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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

利用の許諾③

【黙示の利用許諾(否認例)】

補助参加人は,被控訴人に対して,本件楽曲につき,本件支払金のほかに,本件ビデオの複製本数に応じた複製許諾料の支払を求める意思表示を明示的にはしておらず,被控訴人も,補助参加人に対し,上記複製許諾料の支払を行う旨の意思表示を明示的にはしていない。しかし,同時に,補助参加人は,被控訴人に対して,本件支払金のほかに上記複製許諾料の支払を求めない旨の意思表示を明示的にはしておらず,被控訴人も,補助参加人に対し,本件支払金の支払は上記複製許諾に対する対価をも含むものである旨の意思表示を明示的にはしていないことも,弁論の全趣旨で明らかである。
したがって,本件において次の問題となるのは,本件楽曲につき,補助参加人が,被控訴人に対し,本件支払金以外の対価を支払うことなく複製することを許諾する旨の黙示の意思表示をしたと認めることができるかどうか,すなわち,上記のように,この点についての明示の意思表示のない状態の下で,それにもかかわらず明示の意思表示があったのと同様に扱うべきであると評価することを正当化する事情があったかどうか,ということである。
(略)
以上述べたところによれば,結局のところ,補助参加人が,被控訴人に対し,本件支払金以外の対価を支払うことなく本件楽曲を複製することを許諾した,と積極的に認めることはできないのである。
(略)
付言するに,本件紛争の根本の原因は,補助参加人と被控訴人との間で複製許諾に関する明確な意思表示ないし合意がされなかったことに求められる。補助参加人が,作曲の依頼を受けるに当たって,被控訴人に対し,自分が控訴人の会員であること,被控訴人は控訴人に対して複製許諾料を支払う必要があることを明示していれば,このような紛争は避けられたということができ,その意味では,補助参加人にも本件紛争を発生させたことについての責任の一端はあるというべきである。特に,本件楽曲は,ビデオ製作用のものとして,多数複製されることが当初から予定されていたものであることを考えると,なおさらである。
<平成130712日東京高等裁判所[平成12()3758]>

被告は、P12が、平成1314日、電話で、原告に対し、「編集会議」に掲載する写真の撮影を依頼するかも知れないと告げたところ、原告は、撮影を行う旨申し出たこと、P12は、原告に対し、「編集会議」は専門誌であるため、撮影料も格安であり、材料費も十分に支払えず、二次使用料も支払えないと説明したが、原告は、どうしてもやりたいと述べ、被告に対し、原告が撮影した写真の包括的な使用許諾をするとともに、写真の撮影料、使用料の決定を任せたことを主張する。
(略)
そもそも、撮影した写真の二次使用を無償で許諾するならば、写真家又はその写真を管理する者は、使用の態様、回数にかかわらず使用の対価を得られなくなり、多くの利益を失うこととなるから、二次使用が無償か有償かは重要な問題である。本件請負契約で撮影の対象となる著名人の写真等は、当初の撮影目的以外の用途にも使用できる可能性が少なくないため、尚更である。
そして、原告本人尋問の結果によれば、原告は、被告以外の会社との間で、無償で二次使用を許諾する契約をしたことはなく、P12が従前被告以外の会社に在籍しているときに同人から依頼を受けた写真撮影について二次使用料が支払われた例があることが認められる。また、P12の証言によれば、同証人が被告以外の会社に在籍しているときに、編集長として原告の撮影した写真を使用した際、無償で二次使用するという契約をしたことはないことが認められる。したがって、P12と原告の間では、二次使用は有償であるというのが従来の慣行であったと認められる。
そうだとすると、そのような重要な問題について従来の慣行と異なる内容の契約をする際に、暗黙裏に合意するということは考え難く、明示の確認をし、改めて念押しする、あるいは書面を作成するなど、誤解や後の紛争を避ける方法が採られることが普通であるように思われる。しかし、このような方法が採られたことを認めるに足りる証拠はない。
<平成170331日大阪地方裁判所[平成15()12075]>

