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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

公衆送信権の射程範囲

【公衆送信権侵害の意義】

公衆送信権侵害が認められるためには,「その著作物について」公衆送信が行われることを要するのであるから(同法23条1項),公衆送信は,当該著作物の創作的表現を感得できる態様で行われていることを要するものと解するのが相当である。そして,当該著作物の創作的表現を感得できない態様で公衆送信が行われている場合には,当該著作物について公衆送信が行われていると評価することができないとともに,「その著作物の公衆への提供若しくは提示」(同法191項)がされているものと評価することもできないから,公衆送信権侵害及び著作者としての氏名表示権の侵害は,いずれも認められないものというべきである。
<平成250719日東京地方裁判所[平成24()16694]>

著作物の公衆送信権侵害が成立するためには,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができることを要する。
これを本件についてみると,本件画像には,本件写真の下側の一部がほんの僅かに切り落とされているほかは,本件写真がそのまま用いられていることが認められる。そして,本件画像は,解像度が低く,本件写真と比較して全体的にぼやけたものとなっているものの,依然として,本件写真の被写体の選択・組合せ,被写体と光線との関係,陰影の付け方,色彩の配合等の総合的な表現の同一性が維持されていると認められる。
したがって,本件画像は,これに接する者が,本件写真の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものであると認められる。
<平成31228東京地方裁判所[平成30()19731]>

被告は,本件ソフトウェアの一部に原告の許諾なく改変(アクティベーション機能の回避)を加え(本件ソフトウェアの表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,変更等を加えて新たな創作的表現を付加し), 同改変後のものをダウンロード販売したものと評価できるから,被告は,原告の著作権(翻案権及び公衆送信権)並びに著作者人格権(同一性保持権)を侵害したものと評価すべきであ(る)。なお,原告は,譲渡権侵害を主張しているが,有体物の譲渡ではなくソフトウェアのダウンロードが行われたものとして,公衆送信権が侵害されたものと解すべきである。
<平成30130日 東京地方裁判所[平成29()31837]>

本件サービスを担う本件サーバは,ユーザの携帯電話からの求めに応じて,自動的に音源データの3G2ファイルを送信する機能を有している。
そして,本件サービスは,インターネット接続環境を有するパソコンと携帯電話(ただし,当面はau WIN端末のみ)を有するユーザが所定の会員登録を済ませれば,誰でも利用することができるものであり,原告がインターネットで会員登録をするユーザを予め選別したり,選択したりすることはない。「公衆」とは,不特定の者又は特定多数の者をいうものであるところ(著作権法25項参照),ユーザは,その意味において,本件サーバを設置する原告にとって不特定の者というべきである。
よって,本件サーバからユーザの携帯電話に向けての音源データの3G2ファイルの送信は,公衆たるユーザからの求めに応じ,ユーザによって直接受信されることを目的として自動的に行われるものであり,自動公衆送信(同法219号の4)ということができる。
<平成190525日東京地方裁判所[平成18()10166]>

自動公衆送信は,公衆送信の一態様であり(同項9号の4),公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ,著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣旨,目的は,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で,現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。
<平成23118最高裁判所第三小法廷[平成21()653]>

著作権法にいう「自動公衆送信装置」とは,サーバーやホストコンピュータに限られるものではなく,およそ公衆からの求めに応じて自動的にそこに入力されている映像,音響,文字等を送信するものをいうのであるから,たとえ個人が所有するパソコンであっても,そこに存在するソフトの動作等により上記のような機能を有しているのであれば,「自動公衆送信装置」に該当する。そして,Winnyは,そのネットワーク内でダウンロードが要求されれば,自動的に目的のファイルを送信する機能を有するプログラムソフトであるから,これをダウンロードして使用していた被告人のパソコンが「自動公衆送信装置」に該当することは明らかである。
<平成161130日京都地方裁判所[平成15()2018]>

