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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

言語著作物

【書籍のタイトル】

「時効」は時効に関する法律問題を論じる際に不可避の法令用語であり,「管理」は日常よく使用されて民法上も用いられている用語であり,「時効の管理」という表現はこの2語の間に助詞である「の」を挟んで組み合わせた僅か5文字の表現であり,控訴人書籍の発刊以前から時効に関する法律問題を論じる際に「消滅時効の管理」・「時効管理」といった表現が用いられていたものであるから,「時効の管理」はこれを全体として見てもありふれた表現であるというべきである上,「時効の管理」という表現が「時効について権利義務の一方当事者が主体的にこれを管理しコントロールすべきであるとの視点から再認識した思想」を表現したとまでは理解できず,単に「時効を管理する」という事物ないし事実状態を表現しているとしか理解できないのであって,「時効の管理」という表現は思想又は感情を創作的に表現したものと認められない。
<平成201008日大阪高等裁判所[平成20()1700]>

【ウェブサイトの名称】

本件原告記載【注:原告が運営するウェブサイトの名称「里見学園八剣伝」,「里見学園」,「スクエア」及び「空き教室」のこと)の創作性の有無について検討するに,本件原告記載は,いずれも,一単語又は二,三の単語を組み合わせたごく短い表現であり,かつ,平凡で,ありふれた表現であるから,創作性が認められないことは明らかである。
<平成190131日東京地方裁判所[平成18()13706]>

【ゲームソフトで使用される高等学校名】

本件第一学校名【注:原告の著作にかかるゲームソフト「甲子園2」で使用されていた、全国高等学校野球選手権大会の地区予選に出場した4,000校余りの高等学校名のこと】は、実在する高等学校の名称(通称)を加工したものにすぎず、それらの高等学校名の選択や配列に特段の工夫は見られないばかりか、その加工方法も、名称(通称)の第一文字目と第二文字目の順番を入れ替えたのみであって、極めて簡易かつありふれた手法にすぎず、表現としての創作性を有すると認めることはできないから、本件第一学校名を著作物ということはできない。
<平成111118日大阪地方裁判所[平成10()1743]>

【特定の理論を表す名称(造語)】

このような運動・トレーニング方法に関する理論を原告が独創し,その名称を創作したものであるとしても,著作物性は具体的な表現について認められるものであり,理論について認められるものではないから,理論が独創的であるからといって,直ちにその名称に著作物性が認められるわけではない。
そこで,原告が創作した「初動負荷」及び「終動負荷」という名称表現について検討するに,まず「初動負荷」について見ると,ある抽象的な理論や方法(ここでは運動・トレーニング方法がそれに当たる。)を端的に表現する名称として,それを漢字四文字の熟語で構成することは,日本語において常用される表現方法であるところ,運動の動作の開始時において負荷を与えた後に,その負荷を適切に漸減するという運動・トレーニング方法の名称を考えるに当たり,「運動の動作の開始時において」「負荷を与える」という代表的な要素を抽出して,「初動負荷」と名付けることは,「広辞苑」において「初動」とは「初期段階の行動」の意味であるとされていることもふまえると,ありふれた表現にすぎず,創作性を有する著作物と認めることはできないというべきである。
また,「終動負荷」という名称について見ると,確かに「終動」という言葉は一般の日本語にはなく(「広辞苑」にも見られない。),原告の創作した造語であると認められる。しかし,新旧二つの理論や方法に名称を付与する際に,両者の名称が対になるようにするのは日本語として常用される表現方法であることからすると,新規な運動・トレーニング方法を「初動負荷」と名付ける一方で,従来の運動・トレーニング方法を「終動負荷」と名付けることも,やはりありふれた表現にすぎず,創作性を有する著作物と認めることはできないというべきである。
<平成170712日大阪地方裁判所[平成16()5130]>

「映画村」という表現】

「映画村」との表現についても,ある特定の限られた分野又は共通の利害関係を有する一定の社会的集団を「○○村」と表現することは経験則上一般にみられるありふれた表現であって,これに,わずか3字からなる単語にすぎないことも併せると,この表現自体が著作権法上保護すべき創作的な表現であると認めることはできない。
<平成28819日東京地方裁判所[平成28()3218]>

