に具現化された客観的な出来事に関する表現と共通しているか否か、また、配列において、被控訴人新聞における記事等の配列と同一又は類似しているか否かなどを考慮して決すべきものと解するのが相当である。
(略)
控訴人は、編集著作物は与えられた素材を選択・配列するという、それ自体では創作性の発揮しにくい行為を根拠とするから、その保護も弱くならざるを得ないし、新聞においては、素材の特性から、事実自体の独占につながらないように格別の配慮が必要である旨主張する。
しかしながら、素材を選択・配列することが創作性を発揮しにくい行為であり、その保護も弱くならざるを得ない旨の一般論自体採用することができない。そして、新聞の場合、素材である多数の記事の中から、伝達すべき情報として何を取り上げ、これをどのような形で取り扱うかは、当該新聞の個性を形成するものであり、新聞としての創作性を発揮し得るものであるところ、被控訴人新聞は、一定の編集方針に基づいた伝達すべき情報の選択、及びその配列に創作性を認め得るものであるから、これに対して所定の保護が与えられるのは当然であり、このことが事実自体の独占につながるということにはならないのであって、この点に関する控訴人の主張も理由がない。
(略)
新聞記事は、客観的な出来事を素材とするものであっても、一定の観点ないし価値基準の下に、収集した客観的事実のみならず、その背景事実や第三者の発言等の情報を評価、確認して当該記事に盛り込む事項を選択し、これを構成して表現するものであるところ、新聞が、素材の選択によって創作性を有するものと評価し得ることの最も重要な要素は、収集された素材である多数の記事に具現された情報の中から、一定の編集方針なり、ニュース性等に基づき、伝達すべき価値のあるものとして、どのような客観的な出来事に関する情報を選択して表現しているかという点に存するものというべく、したがって、新聞の編集著作権に対する翻案権の侵害が成立するためには、対象となる文書が、当該新聞に依拠して、そこで取り上げられ、記事に具現化されている情報の核心的事項である客観的な出来事の表現と共通するものを同様に要素としていれば足り、両者の個々の素材(要素)自体の具体的な表現や詳細な内容が相当程度において一致していることまでは必要ないものと解するのが相当である。また、選択された情報(記事)がその重要度や性格・内容等に応じてどのように配列されているかという点に当該新聞の配列上の特徴が存するのであるから、対象となる文書が、当該新聞における特徴的な配列と一致又は類似していれば翻案関係にあるものというべきである。
<平成61027日東京高等裁判所[平成5()3528]>

