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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

共同著作物

【共同著作者性一般】

共同著作物とは,2人以上の者が共同して創作した著作物であって,その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう(著作権法2112号)。したがって,共同著作物というためには,著作者と目される2人以上の者の各人につき創作的関与が認められることが必要である。
<平成170701日東京地方裁判所[平成16()12242]>

【共同創作の意思は必要か】

原告は,本件原画の著作権者であるP4の相続人である被告P2から,P4ノートの原画に着色するよう依頼されたものではあるが,P4自身との間における共同製作の意思の共通を認める事情は見あたらず,文化社版を原告とP4の共同著作物と認めることはできない。
<平成211022日大阪地方裁判所[平成19()15259]>

原告X4が上記創作を行ったのは,亡Wの死後であるから,上記各部分は,原告X4が単独で創作したものであって,亡Wがその創作に関与したことはない。しかも,原告X4は,亡Wの死後に,本件著作物の執筆を依頼されたものであるから,亡Wの生前に,亡Wと原告X4とが,互いに共同で本件著作物を創作することを合意していたこともない。
そして,仮に亡Wが,自己の死後に,その遺稿をもとにして第三者が本件著作物を完成させることを望んでいたとしても,亡Wが,その第三者が原告X4となることを知っていたわけではない以上,亡Wにおいて,原告X4と共同して本件著作物を創作する意思を有していたと認めることはできないというべきである。
そうすると,本件著作物が,亡Wと原告X4とが共同して創作した共同著作物であると認めることはできない。
しかし,上記のとおり,原告X4は,本件著作物について,少なくとも上記創作部分を新たに執筆しているから,その部分については本件著作物を翻案することにより創作した二次的著作物と認められるものである。したがって,原告X4は,少なくとも本件著作物について二次的著作物の著作者としての権利を有するものと認めるのが相当である。
<平成250301日東京地方裁判所[平成22()38003]>

仮に,Bが何らかの着想等を提供したことがあったとしても,共同著作物と認められるためには,「2人以上の者が共同して創作した」ことが必要であり,客観的に各著作者が共同して創作行為を行うこと,主観的に各著作者間に共同して1つの著作物を創作するという共同意思が必要である(。) <平成31215東京地方裁判所[平成29()10909]>

【座談会における共同著作者性】

上記座談会は,原告が複数の三坂小学校関係者に対して,個々人の文章や手紙又は電話による質問をもとに,異なる時点,異なる場所でされた回答等をあたかも同一の場所で座談会を開いたかのような体裁の文章に仕上げたものである。
そうすると,上記座談会については原告の個性が表れており,同原告の創作的関与がされたもので,同文章につき原告は少なくとも共同著作物の著作者の権利を有するものということができる。
<平成170701日東京地方裁判所[平成16()12242]>

【書籍における共同著作者性】

本件著作物のうち、本件書籍二章冒頭から895行目まで(以下「B部分」という。)の文章については、Bが具体的に口述して被告Dに記録させた部分はBが創作したと認めるべきであり、Bが抽象的に書いて欲しい事柄を指示しただけで文章表現は被告Dが自分で考えた部分や、Bの明示の指示はなかったがBの意思を推測して被告Dが自由に書いた部分は被告Dが創作したというべきであり、被告Dが書いた文章をBが点検して補充訂正した部分は両名が共同して創作したというべきであるが、B部分のうちのどの文章でBと被告Dのどちらがどれだけ創意を働かせたかは具体的には明らかでなく、その関与の態様毎に明確に区分することはできないから、結局、B部分全体がBと被告Dが共同して創作したものであって、各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものであると認めるのが相当であ(る。)
<平成40827日大阪地方裁判所[平成2()2177]>

