Kaneda Copyright Agency ホームに戻る
カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

侵害主体論

【総論】

放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(以下「複製機器」という。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており,複製時におけるサービス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても,放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十分であるからである。
<平成23120最高裁判所第一小法廷[平成21()788]>

自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。
これを本件についてみるに,各ベースステーションは,インターネットに接続することにより,入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的にデジタルデータ化して送信する機能を有するものであり,本件サービスにおいては,ベースステーションがインターネットに接続しており,ベースステーションに情報が継続的に入力されている。被上告人は,ベースステーションを分配機を介するなどして自ら管理するテレビアンテナに接続し,当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上,ベースステーションをその事務所に設置し,これを管理しているというのであるから,利用者がベースステーションを所有しているとしても,ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人であり,ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人であるとみるのが相当である。
<平成23118最高裁判所第三小法廷[平成21()653]>

上告人らは、上告人らの共同経営にかかるスナツク等において、カラオケ装置と、被上告人が著作権者から著作権ないしその支分権たる演奏権等の信託的譲渡を受けて管理する音楽著作物たる楽曲が録音されたカラオケテープとを備え置き、ホステス等従業員においてカラオケ装置を操作し、客に曲目の索引リストとマイクを渡して歌唱を勧め、客の選択した曲目のカラオケテープの再生による演奏を伴奏として他の客の面前で歌唱させ、また、しばしばホステス等にも客とともにあるいは単独で歌唱させ、もつて店の雰囲気作りをし、客の来集を図つて利益をあげることを意図していたというのであり、かかる事実関係のもとにおいては、ホステス等が歌唱する場合はもちろん、客が歌唱する場合を含めて、演奏(歌唱)という形態による当該音楽著作物の利用主体は上告人らであり、かつ、その演奏は営利を目的として公にされたものであるというべきである。けだし、客やホステス等の歌唱が公衆たる他の客に直接聞かせることを目的とするものであること(著作権法22条参照)は明らかであり、客のみが歌唱する場合でも、客は、上告人らと無関係に歌唱しているわけではなく、上告人らの従業員による歌唱の勧誘、上告人らの備え置いたカラオケテープの範囲内での選曲、上告人らの設置したカラオケ装置の従業員による操作を通じて、上告人らの管理のもとに歌唱しているものと解され、他方、上告人らは、客の歌唱をも店の営業政策の一環として取り入れ、これを利用していわゆるカラオケスナツクとしての雰囲気を醸成し、かかる雰囲気を好む客の来集を図つて営業上の利益を増大させることを意図していたというべきであつて、前記のような客による歌唱も、著作権法上の規律の観点からは上告人らによる歌唱と同視しうるものであるからである。
したがつて、上告人らが、被上告人の許諾を得ないで、ホステス等従業員や客にカラオケ伴奏により被上告人の管理にかかる音楽著作物たる楽曲を歌唱させることは、当該音楽著作物についての著作権の一支分権たる演奏権を侵害するものというべきであり、当該演奏の主体として演奏権侵害の不法行為責任を免れない。
<昭和63315最高裁判所第三小法廷[昭和59()1204]>

最高裁判所昭和63315日第三小法廷判決は,スナックにおける客のカラオケ伴奏による歌唱について,客は経営者と無関係に歌唱しているわけではなく,従業員による歌唱の勧誘,経営者の備え置いたカラオケテープの範囲内での選曲,経営者の設置したカラオケ装置の従業員による操作を通じて,経営者の管理の下に歌唱しているものと解され,他方,経営者は,客の歌唱をも店の営業政策の一環として取り入れ,これを利用していわゆるカラオケスナックとしての雰囲気を醸成し,かかる雰囲気を好む客の来集を図って営業上の利益を増大させることを意図していたというべきであって,客の歌唱も,著作権法上の規律の観点からは経営者による歌唱と同視しうる旨判示した。本件は,いわゆるカラオケスナックに関する事案ではなく,上記判示をそのまま当てはめることはできないが,同判決は,著作物の利用(演奏ないし歌唱)の主体は著作権法上の規律の観点から規範的に判断すべきものであって,現実の演奏者・歌唱者だけでなく,演奏・歌唱を管理し,それによって営業上の利益を受ける者も含まれうることを明らかにした点で,本件においても参酌すべきである。
<平成200917日大阪高等裁判所[平成19()735]>

著作権法上の侵害主体を決するについては,当該侵害行為を物理的,外形的な観点のみから見るべきではなく,これらの観点を踏まえた上で,実態に即して,著作権を侵害する主体として責任を負わせるべき者と評価することができるか否かを法律的な観点から検討すべきである。そして,この検討に当たっては,問題とされる行為の内容・性質,侵害の過程における支配管理の程度,当該行為により生じた利益の帰属等の諸点を総合考慮し,侵害主体と目されるべき者が自らコントロール可能な行為により当該侵害結果を招来させてそこから利得を得た者として,侵害行為を直接に行う者と同視できるか否かとの点から判断すべきである。
<平成211113日東京地方裁判所[平成20()21902]>

