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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

過失責任論

【総論】

被告らは、本件プログラムが著作物であり、その複製に原告の許諾が必要であることを当時知らなかつた旨主張するけれども、右は法の不知というべく、被告らの右賠償責任の成立に消長を来たさない。
<昭和571206日東京地方裁判所[昭和54()10867]>

仮に,被告において原告ソフトウェアのプログラムを自由に利用することができると誤信していたとしても,それは著作権及び原告の許諾の存在についての誤解に基づくものにすぎず,このような誤解をもって,少なくとも過失がないということはできない。
<平成211109日東京地方裁判所[平成20()21090]>

著作権侵害の故意の有無の判断に当たっては,他人が権利を有する楽曲を利用していることの認識があれば足り,具体的な楽曲名や権利者の認識までは要しない。
<平成281019日知的財産高等裁判所[平成28()10041]>

著作権侵害行為について過失があるというためには、侵害者において、その行為が他者の著作権を侵害することを認識・予見することが可能であり、かつ、認識・予見すべきであるのにこれをしなかったことが必要であると解すべきであり、これを認めるためには、侵害者において、少なくとも、当該著作物について、他に権利者が存在することを認識・予見することが可能であり、かつ、認識・予見すべきであるのにこれをしなかったことが必要であるというべきである。
<平成161227日大阪地方裁判所[平成14()1919]>

他人の著作物を利用するに当たっては,それが著作権法その他の法令により著作権が制限され,著作者の承諾を得ない利用が許される場合に該当し,著作権を侵害することがないか否かについて十分に調査する義務を負うというべきであり,そのような調査義務を尽くさず安易に著作者の承諾を得なくても著作権侵害が生じないと信じたものとしても,著作権侵害につき過失責任を免れないというべきである。
<平成160629日東京高等裁判所[平成15()2467]>

第三者が著作権を有する著作物の利用について契約を締結する場合,当該契約の相手方が当該著作物の利用を許諾する権限を有しないのであれば,当該契約を締結しても当該著作物を利用することはできないのであるから,当該契約の当事者としては,相手方の利用許諾権限の有無を確認する注意義務があるというべきであり,これを怠って当該著作物を利用したときには,当該第三者に対する不法行為責任を免れないというべきである。
<平成230711日東京地方裁判所[平成21()10932]>

本件掲載写真は,画像検索サイト上の写真からそのまま本件記事に掲載されたものであり,本件掲載写真にも画像検索サイト上の写真にも原告の著作物に係る旨の表示は一切存在しない。
しかし,およそ自らが創作(著作)したものでない著作物を利用する場合には,対象著作物の権利者の許諾を得るべき注意義務があるというべきであって,これを無許諾で利用した場合には,そのことを正当とすべき特段の事情がない限り,少なくとも過失があるというべきである。この点は,インターネット上に溢れている様々な著作物の利用に関しても異なるものではなく,識別情報や権利関係が明らかでない著作物については,著作権等を侵害する可能性が否定できない以上,当該著作物の利用を控えるなど,著作者の権利を侵害しないように配慮すべき注意義務があるというべきである。
これを本件についてみるに,本件投稿者が本件写真検索サイトから本件掲載写真を入手した旨主張していることは認められるものの,本件投稿者が本件写真検索サイト上の写真や画像の権利関係について確認した上,権利者又はその正当な代理人であることが合理的に推認される者から現に許諾を得たなどの事実関係はなく,本件投稿者は,要するに,本件掲載写真の権利関係が不明であったにもかかわらず,安易に本件サイト上に本件記事と共に掲載したものというほかはなく,上記注意義務を尽くしたものとは認められない。
したがって,少なくとも本件投稿者について,本件写真の著作権(公衆送信権)の侵害について過失があると認められる。
なお,本件掲載写真の引用元となった画像検索サイト上の写真を掲載した者について,別途,本件写真につき原告が有する著作権の侵害が成立したとしても,これによって,本件投稿者の過失に関する上記判断が覆るものではない。
<平成28118日東京地方裁判所[平成27()21642]>

【著作権表示がある場合】

本件ポスター【注:財団法人U協会(以下「協会」)は、ジャパンフローラ2000の広報用ポスターの制作を電通に発注し、電通は、原告の了解を得て、本件誕生花の写真及び花言葉を掲載したポスター(これが「本件ポスター」)を製作して協会に納入したという経緯がある】には、第1刷分から、本件誕生花の部分の下に「©KITA Shunkan Photo Library」との表示がされていたと認められる。「©KITA Shunkan Photo Library」が協会を示すものでないことは、一見して明らかであるから、被告D種苗としては、本件誕生花に関する著作権の所在について、少なくとも協会に明示的に確認すべき注意義務があったというべきである。
しかしながら、被告D種苗の担当者であったEは、本件ポスターの写真に別に著作権者がいるかもしれないという考えを持たず、協会から許諾を得ればよいだろうと考え、その結果、被告D種苗は、著作権の所在について、協会に明示的に確認することすらしなかったのであるから、被告D種苗には、上記注意義務を怠るという過失があったというべきである。
もっとも、協会が被告D種苗に対し、本件ポスターを転載することについて、無償であれば構わない旨を伝えていたという経緯に照らせば、本件ポスターに上記表示がされていたことのみをもって、被告D種苗に、上記過失を越えて、故意の存在まで認めることはできず、他に、被告D種苗に故意があったことを認めるに足りる証拠はない。
<平成160212日大阪地方裁判所[平成14()13194]>