被告Bが本件書籍の日本語原稿を執筆したものであるが、本件書籍には、原告でなければ用いないような中国語的な表現や、執筆者が原告であることを前提とするような表現を用いた部分、原告が手渡したメモ書きがほぼそのままの表現で記載されている部分が存しており、しかも、本件書籍執筆当時の原告の日本語能力は、助詞、外来語の使用等についてやや問題があったものの、日本語の会話、読書きはほぼ問題なくできる域に達しており、本件書籍に示された日本語表現をすることは可能であったと推認される。
また、第四章に記載されている気功法の大部分は原告が提示したものであり、その中には原告が創作した独自の要素を含む気功法も含まれており、原告は被告Bに対しこれらの気功法の動作、注意点を具体的に伝えたものと推認できる。
そして、本件書籍第四章における気功法の記載は、前記のように、動作、注意点をほぼそのまま記載したものであるから、こうした記載内容からすると、原告が提示した気功法について、日本語原稿を執筆した被告Bによって、日本語としてより適切な表現やわかりやすい表現にするなどの創作的な表現要素が含まれているものの、原告が被告Bに伝えた具体的な気功法の動作、注意点が、文章表現においても表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ反映されているものと推認できる。
上記のような事情からすると、本件書籍における創作的な表現は、原告が掲載を提案した気功法に関する部分も含め、原告及び被告Bが共同で行ったものであり、本件書籍は原告及び被告Bの寄与を分離して個別的に利用することができないものであるから、共同著作物(著作権法2112号)に当たるというべきである。
<平成141210日大阪地方裁判所[平成13()5816]>

原告は,本件書籍の文章表現について,単に被告Bの口述表現を書き起こすだけといった,被告Bの補助者としての地位にとどまるものではなく,自らの創意を発揮して創作を行ったものと認められる。また,被告Bは,自らの体験,思想及び心情等を詳細に原告に対して口述し,被告Bの口述を基に原告が執筆した各原稿について,これを確認し,加筆や削除を含め表現の変更を指摘することを繰り返したのであるから,被告Bも,本件書籍の文章表現の創作に従事したものと認められる。
そうすると,本件書籍の文章表現は,原告及び被告Bが共同で行ったものであり,原告と被告Bとの寄与を分離して個別的に利用することができないものと認めるのが相当であるから,本件書籍は,原告と被告Bとの共同著作物(著作権法2112号)に当たるというべきである。
<平成200215日東京地方裁判所[平成18()15359]>

【翻訳における共同著作者性】

本件「英訳平家物語」は、著作権法上の翻訳著作物に該当するというべきところ、翻訳の定義はさて置き、右「英訳平家物語」作成の過程において控訴人【注:外国人】が果した役割およびその成果に着目するならば、右「英訳平家物語」の創作には、控訴人独自の、被控訴人【注:日本人】と対等の立場よりする、創意工夫や精神的操作が存在する、というべく、しからば、この点において、同法上、控訴人は、右「英訳平家物語」につき、共同著作者としての地位を有する、と認めるのが相当である。
(略)
控訴人の本件英訳に関する創意工夫は、被控訴人の本件英訳における創造的精神的活動に作用し、それが、控訴人の関与なしに行われたその後の本件英訳にも引継がれ、あるいはこれに強い影響をおよぼした、と推認することができ、この点からすると、本件においては、控訴人が本件英訳に関与した部分を単に機械的形式的に分離し、その計量から、控訴人の右英訳に対する寄与度を評価することはできない、というのが相当である。

しからば、控訴人の本件英訳の関与量が形式的には全体の約50パーセント相当であつても、同人の本件英訳における創意とその精神的労力は、右関与部分を超え、残余の約50パーセントの部分にもおよんでいる、と評価し、控訴人の本件英訳の関与量は、著作権法上、控訴人に本件「英訳平家物語」の共同著作者としての地位を認めるにつき、何等妨げとならない、というべきである。
<昭和550626日大阪高等裁判所[昭和52()1837]>