【営業上の個人の呼称(仮名)】

本件名称【注:調査業を営む原告を退職して、同じく調査業を営んでいる被告が、原告在職中に営業上の名称として使用していた呼称(特定の個人名をさすが、調査業営業員が営業上使用していた仮名)のこと】は、特定個人の名称を指すものであり、右の著作物に該当しないことは明らかである。
<平成120913日名古屋地方裁判所[平成11()3573]>

【ニュースの見出し】

一般に,ニュース報道における記事見出しは,報道対象となる出来事等の内容を簡潔な表現で正確に読者に伝えるという性質から導かれる制約があるほか,使用し得る字数にもおのずと限界があることなどにも起因して,表現の選択の幅は広いとはいい難く,創作性を発揮する余地が比較的少ないことは否定し難いところであり,著作物性が肯定されることは必ずしも容易ではないものと考えられる。
しかし,ニュース報道における記事見出しであるからといって,直ちにすべてが著作権法102項に該当して著作物性が否定されるものと即断すべきものではなく,その表現いかんでは,創作性を肯定し得る余地もないではないのであって,結局は,各記事見出しの表現を個別具体的に検討して,創作的表現であるといえるか否かを判断すべきものである。
<平成171006日知的財産高等裁判所[平成17()10049]>
【注:控訴審では、以上のような一般論を述べた上で、結論としては、「当裁判所も,控訴人が主張する具体的なYOL見出しについては,いずれも創作性を認めることができないものと判断する。」とした】
以下、創作性(著作物性)が否定された見出しの具体例をいくつか列挙する:
「マナー知らず大学教授,マナー本海賊版作り販売」
「A・Bさん,赤倉温泉でアツアツの足湯体験」
「道東サンマ漁,小型漁船こっそり大型化」
「中央道走行車線に停車→追突など14台衝突,1人死亡」
「国の史跡傷だらけ,ゴミ捨て場やミニゴルフ場…検査院」
「『日本製インドカレー』は×…EUが原産地ルール提案」

【測定テストの個々の質問文】

測定テストで利用された本件50問の個々の質問文に著作物性が存在するかを検討すると,11つの質問文は,いずれも前述のとおり短文である上,一般的かつ日常的でありふれた表現が用いられており,特徴的な言い回しがあるとも認められない。(したがって,本件50問の個々の質問文の表現に,作者の個性が表出されているとは認められないから,創作性は認められない。そして,個々の質問文に著作物性が認められない以上,これらの独立した質問文を80問集めたものであるQシートの質問文全体についても,それが編集著作物として著作物性を認められるかどうかという点を別にすると,著作物性は認められない。)
<平成141115日東京地方裁判所[平成14()4677]>
【注】本件で問題となった「Qシート」中の質問文は、いずれも最小5文字、最大34文字の短文で、疑問文ではなく、肯定文又は否定文であり(以下の例を参照)、これに対し、「はい」・「?」・「いいえ」で回答する欄が作成されていた。
(質問文の例)
「燃えやすく,冷めやすい」
「少数派になるより,多数派でいることの方が好き」

【替え歌の歌詞】

原告が独自に創作したと主張する歌詞は,「いっぽんといっぽんでにんじゃになって」,「さんぼんとさんぼんでねこさんになって」,「よんほんとよんほんでたこさんになって」,「ごほんとごほんでとりさんになっておそらにとんでった」というものであり,既存の歌詞から1本と1本で「にんじゃ」,3本と3本で「ねこさん」,4本と4本で「たこさん」,5本と5本で「とりさん」と置き換えた部分に創作性があるというものである。
そこで検討するに,原告主張の上記歌詞は,左右の手の指の本数を組み合わせて動物等の動作を一節で表現する手あそび歌である「いっぽんといっぽんで」の趣旨に沿った歌詞の一部であり,1本と1本の指を組み合わせて「忍者」,3本と3本の指を組み合わせて「猫」,4本と4本の指を組み合わせて「たこ」,5本と5本の指を組み合わせて「鳥」というアイデアが決まれば,忍者を「にんじゃ」,「猫」を「ねこさん」,「たこ」を「たこさん」,「鳥」を「とりさん」とそれぞれ表現することは,ありふれたものであると認められる。(したがって,原告主張の上記歌詞は,創作性を有する著作物であるものと認めることはできない。)
<平成210828日東京地方裁判所[平成20()4692]>

