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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

プログラム著作物

【総論】

本件著作物は、ベーシツク言語によつて、本件パソコンに入力された命令またはプログラムを逐語的に処理して、命令を入力した者が意図した結果を出力するように、プログラムの構成、ルーチン、サブルーチンの活用、組合わせに至るまで、プログラム言語に関する高度な専門的知識を駆使して作製されており、プログラム作製者の学術的思想が表現されたものであることが明らかであり、したがつて、学術の範囲に属する著作物に当たるということができる。
<昭和620130日東京地方裁判所[昭和57()14001]>
【注】本件は、著作権法に「プログラムの著作物」が明記される以前のものである。

本件プログラムが効率的なFX取引を行う上で売買の発動条件が重要であるとしても,その指令の組合せとしての表現に創作性が認められなければ「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」であるプログラムの著作物としての著作物性は認められないところ,本件手法メモ部分は,特定の指標と数値の組み合わせそれ自体であって,アイデアにすぎないから,プログラム著作物としての創作的表現であるということはできない。
<平成30426日東京地方裁判所[平成28()44243]>

著作権法が保護の対象とする「著作物」は,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法2条1項1号)をいい,アイデアなど表現それ自体でないもの又はありふれた表現など表現上の創作性がないものは,著作権法による保護は及ばない。
プログラムは「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(同項10号の2)である。著作権法は,プログラムの機能やアイデアを保護するものではなく,その具体的表現を保護するものであるところ,プログラムにおいては,所定のプログラム言語,規約及び解法に制約されつつ,コンピューターに対する指令をどのように表現するか,その指令の表現をどのように組み合わせ,どのような表現順序とするかなどについて作成者の個性が表れることになる。
したがって,プログラムに著作物性があるというためには,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表現上の創作性が表れていることが認められる必要がある。
原告は,本件プログラムは,画像処理に基づく表示機能や処理機能,通信機能などの各種機能を備えていること,性質の異なる2種類の機能を同時に備えるという特徴や開発効率及びメンテナンス性の向上などの特徴があることを挙げて,本件プログラムには創作性があると主張する。
しかし,著作権法はプログラムの機能そのものを保護するものではないから,本件プログラムの機能についての原告の主張は,本件プログラムが著作物性を有することの根拠となるものではない。また,本件プログラムの特徴についての主張も,それらの特徴に係るコンピューターに対する指令について,上記の選択の幅等やそれがありふれた表現でないことを主張するものではなく,本件プログラムが著作物性を有することの根拠に直ちになるものではない。なお,原告は,本件プログラムの創作性に関し,本件プログラムの構成や本件プログラムに用いられている理論に関する証拠を提出しているが,これらも本件プログラムの構成や内容に関するアイデアを記載したものであり,コンピューターに対する指令の表現に創作性があることを立証するに足りるものではない。
また,原告は,本件プログラムには,①クラス,関数,変数などは全て小文字を使用すること,②クラスメンバ変数名の先頭には「_(アンダースコア)」を付することなど,表現上の特徴があると主張するが,これらの表記方法は,関数その他の指令単体の表現の特徴であって,その組合せに係る表現の特徴ではない上,いずれもありふれた表現ということができるから,本件プログラムに著作物性があるということはできない。
本件においては,本件プログラムの著作物性の有無が争点となり,原告は,本件プログラムの著作物性につき主張立証の機会を与えられていたにもかかわらず,上記のとおり主張立証するほかは,本件ソースコードを証拠として提出し,また,本件プログラムの処理の内容を述べたのみであり,本件ソースコードの具体的な表現につき,その表現自体や表現の組合せ,表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表現上の創作性が表れていることを主張立証しなかった。
したがって,本件プログラムが著作権法により保護される著作物であると認めることはできず,その余を判断するまでもなく,著作権侵害についての原告の主張は採用することができない。
<平成29629日東京地方裁判所[平成28()36924]>