【ポスター制作における共同著作者性】

本件ポスターの制作過程は,被告の総合企画部次長であったBにおいて,平成23年に使用するチラシ(原告Aの指示を受けつつ被告が作成したもの)を前提に,印刷会社の担当者と打合せを行ってポスターのレイアウトを完成させ,そこに写真やサブタイトルをはめ込んで,ポスター原案を完成させ,その後,被告は,ポスター原案を原告会社に送付して,同社がこれに若干の修正を加え,最終的に本件ポスターを完成させた,というものである。このような経緯に鑑みれば,本件ポスターの作成に当たって,被告側従業員の創作的寄与があったと認められる。
一方で,本件ポスターの作成に当たっては,原告Aが,同ポスター内の写真の配列や大きさ,奏者の体をどの範囲で載せるか(各写真のトリミングの範囲)に関して細かい指示を出していること等からすれば,本件ポスターの表現に関する原告Aの創作的寄与も認められる。
以上によれば,本件ポスターは,二人以上の者(被告側従業員と原告A)が共同して創作した著作物であり,著作権法2条1項12号所定の共同著作物に当たると認められる。
<平成28719日東京地方裁判所[平成27()28598]>

【建築物における共同著作者性】

原告代表者は,乙から本件建物の外観に関する設計の依頼を受け,日本の伝統柄をデザインの源泉とし,一見洗練された現代的なデザインのように見えるが「日本」を暗喩できるものとするとの設計思想に基づいて,原告設計資料及び原告模型を作成し,平成25年9月6日,乙に対し,本件建物の外装スクリーン部分を立体形状の組亀甲とすることを含めた設計案を提示している。そして,この時点において,被告工務店は,上記部分を立体形状の組亀甲とすることに着想していなかった。
しかしながら,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の上記提案は,被告工務店設計資料を前提に,当該資料のうちの外装スクリーン部分のみ(デザインのみ)を変更したものであり,上記提案には,伝統的な和柄である組亀甲柄を立体形状とし,同一サイズの白色として等間隔で同一方向に配置,配列することは示されているが,実際建築される建物に用いられる組亀甲柄より大きいイメージとして作成されたものであるため,実際建築される建物に用いられる具体的な配置や配列は示されておらず,他に,具体的なピッチや密度,幅,厚さ,断面形状も示されていない。一方で,組亀甲柄は,伝統的な和柄であり,平面形状のみならず,建築物を含めて立体形状として用いられている例が複数存在し,建築物の図案集にも掲載されている。
そうすると,原告設計資料及び原告模型に基づく原告代表者の提案は,被告工務店設計資料を前提として,その外装スクリーン部分に,白色の同一形状の立体的な組亀甲柄を等間隔で同一方向に配置,配列するとのアイデアを提供したものにすぎないというべきであり,仮に,表現であるとしても,その表現はありふれた表現の域を出るものとはいえず,要するに,建築の著作物に必要な創作性の程度に係る見解の如何にかかわらず,創作的な表現であると認めることはできない。更に付言すると,原告代表者の上記提案は,実際建築される建物に用いられる組亀甲柄の具体的な配置や配列は示されていないから,観念的な建築物が現されていると認めるに足りる程度の表現であるともいえない。
以上によれば,本件建物の外観設計について原告代表者の共同著作者としての創作的関与があるとは認められない。
<平成29427日東京地方裁判所[平成27()23694]>
【注:控訴審<平成291013日知的財産高等裁判所[平成29()10061]>も同旨】
結局のところ,外装スクリーン部分に関し本件建物外観と控訴人代表者の提案とで共通するのは,ほぼ2層3方向の連続的な立体格子構造(組亀甲柄)を採用した点に尽きるのであって,それ自体はアイデアにすぎない(建物の外観デザインに組亀甲柄を採用するとしても,その具体的表現は様々なものがあり得るのであるから,組亀甲柄を採用するということ自体は,抽象的なアイデアにすぎない。)というべきであるから,控訴人代表者が本件建物外観について創作的に関与したとは認められないし,控訴人代表者の提案が本件建物の原著作物に当たるとも認められない。

【写真における共同著作者性】

本件写真【注:民家風の建物の畳敷きの室内において,訴外Cが鞭を持って座っている正面に,原告が縄で緊縛された状態で柱に吊るされている状況が撮影されたもの】は,平成25年6月21日,被写体となっている原告と訴外Cが共同して創作したことが認められる。
<平成30927日東京地方裁判所[ 平成29()41277]>

