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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作権の制限規定②

【法42条の意義と解釈

放送事業者は、法98条により、「その放送に係る音又は影像を録音し、録画し、又は写真その他これに類似する方法により複製する権利を専有する」ものとされているが、その権利は、法102条、42条によつて制限され、「裁判手続のために必要と認められる場合(中略)には、その必要と認められる限度において、複製することができる」ものとされているのであつて、本件テレビニュースの映像を録画し、写真によつて複製したことは、右の「必要と認められる限度」をこえるものでないことはもとより、本件映像が既に広く公衆に直接受信されたものであること並びに複製の部数及び態様に照らし、法42条ただし書所定の、放送事業者の「利益を不当に害することとなる場合」にも当たるものでないことは明らかである。従つて、本件ビデオテープ等の作成が、放送事業者の著作権法上の権利を侵害するものとは言い得ない。
<昭和580713日東京高等裁判所[昭和55()391]>
【注】上記の判示は、刑事裁判手続きのために司法警察員が作成した「テレビニュースの映像を録画したビデオテープ二巻及びその映像の一部を静止写真化したテレビニュース画面写真帳二冊」を原審が証拠として採用したことに対して、そのことが「番組製作者の著作権をも侵害する結果を招来している」のであるから原審には違法な採証があったなどという主張に対してなされたものである。

被告は,平成29年1月16日,原告絵画を複製し,他の複数の絵画も複製した上で,これらを掲載した文書(乙93,97)を作成し,これを本件第4回弁論準備手続期日において,「原告主張の「創作的表現」に独創性,美的鑑賞の対象となり得る美的特定が認められないこと等」を立証する目的で証拠として取り調べるよう申し出たものである。
本件訴訟において,①原告デザイン19並びに20の1及び2のそれぞれにつき著作物性が争点であったこと,②被告が,平成29年1月13日付け準備書面において,原告デザイン19の筆のイラストは実物の筆を描写したものにすぎず,証拠(乙93)に照らして筆のイラストとしてありふれた表現であるとし,原告デザイン20の1及び2のレモン2つが並ぶイラストは証拠(乙97)に照らしありふれた表現であるとして,独創性,美的鑑賞の対象となり得る美的特性が認められないと主張したことは,当裁判所に顕著である。
証拠(乙93,97)及び弁論の全趣旨によれば,③原告デザイン19は別紙原告デザイン目録原告デザイン19欄記載のとおりであり,筆の全体を描いた絵画を含むものであること,④原告デザイン20の1及び2は同目録原告デザイン20の1及び2の各欄記載のとおりであり,レモンが2つ並んだ絵画を含むものであること,⑤乙93は,原告筆絵画のほかに5点の筆の絵画を記載し,それぞれの絵画について出典等を記載したものであること,乙97は原告レモン絵画のほかに6点のレモンが2つ並んだ部分を含む絵画を記載して,それぞれの絵画について出典等を記載したものであることが認められる。
本件訴訟は民事訴訟であって,著作権法42条1項の「裁判手続」であるところ,上記事実関係によれば,原告絵画はいずれも本件訴訟の争点につき被告の主張を裏付ける証拠とするために複製されたもので,争点に関する証拠を提出するために複製されたということができる。争点に関する証拠を提出することは本件訴訟の審理のために必要であるから,上記複製は「裁判手続のために必要と認められる」ものといえる。また,上記③~⑤の認定事実によれば,著作物性が争点となった絵画も原告絵画も筆及びレモンのそれぞれ全部が描かれたものであるということができ,また,筆及びレモンの全部について複製して証拠とする必要性があるといえるから,上記複製は必要と認められる限度の複製であるということができる。(したがって,乙93及び97における複製につき,原告絵画の著作権侵害がないことが明らかである。 )
<平成291130日東京地方裁判所[平成28()23604]>

