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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

その他の支分権の射程範囲

上映権の射程範囲】

同装置【注:映像の連続再生を伴うレーザーディスクカラオケ装置(本件装置)のこと】で使用されるレーザーディスクはその中に原告の管理する音楽著作物(管理著作物)の歌詞の文字表示及び伴奏音楽とともに連続した映像を収録したものであり、映画の効果に類似する視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物であるから、著作権法上は、映画の著作物に該当する(23項)。そして、本件装置により右レーザーディスクを再生するとき、モニターテレビ画面には収録された連続した映像と音楽著作物の歌詞の文字表示が映し出され、スピーカーからは収録された管理著作物の伴奏音楽が流れ出るのであるから、これが映画の著作物の上映に該当することは明らかである。したがって、モニターテレビに管理著作物の歌詞の文字表示が映し出されることはその管理著作物の上映に該当するし、スピーカーから流れ出る管理著作物の伴奏音楽も、(中略)映画の著作物の上映に該当する(。)
(略)
したがって、同被告らが本件店舗において本件装置により管理著作物を収録したレーザーディスクを再生しこれに合わせてホステス等従業員や客に歌唱させるときは、それは、管理著作物の上映(歌詞の文字表示と伴奏音楽部分)と演奏(歌唱部分)に当たり、これらの行為をすることは、原告の管理著作権の上映権及び演奏権の侵害となるといわざるを得ない。
<平成60317日大阪地方裁判所[昭和63()6200]>

本件映画は本件漫画の二次的著作物であり,原告は本件映画の上映権を有するから,原告の許諾なく本件映画を公に上映した場合には,原告の本件映画に係る上映権を侵害したことになる。
原告は,被告の具体的な上映行為として,本件各映画祭における上映を主張する。確かに,被告が本件各映画祭に本件映画を出展し,本件各映画祭において,本件映画が上映されたことは認められる。
しかしながら,上映とは,著作物を映写幕その他の物に映写することであるから,本件各映画祭において,その主催者ではなく,被告が本件映画を上映したとは直ちにいい難い。
この点,原告は,本件各映画祭では,被告の応募行為に対応して本件映画を上映したものであり,被告は,映画監督・製作者としての名声や入賞すれば賞金を得るなどの利益を享受するから,被告が上映行為の主体である旨主張する。しかしながら,被告の出展が本件各映画祭における上映の契機であることや,原告の主張する被告の利益を考慮したとしても,被告が本件各映画祭における上映の枢要な行為をしたとは認め難いし,その他これを認めるに足りる証拠もない。
したがって,被告が本件各映画祭において本件映画を上映したとは認められないから,被告が原告の本件映画に係る上映権を侵害したとは認められない。
<平成251122日 東京地方裁判所[平成25()13598]>

公の伝達権の射程範囲】

著作権法23条2項は,「著作者は,公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。」と規定する。
控訴人は,本件リツイート者らをもって,著作物をクライアントコンピュータに表示させた主体と評価すべきであるから,本件リツイート者らが受信装置であるクライアントコンピュータを用いて公に伝達していると主張する。しかし,著作権法23条2項は,公衆送信された後に公衆送信された著作物を,受信装置を用いて公に伝達する権利を規定しているものであり,ここでいう受信装置がクライアントコンピュータであるとすると,その装置を用いて伝達している主体は,そのコンピュータのユーザーであると解され,本件リツイート者らを伝達主体と評価することはできない。(中略)そして,その主体であるクライアントコンピュータのユーザーが公に伝達しているというべき事情も認め難いから,公衆伝達権の侵害行為自体が認められない。
<平成30425日知的財産高等裁判所[平成28()10101]>

【口述権の射程範囲】

原告は,被告らにおいて,平成13年度及び平成14年度の維持講習の際に,12年度資料を複製した13年度資料及び14年度資料を,原告の許諾なく使用し,不特定多数又は特定多数の公衆に対して口頭で伝達したものであり,原告の有する12年度資料を公に口述する権利を侵害した旨主張する。
しかし,維持講習の講習資料は,講演の内容を示し,解説しているものではあるが,その性質上,内容が朗読等によって口述されるものではないのであって,同資料をもとに講演をすることをもって,同資料を口述したということはできない。
<平成180227日東京地方裁判所[平成17()1720]>