有形的再製を実現するために,複数の段階からなる一連の行為が行われる場合があり,そのような場合には,有形的結果の発生に関与した複数の者のうち,誰を複製の主体とみるかという問題が生じる。
この問題については,複製の実現における枢要な行為をした者は誰かという見地から検討するのが相当であり,枢要な行為及びその主体については,個々の事案において,複製の対象,方法,複製物への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して判断するのが相当である(最高裁平成23120日第一小法廷判決参照)。
<平成250930日東京地方裁判所[平成24()33525]>

本件メモリーカードは,その使用によって,本件ゲームソフトについて同一性保持権を侵害するものであるところ,上告人は,専ら本件ゲームソフトの改変のみを目的とする本件メモリーカードを輸入,販売し,多数の者が現実に本件メモリーカードを購入したものである。そうである以上,上告人は,現実に本件メモリーカードを使用する者がいることを予期してこれを流通に置いたものということができ,他方,本件メモリーカードを購入した者が現実にこれを使用したものと推認することができる。そうすると,本件メモリーカードの使用により本件ゲームソフトの同一性保持権が侵害されたものということができ,上告人の前記行為がなければ,本件ゲームソフトの同一性保持権の侵害が生じることはなかったのである。したがって,専ら本件ゲームソフトの改変のみを目的とする本件メモリーカードを輸入,販売し,他人の使用を意図して流通に置いた上告人は,他人の使用による本件ゲームソフトの同一性保持権の侵害を惹起したものとして,被上告人に対し,不法行為に基づく損害賠償責任を負うと解するのが相当である。
<平成13213最高裁判所第三小法廷[平成11()955]>

【複製権侵害の主体】

「著作者は,その著作物を複製する権利を専有する。」(著作権法21条)ところ,「複製」とは,著作物を「印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製すること」である(同法2115号)。そして,複製行為の主体とは,複製の意思をもって自ら複製行為を行う者をいうと解される。
本件サービスは,①利用者が控訴人○○に書籍の電子ファイル化を申し込む,②利用者は,控訴人○○に書籍を送付する,③控訴人○○は,書籍をスキャンしやすいように裁断する,④控訴人○○は,裁断した書籍を控訴人○○が管理するスキャナーで読み込み電子ファイル化する,⑤完成した電子ファイルを利用者がインターネットにより電子ファイルのままダウンロードするか又はDVD等の媒体に記録されたものとして受領するという一連の経過をたどるものであるが,このうち上記④の、裁断した書籍をスキャナーで読み込み電子ファイル化する行為が,本件サービスにおいて著作物である書籍について有形的再製をする行為,すなわち「複製」行為に当たることは明らかであって,この行為は,本件サービスを運営する控訴人○○のみが専ら業務として行っており,利用者は同行為には全く関与していない。
そして,控訴人○○は,独立した事業者として,営利を目的として本件サービスの内容を自ら決定し,スキャン複製に必要な機器及び事務所を準備・確保した上で,インターネットで宣伝広告を行うことにより不特定多数の一般顧客である利用者を誘引し,その管理・支配の下で,利用者から送付された書籍を裁断し,スキャナで読み込んで電子ファイルを作成することにより書籍を複製し,当該電子ファイルの検品を行って利用者に納品し,利用者から対価を得る本件サービスを行っている。
そうすると,控訴人○○は,利用者と対等な契約主体であり,営利を目的とする独立した事業主体として,本件サービスにおける複製行為を行っているのであるから,本件サービスにおける複製行為の主体であると認めるのが相当である。
(略)
一般に,ある行為の直接的な行為主体でない者であっても,その者が,当該行為の直接的な行為主体を「自己の手足として利用してその行為を行わせている」と評価し得る程度に,その行為を管理・支配しているという関係が認められる場合には,その直接的な行為主体でない者を当該行為の実質的な行為主体であると法的に評価し,当該行為についての責任を負担させることがあり得るということができる。
しかし,利用者は,控訴人○○が用意した本件サービスの内容に従って本件サービスを申し込み,書籍を調達し,電子ファイル化を注文して書籍を送付しているのであり,控訴人○○は,利用者からの上記申込みを事業者として承諾した上でスキャン等の複製を行っており,利用者は,控訴人○○の行うスキャン等の複製に関する作業に関与することは一切ない。
そうすると,利用者が控訴人○○を自己の手足として利用して書籍の電子ファイル化を行わせていると評価し得る程度に,利用者が控訴人○○による複製行為を管理・支配しているとの関係が認められないことは明らかであって,控訴人○○が利用者の「補助者」ないし「手足」ということはできない。
<平成261022日知的財産高等裁判所[平成25()10089]>