本件LANシステムは,社会保険庁内部部局,施設等機関,地方社会保険事務局及び社会保険事務所をネットワークで接続するネットワークシステムであり,その一つの部分の設置の場所が,他の部分の設置の場所と同一の構内に限定されていない電気通信設備に該当する。したがって,社会保険庁職員が,平成19319日から同年416日の間に,社会保険庁職員が利用する電気通信回線に接続している本件LANシステムの本件掲示板用の記録媒体に,本件著作物を順次記録した行為(本件記録行為)は,本件著作物を,公衆からの求めに応じ自動的に送信を行うことを可能化したもので,原告が専有する本件著作物の公衆送信(自動公衆送信の場合における送信可能化を含む。)を行う権利を侵害するものである。
被告は,本件著作物については,まず,社会保険庁職員が複製しているところ,この複製行為は421項本文により複製権侵害とはならず,その後の複製物の利用行為である公衆送信行為は,その内容を職員に周知するという行政の目的を達するためのものなので,4911号の適用はなく,原告の複製権を侵害しない,また,複製物を公衆送信して利用する場合に,その利用方法にすぎない公衆送信行為については,42条の目的以外の目的でなされたものでない以上,著作権者の公衆送信権侵害とはならない旨主張する。
しかし,社会保険庁職員による本件著作物の複製は,本件著作物を,本件掲示板用の記録媒体に記録する行為であり,本件著作物の自動公衆送信を可能化する行為にほかならない。そして,421項は,「著作物は…行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には,その必要と認められる限度において,複製することができる。」と規定しているとおり,特定の場合に,著作物の複製行為が複製権侵害とならないことを認めた規定であり,この規定が公衆送信(自動公衆送信の場合の送信可能化を含む。)を行う権利の侵害行為について適用されないことは明らかである。また,421項は,行政目的の内部資料として必要な限度において,複製行為を制限的に許容したのであるから,本件LANシステムに本件著作物を記録し,社会保険庁の内部部局におかれる課,社会保険庁大学校及び社会保険庁業務センター並びに地方社会保険事務局及び社会保険事務所内の多数の者の求めに応じ自動的に公衆送信を行うことを可能にした本件記録行為については,実質的にみても,421項を拡張的に適用する余地がないことは明らかである。なお,被告が主張する4911号は,42条の規定の適用を受けて作成された複製物の目的外使用についての規定であるから,そもそも42条の適用を受けない本件について,4911号を議論する必要はない。
<平成200226日東京地方裁判所[平成19()15231]>

処遇規程には,死刑確定者が申告表を提出した場合,所轄の統括は,当該死刑確定者との関係,信書の発受を必要とする事情等を踏まえた可否の方針に関する意見を添え,所長の決裁を受けるものと定められているところ,P10統括は,前記認定のとおり,信書の発受の可否についての判断資料とするためP22副看守長を介して本件原稿の提出を受けたものである。そして,本件願箋についての意見を添えて決裁を受けるに際し,その資料として本件原稿の写しを作成して添付したものであるが,本件原稿の原本によらず,写しを作成して添付する行為は,原本の紛失,汚損等のおそれを考慮すれば合理的で,当該職務の遂行として適切な方法であるといえるから,これは処遇規程に定める申告表が提出された場合に行うべき職務に必要な行為として写しを作成したものといえる。
そうすると,P10統括の行為は,著作権法42条1項本文に定める「行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合」に該当するといえる。
したがって,P10統括が本件原稿の写しを作成した行為は,著作権を侵害する違法な行為とはいえない。
原告は,原告の許諾なく作成した本件原稿の写しを利用して別件控訴理由書を作成する行為は,本件原稿についての原告の著作権を侵害するものである旨主張する。
ところで,別件控訴理由書は,本件報告書を引用して作成したものであるので,まず本件報告書作成行為そのものの適法性が問題とされなければならないが,本件報告書は,本件原稿の提出を受けた経緯及びその体裁等の外観的特徴を説明報告するとともに,その3(2)部分において,別件控訴事件の裁判所に対し,判読が困難な自筆で記載され,当て字も多用されている本件原稿の内容及び形式を簡潔かつ正確に報告できるようにするため,175枚ある本件原稿について,創作的な表現を加えることなく,本件原稿の構成に沿って各話ごとにその要旨を簡潔に記載し,必要に応じて,本件原稿の記載の一部を,他と区別して括弧書きにして引用しているものであるから,その作成行為は,本件原稿の著作権の利用を問題とすべき上記3(2)部分に限っても翻案に当たらず複製にすぎない。
そして,本件報告書は,別件控訴事件に提出するために作成されたものであることからすれば,その作成のためにした複製行為が著作権法42条1項本文に定める「裁判手続のために必要と認められる場合」に該当することは明らかである。また,本件報告書は,175頁にもわたる本件原稿につき簡潔に概要を記載したもので,裁判手続に必要と認められる合理的範囲でその内容を記載したものといえるから,これが特に原告の著作権を不当に害するものとして同項ただし書きを問題とする余地もない。
そうすると,本件報告書の3(2)部分を引用して作成されたと認められる別件控訴理由書も,結局,本件原稿を複製して作成したものということになるところ,この複製行為が著作権法42条1項本文に定める「裁判手続のために必要と認められる場合」に該当することは明らかであるといえるし,また,原告の著作権を不当に害するものとして同項ただし書きを問題とする余地がないことも本件報告書についてみたものと同様である。
したがって,本件報告書及び別件控訴理由書を作成する行為は,いずれも原告の著作権を侵害する違法な行為とはいえない。
なお,原告は,著作権法42条における「著作物」には未発行のものは含まれないから,本件原稿の複製について同条1項は適用されない旨主張するが,日本国民の著作物であれば著作権法の保護を受けるものであり(同法6条1項),他にこれを制限する規定もないことからすれば,原告の主張は理由がない(本件原稿は,未公表の原稿であるが,その写しが行政機関内で利用されたことによっては公表されたとはいえないし,また別件訴訟及び本件訴訟においても,その内容は本件報告書で示された概略程度でしか知り得ないので,これまた本件原稿が公表されたとはいえず,いずれにしても,本件において,著作権法18条の公表権侵害の問題は生じない。)。
<平成27611日大阪地方裁判所[平成26()7683]>