【プログラム著作物の創作性】

プログラムは,その性質上,表現する記号が制約され,言語体系が厳格であり,また,電子計算機を少しでも経済的,効率的に機能させようとすると,指令の組合せの選択が限定されるため,プログラムにおける具体的記述が相互に類似することが少なくない。仮に,プログラムの具体的記述が,誰が作成してもほぼ同一になるもの,簡単な内容をごく短い表記法によって記述したもの又は極くありふれたものである場合においても,これを著作権法上の保護の対象になるとすると,電子計算機の広範な利用等を妨げ,社会生活や経済活動に多大の支障を来す結果となる。また,著作権法は,プログラムの具体的表現を保護するものであって,機能やアイデアを保護するものではないところ,特定の機能を果たすプログラムの具体的記述が,極くありふれたものである場合に,これを保護の対象になるとすると,結果的には,機能やアイデアそのものを保護,独占させることになる。したがって,電子計算機に対する指令の組合せであるプログラムの具体的表記が,このような記述からなる場合は,作成者の個性が発揮されていないものとして,創作性がないというべきである。
<平成150131日東京地方裁判所[平成13()17306]>

小説,絵画,音楽などといった従来型の典型的な著作物と異なり,プログラムの場合は,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(法21102)であって,元来,コンピュータに対する指令の組合せであり,正確かつ論理的なものでなければならないとともに,プログラムの著作物に対する法による保護は,「その著作物を作成するために用いるプログラム言語,規約及び解法に及ばない。」(法103項柱書1文)ところから,所定のプログラム言語,規約及び解法に制約されつつ,コンピュータに対する指令をどのように表現するか,その指令の表現をどのように組み合わせ,どのような表現順序とするかなどといったところに,法によって保護されるべき作成者の個性が表れることとなる。したがって,プログラムに著作物性があるといえるためには,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅が十分にあり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表れているものであることを要するものであって,プログラムの表現に選択の余地がないか,あるいは,選択の幅が著しく狭い場合には,作成者の個性の表れる余地もなくなり,著作物性を有しないことになる。そして,プログラムの指令の手順自体は,アイデアにすぎないし,プログラムにおけるアルゴリズムは,「解法」に当たり,いずれもプログラムの著作権の対象として保護されるものではない。
<平成181226日知的財産高等裁判所[平成18()10003]>

プログラムの表現物についてみると,プログラムとは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」であること(著作権法2条1項10号の2)に鑑みれば,プログラムの著作物性が認められるためには,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ及び表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表れていることを要するものと解される。
<平成26827日知的財産高等裁判所[平成25()10085]>

プログラムは,その性質上,表現する記号が制約され,言語体系が厳格であり,また,電子計算機を少しでも経済的,効率的に機能させようとすると,指令の組合せの選択が限定されるため,プログラムにおける具体的記述が相互に類似することが少なくない。著作権法は,プログラムの具体的表現を保護するものであって,機能やアイデアを保護するものではないところ,プログラムの具体的記述が,表現上制約があるために誰が作成してもほぼ同一になるもの,ごく短いもの又はありふれたものである場合においては,作成者の個性が発揮されていないものとして,創作性がないというべきである。他方,指令の表現,指令の組合せ,指令の順序からなるプログラム全体に,他の表現を選択することができる余地があり,作成者の何らかの個性が表現された場合においては,創作性が認められるべきである。
<平成28427日 知的財産高等裁判所[平成26()10059]>

プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合せたものとして表現したもの」(著作権法2条1項10号の2)であり,所定のプログラム言語,規約及び解法に制約されつつ,コンピューターに対する指令をどのように表現するか,その指令の表現をどのように組合せ,どのような表現順序とするかなどについて,著作権法により保護されるべき作成者の個性が表れることになる。
したがって,プログラムに著作物性があるというためには,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表現上の創作性が表れていることを要するといわなければならない(知財高裁平成24年1月25日判決)。
<令和元年521日大阪地方裁判所[平成28()11067]>

