しからば、控訴人の本件英訳の関与量が形式的には全体の約50パーセント相当であつても、同人の本件英訳における創意とその精神的労力は、右関与部分を超え、残余の約50パーセントの部分にもおよんでいる、と評価し、控訴人の本件英訳の関与量は、著作権法上、控訴人に本件「英訳平家物語」の共同著作者としての地位を認めるにつき、何等妨げとならない、というべきである。
<昭和55年06月26日大阪高等裁判所[昭和52(ネ)1837]>
【ポスター制作における共同著作者性】
■本件ポスターの制作過程は,被告の総合企画部次長であったBにおいて,平成23年に使用するチラシ(原告Aの指示を受けつつ被告が作成したもの)を前提に,印刷会社の担当者と打合せを行ってポスターのレイアウトを完成させ,そこに写真やサブタイトルをはめ込んで,ポスター原案を完成させ,その後,被告は,ポスター原案を原告会社に送付して,同社がこれに若干の修正を加え,最終的に本件ポスターを完成させた,というものである。このような経緯に鑑みれば,本件ポスターの作成に当たって,被告側従業員の創作的寄与があったと認められる。
一方で,本件ポスターの作成に当たっては,原告Aが,同ポスター内の写真の配列や大きさ,奏者の体をどの範囲で載せるか(各写真のトリミングの範囲)に関して細かい指示を出していること等からすれば,本件ポスターの表現に関する原告Aの創作的寄与も認められる。
以上によれば,本件ポスターは,二人以上の者(被告側従業員と原告A)が共同して創作した著作物であり,著作権法2条1項12号所定の共同著作物に当たると認められる。
<平成28年7月19日東京地方裁判所[平成27(ワ)28598]>
【建築物における共同著作者性】
■原告代表者は,乙から本件建物の外観に関する設計の依頼を受け,日本の伝統柄をデザインの源泉とし,一見洗練された現代的なデザインのように見えるが「日本」を暗喩できるものとするとの設計思想に基づいて,原告設計資料及び原告模型を作成し,平成25年9月6日,乙に対し,本件建物の外装スクリーン部分を立体形状の組亀甲とすることを含めた設計案を提示している。そして,この時点において,被告工務店は,上記部分を立体形状の組亀甲とすることに着想していなかった。
しかしながら,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の上記提案は,被告工務店設計資料を前提に,当該資料のうちの外装スクリーン部分のみ(デザインのみ)を変更したものであり,上記提案には,伝統的な和柄である組亀甲柄を立体形状とし,同一サイズの白色として等間隔で同一方向に配置,配列することは示されているが,実際建築される建物に用いられる組亀甲柄より大きいイメージとして作成されたものであるため,実際建築される建物に用いられる具体的な配置や配列は示されておらず,他に,具体的なピッチや密度,幅,厚さ,断面形状も示されていない。一方で,組亀甲柄は,伝統的な和柄であり,平面形状のみならず,建築物を含めて立体形状として用いられている例が複数存在し,建築物の図案集にも掲載されている。
そうすると,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の提案は,被告工務店設計資料を前提として,その外装スクリーン部分に,白色の同一形状の立体的な組亀甲柄を等間隔で同一方向に配置,配列するとのアイデアを提供したものにすぎないというべきであり,仮に,表現であるとしても,その表現はありふれた表現の域を出るものとはいえず,要するに,建築の著作物に必要な創作性の程度に係る見解の如何にかかわらず,創作的な表現であると認めることはできない。更に付言すると,原告代表者の上記提案は,実際建築される建物に用いられる組亀甲柄の具体的な配置や配列は示されていないから,観念的な建築物が現されていると認めるに足りる程度の表現であるともいえない。
以上によれば,本件建物の外観設計について原告代表者の共同著作者としての創作的関与があるとは認められない。
<平成29年4月27日東京地方裁判所[平成27(ワ)23694]>
【注:控訴審<平成29年10月13日知的財産高等裁判所[平成29(ネ)10061]>も同旨】
■結局のところ,外装スクリーン部分に関し本件建物外観と控訴人代表者の提案とで共通するのは,ほぼ2層3方向の連続的な立体格子構造(組亀甲柄)を採用した点に尽きるのであって,それ自体はアイデアにすぎない(建物の外観デザインに組亀甲柄を採用するとしても,その具体的表現は様々なものがあり得るのであるから,組亀甲柄を採用するということ自体は,抽象的なアイデアにすぎない。)というべきであるから,控訴人代表者が本件建物外観について創作的に関与したとは認められないし,控訴人代表者の提案が本件建物の原著作物に当たるとも認められない。
【写真における共同著作者性】
■本件写真【注:民家風の建物の畳敷きの室内において,訴外Cが鞭を持って座っている正面に,原告が縄で緊縛された状態で柱に吊るされている状況が撮影されたもの】は,平成25年6月21日,被写体となっている原告と訴外Cが共同して創作したことが認められる。