【法45条の意義と解釈】

美術の著作物の原作品の所有権が譲渡された場合における著作権者と所有権者との関係について規定する著作権法451項、47条の定めは、著作権者が有する権利(展示権、複製権)と所有権との調整を図るために設けられたものにすぎず、所有権が無体物の面に対する排他的支配権能までも含むものであることを認める趣旨のものではないと解される。
<昭和59120最高裁判所第二小法廷[昭和58()171]>

【法46条の意義と解釈】

46条柱書は,美術の著作物で「その原作品が街路,公園その他の一般公衆に開放されている屋外の場所又は建造物の外壁その他一般公衆の見やすい屋外の場所」に「恒常的に設置されているもの」は,所定の場合を除き,いずれの方法によるかを問わず,利用することができる旨を規定し,屋外の場所に恒常的に設置された美術の著作物について,一定の例外事由に当たらない限り公衆による自由利用を認めている。同規定の趣旨は,美術の著作物の原作品が,不特定多数の者が自由に見ることができるような屋外の場所に恒常的に設置された場合,仮に,当該著作物の利用に対して著作権に基づく権利主張を何らの制限なく認めることになると,一般人の行動の自由を過度に抑制することになって好ましくないこと,このような場合には,一般人による自由利用を許すのが社会的慣行に合致していること,さらに,多くは著作者の意思にも沿うと解して差し支えないこと等の点を総合考慮して,屋外の場所に恒常的に設置された美術の著作物については,一般人による利用を原則的に自由としたものといえる。
<平成130725日東京地方裁判所[平成13()56]>

著作権法46条柱書所定の「一般公衆に開放されている屋外の場所」又は「一般公衆の見やすい屋外の場所」とは,不特定多数の者が見ようとすれば自由に見ることができる広く開放された場所を指すと解するのが相当である。原告作品が車体に描かれた本件バスは,市営バスとして,一般公衆に開放されている屋外の場所である公道を運行するのであるから,原告作品もまた,「一般公衆に開放されている屋外の場所」又は「一般公衆の見やすい屋外の場所」にあるというべきである。
<平成130725日東京地方裁判所[平成13()56]>

著作権法46条柱書所定の「恒常的に設置する」とは,社会通念上,ある程度の長期にわたり継続して,不特定多数の者の観覧に供する状態に置くことを指すと解するのが相当である。原告作品が車体に描かれた本件バスは,特定のイベントのために,ごく短期間のみ運行されるのではなく,他の一般の市営バスと全く同様に,継続的に運行されているのであるから,原告が,公道を定期的に運行することが予定された市営バスの車体に原告作品を描いたことは,正に,美術の著作物を「恒常的に設置した」というべきである。
<平成130725日東京地方裁判所[平成13()56]>

確かに,著作権法46条が適用されるものとしては,公園や公道に置かれた銅像等が典型的な例といえる。しかし,不特定多数の者が自由に見ることができる屋外に置かれた美術の著作物については,広く公衆が自由に利用できるとするのが,一般人の行動の自由の観点から好ましいなどの同規定の趣旨に照らすならば,「設置」の意義について,不動産に固着されたもの,あるいは一定の場所に固定されたもののような典型的な例に限定して解する合理性はないというべきである。
<平成130725日東京地方裁判所[平成13()56]>