著作者は,その言語の著作物を公に口述する権利を専有するところ(著作権法24条),「公に」とは,その著作物を,公衆に直接見せ又は聞かせることを目的とすることをいい(同法22条),「公衆」には,不特定の者のほか,特定かつ多数の者が含まれる(同法25項)。そして,当該著作物の利用が公衆に対するものであるか否かは,事前の人的結合関係の強弱に加え,著作物の種類・性質や利用態様等も考慮し,社会通念に従って判断するのが相当である。
そこで本件についてみると,被告Bが,「心検」の受講者等のうち,Eの勧めを受けて被告Bのもとを訪れた者の一部に対し,本件経文を読み上げたことがあり(以下,本件経文の読上げを「祈願」ということがある。),また,本件経文を一人で又は被告Cとともに読み上げたことがあるところ,上記行為は,いずれも,言語の著作物である本件経文を口頭で伝達するものとして,「口述」(著作権法2118号)に該当する。
しかし,上記の口述のうち,後者(被告Bのみ又は被告C2人による読上げ)については,自宅内において,被告Bのみで又はその妻である被告Cと二人で行われたものであるから,上記口述が,公衆に直接聞かせることを目的として行われたものとは認められない。
したがって,上記読上げが「公に」なされたものと認められない以上,上記読上げが,本件経文に係る原告の口述権を侵害するものとは認められない。
次に,上記の口述のうち,前者(被告Bが,同被告のもとを訪れた者に対し,本件経文を読み上げたこと)が,本件経文を「公に」口述したものとして,口述権侵害を構成するか否かについて検討する。
(略)
以上によれば,被告Bが祈願を行った人数は56名にとどまるとみるべきであって,被告Bが多数人に対して祈願を行い,本件経文①ないし③を読み上げたものと認めることはできない。
この点に関し,原告は,上記読上げの時点における同席者が特定の少数人であったとしても,任意の条件の下に人数が増減する可能性があれば,不特定の者を対象にするものとして「公に」を充足すると主張する。
しかし,被告Bの祈願を受けたとされる者は,いずれもEから心検の「課外授業」等として被告Bの紹介を受けた者か,被告Bの子の友人等,被告Bと個人的な関係のある者として記載されているのであって,被告Bが,このような範囲を超えた者に対し,本件経文の読み上げを行ったことを認めるに足りるものではない。そうすると,祈願の対象となった範囲の者は限定されているのであって,原告が主張するように任意の条件の下に人数が増減するような範囲の者ではないというべきである。
<平成251213日東京地方裁判所[平成24()24933]>