【上映権侵害の主体】

本件映画は本件漫画の二次的著作物であり,原告は本件映画の上映権を有するから,原告の許諾なく本件映画を公に上映した場合には,原告の本件映画に係る上映権を侵害したことになる。
原告は,被告の具体的な上映行為として,本件各映画祭における上映を主張する。確かに,被告が本件各映画祭に本件映画を出展し,本件各映画祭において,本件映画が上映されたことは認められる。
しかしながら,上映とは,著作物を映写幕その他の物に映写することであるから,本件各映画祭において,その主催者ではなく,被告が本件映画を上映したとは直ちにいい難い。
この点,原告は,本件各映画祭では,被告の応募行為に対応して本件映画を上映したものであり,被告は,映画監督・製作者としての名声や入賞すれば賞金を得るなどの利益を享受するから,被告が上映行為の主体である旨主張する。しかしながら,被告の出展が本件各映画祭における上映の契機であることや,原告の主張する被告の利益を考慮したとしても,被告が本件各映画祭における上映の枢要な行為をしたとは認め難いし,その他これを認めるに足りる証拠もない。
したがって,被告が本件各映画祭において本件映画を上映したとは認められないから,被告が原告の本件映画に係る上映権を侵害したとは認められない。
<平成251122日 東京地方裁判所[平成25()13598]>

【公衆送信権侵害の主体】

本件サービスを担う本件サーバは,ユーザの携帯電話からの求めに応じて,自動的に音源データの3G2ファイルを送信する機能を有している。
そして,本件サービスは,インターネット接続環境を有するパソコンと携帯電話(ただし,当面はau WIN端末のみ)を有するユーザが所定の会員登録を済ませれば,誰でも利用することができるものであり,原告がインターネットで会員登録をするユーザを予め選別したり,選択したりすることはない。「公衆」とは,不特定の者又は特定多数の者をいうものであるところ(著作権法25項参照),ユーザは,その意味において,本件サーバを設置する原告にとって不特定の者というべきである。
よって,本件サーバからユーザの携帯電話に向けての音源データの3G2ファイルの送信は,公衆たるユーザからの求めに応じ,ユーザによって直接受信されることを目的として自動的に行われるものであり,自動公衆送信(同法219号の4)ということができる。
(略)
原告は,ユーザが本件サーバに蔵置した音源データのファイルには,当該ユーザしかアクセスできず,11の対応関係であって,しかも常に同一人に帰するから,ユーザが専ら自分自身に向けて行っている自己宛の純粋に私的な情報伝達であり,公衆送信権侵害に当たらない旨主張する。
しかしながら,本件サーバから音源データを送信しているのは,本件サーバを所有し管理している原告である。そして,公衆送信とは,公衆によって直接受信されることを目的とする(著作権法217号の2)から,送信を行う者にとって,当該送信行為の相手方(直接受信者)が不特定又は特定多数の者であれば,公衆に対する送信に当たることになる。そして,送信を行う原告にとって,本件サービスを利用するユーザが公衆に当たることは,前記のとおりである。なお,本件サーバに蔵置した音源データのファイルには当該ユーザしかアクセスできないとしても,それ自体,メールアドレス,パスワード等や,アクセスキー,サブスクライバーID(加入者ID)による識別の結果,ユーザのパソコン,本件サーバのストレージ領域,ユーザの携帯電話が紐付けされ,他の機器からの接続が許可されないように原告が作成した本件サービスのシステム設計の結果であって,送信の主体が原告であり,受信するのが不特定の者であることに変わりはない。
<平成190525日東京地方裁判所[平成18()10166]>

自動公衆送信は,公衆送信の一態様であり(同項9号の4),公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ,著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣旨,目的は,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で,現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。
そして,自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。
これを本件についてみるに,各ベースステーションは,インターネットに接続することにより,入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的にデジタルデータ化して送信する機能を有するものであり,本件サービスにおいては,ベースステーションがインターネットに接続しており,ベースステーションに情報が継続的に入力されている。被上告人は,ベースステーションを分配機を介するなどして自ら管理するテレビアンテナに接続し,当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上,ベースステーションをその事務所に設置し,これを管理しているというのであるから,利用者がベースステーションを所有しているとしても,ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人であり,ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人であるとみるのが相当である。そして,何人も,被上告人との関係等を問題にされることなく,被上告人と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであって,送信の主体である被上告人からみて,本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たるから,ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり,したがって,ベースステーションは自動公衆送信装置に当たる。そうすると,インターネットに接続している自動公衆送信装置であるベースステーションに本件放送を入力する行為は,本件放送の送信可能化に当たるというべきである。
本件サービスにおいて,テレビアンテナからベースステーションまでの送信の主体が被上告人であることは明らかである上,上記のとおり,ベースステーションから利用者の端末機器までの送信の主体についても被上告人であるというべきであるから,テレビアンテナから利用者の端末機器に本件番組を送信することは,本件番組の公衆送信に当たるというべきである。
以上によれば,ベースステーションがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しないことのみをもって自動公衆送信装置の該当性を否定し,被上告人による送信可能化権の侵害又は公衆送信権の侵害を認めなかった原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があ(る。)
<平成23118最高裁判所第三小法廷[平成21()653]>