本件画像は,本件投稿に先立って,インターネット上にアップロードされているが,この段階では,本件画像URLは「up@vpic(省略)」にメールを送信した者しか知らない状態にあり,いまだ公衆によって受信され得るものとはなっていないため,本件画像を「up@vpic(省略)」宛てにメール送信してアップロードする行為(本件画像アップロード)のみでは,公衆送信権の侵害にはならないというべきである。
もっとも,本件においては,メール送信による本件画像のアップロード行為(本件画像アップロード)と,本件画像URLを本件掲示板に投稿する行為(本件投稿)が1分05秒のうちに行われているところ,本件画像URLは本件画像をメール送信によりアップロードした者にしか返信されないという仕組みを前提とすれば,1分05秒というごく短時間のうちに無関係の第三者が当該URLを入手してこれを本件掲示板に書き込むといったことは想定し難いから,本件画像アップロードを行った者と本件投稿を行った者は同一人物であると認めるのが相当である。そして,本件画像URLが本件掲示板に投稿されることにより,本件掲示板をスマートフォンで閲覧した者は,本件画像URL上にアップロードされている本件画像を本件掲示板上で見ることができるようになる。そうすると,本件投稿自体は,URLを書き込む行為にすぎないとしても,本件投稿をした者は,本件画像をアップロードし,そのURLを本件掲示板に書き込むことで,本件画像のデータが公衆によって受信され得る状態にしたものであるから,これを全体としてみれば,本件投稿により,原告の本件写真に係る公衆送信権が侵害されたものということができる。
<平成31228東京地方裁判所[平成30()19731]>

LANシステム

本件LANシステムは,社会保険庁内部部局,施設等機関,地方社会保険事務局及び社会保険事務所をネットワークで接続するネットワークシステムであり,その一つの部分の設置の場所が,他の部分の設置の場所と同一の構内に限定されていない電気通信設備に該当する。したがって,社会保険庁職員が,平成19319日から同年416日の間に,社会保険庁職員が利用する電気通信回線に接続している本件LANシステムの本件掲示板用の記録媒体に,本件著作物を順次記録した行為(本件記録行為)は,本件著作物を,公衆からの求めに応じ自動的に送信を行うことを可能化したもので,原告が専有する本件著作物の公衆送信(自動公衆送信の場合における送信可能化を含む。)を行う権利を侵害するものである。
<平成200226日東京地方裁判所[平成19()15231]>

ストリーミング配信・動画ファイル形式による配信

本件サービスは,ストリーミング配信システムにおいて,テレビ放送に係る音及び影像を,ケーブルテレビ配線を介して受信した上,これをストリーミング配信用サーバ機にデータ化して入力するものであり,上記ストリーミング配信用サーバ機は,インターネット回線を利用して,本件サービスにアクセスしてきた利用者に対し,データ化した音及び影像をストリーミング配信するものであるから,上記ストリーミング配信は自動公衆送信であり,上記ストリーミング配信用サーバ機は,自動公衆送信装置に該当し,本件サービスは,上記のとおり自動公衆送信装置に該当するストリーミング配信用サーバ機にテレビ放送に係る音及び影像を入力することで,利用者からの求めに応じテレビ放送に係る音及び影像を自動的に送信できる状態を作り出しているのであるから,テレビ放送に係る音又は影像を送信可能化するものということができる。
また,本件サービスは,動画ファイル形式による記録及び配信システムにおいて,テレビ放送に係る音及び影像を,ケーブルテレビ配線を介して受信し,録画用サーバ機に動画ファイル形式により記録した上,上記動画ファイルデータを動画ファイル配信用サーバ機の記録媒体に複製又は移動させ,上記動画ファイルデータを,インターネット公開フォルダに指定されたフォルダに記録・蔵置することにより,インターネット回線を利用して当該動画ファイルにアクセスしてきた利用者に,当該動画ファイルをダウンロードすることを可能とするものであるから,上記動画ファイル形式による記録及び配信は自動公衆送信であり,上記動画ファイル配信用サーバ機は自動公衆送信装置に該当し,本件サービスは,上記のとおり自動公衆送信装置に該当する動画ファイル配信用サーバ機のインターネット公開フォルダに動画ファイルデータを記録させることで,利用者の求めに応じテレビ放送に係る音及び影像を自動的に送信できる状態を作り出しているのであるから,テレビ放送に係る音又は影像を送信可能化するものということができる(以上につき,最高裁平成23118日第三小法廷判決参照)。
<平成230905日東京地方裁判所[平成22()7213]>