被告らは,原告は,自ら希望して被告○○のフォトライブラリーに本件原写真を提供し,この場合には原告は被告○○に対して,当該写真の著作権を主張せず,かつ使用料を請求しない旨を申し出たのであって,被告○○に就職する以前に撮影した写真を被告○○が自由に複製等することを許諾した等と主張する。
確かに,原告は自ら進んで自己が被告○○に就職する以前に撮影した写真を被告○○のフォトライブラリーに提供したものであったところ,原告は被告○○に対し,フォトライブラリーに提供した写真につき,使用料を要求したことも,被告○○から使用料を受領したこともなかったことが認められる。
しかしながら,原告は被告○○の従業員であった間,フォトライブラリー業務を担当していたところ,原告が被告○○のフォトライブラリーに自己が被告○○に就職する前に撮影した写真を提供したのは,フォトライブラリーの売上げを伸ばすことで,被告○○の経営に貢献するためであったことが認められる。
そして,本件写真集に対する本件原写真の使用は,被告○○が制作する写真集への使用であって,被告○○が外部の第三者に使用を許して使用料を徴求する場面とは,その様相が異なることは否定できない。
加えて,原告は被告○○に対し,その退職に際して自己が撮影した写真のフィルムを返還するよう要求しており,他方被告○○も,原告に対し,原告が退職した後に,原告が被告○○に就職する前に撮影して,被告○○に預けた写真のフィルムのうち,本件原写真以外の写真のフィルムを返還したものであった。
そうすると,原告が自己が被告○○に就職する以前に撮影した写真を被告○○のフォトライブラリーに登録した等の事実から,少なくとも,原告が被告○○に対し,被告○○に就職する以前に撮影した写真を,原告が被告○○を退職した後においても,被告○○において,被告○○が制作する写真集等に自由に複製等することを明示又は黙示に許諾したとまでみることは困難である。
(略)
被告らは,原告は,被告○○に在職中,本件第2版及び第3版の企画及び制作に深く関与し,写真集「写真で見る首里城」が改訂を重ねていく性格の書籍であることを知っていたにもかかわらず,原告は,被告○○を退職する以前に,被告○○との間で,自己が撮影した写真の著作権に関し何らの取決めをすることも,被告○○に対して上記写真の使用料を請求することもなく,また当時被告○○において保管中であった上記写真の使用料につき,被告○○との間で何ら取決めをせず,上記写真を引き取ることもしなかったから,原告は,上記退職の際,被告○○との間で,原告が撮影した写真につき,被告○○において自由に複製等して使用することを,少なくとも黙示に合意した旨を主張する。
確かに,原告は被告○○に在職中は,そのほとんどの期間において被告○○の営業の大半を担当していたのであって,本件第2版及び第3版の制作にも能動的かつ大幅に関与していたから,被告○○を退職する前後において,写真集「写真で見る首里城」が,本件第3版で打ち切りになり,以後同種の写真集を発行することがない性格のものではなく,それ以降も改訂を重ねる可能性があったことを認識していたものと容易に推認できる。
また,本件第2版は本件初版で掲載された写真を,本件第3版は本件第2版で掲載された写真を,それぞれ相当数引き続き掲載していることにかんがみれば,原告は,被告○○を退職する前後において,本件第3版以降の写真集「写真で見る首里城」の改訂版において,本件第3版に掲載された写真を引き続き掲載する可能性があることを認識していたものと容易に推認できる。
そうすると,原告は,被告○○を退職する前後において,本件原写真も,本件第3版以降の写真集「写真で見る首里城」の改訂版に引き続き掲載される可能性があったことを認識していたものと推認できる。
他方,原告は,被告○○を退職する際も,それ以前においても,被告○○との間で,原告が被告○○に就職する以前に撮影した写真の著作権の帰属や,既に使用された写真集や書籍等の取扱い,上記退職の前及び後に使用された上記写真の使用料につき,何ら書面でも口頭でも取決めをしなかったものである。
そうすると,本件第3版を制作した時点で,本件第3版以降の写真集「写真で見る首里城」の改訂版にも本件原写真を引き続き掲載するべく,この限りで本件原写真の複製等を黙示に許諾したとみる余地や,あるいは,被告○○を退職する前に原告が被告○○の社内でその幹部職員として果たしていた役割の大きさや,被告○○の元取締役として,退任及び退職後の会社の業務運営に無用な混乱を生じさせないという道義的な責任から,その後の改訂が明らかな本件第3版以降の写真集「写真で見る首里城」の改訂版に引き続き掲載するべく,この限りで本件原写真の複製等を黙示に許諾したとみる余地も十分あるところである。
その上,本件第3版には当初座喜味城跡の航空写真を掲載する予定であったところ,Bが了知しないうちに,原告が被告○○に就職する前に地上から撮影した写真である本件原写真を掲載することに切り替わっていたものであるが,上記のような事態は,当時本件第3版の制作作業を担当していた原告が,被告△△の担当者と協議しながら,掲載する写真を本件原写真にしたものと認められるから,原告においては,本件第3版の制作当時ないし退職前の時点において,本件第3版以降の写真集「写真で見る首里城」の改訂版にも引き続き本件原写真が掲載されることを意欲していたとも推認することができる。
しかしながら,本件第3版には,本件原写真の著作者であることが明確にされてはいないものの(本件第3版には,被告○○の関係者以外の者が撮影した写真が多数掲載され,掲載された写真の点数全体との関係では大きな割合を占めているところ,その奥付きには,B及び原告以外の者について,写真提供者としてしか記載されていないし,B及び原告等が撮影した写真で,本件第3版に掲載された写真は相当数に上るのに,B及び原告が一括して写真撮影者として,その経歴とともに奥付きに記載されており,少なくとも本件原写真との結び付きが不明確である。),その奥付きには曲がりなりにも掲載された写真の撮影を行った者として原告の氏名が記載されていたのであって,原告がその本人尋問において,「それならば,私の名前を配置するべきだと思うし,もしご本人だけのものであるならば,自分で全部撮ったものを載せるだろうっていうふうに,ある意味では信頼していました。」と,自己の氏名が表示されない写真集に掲載することを許容するつもりはなかった旨を供述していることにもかんがみれば,仮に原告が本件第3版以降の写真集「写真で見る首里城」の改訂版にも本件原写真を引き続き掲載すること,すなわち本件原写真の複製等を黙示に許諾したことがあったとしても,上記許諾は,当該改訂版に写真撮影者として原告の氏名を表示することを前提としていたものというべきである。
しかるに,本件第3版の改訂版である本件写真集には,その奥付き等に原告の氏名の表示は一切存しないから,少なくとも原告の氏名の表示がない本件写真集に掲載して出版するべく,本件原写真を複製等することに対しては,原告の許諾はなかったものといわざるを得ない。
また,原告は被告○○に対し,その退職に際して自己が撮影した写真のフィルムを返還するよう要求しており,他方被告○○も,原告に対し,原告が退職した後に,原告が被告○○に就職する前に撮影して,被告○○に預けた写真のフィルムのうち,本件原写真以外の写真のフィルムを返還したものであったし,被告○○が原告に対して本件原写真のフィルムを返還しなかったのは,被告○○の従業員が本件原写真の撮影年月を誤ってマウントに記載したために,被告○○において原告が被告○○に就職した後に撮影したものと誤って理解されていたことに基づくものにすぎなかった。
そうすると,原告が被告○○を退職する際に自己が撮影した写真のフィルムを引き取らなかったとは必ずしもいえず,上記フィルムを引き取らなかったことを根拠とする被告らの主張は前提を欠くものである。また,フィルムの返還に係る上記各事情にかんがみれば,原告が被告○○から本件原写真のフィルムの交付を受けていないことから,原告が被告○○に対し,本件原写真のフィルムの所有権を放棄したとか,本件原写真の複製等を許諾したとみることも困難である。
<平成200924日那覇地方裁判所[平成19()347]>