【頒布権の射程範囲】

特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国の国内において当該特許に係る製品を譲渡した場合には,当該特許製品については特許権はその目的を達成したものとして消尽し,もはや特許権の効力は,当該特許製品を再譲渡する行為等には及ばないことは,当審の判例とするところであり(最高裁平成9年7月1日第三小法廷判決),この理は,著作物又はその複製物を譲渡する場合にも,原則として妥当するというべきである。けだし,()著作権法による著作権者の権利の保護は,社会公共の利益との調和の下において実現されなければならないところ,()一般に,商品を譲渡する場合には,譲渡人は目的物について有する権利を譲受人に移転し,譲受人は譲渡人が有していた権利を取得するものであり,著作物又はその複製物が譲渡の目的物として市場での流通に置かれる場合にも,譲受人が当該目的物につき自由に再譲渡をすることができる権利を取得することを前提として,取引行為が行われるものであって,仮に,著作物又はその複製物について譲渡を行う都度著作権者の許諾を要するということになれば,市場における商品の自由な流通が阻害され,著作物又はその複製物の円滑な流通が妨げられて,かえって著作権者自身の利益を害することになるおそれがあり,ひいては「著作者等の権利の保護を図り,もつて文化の発展に寄与する」(著作権法1条)という著作権法の目的にも反することになり,()他方,著作権者は,著作物又はその複製物を自ら譲渡するに当たって譲渡代金を取得し,又はその利用を許諾するに当たって使用料を取得することができるのであるから,その代償を確保する機会は保障されているものということができ,著作権者又は許諾を受けた者から譲渡された著作物又はその複製物について,著作権者等が二重に利得を得ることを認める必要性は存在しないからである。
ところで,映画の著作物の頒布権に関する著作権法26条1項の規定は,文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(1948年6月26日にブラッセルで改正された規定)が映画の著作物について頒布権を設けていたことから,現行の著作権法制定時に,条約上の義務の履行として規定されたものである。映画の著作物にのみ頒布権が認められたのは,映画製作には多額の資本が投下されており,流通をコントロールして効率的に資本を回収する必要があったこと,著作権法制定当時,劇場用映画の取引については,前記のとおり専ら複製品の数次にわたる貸与を前提とするいわゆる配給制度の慣行が存在していたこと,著作権者の意図しない上映行為を規制することが困難であるため,その前段階である複製物の譲渡と貸与を含む頒布行為を規制する必要があったこと等の理由によるものである。このような事情から,同法26条の規定の解釈として,上記配給制度という取引実態のある映画の著作物又はその複製物については,これらの著作物等を公衆に提示することを目的として譲渡し,又は貸与する権利(同法26条,2条1項19号後段)が消尽しないと解されていたが,同法26条は,映画の著作物についての頒布権が消尽するか否かについて,何らの定めもしていない以上,消尽の有無は,専ら解釈にゆだねられていると解される。
そして,本件のように公衆に提示することを目的としない家庭用テレビゲーム機に用いられる映画の著作物の複製物の譲渡については,市場における商品の円滑な流通を確保するなど,上記()()及び()の観点から,当該著作物の複製物を公衆に譲渡する権利は,いったん適法に譲渡されたことにより,その目的を達成したものとして消尽し,もはや著作権の効力は,当該複製物を公衆に再譲渡する行為には及ばないものと解すべきである。
<平成14425最高裁判所第一小法廷[平成13()952]>

原告は,被告○○社が,本件テレビ番組がテレビで放送されることを目的として,同番組をテレビ局に販売し,その後同番組がテレビで放送されたことにより,本件ビデオ映像に係る原告の著作権(頒布権及び公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権及び公表権)を侵害されたものと認められる。
なお,被告らは,本件テレビ番組の販売先は特定かつ少数であるから,被告○○社が本件テレビ番組を販売した行為は原告の著作権(頒布権)を侵害するものではないと主張する。しかしながら,被告○○社が,本件テレビ番組がテレビで放送されること,すなわち,同番組を公衆に提示すること(著作権法2119号)を目的として同番組をテレビ局に販売したことについては上記認定のとおりであるから,被告○○社の上記行為は原告の著作権(頒布権)を侵害するものといえる。
<平成240322日東京地方裁判所[平成22()34705]>

【譲渡権の射程範囲】

著作権法上,譲渡権とは,「その著作物…をその原作品又は複製物…の譲渡により公衆に提供する権利」(同法26条の2)とされ,ここにいう「譲渡」とは,目的物の所有権を移転させる行為をいうものと解されるところ,被告が本件各プログラムを改変して被告の顧客のコンピュータやサーバーにインストールする行為は,本件各プログラムの「原作品」や「複製物」の所有権を移転させるものではなく,そもそも上記意味における「譲渡」に当たらないから,同行為が,原告の有する本件各プログラムの譲渡権を侵害するということはできない。
<平成2883東京地方裁判所[平成27()29129]>

原告は,(いわゆるソフトウェアの「ダウンロード販売」について)譲渡権侵害を主張しているが,有体物の譲渡ではなくソフトウェアのダウンロードが行われたものとして,公衆送信権が侵害されたものと解すべきである。
<平成30130日 東京地方裁判所[平成29()31837]>