著作権法464号は,「専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し,又はその複製物を販売する場合」には,一般人が当該美術の著作物を自由に利用することはできない旨規定する。同規定は,法46条柱書が,一般人の行動に対する過度の制約の回避,社会的慣行の尊重及び著作者の合理的意思等を考慮して,一般人の著作物の利用を自由としたことに対して,仮に,専ら複製物の販売を目的として複製する行為についてまで,著作物の利用を自由にした場合には,著作権者に対する著しい経済的不利益を与えることになりかねないため,法46条柱書の原則に対する例外を設けたものである。
そうすると,法464号に該当するか否かについては,著作物を利用した書籍等の体裁及び内容,著作物の利用態様,利用目的などを客観的に考慮して,「専ら」美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し,又はその複製物を販売する例外的な場合に当たるといえるか否か検討すべきことになる。
<平成130725日東京地方裁判所[平成13()56]>

【法47条の意義と解釈】

美術の著作物の原作品の所有権が譲渡された場合における著作権者と所有権者との関係について規定する著作権法451項、47条の定めは、著作権者が有する権利(展示権、複製権)と所有権との調整を図るために設けられたものにすぎず、所有権が無体物の面に対する排他的支配権能までも含むものであることを認める趣旨のものではないと解される。
<昭和59120最高裁判所第二小法廷[昭和58()171]>

著作権法47条は、美術の著作物又は写真の著作物の原作品により、第25条に規定する権利を害することなく、これらの著作物を公に展示する者は、観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子にこれらの著作物を掲載することができる旨規定するところ、その趣旨とするところは、美術の著作物又は写真の著作物の原作品により、これらの著作物を公に展示するに際し、従前、観覧者のためにこれらの著作物を解説又は紹介したカタログ等にこれらの著作物が掲載されるのが通常であり、また、その複製の態様が、一般に、鑑賞用として市場において取引される画集とは異なるという実態に照らし、それが著作物の本質的な利用に当たらない範囲において、著作権者の許諾がなくとも著作物の利用を認めることとしたものであつて、右規定にいう「観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子」とは、観覧者のために著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小型のカタログ、目録又は図録といったものを意味し、たとえ、観覧者のためであっても、実質的にみて鑑賞用の豪華本や画集といえるようなものは、これに含まれないものと解するのが相当である。この点について更に敷えんすると、右の「小冊子」に該当するというためには、これが解説又は紹介を目的とするものである以上、書籍の構成において著作物の解説が主体となっているか、又は著作物に関する資料的要素が多いことを必要とするものと解すべきであり、また、観覧者のために著作物の解説又は紹介を目的とするものであるから、たとえ、観覧者に頒布されるものでありカタログの名を付していても、紙質、規格、作品の複製形態等により、鑑賞用の書籍として市場において取引される価値を有するものとみられるような書籍は、実質的には画集にほかならず、右の「小冊子」には該当しないものといわざるをえない。
<平成11006日東京地方裁判所[昭和62()1744]>

著作権法47条所定の観覧者のために美術の著作物又は写真の著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子とは、観覧者のために展示された著作物を解説又は紹介することを目的とする小型のカタログ、目録又は図録等を意味するものであり、展示された原作品を鑑賞しようとする観覧者のために著作物の解説又は紹介をすることを目的とするものであるから、掲載される作品の複製の質が複製自体の鑑賞を目的とするものではなく、展示された原作品と解説又は紹介との対応関係を明らかにする程度のものであることを前提としているものと解され、たとえ、観覧者に頒布されるものであっても、紙質、判型、作品の複製態様等を総合して、複製された作品の鑑賞用の図書として販売されているものと同様の価値を有するものは、同条所定の小冊子に含まれないと解するのが相当である。
<平成100220日東京地方裁判所[平成6()18591]>

「小冊子」は「観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする」ものであるとされていることからすれば,観覧する者であるか否かにかかわらず多数人に配布するものは,「小冊子」に当たらないと解するのが相当である。
<平成211126日東京地方裁判所[平成20()31480]>

