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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

二次的著作物に対する権利

二次的著作物の著作権】

二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分のみについて生じ、原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じないと解するのが相当である。けだし、二次的著作物が原著作物から独立した別個の著作物として著作権法上の保護を受けるのは、原著作物に新たな創作的要素が付与されているためであって(同法2111号参照)、二次的著作物のうち原著作物と共通する部分は、何ら新たな創作的要素を含むものではなく、別個の著作物として保護すべき理由がないからである。
<平成9717日 最高裁判所第一小法廷[平成4()1443]>

本件における原告書籍と被告書籍は、ともに伝承に係る昔話ないし古典的な童話を幼児向けに表現した絵本であり、その物語の内容は古くから言い伝えられ、また、広く一般に知られているものである。右によれば、原告書籍は、原典である古典童話ないし昔話を原著作物とする二次的著作物というべきであるから、その著作権は原告書籍について新たに付与された創作的部分のみについて生じ、原著作物であるところの原典たる童話ないし昔話と共通し、その実質を同じくする部分には生じない(最高裁平成9717日第一小法廷判決参照)。したがって、被告書籍が原告書籍の著作権を侵害しているかどうかを判断するに当たっては、まず、原典たる童話ないし昔話に原告書籍において新たに付加された創作性を有する部分が被告書籍においても同様に存するかどうかを検討すべきである。この場合において、原告書籍と被告書籍とが、筋の運びやストーリーの展開が同一であっても、それが原典たる童話ないし昔話において既に表われているものであるときや、創作性を認めるに足りない改変部分に係るものであるときには、原告書籍の著作権侵害に結び付くものとはいえない。
<平成121130日東京地方裁判所[平成12()944]>

二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分についてのみ生じ、原著作物と共通し、その実質を同じくする部分には生じないと解するのが相当である(最高裁平成9717日第一小法廷判決)。これを本件についてみると、本件著作物は、本件イラスト著作物中に描かれたキューピーイラストを原著作物とする二次的著作物であり、また、原著作物であるキューピーイラストを立体的に表現した点においてのみ創作性を有するから、立体的に表現したという点を除く部分については、キューピーイラストと共通しその実質を同じくするものとして、本件著作権の効力は及ばないというべきである。
(略)
本件著作物が原著作物であるキューピーイラストを立体的に表現した点においてのみ創作性を有し、その余の部分に本件著作権は及ばず、他方、被控訴人イラスト等が上記の諸点において本件人形と相違し、全体的に考察しても受ける印象が本件人形と異なることに照らすと、本件著作物において先行著作物に新たに付加された創作的部分は、被控訴人イラスト等において感得されないから、被控訴人イラスト等は、本件著作物の内容及び形式を覚知させるに足りるものでもなく、また、本件著作物の本質的な特徴を直接感得させるものでもないから、本件著作物の複製物又は翻案物に当たらないことは明白である。
(略)
二次的著作物の著作権が原著作物に新たに付加された創作的部分についてのみ生ずることは、二次的著作物の著作権者が原著作物について著作権を有していることによって影響を受けないと解するのが相当である。なぜならば、二次的著作物が原著作物から独立した別個の著作物として著作権法上の保護を受けるのは、原著作物に新たな創作的要素が付加されているためであって、二次的著作物のうち原著作物と共通する部分は、何ら新たな創作的要素を含むものではなく、別個の著作物として保護すべき理由がないところ(最高裁判決)、我が国において原著作物の著作権について保護期間が満了しておらず、かつ、二次的著作物の著作権者が原著作物の著作権者であるからといって、二次的著作物のうち原著作物と共通する部分について別個の著作物として保護すべき理由がないという点では、二次的著作物の著作権者が原著作物の著作権者でない場合と何ら異なるところはないからである。
<平成130530日東京高等裁判所[平成11()6345]>

本件土地宝典が公図の二次的著作物であり,被告が公図の原著作者であるとしても,本件土地宝典の複製には,原著作者の許諾とともに,二次的著作物の著作権者である原告らの許諾を要するのであるから,原告らの許諾を得ずに複製を行うことが違法であることは明らかであ(る。)
<平成200131日東京地方裁判所[平成17()16218]>