【短文】

①ないし⑧の本件各著作物の台詞自体は,いずれもごく短いものであり,台詞そのものに表現上の創作性があるとはいえず,ありふれたものであって,各台詞はそれ自体で被控訴人の個性が表れているということはできない。
<平成281226日知的財産高等裁判所[平成27()10123]>
【注:本件で問題となった「本件各著作物の台詞」は以下の通り】
①「なんて言って休めばいいの?」
②「また襲われてもいいの?」
③「お前ホントは喜んでたんだろ。スリルがあって気持ちいいとか思ってたんだろ」
④「お前みたいな汚れた女とつき合ってやったんだ。感謝しろ!」・「お前みたいな女と付き合ってやってるんだよ」
⑤「頼むから,もう俺のことは忘れて,幸せになってくれ。」
⑥「なんでいまさらそんなこと言うのよ!?あんたの言うこと信じられない!!」・「なんで今さらそんなこと言うの?あんたの言うこと,信じられない!」
⑦「お前は強い子だから,そんなこと(事件のこと)を気にするような子じゃないでしょ」
⑧「あんたが襲われたのはあんたのせいではないけど,私たちのせいでもないんだから,そんなことで私たちを責めないでよね!」

本件においては,本件控訴人記載と本件被控訴人記載とは,表現上「重力波と想定される」,「波動による(もの)」との部分が共通性を有するといえる。そして,上記共通性を有する部分は,EMの効果に関する控訴人の自然科学上の学術的見解を簡潔に示したものであり,控訴人の思想そのものであって,思想又は感情を創作的に表現したものとはいえないから,著作権法において保護の対象となる著作物に当たらないと解するのが相当である。
<平成281110日知的財産高等裁判所[平成28()10050]>

「JR中央線・総武線で東京から、特別快速24分、(中略)地下鉄東西線(総武線に乗入れ)で11分。」という記述のように、誰が記載しても異なった記述になり得ないものは、これを選択したことについても、表現形式においても創作性があるものとはいえず、著作物性を認めることができない。
<平成130123日東京地方裁判所[平成11()13552]>

「感謝」,「感激」,「感動」という言葉は,いずれもありふれた表現であり,このように韻を踏んで単語を並べることも特別に個性的な表現方法であるということはできず,これのみによって表現上の創作性を認めることはできず,これを著作物ということはできない。
<平成190830日東京地方裁判所[平成18()5752]>

原告表現と被告表現において共通するのは,「たった1枚の名刺でキーマンを虜にする」との表現であるが,これは平凡な表現によりなる短文であり,これに創作性を認めることはできない。
<平成200212日知的財産高等裁判所[平成19()10079]>

文A【注:「左右小数の方で計算し支払いを決める。」というもの】の言語の著作物としての創作性についてみても,文Aは極めて短い1文であり,かつ,一般に使用されるありふれた用語で表現されたものにすぎない。人数が少ないことを「小数」と表現している点についても,「小数」の用語自体は「小さい数。わずかな数。」(広辞苑)を意味するから,当該用語を通常の意味で用いたにすぎず,何ら創作性ある表現とは認められない。したがって,文Aに言語の著作物としての創作性を認めることはできない。
<平成230610日東京地方裁判所[平成22()31663]>

本件記事は「風水」とは何かということを表現した文章であって,それを「自然科学」だとし,次に,自然科学の定義を記載する二つの文(文字数にして87文字)からなるものである。確かに,用語の選択,全体の構成等はごく簡潔なものではあるが,風水を「自然科学」であると説明する表現として,他に表現の選択の幅がないということはできず,本件記事のひとかたまりの文章には個性が表れていると認められる。
<平成28129日東京地方裁判所[平成27()21233]>