本件動画サイト上の動画から他のユーザーが有料会員登録をした場合に当該動画の投稿者に対してアフィリエイト報酬が支払われるところ,ユーザーに対して有料会員登録を促し動画の投稿者がアフィリエイト報酬を得るためには,投稿した動画を無料会員が一部しか視聴することができない有料動画とすることが効果的といえるから,本件動画サイトに投稿した動画を有料動画と設定する理由はアフィリエイト報酬を得る目的である場合が多いといえる。そして,本件各動画は有料動画であるところ,本件において上記と異なる目的をうかがわせる特段の事情を認めるに足りず,本件発信者が本件動画サイトに本件各動画をアップロードした目的についても上記に述べたところが該当するといえる。
また,本件動画サイトにおいては,無料会員,有料会員のいずれも会員登録するためには必ずしも氏名や住所等の情報を登録する必要があるとは認められない。他方,アフィリエイト登録の際には氏名,住所等の情報を登録する必要がある。また,FC2は本件発信者の氏名及び住所の情報を保有していた。
これらによれば,本件発信者はアフィリエイト登録をしていて,FC2が開示した上記の本件発信者の氏名及び住所は本件発信者がアフィリエイト登録をする際に入力した情報であると推認するのが相当であり,これを覆すに足りる証拠はない。
そして,本件発信者がアフィリエイト登録の際に入力した氏名及び住所と被告の氏名及び住所が一致するところ,アフィリエイト報酬を得るためのアフィリエイト登録をする場合,他人の氏名,住所を登録することは通常は考え難いこと,本件においてあえて第三者が被告の氏名,住所を登録したことをうかがわせる事情は全くないことなどからすれば,本件発信者は被告であると推認するのが相当である。
これに対し,被告は,被告は本件発信者ではなく,FC2から開示された情報中に被告の氏名及び住所があるとしても,本件発信者である第三者が勝手に入力したものであると主張する。
しかし,上記のとおりアフィリエイト登録をする場合,他人の氏名,住所を登録することは通常は考え難く,本件においてあえて第三者が被告の氏名,住所を登録したことをうかがわせる事情は全くない。また,本件動画サイトのアフィリエイト登録をするためには,氏名や住所等のほかに銀行口座やクレジットカード等の情報を登録することができ,これらの情報は会費(アフィリエイト登録をするには有料会員であることが必要である。)の支払やFC2換金可能ポイントを現金化するために必要な情報であるところ,本件動画サイトのアフィリエイト登録を行ったユーザーが,第三者の氏名,銀行口座やクレジットカード情報を入力することは通常は考え難いし,本件においてあえて第三者が被告の氏名等を登録したことをうかがわせる事情は全くない。また,ユーザーがFC2ポイントで会費を支払い,かつ,FC2換金可能ポイントを現金化しないことをあえて望む場合には,銀行口座やクレジットカード情報については入力しないことも考えられるが,そのような第三者が架空の氏名等ではなく,あえて被告の氏名等を登録する理由は通常はないし,本件で第三者が被告の氏名等を登録したことをうかがわせる事情は全くない。その他,本件発信者が登録した被告の氏名等について,被告ではなく第三者が勝手に入力したことをうかがわせる事情はなく,被告の主張は採用することができない。
(略)
以上によれば,本件発信者は被告であると推認するのが相当であるところ,これを覆すに足りる証拠はないから,本件発信者は被告であると認められ,被告が本件各動画のデータを動画共有サイトのサーバー上にアップロードした行為は,株式会社○○の本件各著作物に係る公衆送信権(著作権法23条1項)の侵害に当たると認められる。
< 平成30123日東京地方裁判所[平成29()13897]>

被告は,当該契約者が本件各発信者ではないことの根拠として,①契約者が不特定多数の第三者に同一のインターネット回線契約を使用させている,②法人が契約者である場合にその従業員が発信者となる,③個人が契約者である場合に同居している者が発信者となる,などといった事情が一般に認められ得る旨指摘するが,そのような事情が一般的に認められるということはできない。かえって,インターネット上の動画共有サイトにアップロードされた動画については,当該動画の送信に係るインターネットサービス利用契約の契約者が行ったものと推認するのが相当であるところ,本件において同推認を覆すに足りる証拠は存在しない。
<平成30223日東京地方裁判所[ 平成29()39441]>

一覧に戻る