プログラムにおいて,コンピュータ(電子計算機)にどのような処理をさせ,どのような機能を持たせるかなどの工夫それ自体は,アイデアであって,著作権法による保護が及ぶことはなく,また,プログラムを著作権法上の著作物として保護するためには,プログラムの具体的記述に作成者の思想又は感情が創作的に表現され,その作成者の個性が表れていることが必要であるが,プログラムは,その性質上,プログラム言語,規約及び解法による表現の手段の制約を受け,かつ,コンピュータ(電子計算機)を効率的に機能させようとすると,指令の組合せの具体的記述における表現は事実上類似せざるを得ない面があることからすると,プログラムの作成者の個性を発揮し得る選択の幅には自ずと制約があるものといわざるを得ない。
<平成241218日東京地方裁判所[平成24()5771]>

プログラム言語においてはその命令数が限定され,自ら命令語を作出する余地はなく,文法においても厳密に定義されたものに機械的に従うほかないこと,そして,プログラムが機能的な表現であって,だれがその作成に当たっても効率性という方向に必然的に向かうことなどにかんがみれば,プログラムの表現には自ずと一定範囲の常識的な実用的慣用的表現というものが生じるのであり,その部分はありふれたものとして独占を許すべきではないから,プログラムの創作に当たっての表現の選択とは,上記の要請からくるありふれた表現の範囲があることを考慮して判断すべきものである。
<平成220428日東京地方裁判所[平成18()24088]>

生年月日の月と日によって決定される星座を求めるに当たり,まず月を場合分けし,その月の中にある2つの星座の境界日によって,どちらかの星座に振り分けるというのはプログラム作成過程におけるアイディア又は解法にすぎない。しかるところ,これらは著作権法による保護の対象外であり,これをそのまま表現したか,あるいはこれを平凡な選択によるありふれた表現手法で表現した場合には,実質的にはアイディア又は解法に従っただけのものとして,その表現には創作性がないものというべきである。
<平成220428日東京地方裁判所[平成18()24088]>

一般に,ある表現物について,著作物としての創作性が認められるためには,当該表現に作成者の何らかの個性が表れていることを要し,かつそれで足りるものと解されるところ,この点は,プログラム著作物の場合であっても特段異なるものではないというべきであるから,プログラムの具体的記述が,誰が作成してもほぼ同一になるもの,簡単な内容をごく短い表記法によって記述したもの又はごくありふれたものである場合には,作成者の個性が発揮されていないものとして創作性が否定されるべきであるが,これらの場合には当たらず,作成者の何らかの個性が発揮されているものといえる場合には,創作性が認められるべきである。
しかるところ,原告プログラムは,株価チャート分析のための多様な機能を実現するものであり,膨大な量のソースコードからなり,そこに含まれる関数も多数にのぼるものであって,原告プログラムを全体としてみれば,そこに含まれる指令の組合せには多様な可能性があり得るはずであるから,特段の事情がない限りは,原告プログラムにおける具体的記述をもって,誰が作成しても同一になるものであるとか,あるいは,ごくありふれたものであるなどとして,作成者の個性が発揮されていないものと断ずることは困難ということができる。
<平成230128日東京地方裁判所[平成20()11762]>

原告プログラムは,測量業務を行うためのソフトウェアに係るプログラムであり,39個のファイルからなり,実際に使用されている35個のファイルには合計で数百個を超えるブロックが設けられ,これらのブロックの中には合計で数千行を超えるプログラムのソースコードが含まれている。そして,上記の制約の下でも,測量業務に必要な機能を抽出・分類した上で,これをどのようなファイル形式に区分し,どのように関連付けるか,どのような関数を使用するか,各ファイルにおける処理機能のうち,どの範囲でサブルーチン化し,共通処理のためのソースコードを作成するか,各ファイル内のブロック群で受け渡しされるどのデータをデータベースに構造化して格納するかなどの点については,作成者の個性の表現が発揮されているから,原告プログラムは,創作性を有するといえる。
<平成240131日 知的財産高等裁判所[平成23()10041]>