【判例集(判例百選)】

①判例の選択については,本件著作物の収録判例と本件雑誌の収録判例とで97件が一致しており(そのうち94件は審級も含めて全く同一であり,3件は審級のみ異なり対象事件が同一である。),割合的には,本件著作物の収録判例113件のうち約86%が本件雑誌にも維持され,かつ,当該一致部分が本件雑誌の収録判例116件のうち約84%を占めていること,②執筆者(執筆者の執筆する解説)の選択については,本件著作物における執筆者と本件雑誌における執筆者とで93名が一致しており,割合的には,本件著作物の執筆者113名のうち約82%が本件雑誌にも維持され,かつ,当該一致部分が本件雑誌の執筆者117名のうち約79%を占めていること,③判例と執筆者(執筆者の執筆する解説)の組合せの選択については,本件著作物における組合せと本件雑誌における組合せとで83件が一致しており,割合的には,本件著作物における判例と執筆者の組合せ113件のうち約73%が本件雑誌にも維持され,かつ,当該一致部分が本件雑誌における判例と執筆者の組合せ117件のうち約71%を占めていること,④判例及びその解説(以下,併せて「判例等」という。)の配列については,本件著作物の判例等と本件雑誌の判例等とで合計83件の配列(順序)が一致しており,割合的には,本件著作物の判例等113件のうち約73%の判例等の配列(順序)が本件雑誌にも維持され,かつ,当該一致部分が本件雑誌の判例等117件のうち約71%を占めていること,⑤判例等の配列を位置付ける項目立てについても,本件著作物の大項目及び小項目の立て方と本件雑誌の大項目及び小項目の立て方とでその大半が一致していることを指摘することができる。そうすると,本件著作物と本件雑誌とで判例等の選択及び配列が全体として類似していることは明らかであって,本件著作物の判例等の選択・配列の大部分が本件雑誌にも維持されていることが確認できるとともに,本件雑誌の判例等の選択・配列を見たときに本件著作物のそれに由来する上記各一致部分の全部又は一部を優に感得することができる。
そして,本件著作物及び本件雑誌に掲載される判例と執筆者の執筆する解説が編集著作物たる本件著作物及び本件雑誌の素材であるところ,その表現(素材の選択又は配列)の選択の幅(個性を発揮する余地)を考えると,『判例百選』の性格上,判例の選択や判例等の配列に係る選択の幅はある程度限られるものの,執筆者の選択すなわち誰が執筆する解説を載せるかという選択の幅は決して小さくない上,どの判例の解説の執筆者として誰を選ぶかに係る選択の幅は極めて広いというべきである。そうすると,上記①ないし⑤で指摘した,本件著作物と本件雑誌とで表現(素材の選択又は配列)上共通する部分には,創作性を有する表現部分が相当程度あるものということができる(なお,編集著作物における素材の選択及び配列に係る上記各一致部分の組合せ全体に創作性を認めることもできると考えられる。)。
以上の事情を総合すれば,本件著作物と本件雑誌とで創作的表現が共通し同一性がある部分が相当程度認められる一方,本件雑誌が,新たに付加された創作的な表現部分により,本件著作物とは別個独立の著作物になっているとはいい難い。
このように検討したところによると,本件雑誌の表現からは,本件著作物の表現上の本質的特徴を直接感得することができるというべきである。
そして,本件雑誌が本件著作物の改訂版として作成されているものであることなどに照らすと,編集著作物たる本件雑誌が本件著作物に依拠して編集されたことは明らかである。
以上によれば,編集著作物たる本件雑誌を創作する行為は,本件著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想を創作的に表現することにより,これに接する者が本件著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為,すなわち本件著作物の翻案に該当し,本件雑誌は本件著作物を原著作物とする二次的著作物に該当する。
また,他人の著作物を素材として利用しても,その表現上の本質的な特徴を感得させないような態様においてこれを利用する行為は,原著作物の同一性保持権を侵害しないと解すべきであるが(最高裁平成10年7月17日第二小法廷判決等参照),本件雑誌における本件著作物の利用は,このような同一性保持権侵害の要件をも満たすということができる。
<平成2847日東京地方裁判所[平成28()40004]>

【スクール・講座情報誌】

以上対比したところによれば,控訴人情報誌東海版の分野別モノクロ情報ページと被控訴人情報誌東海版のカテゴリー別スクール情報ページは,配置方針及び分類は類似しているものの,その具体的配列は,同一性又は類似性があると認めることはできず,上記類似性を有する部分は,表現それ自体でない部分又は表現上の創作性が認められない部分であって,上記各カテゴリー別スクール情報ページから上記分野別モノクロ情報ページの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないから,上記各カテゴリー別スクール情報ページは,上記分野別モノクロ情報ページを複製ないし翻案したものということはできない。
<平成170329日東京高等裁判所[平成16()2327]>

【ホームページ】

本件ホームページと被控訴人ホームページとの共通点として控訴人により指摘されているのは,商品の写真や,商品を説明する文章自体の共通点であり,ホームページ自体の素材の選択や配列における共通点が指摘されているものではない。また,本件ホームページと被控訴人ホームページとを比較しても,シックハウス症候群が疑われる例を複数併記している点や,商品の写真を文章の左側に配置している点などが共通しているにすぎず,このような素材の選択や配列における共通点はありふれたものであって,表現上の創作性がない部分について同一性を有するにすぎない。
したがって,本件ホームページについて編集著作物としての複製権ないし翻案権の侵害があったということはできない。
<平成180329日知的財産高等裁判所[平成17()10094]>