被告が複製物を販売したプログラムに,日本システムプランニング(原告ないしA)の著作権表示がある以上,過去にこれと異なる著作権表示のある時期が一時的にあったとしても,現に著作権表示をしている者に対する問い合わせ等,著作権の帰属について十分な注意を払うべきであり,被告にはこれを怠った過失がある。
<平成190726日大阪地方裁判所[平成16()11546]>

原告は,平成23年3月頃,写真投稿サイト「flickr」に,自らの氏名を著作者名として表示して,本件写真を掲載したことが認められる。他方で,著作者の許諾なく本件写真を利用することができると被告が考えたことについて正当な理由が存在したことを認めるに足りる証拠はなく,かえって,証拠によれば,原告が本件写真を投稿した「flickr」上のウェブページには,「Some rights reserved」(一部権利留保)と明記されているのであるから,同ウェブページ上で本件写真を閲覧した者は,通常,本件写真を著作者の許諾なく利用することができないと理解するものと認められる。
したがって,被告が本件画像を掲載するに当たり原告の氏名を著作者名として表示し得なかったとは認められず,被告が本件サイト内で原告の氏名を著作者名として表示することなく本件画像を掲載したことについて,被告には少なくとも過失があったと認めるのが相当である。
<令和21223日東京地方裁判所[令和2()24035]>

【弁護士の意見書がある場合】

被告は,本件振付けに著作物性があるという確たる認識を有していなかったことを根拠に,本件振付けに係る著作権侵害行為に過失はあったとはいえないと主張し,実際にも,被告は,平成26年10月の時点で,弁護士から,原告のフラダンスの振付けには原則として著作物性はないとの意見書を得ていたと認められる。しかし,被告において本部長を務めていたP3が,クムフラがフラダンス教室において指導することをやめた後にも当該クムフラの創作した振付けを演じることができるか否かということが問題となっていた事例を聞き及んでおり,上記のとおり被告は原告による振付けの著作物性についても問題意識を持っていたことからすると,舞踊の著作物が著作物の一つとして法文上明記される(著作権法10条1項3号)一方,フラダンスの振付けの著作物性を否定する確定判例もない中で,1通の弁護士の意見書を得ていたからといって,過失を免れるものではないというべきである。
<平成30920日大阪地方裁判所[平成27()2570]>

【二次的著作物を利用する場合】

被告らは、本件連載漫画について著作権を有するのは被告Bのみである旨及び仮に原告に何らかの権利があったとしても本件連載漫画のストーリーを用いないで登場人物の絵を使用するだけであれば著作権法上の問題を生じない旨の共通認識の下で、共同して、本件連載漫画のキャラクターの商品化事業として、被告○○による本件商品の製造販売を遂行したものと認められるから、本件商品の製造販売による原告の著作権の侵害については、各自、共同不法行為者として責任を負担するものというべきである。
被告D1は自己の行為は違法と評価されるものではないと主張するが、本件許諾契約に向けての交渉の際には、本件連載漫画について著作権を有するのは被告Bのみである旨及び本件連載漫画のストーリーを用いないで登場人物の絵を使用するだけであれば著作権法上の問題を生じない旨を繰り返し説明していたものであり、なるほど本件許諾契約には本件商品の製造販売により第三者の権利を侵害したときには被告D2の責任により処理する旨の条項(11(2))は置かれているものの、交渉の経緯に照らせば、右条項が本件連載漫画の登場人物の絵の使用について原告から別途許諾を得る必要のあることを意味するものと解することはできない。
また、被告D1及び被告D2は自己の過失を争うが、被告らは、本件連載漫画の登場人物の絵の使用について著作権法上の問題を生じないかどうかを、それぞれの事業の遂行に当たり、各自、自己の責任により判断すべきものであるところ、なかよしにおける本件連載漫画の各連載分に「原作E」という形で原告のペンネームが表示されていたことに照らせば、本件連載漫画の登場人物の絵の使用につき原告が何らかの権利を有することは容易に知り得べきものであったから、被告Bないし同被告の当時の代理人弁護士の説明を軽信して本件商品の製造販売に関与した被告D1及び被告D2に、過失があったことは明らかである。
<平成120525日東京地方裁判所[平成11()8471]>

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