47条における「小冊子」は,あくまでも「観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする」ものであることを前提としているから,オークションや下見会に参加して実際に作品を観覧する者以外に配布されるものや,著作物の解説又は紹介以外を主目的とするものは,「小冊子」に当たらないと解するのが相当である。
本件カタログは,本件オークションや下見会への参加の有無にかかわらず,被告の会員に配布されるものであるし,その主たる目的は,本件オークションにおける売買の対象作品を特定するとともに,作家名やロット番号以外からは直ちに認識できない作品の真贋,内容を通知し,配布を受けた者の入札への参加意思や入札額の決定に役立つようにする点にあり,観覧者のための著作物の解説又は紹介を主たる目的とするものでもないことが明らかであるから,著作権法47条にいう「小冊子」には当たるとは認められない。
<平成28622日知的財産高等裁判所[平成26()10019]>

【法47条の2の意義と解釈】

被告は,本件カタログに係る複製について,著作権法47条の2の適用がある旨主張する。
そこで検討するに,被告は,本件オークションを主催する者であるから,著作権法47条の2の施行日である平成22年1月1日以降,同条所定の複製を行うことができたものと認められる。また,同法施行令7条の2第1項1号及び同法施行規則4条の2第1項1号により,著作権法47条の2が適用されるためには,当該複製により作成される複製物に係る著作物の表示の大きさが50㎠以下であることが必要である。
本件カタログは平成22年後半に発行されたものであると認められるから,同号に係る複製は著作権法47条の2の適用の対象となる。そして,同号に係る複製は,額縁部分を除く作品部分について,縦約6cm×横8.3cm の写真を印刷したものであることが認められるから,その表示の大きさは約49.8㎠である。
以上によれば,本件カタログに係る複製は,著作権法47条の2の適用があると認められるから,複製権の侵害には当たらない。
(略)
被告は,本件訴訟における原告らの著作権の行使は,著作権法改正前にオークションのために行われた複製について,法律が明確でなかったことを幸いとして,譲渡に伴う美術の著作物の複製が法律上合法であると確認された今に至って損害賠償を請求するもので,47条の2が新設された趣旨からすると,著作権の濫用に該当するなどと主張する。
しかしながら,著作権法47条の2は,美術の著作物又は写真の著作物の原作品等の適法な取引行為と著作権とを調整する趣旨において,原作品等を譲渡又は貸与しようとする場合には,当該権原を有する者又はその委託を受けた者は,その申出の用に供するため,一定の措置を講じることを条件に,当該著作物の複製又は公衆送信を行うことを認めるものである。このように,著作権法47条の2は,一定の措置を講じることを条件に,複製権又は公衆送信権の行使を認めたものであるから,そのような措置が講じられなければ,著作権者の複製権又は公衆送信権の侵害であることに変わりはないし,同規定が遡及適用されるものでもない(平成21年法律第53号附則1条)。
そうすると,著作権法47条の2の新設により,同規定の施行前にオークションのために行われた複製について損害賠償請求等の権利行使をすることや,同規定の施行後において一定の措置が講じられた範囲外の複製について権利行使をすることが,権利濫用であるとはいい難いし,その他権利濫用であることを肯定できる事情は認められない。
<平成28622日知的財産高等裁判所[平成26()10019]>

【法47条の3の意義と解釈】

著作権法47条の2【注:現47条の3】第1項は、プログラムの複製物の所有者にある程度の自由を与えないとコンピュータが作動しなくなるおそれがあることから、自らプログラムを使用するに必要と認められる限度での複製や翻案を認めたものであって、同項にいう「自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要な限度」とは、バックアップ用複製、コンピュータを利用する過程において必然的に生ずる複製、記憶媒体の変換のための複製、自己の使用目的に合わせるための複製等に限られており、当該プログラムを素材として利用して、別個のプログラムを作成することまでは含まれないものと解される。
<平成121226日大阪地方裁判所[平成10()10259]>