オリジナル人形の著作権の利用につき原告の許諾を受けた被告○○から,被告△△が本件ぬいぐるみを買い入れた事実が認められるところであり,原告の被告△△に対する差止請求は,著作権法26条の221号の点からも,失当であることが明らかである。
<平成140131日東京地方裁判所[平成13()12516]>

【貸与権の射程範囲】

著作権法26条の3にいう「公衆」については,同法25項において特定かつ多数の者を含むものとされているところ,特定かつ少数の者のみが貸与の相手方になるような場合は,貸与権を侵害するものではないが,少数であっても不特定の者が貸与の相手方となる場合には,同法26条の3にいう「公衆」に対する提供があったものとして,貸与権侵害が成立するというべきである。
この点,本件のように,プログラムの著作物について,リース業者がリース料を得て当該著作物を貸与する行為は,不特定の者に対する提供行為と解すべきものである。けだし,「特定」というのは,貸与者と被貸与者との間に人的な結合関係が存在することを意味するものと解されるところ,リース会社にとってのリース先(すなわちユーザ)は,専ら営業行為の対象であって,いかなる意味においても人的な結合関係を有する関係と評価することはできないからである。
本件においては,被告○○,△△及び□□は,いずれもNTTグループの企業であるにしても,リース業者である被告NTTリースとの関係では単なるリース先(ユーザ)であるから,被告NTTリースが被告○○等に対して本件各プログラムを貸与した行為は,公衆に対する提供に当たり,原告の貸与権を侵害するものというべきである。
<平成160618日東京地方裁判所[平成14()15938]>

著作者は,その著作物をその複製物の貸与により公衆に提供する権利を専有する(著作権法26条の3)。ここに「公衆」とは,同法25項が「公衆」には,「特定かつ多数の者を含むものとする。」と定めていることから,複製物の貸与を受ける者が,不特定又は特定多数の者であれば,公衆への貸与に該当するものと解される。
Aは被告の受託者として,第三者(S堂)に写真の使用を許諾したものであり,S堂は,広く一般に写真の貸出業を行う写真エージェンシーであるAにとって,不特定の者に該当すると認められる(Aが,本件写真の使用許諾先をS堂(特定の者)に限定していたとの事実は認められない。)。そして,Aにとって,S堂は不特定の者に該当するのであるから,Aに対して,本件写真の使用許諾行為を委託した被告にとっても,S堂は不特定の者に該当すると認めるのが相当である。したがって,被告が,Aに委託して,本件写真を第三者に貸し出した行為は,本件写真に係る原告の著作権(貸与権)の侵害に当たる。
<平成220330日東京地方裁判所[平成21()6604]>

著作権法の「貸与」とは,使用の権原を取得させる行為をいうが(著作権法28項),図書館等において書籍を利用者に閲覧,謄写させる行為は利用者に使用権原を取得させるものではないから,「貸与」に当たるということはでき(ない。)
<平成220226日東京地方裁判所[平成20()32593]>

著作権法上,貸与権とは,「著作物…をその複製物…の貸与により公衆に提供する権利」(同法26条の3)とされ,「貸与」とは,使用期間を限った上で複製物を占有して使用する権原を取得させる行為をいうものと解されるところ(同法2条8項参照),被告が本件各プログラムをレンタルサーバ上に設置した上,被告の顧客にインターネットを通じて本件各プログラムを使用させる行為は,使用期間を限った上で本件各プログラムの「複製物」を占有して使用する権原を取得させるものではなく(原告は,被告の顧客のパソコンを「複製物」と主張するところ,被告が同パソコンを顧客に「貸与」していないことは明らかである。仮に,本件各プログラムが設置されたレンタルサーバを「複製物」と解したとしても,インターネットを通じてレンタルサーバ上のプログラムを提供する行為は,同レンタルサーバを顧客の占有下に置くものではないから,やはり複製物を「貸与」するものと解することはできない。),そもそも上記意味における「貸与」に当たらないから,同行為が,原告の有する本件各プログラムの貸与権を侵害するということはできない。
<平成2883東京地方裁判所[平成27()29129]>

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