【ビジネスソフトの表示画面】

仮に原告ソフトの表示画面の選択又は組合せに創作性が認められる場合において,他社ソフトにおける表示画面の選択及び組合せが原告ソフトの複製ないし翻案に当たるかどうかを判断するに当たっては,原告ソフト全体又はそのうちの特定のアプリケーションを構成する表示画面全部における表示画面の選択及びその相互間の牽連関係(組合せ)の創作的特徴が,他社ソフト全体又はそのうちの対応する特定のアプリケーションを構成する表示画面全部における表示画面の選択及びその相互間の牽連関係(組合せ)においても共通して存在し,他社ソフトの表示画面の選択及び組合せから原告ソフトの表示画面の選択・組合せの創作的特徴が直接感得できるかどうかを判断すべきものである。
この場合,原告ソフトの一部の表示画面が他社ソフトに存在しないときには,当該表示画面の欠如が原告ソフトにおける表示画面の選択・組合せの創作的特徴に影響しない特段の事情のない限り,他社ソフトを原告ソフトの複製ないし翻案ということはできない。また,他社ソフトにおいて,原告ソフトにない表示画面や,原告ソフトにない牽連関係が新たに付加されているときには,これらの付加が付随的なものであって,原告ソフトと他社ソフトの表示画面の選択・組合せの創作的特徴の共通性に影響しない特段の事情のない限り,他社ソフトを原告ソフトの複製ないし翻案ということはできない。
(略)
原告ソフトにおける画面の選択と組合せ(配列)については,作成者の知的活動が介在する余地があり,作成者の個性が創作的に表現される可能性がないとはいえないが,この場合においても,創作性の有無については,当該ビジネスソフトウェアに要求される機能や利用者の利便性の観点からの制約や,既存の同種ソフトウェアにおけるものとの比較等の観点から判断されなければならないものであって,作成者の思想・感情を創作的に表現する範囲は限定されており,創作的要素が認められるとしても部分的な範囲に限定されるものというべきである。
したがって,仮に原告ソフトの表示画面の選択及び組合せに創作性が認められるとしても,上述のとおり,その創作的表現を直接感得することができるような他社ソフトは,原告ソフトの表示画面とその組合せにつき実質的にその全部を共通に有し,新たな表示画面や組合せが付加されていないようなものに限られる。
すなわち,仮に原告ソフトにおける互いに牽連関係にある表示画面の集合体を著作物と解することができるとしても,その複製ないし翻案として著作権侵害を認め得る他者のソフトウェアは,いわゆるデッドコピーないしそれに準ずるようなものに限られるというべきである。
<平成140905日東京地方裁判所[平成13()16440]>

【簿記検定対策用問題(切り離し式暗記カード)】

切り離し式の暗記カードについて,原告は,模擬試験本の4回分の予想問題を総合的に反映した重要な仕訳内容などを暗記カードの内容に反映させる独自の編集を行い,また,試験本番で特に重要な設問の第1問の解答率をアップさせるための配列としたなどと主張する。
この点,問題とそれに対する解答を切り離し式の暗記カードの形態で掲載すること自体は,具体的表現ではなく誌面の構成や形態に関するアイデアにすぎず,これに著作権法上の保護が及ぶものではない。
次に,暗記カード上に掲載された問題とそれに対する解答の選択や配列についてみるに,控訴人は,従前の簿記検定試験の内容を踏まえた予想問題を反映した重要な仕訳内容を暗記カードの内容に反映させたというのであり,暗記カード部分に掲載された問題と解答の選択や配列には控訴人の独自性が発揮されているといえるから,少なくとも全体として一つの編集著作物に当たると認められる。
しかし,被告第130回受験誌には暗記カードが存在しておらず,原告が編集著作権の侵害を主張する被告第131回受験誌の問題の選択,配列の内容は原告第130回受験誌及び原告第131回受験誌と比較すると,手形の割引,自己受為替手形,預り金の処理,商品券の処理,固定資産の売却など,一部の問題のテーマに共通するものがあるが,問題の選択や配列の内容は全体としては異なるから,控訴人の主張する切り離し式の暗記カードの編集著作権について,侵害が成立しないことは明らかである。
<平成260422日知的財産高等裁判所[平成26()10009]>