【二次的著作物の原著作者の権利】

本件連載漫画は,被上告人が各回ごとの具体的なストーリーを創作し,これを400字詰め原稿用紙30枚から50枚程度の小説形式の原稿にし,上告人において,漫画化に当たって使用できないと思われる部分を除き,おおむねその原稿に依拠して漫画を作成するという手順を繰り返すことにより制作されたというのである。この事実関係によれば,本件連載漫画は被上告人作成の原稿を原著作物とする二次的著作物であるということができるから,被上告人は,本件連載漫画について原著作者の権利を有するものというべきである。そして,二次的著作物である本件連載漫画の利用に関し,原著作物の著作者である被上告人は本件連載漫画の著作者である上告人が有するものと同一の種類の権利を専有し,上告人の権利と被上告人の権利とが併存することになるのであるから,上告人の権利は上告人と被上告人の合意によらなければ行使することができないと解される。したがって,被上告人は,上告人が本件連載漫画の主人公Dを描いた本件原画を合意によることなく作成し,複製し,又は配布することの差止めを求めることができるというべきである。
<平成131025最高裁判所第一小法廷[平成12()798]>

二次的著作物の著作権者であっても、原著作物の著作権者の許諾なく二次的著作物を利用することは許されない(。)
<平成110225日東京地方裁判所[平成9()19444]>

著作権法28条は、「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。」と規定しており、この規定によれば、原著作物の著作権者は、結果として、二次的著作物の利用に関して、二次的著作物の著作者と同じ内容の権利を有することになることが明らかであり、他方、控訴人が、二次的著作物である本件連載漫画の著作者として、本件連載漫画の利用の一態様としての本件コマ絵の利用に関する権利を有することも明らかである以上、本件コマ絵につき、それがストーリーを表しているか否かにかかわりなく、被控訴人が控訴人と同一の権利を有することも、明らかというべきである。
控訴人は、本件コマ絵につき被控訴人が権利を有するか否かを、それが物語原稿のストーリーを表しているか否かを基準として判定すべき旨を、物語原稿への依拠の有無と結び付けて強調するが、採用できない。二次的著作物は、その性質上、ある面からみれば、原著作物の創作性に依拠しそれを引き継ぐ要素(部分)と、二次的著作物の著作者の独自の創作性のみが発揮されている要素(部分)との双方を常に有するものであることは、当然のことというべきであるにもかかわらず、著作権法が上記のように上記両要素(部分)を区別することなく規定しているのは、一つには、上記両者を区別することが現実には困難又は不可能なことが多く、この区別を要求することになれば権利関係が著しく不安定にならざるを得ないこと、一つには、二次的著作物である以上、厳格にいえば、それを形成する要素(部分)で原著作物の創作性に依拠しないものはあり得ないとみることも可能であることから、両者を区別しないで、いずれも原著作物の創作性に依拠しているものとみなすことにしたものと考えるのが合理的であるからである。
<平成120330日東京高等裁判所[平成11()1602]>