原告は,平成16528日にCから本件ビデオ映像の説明書の作成を依頼された際,被告らにおいて本件ビデオ映像を利用した放送番組を制作するという企画を検討中であることも伝えられていたものであり,その時点では,同企画及び本件説明書を作成することについて特段異議を述べず,むしろ,Cに対し,本件説明書を作成するために必要であるとして本件ビデオ映像のコピーを渡して欲しいと求めるなど,本件説明書の作成に応じるかのような対応をとっていたことが認められる。
そして,被告らは,このような事実をもって,原告は,本件ビデオ映像が編集されて放送番組が制作されること及び同番組がテレビ局を通じて放送されることについて黙示の許諾を与えていたものと評価することができると主張する。
しかしながら,Cが原告に対し本件ビデオ映像を利用した放送番組制作の企画を検討していることを伝えた段階では,本件ビデオ映像を使用して実際に放送番組を制作することができるか否かは,まだ判断ができない状態であって,当該企画自体が明確に確定していたわけではなく,当然,被告らにおいて,どのような方針で本件ビデオ映像を編集し,具体的にどのような内容の番組を制作するのかという点や,制作された番組を誰に対してどのような条件で販売し,いつどのような形で放送されるのかという点についても,確定していなかったものであり,これらの事項について,被告らから原告に対して説明したり,原告の許諾を求めたりしたことはなく,原告においてこれらの事項を認識していたものでもなかったこと,その後,別件訴訟が提起されるまでの間に,被告らが,これらの事項を原告に説明するなどして許諾を求めたことはないこと,が認められる。
そうすると,原告が,Cから,本件ビデオ映像を利用した放送番組制作の企画があること及びそのために本件説明書を作成する必要があることを伝えられ,そのことに特段異議を述べず,むしろ,Cに対して本件説明書の作成に応じるかのような態度をとっていたとしても,そのことだけをもって,原告が,被告らに対し,本件ビデオ映像を編集して放送番組を制作し,これをテレビ局に販売することや,同番組をテレビで放送することについて,黙示に許諾していたものと認めることはできない。
<平成240322日東京地方裁判所[平成22()34705]>