【標語・スローガン・キャッチフレーズ】

原告スローガン【注:「ボク安心 ママの膝(ひざ)より チャイルドシート」】は,3句構成からなる575調(正確な字数は6字,7字,8字)調を用いて,リズミカルに表現されていること,「ボク安心」という語が冒頭に配置され,幼児の視点から見て安心できるとの印象,雰囲気が表現されていること,「ボク」や「ママ」という語が,対句的に用いられ,家庭的なほのぼのとした車内の情景が効果的かつ的確に描かれているといえることなどの点に照らすならば,筆者の個性が十分に発揮されたものということができる。したがって,原告スローガンは,著作物性を肯定することができる。
<平成130530日東京地方裁判所[平成13()2176]>

原告キャッチフレーズ1は,「音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/英語がどんどん好きになる」というものであり,17文字の第1文と12文字の第2文からなるものであるが,いずれもありふれた言葉の組合せであり,それぞれの文章を単独で見ても,2文の組合せとしてみても,平凡かつありふれた表現というほかなく,作成者の思想・感情を創作的に表現したものとは認められない。
原告キャッチフレーズ2は,「ある日突然,英語が口から飛び出した!」というもの,原告キャッチフレーズ3は,「ある日突然,英語が口から飛び出した」というものであるが,17文字(原告キャッチフレーズ3)あるいはそれに感嘆符を加えた18文字(原告キャッチフレーズ2)のごく短い文章であり,表現としても平凡かつありふれた表現というべきであって,作成者の思想・感情を創作的に表現したものとは認められない。
<平成27320日東京地方裁判所 [平成26()21237]>
【注:本件の控訴審も参照】
控訴人は,創作性の問題の本質は長さの点になく,創作者の何らかの個性が現れていれば足りるし,短い表現であっても,選択の幅が狭いとはいえない以上,控訴人キャッチフレーズ2【「ある日突然,英語が口から飛び出した!」】について,著作物性が肯定されるべきである,控訴人キャッチフレーズ2は,五七調の利用や人物を主語としない表現という意味で,需要者に強く印象を与えるものであり,従業員が試行錯誤して完成させた,他の英会話教材の宣伝文句にはない,独自のものである旨主張する。
しかしながら,許容される表現の長さによって,個性の表れと評価できる部分の分量は異なるし,選択できる表現の幅もまた異なることは自明である。特に,広告におけるキャッチフレーズのように,商品や業務等を的確に宣伝することが大前提となる上,紙面,画面の制約等から簡潔な表現が求められ,必然的に字数制限を伴う場合は,そのような大前提や制限がない場合と比較すると,一般的に,個性の表れと評価できる部分の分量は少なくなるし,その表現の幅は小さなものとならざるを得ない。さらに,その具体的な字数制限が,控訴人キャッチフレーズ2のように,20字前後であれば,その表現の幅はかなり小さなものとなる。そして,アイデアや事実を保護する必要性がないことからすると,他の表現の選択肢が残されているからといって,常に創作性が肯定されるべきではない。すなわち,キャッチフレーズのような宣伝広告文言の著作物性の判断においては,個性の有無を問題にするとしても,他の表現の選択肢がそれほど多くなく,個性が表れる余地が小さい場合には,創作性が否定される場合があるというべきである。
本件において,控訴人商品は,リスニングを中心にすえた英会話教材中,集中して聞き入るという方法ではなく,聞き流す方法を採用した教材であり,控訴人キャッチフレーズ2は,控訴人商品を英会話教材として利用した場合に,自然に流暢に英語を話すことができるようになるという効果があることを謳ったものであるが,その使用方法や効果自体は,事実であるし,消費者に印象を与えるための五七調風の語調の利用や,商品を主語とした表現の採用自体は,アイデアにすぎない。また,劇的に学習効果が現れる印象を与えるための「ある日突然」という語句の組合せの利用や,ダイナミックな印象を与えるための「飛び出した」という語句の利用に関しても,上記アイデアを表現する上で一定の副詞や動詞を使用することは不可欠であるから,他の表現の選択肢はそれほど多くないといわざるを得ない。現に,同様のアイデアを表現する上で,控訴人自身が過去に採用したキャッチフレーズにおいて,「…英語が口から飛び出す!」,「ある日突然,…(英語が話せてびっくりした!)」,「ある日突然,…(自然と英語が口をついて出てくる!)」,「ある日突然,英語が口から飛び出して」,「…突然,英語が口から飛び出す」という控訴人キャッチフレーズ2と共通する部分が存在する。また,キャッチフレーズではないが,控訴人キャッチフレーズ2の公表後に発表された英会話の上達方法に関するウェブサイトにおいて,無意識に自然と流暢に英語を話せるようになるという劇的な効果を説明するために,「ある日突然に,…口から飛び出る」,「ある日突然,…英語のフレーズが口から飛び出してきます。」,「ある日突然「するっと英語が話せる」ようになった」といった語句が使用され,控訴人キャッチフレーズ2と同じ副詞や動詞が選択されているのであって,これらは,控訴人商品と同様の学習効果を表現する上で,他の表現の選択肢が限られていることをうかがわせるものである。このような意味において,控訴人キャッチフレーズ2における語句の選択は,ありふれたものということができる。
したがって,控訴人キャッチフレーズ2に著作物性が認められないとした原判決の判断に,誤りはないというべきである。
<平成271110日知的財産高等裁判所[平成27()10049]>