ファイル共有ソフトを使った送受信

本件サービスは,ユーザーID及びパスワードを登録すれば誰でも利用できるものであり,既に4万人以上の者が登録し,平均して同時に約340人もの利用者が被告サーバに接続して電子ファイルの交換を行っている。そして,送信者が,電子ファイルをパソコンの共有フォルダに蔵置して,本件クライアントソフトを起動して被告サーバに接続すると,送信者のパソコンは,被告サーバにパソコンを接続させている受信者からの求めに応じ,自動的に上記電子ファイルを送信し得る状態となる。
したがって,電子ファイルを共有フォルダに蔵置したまま被告サーバに接続して上記状態に至った送信者のパソコンは,被告サーバと一体となって情報の記録された自動公衆送信装置(法219号の5イ)に当たるということができ,また,その時点で,公衆の用に供されている電気通信回線への接続がされ,当該電子ファイルの送信可能化(同号ロ)がされたものと解することができる。
さらに,上記電子ファイルが受信側パソコンに送信された時点で同電子ファイルの自動公衆送信がされたものと解することができる。
<平成150129日東京地方裁判所[平成14()4237]>
【注】上記「本件サービス」とは、被告が提供している、利用者のパソコン間でデータを送受信させるピア・ツー・ピア(Peer To Peer)技術を用いたサービスで、カナダ国内に中央サーバ(「被告サーバ」)を設置し、インターネットを経由して被告サーバに接続されている不特定多数の利用者のパソコンに蔵置されている電子ファイルの中から、同時に被告サーバにパソコンを接続させている他の利用者が好みの電子ファイルを選択して、無料でダウンロードできるサービスのことです。なお、本件サービスを利用するにはパソコンに本件サービス専用のファイル交換用ソフトウェア(「本件クライアントソフト」)がインストールされることが必要です。

氏名不詳者は,「CD(商品番号)」欄記載のレコードに収録された楽曲をmp3方式により圧縮して複製したファイルをコンピュータ内の記録媒体に記録して蔵置した上,被告の提供するインターネット接続サービスを利用して,「IPアドレス」欄記載のインターネットプロトコルアドレスの割当てを受けてインターネットに接続し,「日時」欄記載の日時頃,ファイル共有ソフトウェアであるShareと互換性のあるソフトウェアを用いて上記複製に係るファイルを不特定の他の上記ソフトウェア利用者からの求めに応じてインターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態に置いた事実が認められる(から,同行為により,原告らが有する本件各レコードの送信可能化権が侵害されたことが明らかであると認められる)。
<平成29626日東京地方裁判所[平成29()12582]>

【リンク貼りの侵害性】

原告は,被告において,本件記事の上部にある動画再生ボタンをクリックすると,本件ウェブサイト上で本件動画を視聴できる状態にしたことが,本件動画の「送信可能化」(法219号の5)に当たり,公衆送信権侵害による不法行為が成立する旨主張する。
しかし,被告は,「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画の引用タグ又はURLを本件ウェブサイトの編集画面に入力することで,本件動画へのリンクを貼ったにとどまる。
この場合,本件動画のデータは,本件ウェブサイトのサーバに保存されたわけではなく,本件ウェブサイトの閲覧者が,本件記事の上部にある動画再生ボタンをクリックした場合も,本件ウェブサイトのサーバを経ずに,「ニコニコ動画」のサーバから,直接閲覧者へ送信されたものといえる。
すなわち,閲覧者の端末上では,リンク元である本件ウェブサイト上で本件動画を視聴できる状態に置かれていたとはいえ,本件動画のデータを端末に送信する主体はあくまで「ニコニコ動画」の管理者であり,被告がこれを送信していたわけではない。したがって,本件ウェブサイトを運営管理する被告が,本件動画を「自動公衆送信」をした(法219号の4),あるいはその準備段階の行為である「送信可能化」(法219号の5)をしたとは認められない。
ところで,原告の主張は,被告の行為が「送信可能化」そのものに当たらないとしても,「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画にリンクを貼ることで,公衆送信権侵害の幇助による不法行為が成立する旨の主張と見る余地もある。
しかし,「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画は,著作権者の明示又は黙示の許諾なしにアップロードされていることが,その内容や体裁上明らかではない著作物であり,少なくとも,このような著作物にリンクを貼ることが直ちに違法になるとは言い難い。そして,被告は,本件ウェブサイト上で本件動画を視聴可能としたことにつき,原告から抗議を受けた時点,すなわち,「ニコニコ動画」への本件動画のアップロードが著作権者である原告の許諾なしに行われたことを認識し得た時点で直ちに本件動画へのリンクを削除している。
このような事情に照らせば,被告が本件ウェブサイト上で本件動画へリンクを貼ったことは,原告の著作権を侵害するものとはいえないし,第三者による著作権侵害につき,これを違法に幇助したものでもなく,故意又は過失があったともいえないから,不法行為は成立しない。
<平成250620日大阪地方裁判所[平成23()15245]>