θ/2法や接線法により液滴の接触角を計測するという原告プログラムの目的のためには,名称や関数等の定義や関数等の種類や内容,変数等への値の引渡しの方法,サブルーティン化の有無やステップ記載の順序等において多様な記載方法があるところ,原告接触角計算(液滴法)プログラムのソースコードは,上記の目的を達成するために工夫を凝らして2000行を超える分量で作成されたものであると認められる。
そうすると,原告接触角計算(液滴法)プログラムは,全体として創作性を有するものということができるから,プログラムの著作物であると認められる。
<平成26424日東京地方裁判所[平成23()36945]>

控訴人は,遊技台の情報を表示させるためのLED(「7セグ」)の発光パターンとして,「0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,a,b,c,d,E,F」に,ランダムな変数である「,,-,P,r,o,n.L,A,I,t,u,U」(本件12桁の文字列)を加えたが,本件12桁の文字列は,作成者の選択の幅が十分にある中から選択配列されたものであって,その表現には全体として作成者の個性が表われているとして,本件12桁の文字列については創作性があり著作物である旨主張する。
しかし,本件12桁の文字列を含む「0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,a,b,c,d,E,F, ,-,P,r,o,n,L,A,I,t,u,U」の文字列は,「7セグ」と呼ばれるデジタル表示板に数字や文字を表示する文字データを示すものであり,ある一つの文字を表示するためのデータを配列した表(データテーブル)の機能を有するものであって,その配列により,当該数字データ又は文字データがその順で並んでいるということを示すものであるが,このような文字列を組み込むこと自体はアイデアであると解される上,本件12桁の文字列の配列自体にも表現としての創作性があるとは認められない。
したがって,本件12桁の文字列は,プログラム著作物としての創作的な表現であるとはいえないから,控訴人の上記主張は理由がない。
控訴人は,リモコン制御の時間判定に用いる定数としての(80,100),(15,25,48)及び(12,20,24,32)は,無数に存在する定数の組合せの中から,創作者が知識と経験に基づいて設計するもので,創作者の個性が表われており,創作性が否定されるものではない旨主張する。
しかし,上記数値は,リモコン制御の時間判定を規格上の基準値よりも幅を持たせて判断するためのものであると解されるが,この数値は原告製品が採用するリモコン制御のフォーマットの仕様により制約されるものと解される。そのような制約の中において,上記数値を選択したこと自体について創作性を認めることはできない。
したがって,控訴人の上記主張は理由がない。
<平成2686日知的財産高等裁判所[平成26()10028]>

【電子計算機を機能されるための指令】

著作権法上、プログラムとは、電子計算機に対する指令の組合せであり、それにより電子計算機を作動させ一定の処理をさせるものでなければならない。そして、そのようなプログラムで創作性を有するものが、同法第10条第1項第9号の「プログラムの著作物」として、同法の保護を受けるものである。
したがって、電子ファイルとして記録媒体に電磁的に記録され、電子計算機がそれを読み取ることができるようなものであっても、右の機能を有しないものはプログラムとはならないものである。
電子計算機によるプログラム処理に当たり、あるシステムにおけるプログラムを稼動させ一定の処理をさせるためには、そのプログラムの他、それに処理情報を与えるデータが必要であるが、システムの効率上、データを本体プログラムとは別個のファイルに記録させることがよく行われる。その場合、該ファイルは、プログラムに読み取られその結果電子計算機によって処理されるものではあるが、電子計算機に対する指令の組合せを含むものではないので、著作権法上のプログラムではない。もっとも、用いられるファイルが異なれば電子計算機の処理結果が異なることになるが、それはファイルに記述されたデータの内容の違いによるものであって、それをもって、データが電子計算機に指令を与えているということができないことは当然である。それと同様、データを記述するに当たり、プログラム自身が規定した一定の記号又は文字(以下「記号等」という。)が記述されていれば、プログラムがそれを読み取ってその記号等に意味付けられた処理を行うとしても、それは、プログラムがその記号等をデータとして読み取り所定の処理を行うものにすぎず、その記号等をもって電子計算機に対する指令であるということはできない。したがって、また、そのような記号等が付されたデータをもって、著作権法上のプログラムであるということはできない。
(略)
以上の認定事実からすると、IBFファイルは、EOシステムが各アプリケーションソフトをハードディスクに組み込み処理をするに当たり、MENU・EXEプログラムに読み込まれる組込み情報(アプリケーションソフトの名称、デバイスドライバ情報等)を記載したものにすぎず、電子計算機に対する指令の組合せはなく、IBFファイル自体がプログラムとして電子計算機を機能させてアプリケーションソフトを組み込むものではない。すなわち、IBFファイルの記述内容は当該EOシステムにデータとして読み込まれるもので、単なるデータファイルにすぎないというべきである。
<平成40331日東京高等裁判所[平成3()142]>