キャッチコピー「漢方のふるさと中国四千年の歴史が生んだ,あの迷奇がついに日本上陸」及び推奨文「友人からの紹介で朝晩使ってみたら,肌がいつもしっとりして気持ち良く保湿性の良さに驚きました。」については,いずれも極く短く,平凡かつありふれた表現からなる文章であって,これらの文章について,創作性を肯定することはできない。
<平成130928日東京地方裁判所[平成11()8085]>

上記①【注:「検査時間 受診代金[注:各文言の上に『×』の記号あり]」及び「検査なし スグ買える!」という宣伝文句(キャッチフレーズ)をさす】は,旧大阪駅前店において採用された眼科での受診(検査)なしでコンタクトレンズを購入することができるという特徴を表現したものであり,眼科での受診(検査)が不要であると,検査時間や受診代金が不要となり,また検査が不要である結果,コンタクトレンズをすぐ買えることになると認められる。そして,上記①の宣伝文句は,以上のビジネスモデルによる顧客の利便性を消費者に分かりやすく表現しようとしたものと認められるが,不要になる事項を文字(単語)で抽出し,その文字(単語)の上に「×」を付すことはありふれた表現方法であるし,「検査なし スグ買える!」という表現は,眼科での受診(検査)なしでコンタクトレンズをすぐ買えるという旧大阪駅前店のビジネスモデルによる利便性を,文章を若干省略しつつそのまま記載したものにすぎず,そこに個性が現れているということはできない上に,強調したい部分に着色等したり,「!」を付したりするなどして強調することもありふれた表現方法にすぎない。以上より,上記①に創作性があるとは認められない。
<平成31124日大阪地方裁判所[平成29()6322]>
【控訴審<令和元年725日大阪高等裁判所[平成31()500] >も同旨】