被告らは,原告Xが被告Y1らに対して「皆で作ったものだから皆で使えるものにしよう。」などと繰り返し発言したこと,N社による雑誌,記事の発行,商標登録出願,ウェブサイトへの掲載について原告Xが異議を述べなかったことなどを理由として,原告Xは被告らが本件共同著作物及び原告各著作物を使用することについて明示的又は黙示的に承諾していたと主張する。 しかし,原告Xが上記発言をしたこと(上記)を示す客観的な証拠はなく,また,仮にその趣旨の発言がされたとしても,同発言から直ちに黙示の使用許諾があったと推認することは困難である。また,原告XがN社によ る雑誌掲載等について異議を述べなかったこと(上記)についても,N社に権利行使をしなかったことをもって,被告らに対する使用許諾があったと認めることはできない。かえって,被告Y1は,平成9年12月頃までに,原告レポート等が格納されたソフトウェアがインストールされたデスクトップパソコン等を合計350万円で購入していること,被告Y1は,平成10年3月24日にN社にファックスを送信し,原告レポート等のコンテンツを利用する際に被告Y1のA社から原告XのN社に対価を支払うことを提案していることの各事実が認められる。これによれば,被告Y1は,原告各著作物の利用について原告Xの許諾が必要であると認識していたというべきである。したがって,原告Xは被告らが本件共同著作物及び原告各著作物を使用することについて明示的又は黙示的に承諾していたとは認められない。
<平成3061日東京地方裁判所[平成26()25640]>

原告は,平成26年8月3日,ツイッターにおいて,「私はどっちかというと作者名さえ消されなければ無断転載?どんどんやってくれたまえガハハ!というタイプなんですが この方針で無断転載イヤ派の方の画像も転載してるBOTとかを放置してると,海賊にエサを与えてることになってしまうんですよねえ。イヤな渡世です。」とのコメントを掲載した。当該コメントは,原告が,本来,無断転載について寛容な考え方であるものの,無断転載を放置すると無断転載者に不当な利益を与えることとなってしまうと述べるもので,無断転載を無条件に許容することは問題がある旨の意見を表明するといえるものである。当該コメントによって,原告が被告による本件各イラストを本件サイトに掲載することを許諾していたと認めることはでき(ない。)
<平成3067日東京地方裁判所[平成29()39658]>

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