【自社商品カタログvs.他社商品カタログ】

そもそも、本件カタログにはパロマの商品の写真及び説明文が、被告カタログには被告商品の写真及び説明文が掲載されているところ、編集著作権においても、保護の対象とするのは素材の選択、配列方法という抽象的なアイデア自体ではなく、素材の選択、配列についての具体的な表現形式であるから、素材において本件カタログと全く異なる被告カタログが本件カタログの編集著作権を侵害するものであるということはできない。
<平成70328日大阪地方裁判所[平成4()1958]>

【自社製品取扱説明書vs.他社製品取扱説明書】

編集著作物は,「素材の選択又は配列によつて創作性を有するもの」に限り著作物として保護される(著作権法121項)。編集著作権において,保護の対象となるのは,素材の選択,配列方法という抽象的なアイデア自体ではなく,素材の選択,配列についての具体的な表現形式である。
原告取扱説明書は,原告製品を購入した者に対して,その使用方法,特徴点,生じ得る問題とその対処方法,手入れ方法,各部の名称等,安全上の注意事項及び警告事項等を説明するものであるということができるから,原告取扱説明書は,その性質,目的からして,原告製品に関する各種情報という素材を選択し,これを配列している点の創作性が問題となるということができる。これに対し,被告取扱説明書は被告製品に関する各種情報という素材を扱うものであるから,素材となる情報が原告取扱説明書と被告取扱説明書とで異なる商品に関するものである。したがって,既にこの点において,被告取扱説明書が原告取扱説明書の編集著作権を侵害するものということはできないものというべきである。
<平成170208日大阪地方裁判所[平成15()12778]>
【控訴審も同旨】
編集著作物は,「素材の選択又は配列によつて創作性を有するもの」に限り著作物として保護される(著作権法121項)ところ,商品の取扱説明書は,当該商品に関する各種情報という素材を扱うものであるから,控訴人取扱説明書と被控訴人取扱説明書とは対象とする商品が異なっており,「素材」となる情報も異なるから,既にこの点において,被控訴人取扱説明書が控訴人取扱説明書の編集著作権を侵害するものということはできない。
<平成171215日大阪高等裁判所[平成17()742]>

【テスト問題vs.ライブ解説】

本件問題は,控訴人自身も主張するとおり,題材となる作品の選択や,題材とされる文章のうち設問に取り上げる文又は箇所の選択,設問の内容,設問の配列・順序に作者の個性が現れた編集著作物であり,ここでは,このような素材の選択及び配列等に,その本質的特徴が現れているということができる。これに対し,被告ライブ解説は,作成された問題(すなわち,素材の選択及び配列等)を所与のものとして,これに対する解説,すなわち,問いかけられた問題に対する回答者の思考過程や思想内容を表現する言語の著作物であって,このような思考過程や思想内容の表現にその本質的特徴が現れているものである。
このように,編集著作物である本件問題と,言語の著作物である被告ライブ解説とでは,その本質的特徴を異にするといわざるを得ないのであるから,仮に,被告ライブ解説が,本件問題が取り上げた文を対象とし,本件問題が提起したのと同一の問題を,その配列・順序に従って解説しているものであるとしても,それは,あくまでも問題の解説をしているのであって,問題を再現ないし変形しているのではなく,したがって,本件問題の翻案には当たらないものといわざるを得ない。
<令和元年1125日知的財産高等裁判所[令和1()10043]>
【原審も参照】
被告ライブ解説においては,本件問題の全部又は一部の画像を表示しておらず,また,口頭で本件問題の全部又は一部を読み上げるなどの行為もしていない。そうすると,被告ライブ解説は本件問題の本質的な特徴の同一性を維持しているということはできず,被告ライブ解説に接する者が本件問題の素材の選択又は配列に係る本質的な特徴を直接感得することができるということはできない。
<令和元年515日東京地方裁判所[平成30()16791]>

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