【リツイート行為の侵害性】

本件リツイート行為によってユーザーのパソコン等の端末に表示される本件写真の画像は,それらのユーザーの求めに応じて,流通情報のデータが送信されて表示されているといえるから,自動公衆送信(公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行うもの[放送又は有線放送に該当するものを除く。])に当たる。
自動公衆送信の主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ,情報を自動的に送信できる状態を作り出す行為を行う者と解されるところ(最高裁平成23年1月18日判決参照),本件写真のデータは,流通情報のデータのみが送信されていることからすると,その自動公衆送信の主体は,流通情報のURLの開設者であって,本件リツイート者らではないというべきである。著作権侵害行為の主体が誰であるかは,行為の対象,方法,行為への関与の内容,程度等の諸般の事情を総合的に考慮して,規範的に解釈すべきであり,カラオケ法理と呼ばれるものも,その適用の一場面であると解される(最高裁平成23年1月20日判決参照)が,本件において,本件リツイート者らを自動公衆送信の主体というべき事情は認め難い。控訴人は,本件アカウントの管理者は,そのホーム画面を支配している上,ホーム画面閲覧の社会的経済的利益を得ていると主張するが,そのような事情は,あくまでも本件アカウントのホーム画面に関する事情であって,流通情報のデータのみが送信されている本件写真について,本件リツイート者らを自動公衆送信の主体と認めることができる事情とはいえない。また,本件リツイート行為によって,本件写真の画像が,より広い範囲にユーザーのパソコン等の端末に表示されることとなるが,我が国の著作権法の解釈として,このような受け手の範囲が拡大することをもって,自動公衆送信の主体は,本件リツイート者らであるということはできない。さらに,本件リツイート行為が上記の自動公衆送信行為自体を容易にしたとはいい難いから,本件リツイート者らを幇助者と認めることはできず,その他,本件リツイート者らを幇助者というべき事情は認められない。
<平成30425日知的財産高等裁判所[平成28()10101]>
【注】本件においては、前提として次のような「事実認定」あった:『本件リツイート行為【注:第三者のツイートについて自己のタイムラインに表示させたり自己のフォロワーにリツイートをしたと知らせたりすることによって,当該第三者のツイートを紹介ないし引用すること】により本件アカウントのタイムラインのURLにリンク先である流通情報のURLへのインラインリンク【注:ユーザーの操作を介することなく,リンク元のウェブページが立ち上がった時に自動的にリンク先のウェブサイトの画面又はこれを構成するファイルが当該ユーザーの端末に送信されて,リンク先のウェブサイトがユーザーの端末上に自動表示されるように設定されたリンクのこと】が設定されて,同URLに係るサーバーから直接ユーザーのパソコン等の端末に画像ファイルのデータが送信され,ユーザーのパソコン等に本件写真の画像が表示されるものである。もっとも,ユーザーのパソコン等の端末に,本件写真の画像を表示させるためには,どのような大きさや配置で,いかなるリンク先からの写真を表示させるか等を指定するためのプログラム(HTMLプログラム,CSSプログラム,JavaScriptプログラム)が送信される必要があること,本件リツイート行為の結果として,そのようなプログラムが,リンク元のウェブページに対応するサーバーからユーザーのパソコン等に送信されること,そのことにより,リンク先の画像とは縦横の大きさが異なった画像や一部がトリミングされた画像が表示されることがあること,本件アカウントのタイムラインにおいて表示されている画像は,流通情報の画像とは異なるものであること(縦横の大きさが異なるし,トリミングされており,控訴人の氏名も表示されていない)が認められる。』

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