(被告学園プログラムをサーバーにアップロードしたことによる著作権侵害について)
ア 前記によれば,被告学園のBは,平成25年8月11日,被告学園プログラムを被告学園サーバーにアップロードし,これによって,本件システムの機能を利用するためのID及びパスワードを保有する約60名が,被告学園ウェブサイトからログインし,被告学園プログラムにより実現される本件システムの機能を使用することができるようになった。
そうすると,被告学園は,本件プログラムの複製物である被告学園プログラムのファイルを被告学園サーバーに保存することにより,本件プログラムを有形的に再製し,かつ,被告学園ウェブサイトにログインすることができる者だけでも約60名という多数の者に対して本件プログラムについて無線通信又は有線電気通信の送信を可能としたということができる。
したがって,被告学園は本件プログラムに係る原告の複製権及び公衆送信権(送信可能化権)を侵害したと認めるのが相当である。
イ 被告学園は,本件プログラムの複製物である被告学園プログラムの所有者であるから,著作権法47条の3第1項によりこれを複製することができると主張する。
しかし, 平成25年4月以降,本件システムの開発に関わるようになったBは,これを理解するために,原告に対して本件システムに係るプログラム等のコピーを送付してほしいと要望し,原告は,これに応じて,開発途中の本件プログラムのソースコードを含む本件圧縮ファイルを送付したものである。そうすると,Bがその使用に係るパソコンに保存した本件プログラムの複製物(被告学園プログラム)は,本来,B自身が本件システムを理解するために利用されることが予定されていたものと認められる。
にもかかわらず,Bは,SEHAIで実施される研修で本件システムのデモンストレーションを行うために,被告学園プログラムを被告学園サーバーにアップロードしたものであって,この行為は,原告がBに対して許諾した本件プログラムの複製物の利用範囲を超えるものであるといわざるを得ない。そして,被告学園プログラムを被告学園サーバーにアップロードしなければ,Bがこれを利用することができなかったことを認めるに足りる証拠もない。
したがって,Bによる上記の行為は,「自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度」(著作権法47条の3第1 項)の複製とは認められないから,被告学園の上記主張は理由がない。
(被告学園プログラムを改変したことによる著作権等侵害について)
ア 前記のとおり,被告学園のBは,平成25年8月19日頃から,同年5月23日に取得した本件プログラムの複製物である被告学園プログラムについて,原告から送付されたデータベースを読み取ることができるようにしたり,同日以降に原告が本件システムに付加した機能を実装したり,原告において実施することが予定されていた作業を行ったり,同年8月31日からのSEHAIでの研修において新たな機能を追加したりした。
そうすると,被告学園は,本件プログラムの複製物である被告学園プログラムについて,同プログラムが有する本来的な機能は維持しつつ,新たな機能を追加するため,同プログラムのソースコードに付加的な変更を加えたものと認められる。
したがって,被告学園は,本件プログラムに依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,これに変更を加えて,新たな著作物を創作し,本件プログラムを改変したものであるから,本件プログラムの翻案権及び同一性保持権を侵害したと認めるのが相当である。
イ 被告学園は,被告学園プログラムを改変したことがあったとしても,被告学園は本件プログラムの複製物である被告学園プログラムの所有者であるから,著作権法47条の3第1項によりこれを翻案することができるし,著作権法20条2項3号,4号によりこれを使用することができる状態にしたにすぎないから,同一性保持権の侵害に当たらないと主張する。
しかし,前記のとおり,被告学園プログラムは,本来,B自身が本件システムを理解するために利用されることが予定されていたものと認められるところ,Bが被告学園プログラムに加えた前記アの変更は,その内容からして,上記の目的に沿ってB自身がこれを使用することができる状態にしたにとどまらず,本来予定されていない新たな機能の追加を行うものであったというべきであるから,著作権法47条の3第1項に定める「必要と認められる限度」の翻案であるとも,著作権法20条2項3号,4号に定める「必要な改変」ないし「やむを得ないと認められる改変」とも認められない。
したがって,被告学園の上記主張は理由がない。
<令和21116日東京地方裁判所[平成30()36168]>

【法48条の意義と解釈】

思うに、右規定が出所の明示を他人の著作物の自由利用の要件としたのは著作権者の保護を旨としたものと解されるが、その出所の明示については、利用される原著作物に表示されている著作者名を表示すれば足り、もしその著作物が無名のものである場合には著作者名を調査してまで表示する必要はないと解するのが相当である(現著作権法48条第2項参照)。けだし、著作者は、その著作物の原作品又は複製品に著作者名を表示する権利のほか、表示しないこととする権利(無名で発行する権利)を有すること(現著作権法19条第1項参照)に鑑みると、無名の著作物はその著作者において氏名を表示してないこととする権利を行使したものと考えられるところ、さような場合に、その著作物の利用上著作者名を表示することは、著作者の保護につながらず、また、その必要もないからである。
<昭和510519日東京高等裁判所[昭和47()2816]>

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