控訴人は,Access形式で作成された一つのファイルであるTemplate.mdbが,単独で,プログラム著作物又はデータベース著作物として創作性を有すると主張する。
プログラム著作物として創作性を有するといえるためには,コンピュータに対する指令の組合せが創作的に表現されることが必要であり(著作権法2条1項1号,10号の2),データベース著作物として創作性を有するといえるためには,コンピュータで検索できる情報の集合物について,その情報の選択又は体系的な構成が創作的に表現されることが必要である(著作権法2条1項10号の3,12条の2)。
Template.mdbの概要は,合計9個のテーブルに147個のフィールドが設定されているものである。そして,Template.mdbは,控訴人プログラムで取込み又は作成した文字データや各種設定情報を格納するための書式(読み出されたTemplate.mdbにユーザの操作により各種データが所定のフィールドに上書きされていき,最終的には個別の字幕データファイルとして完成される。)であることが認められる。
そうすると,Template.mdbをプログラムとして見た場合,それは,変数やテキストデータが格納されているにすぎないから,コンピュータに対する指令の組合せに個性が顕れる余地はほとんどなく,プログラムの著作物としての創作性を想定し難い。また,Template.mdbをデータベースとして見ようとしても,それは,情報の項目が定められているだけであり,選択されて入力すべき情報それ自体が格納されていないから,コンピュータが検索できる情報の集合物を有していない。しかも,これら項目も,各テーブルに並列的に区分けされているだけであり,このテーブル間に何らかの関係があるわけでもない。したがって,Template.mdbをデータベースの著作物として観念することはできない(控訴人自身,Template.mdbがデータベースに該当しないことを,原審では自認していた。)。
したがって,Template.mdb自体には,プログラムの著作物又はデータベースの著作物としての創作性を認めることはできない。
控訴人は,控訴人プログラムがTemplate.mdbの設計構造を受け継いでおり,Template.mdbとその余の控訴人プログラムとは不可分一体となってプログラムを効率的に稼働させている旨を主張する。
しかしながら,Template.mdbの構造を定義しているのも,Template.mdbの各種設定情報を処理しているのも,Template.mdbとは異なるプログラムであるから,Template.mdbそれ自体は,控訴人プログラムを稼働させたり,控訴人プログラムの設計構造を規定しているのではなく,控訴人プログラムのデータ保存書式として存在するにすぎない。控訴人の上記主張は,控訴人プログラム全体の創作性をいうものであり,Template.mdbそれ自体の創作性をいうものではない。 (以上のとおりであるから,Template.mdbが,単独で,プログラムの著作物又はデータベースの著作物として創作性を有するものとは認められない。)
<平成28323日知的財産高等裁判所[平成27()10102]>

OS・プログラム言語の変換】

プログラムの表現は,所定のプログラム言語,規約及び解法による制約がある上に,その個性を表現できる範囲は,コンピュータに対する指令の表現方法,その指令の表現の組合せ及び表現順序というように,制約の多いものである。したがって,あるプログラムの著作物について,OSやプログラム言語を異なるものに変換したからといって,直ちに創作性があるということはできず,OSや言語を変換することにより,新たな創作性が付加されたか否かを判断すべきである。
<平成190726日大阪地方裁判所[平成16()11546]>

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