原告キャッチコピーは,すごい会議の宣伝広告文言であるから,顧客の印象に残り,記憶されやすいよう,短く端的な表現が求められ,かつ,宣伝の効果がある用語を選択することが求められる。しかるところ,上記のように非常に限られた分量の表現の中で,キャッチコピーという広告媒体を用いて,上記のような用語を用いるなどして効果的にすごい会議の宣伝をしようとすれば,表現内容の点からしても選択の幅にはおのずから限りがある。
実際に,原告キャッチコピー(「会議が変わる。会社が変わる。」)は,句点を除き,わずか6文字からなる二つの文のみを組み合わせて表現されており,その長さ自体からして,他の表現を選択する余地は小さく,また,「会議」,「会社」及び「変わる」という,すごい会議を端的に宣伝する用語のみが用いられていることからも,表現の選択の幅が狭いものというべきである。
以上のように,原告キャッチコピーは,その分量の面と表現内容の面の両面から見て,表現の選択の幅が極めて小さいため,作成者の個性が表れる余地がごく限られているものというべきである。
なお,原告キャッチコピーは,第1文の「議」と第2文の「社」の部分を除き,同じ表現の文章を2回繰り返すという構成をとるものであり,全体としてリズミカルな語感を与えるものではあるが,このような構成を採用すること自体は,アイデアにすぎないというべきであり,直ちに表現の創作性を基礎づけるものではない。
(証拠等)によれば,平成15年6月に「会議が変われば,会社が変わる!」という文言を含む題名の書籍が刊行されたことが認められるところ,前記前提事実のとおり,すごい会議社の設立年月日が同年12月9日であること,原告キャッチコピーの作成者がすごい会議社であることに照らすと,原告キャッチコピーが作成された時点において,原告キャッチコピーと同様の表現が既に用いられていたといえる。また,その他にも,「会議が変われば,仕事が変わる」と題する記事,「習慣を変えれば会議が変わる。会議が変われば会社が変わる?」と題する記事,「会議が変われば会社が変わる!~会議の質向上の秘訣」と題する記事がインターネット上に掲載されており,これらは,すごい会議社の設立前に存在したとは認められないものの,原告キャッチコピーと同様の表現が用いられていることを示す事情といえる。
なお,原告会社は,上記の書籍及び記事について,原告キャッチコピーの翻案権を侵害するものであると主張するものの,それらが原告キャッチコピーに依拠したものであることを認めるに足りる証拠はないから,その主張を採用することはできない。
そうすると,原告キャッチコピーはありふれた表現であるというべきである。
以上を総合すれば,原告キャッチコピーは,その表現の選択の幅が極めて狭いため,作成者であるすごい会議社の個性が表れているとは認め難く,仮に,それが認められるとしても,ありふれた表現であることから,創作性を認めることはできない。
したがって,原告キャッチコピーは,「思想又は感情を創作的に表現」したものとはいえないから,「著作物」であるとは認められない。
<令和3326日東京地方裁判所[平成31()4521]>
【控訴審<令和31027日知的財産高等裁判所[令和3()10048]>も同旨】

【手紙・メール】

本件各手紙は、いずれも、被告Eとの往復書簡であり、特定の者に宛てられ、特定の者を読み手として書かれたものであって、不特定多数の読者を想定した文芸作品とは性格を異にする。しかし、本件各手紙には、単に時候の挨拶、返事、謝礼、依頼、指示などの事務的な内容のみが記載されているのではなく、Gの自己の作品に対する感慨、抱負、被告Eの作品に対する感想、意見、折々の心情、人生観、世界観等が、文芸作品とは異なり、飾らない言葉を用いて述べられている。本件各手紙は、いずれも、Gの思想又は感情を、個性的に表現したものであることは明らかである。以上のとおり、本件各手紙には著作物性がある。
<平成111018日東京地方裁判所[平成10()8761]>

著作権法は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義し、特に「手紙」を除外していないから、右の定義に該当する限り、手紙であっても、著作物であることは明らかである。
<平成120523日東京高等裁判所[平成11()5631]>

本件メール本文の内容は,「「人形形代」を書きまくりましょう!」,「やっと「人形ムード」になった方も多いのではないでしょうか?」,「B先生が「伊勢神業」のお取次をしてくださるまでの貴重なこの時間は,私たちに「人形形代」をもっともっと書かせて頂くための時間ではないでしょうか?」などの個性的な表現を含み,十数文からなる文章であって,誰が作成しても同様の表現になるものとはいえないから,本件メールは,言語の著作物に該当すると認められる。
<平成250321日東京地方裁判所[平成24()16391]>

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