著作権法28条は、「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。」と規定するものであり、右規定によれば、原著作物の著作者は、二次的著作物の利用に関して、二次的著作物の著作者と同一の権利を有するものというべきである。同条は「同一の種類の権利」と規定するが、これは、二次的著作物の利用に関して原著作物の著作者が二次的著作物の著作者とまったく同一の内容の権利を有することを前提とした上で、二次的著作物においてその著作者の有する権利の内容が原著作物においてその著作者の有する権利の内容と種類を異にする場合であっても、そのような権利の種類の異同にかかわらず、二次的著作物においてその著作者に認められる権利であれば、これを原著作物の著作者が有することを明らかにしたものと解するのが、相当である。したがって、原著作物の著作者は、二次的著作物の一部の利用に関しても、それが原著作物の内容を覚知できる部分かどうかにかかわらず、二次的著作物の著作者と同様の権利を有するものである。
けだし、二次的著作物は、原著作物を基礎としてこれに新たな創作的要素を付加して作成されるものであるから、その性質上当然に、原著作物の内容をそのまま引き継ぐ部分と、二次的著作物において新たに付与された創作的部分の双方を有するものであるところ、両者を区別することは実際上困難なことが多く、両者を区別して扱うこととすれば二次的著作物の利用をめぐる権利関係が著しく複雑となり、法的安定性を害する結果となること、また、二次的著作物における新たな創作的部分であっても、原著作物の内容による制約の下で付与されるものであり、原著作物の創作性に全く依拠しないとはいえないことなどから、著作権法は、両者を区別しないで二次的著作物の利用全般について、原著作物の著作者が二次的著作物の著作者と全く同一の権利を有するものとしたと解するのが合理的だからである。(中略)
漫画は、ストーリー展開、登場人物の台詞、コマ割りの構成、登場人物や背景の絵などの諸要素が不可分一体として有機的に結合したものであり、言語的要素と絵画的要素が有機的に結合した著作物である。一般に、著作権者は、第三者が著作物の一部のみを複製する行為に対しても、著作権の侵害を理由として差止め等を求めることができるものであり、これを漫画についていえば、漫画の著作権者は、第三者が漫画を構成する要素の一部である絵画的要素のみを利用する行為、例えば漫画の登場人物の絵のみを複製する行為に対しても、著作権の侵害を理由として差止め等を求めることができる。そうであれば、ストーリー原稿を原著作物として漫画が作成されている場合においては、原著作物の著作者(原作者、著述家)は、二次的著作物の著作者(作画者、漫画家)と同様、当該漫画の登場人物の絵のみを複製する行為に対しても、著作権侵害を理由として差止め等を求めることができるというべきである。
<平成120525日東京地方裁判所[平成11()8471]>

27条は,文言上,「著作物を編曲する権利を専有する」旨定めており,「編曲する」という用語に「編曲した著作物を放送する」という意味が含まれると解することは困難である。そして,法27条とは別個に,法28条が,編曲した結果作成された二次的著作物の利用行為に関して,原著作物の著作権者に法21条から27条までの二次的著作物の経済的利用行為に対する権利を定めていることに照らせば,法27条は,著作物の経済的利用に関する権利とは別個に,二次的著作物を創作するための原著作物の転用行為自体,すなわち編曲行為自体を規制する権利として規定されたものと解される。
原告会社は,二次的著作物を放送する行為に対しても,法27条の権利侵害が成立すると主張するが,そのように解すると,「編曲」の意味を法27条に例示された形態以上に極めて広く解することになるし,著作権法が法27条とは別個に法28条の規定を置いた意味を無にするものとなるから,法27条を理由とする同原告の主張は,採用することができない。
(略)
本件において,甲曲について法27条の権利を専有する原告会社の許諾を受けずに創作された二次的著作物である乙曲に関して,原著作物である甲曲の著作権者は,法28条に基づき,乙曲の複製権(法21条),放送権(法23条)及び譲渡権(法26条の2)を有するから,原告会社の許諾を得ずに乙曲を放送,録音し,録音物を販売した被告に対しては,法27条に基づくのではなく,法28条に基づいて権利行使をすることができると解すべきである。
<平成151219日東京地方裁判所[平成14()6709]>

【共有著作権に関する規定(法65条)の類推適用の可否】

著作権法は,共同著作物(同法2112号)と二次的著作物(同項11号)とを明確に区別した上,共同著作物については,著作者間に「共同して創作した」という相互に緊密な関係があることに着目し,各共有著作権者の権利行使がいたずらに妨げられることがないようにするという配慮から,同法653項のような制約を課したものと解される。これに対し,二次的著作物については,その著作者と原作者との間に上記のような緊密な関係(互いに相補って創作をしたという関係)はなく,原作者に対して同法653項のような制約を課すことを正当化する根拠を見いだすことができないから,同項の規定を二次的著作物の原作者に安易に類推適用することは許されないというべきである。
<平成220910日東京地方裁判所[平成21()24208]>

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