<平成30年9月27日東京地方裁判所[ 平成29(ワ)41277]>
【プログラムにおける共同著作者性】
■プログラムの著作物(同法10条1項9号)の作成に複数の者が関与している場合において、各人が共同著作者となるためには、各人が当該プログラムの作成に創作的に寄与していることを要し、著作物の企画を立てた者や単なる開発委託者のように、補助的に参画しているにすぎない者は共同著作者にはなり得ないものというべきである。
<平成14年08月29日大阪地方裁判所[平成11(ワ)965]>
■プログラムの著作物の作製に複数の者が関与している場合において,関与者が共同著作者となるためには,当該プログラムの作製に創作的に寄与していることを要し,補助的に参画しているにすぎない者は共同著作者にはなり得ないというべきである。
平成16年04月23日大阪高等裁判所[平成14(ネ)3322]>
■デバッグや検収の作業をT工学の従業員とAが協力して行ったとしても,デバッグはプログラムの修正の作業にすぎないから,同修正により新たに創作性のある表現がされたといった特段の事情のない限り,そのプログラムがT工学の従業員とAの共同著作となるものではない。
<平成19年07月26日大阪地方裁判所[平成16(ワ)11546]>
【編集作業】
■原告が本件各作品の共同著作者に当たるか否かについて
(1) 2人以上の者が共同して創作した著作物であって,その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものを共同著作物というところ(著作20 権法2条1項12号),共同著作者に当たるというためには,当該著作物の制作に際し,創作と評価されるに足りる程度の精神的活動をしている必要があるというべきである。
そこで,原告において本件各作品の制作に際し,かかる創作的関与が認められるか否かにつき見るに,上記で認定したとおり,原告は,本件各作品の制作を企図した被告Aから,制作への協力を依頼され,台詞を読み上げる声優の候補者を数人紹介し,被告Aが制作したシナリオや指示に沿う形で,効果音の収録や編集の作業を担当したにとどまっているものであり,これらの原告の関与の性質・内容に照らせば,ボイスドラマであるという本件各作品の性質に照らしてもなお,原告が,本件各作品の制作に際し,創作行為を行ったものとみることは困難というほかない。そうすると,本件各作品の制作に際するこれらの関与について,原告が,創作と評価されるに足りる程度の精神的活動をしたものとまで認めるに足りないというべきであり,原告が本件各作品の共同著作者に当たるものとは認められない。
(2) これに対し,原告は,本件各作品の制作に際し,①声優を選択した点,②セリフや表現方法につきアドバイスをした点,③効果音を選択・収録した点,④全体の長さを一定時間内におさめるよう編集した点において,創作的に関与した旨を主張する。
しかしながら,①の点については,上記のとおり声優の候補者を紹介したにとどまるものであり,②の点については,その具体的内容は判然としないが,いずれにしてもアドバイスをしたにとどまるものであり,③及び④の点については,具体的な作業を担当したとしても,上記のとおり,被告Aが制作したシナリオや指示に沿う形で作業を行い,被告Aのチェックを受けていたものである。これらからすれば,たとえ原告において上記①ないし④の点において尽力した旨の認識であったとしても,そのいずれも,原告の創作的な精神活動がなされたことを具体的に基礎付けるものとまでは言い難い。そうすると,原告の上記主張は,原告の創作的関与を否定した上記認定を左右するものではなく,同主張は採用することができない。
<令和3年1月21日東京地方裁判所[平成30(ワ)37847]>
【結合著作物】
■本件書籍は,82個の単元,多数のコラムや課題学習等から成るものの,各単元やコラムは,本件書籍の他の部分とは分離して利用することも可能であり(本件教科書【注:本件書籍のこと】が,中学校用歴史教科書として使用することが予定された書籍であるからといって,各単元やコラムが中学校用歴史教科書としてしか利用することができないわけではない。),また,各単元やコラムは,特定のテーマに関連する本文の記述(側注を含む),関連する写真,地図,図表やこれらの解説文等で構成されているものの,本件記述(各単元において図版や解説文を除外した本文部分やコラムにおいて,図版や解説文を除外した部分)を,写真,地図,図表やこれらの解説文等とは分離して利用することも可能であるから,本件書籍はこれらの各著作物が結合したいわゆる結合著作物に当たるというべきであり,これらの各単元やコラムが一体として著作権法2条1項12号の「共同著作物」に当たると解することはできない。
<平成21年08月25日東京地方裁判所[平成20(ワ)16289]>
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