【プログラムにおける共同著作者性】

プログラムの著作物(同法1019号)の作成に複数の者が関与している場合において、各人が共同著作者となるためには、各人が当該プログラムの作成に創作的に寄与していることを要し、著作物の企画を立てた者や単なる開発委託者のように、補助的に参画しているにすぎない者は共同著作者にはなり得ないものというべきである。
<平成140829日大阪地方裁判所[平成11()965]>

プログラムの著作物の作製に複数の者が関与している場合において,関与者が共同著作者となるためには,当該プログラムの作製に創作的に寄与していることを要し,補助的に参画しているにすぎない者は共同著作者にはなり得ないというべきである。
平成160423日大阪高等裁判所[平成14()3322]>

デバッグや検収の作業をT工学の従業員とAが協力して行ったとしても,デバッグはプログラムの修正の作業にすぎないから,同修正により新たに創作性のある表現がされたといった特段の事情のない限り,そのプログラムがT工学の従業員とAの共同著作となるものではない。
<平成190726日大阪地方裁判所[平成16()11546]>

【編集作業】

原告が本件各作品の共同著作者に当たるか否かについて
(1) 2人以上の者が共同して創作した著作物であって,その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものを共同著作物というところ(著作20 権法2条1項12号),共同著作者に当たるというためには,当該著作物の制作に際し,創作と評価されるに足りる程度の精神的活動をしている必要があるというべきである。
そこで,原告において本件各作品の制作に際し,かかる創作的関与が認められるか否かにつき見るに,上記で認定したとおり,原告は,本件各作品の制作を企図した被告Aから,制作への協力を依頼され,台詞を読み上げる声優の候補者を数人紹介し,被告Aが制作したシナリオや指示に沿う形で,効果音の収録や編集の作業を担当したにとどまっているものであり,これらの原告の関与の性質・内容に照らせば,ボイスドラマであるという本件各作品の性質に照らしてもなお,原告が,本件各作品の制作に際し,創作行為を行ったものとみることは困難というほかない。そうすると,本件各作品の制作に際するこれらの関与について,原告が,創作と評価されるに足りる程度の精神的活動をしたものとまで認めるに足りないというべきであり,原告が本件各作品の共同著作者に当たるものとは認められない。
(2) これに対し,原告は,本件各作品の制作に際し,①声優を選択した点,②セリフや表現方法につきアドバイスをした点,③効果音を選択・収録した点,④全体の長さを一定時間内におさめるよう編集した点において,創作的に関与した旨を主張する。
しかしながら,①の点については,上記のとおり声優の候補者を紹介したにとどまるものであり,②の点については,その具体的内容は判然としないが,いずれにしてもアドバイスをしたにとどまるものであり,③及び④の点については,具体的な作業を担当したとしても,上記のとおり,被告Aが制作したシナリオや指示に沿う形で作業を行い,被告Aのチェックを受けていたものである。これらからすれば,たとえ原告において上記①ないし④の点において尽力した旨の認識であったとしても,そのいずれも,原告の創作的な精神活動がなされたことを具体的に基礎付けるものとまでは言い難い。そうすると,原告の上記主張は,原告の創作的関与を否定した上記認定を左右するものではなく,同主張は採用することができない。
<令和3121日東京地方裁判所[平成30()37847]>

【結合著作物】

本件書籍は,82個の単元,多数のコラムや課題学習等から成るものの,各単元やコラムは,本件書籍の他の部分とは分離して利用することも可能であり(本件教科書【注:本件書籍のこと】が,中学校用歴史教科書として使用することが予定された書籍であるからといって,各単元やコラムが中学校用歴史教科書としてしか利用することができないわけではない。),また,各単元やコラムは,特定のテーマに関連する本文の記述(側注を含む),関連する写真,地図,図表やこれらの解説文等で構成されているものの,本件記述(各単元において図版や解説文を除外した本文部分やコラムにおいて,図版や解説文を除外した部分)を,写真,地図,図表やこれらの解説文等とは分離して利用することも可能であるから,本件書籍はこれらの各著作物が結合したいわゆる結合著作物に当たるというべきであり,これらの各単元やコラムが一体として著作権法2112号の「共同著作物」に当たると解することはできない。
<平成210825日東京地方裁判所[平成20()16289]>

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