Kaneda Copyright Agency ホームに戻る
カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

出版権/出版許諾

【出版権設定の成否】

右認定の事実によると、原告と被告間において、遅くとも、昭和538月ころまでに、単行本「太陽風交点」の出版に関する契約が締結されたことが認められるが、本件全証拠によっても、締結された右契約が物権類似の性質を有する出版権を設定する出版権設定契約であると認めることはできない。すなわち、右認定の事実から明らかなとおり、原告と被告の間では出版権の設定との明示の文言その他出版権設定をうかがわせるに足る文言は交わされていないばかりか、当時、被告としては、出版に関する契約に出版権設定契約と出版許諾契約があることすら認識していなかつたのであり、一方、右単行本の出版について原告側として被告と交渉に当たつたAについていえば、同人が証人として供述したところによれば、同人は右契約の種類については理解していたものの、本件においては単に出版を独占しうるのは当然と考えていたというに過ぎず、同証言のすべてを検討しても、本件につき、出版権設定契約を締結する意図ないし認識があったとは認定できないのであって、このような両当事者間で締結された出版に関する契約をもって出版の単なる許諾以上の権利義務を契約当事者に発生させる出版権設定契約とみることは到底許されないからである。
<昭和590323日東京地方裁判所[昭和56()4210]>

証拠等によれば,本件書籍について各出版許諾契約書を作成して使用許諾契約を締結したことが認められる。
しかし,上記各使用許諾契約における許諾の内容が独占的排他的な出版権を設定するものであることを認めるに足りる証拠はない。かえって,上記各出版使用許諾契約に係る契約書1条に,「甲は,乙に対し,この契約の表記の記載事項と約款に従い,本著作物に係る著作権を出版使用することを,著作権法第63条に基づき許諾する。」との規定があり,同規定中に「著作権法63条に基づき」と明示されているとおり,上記各使用許諾契約における許諾は,著作権法79条の出版権を設定する内容のものではなく,同法63条に基づく利用許諾に過ぎないというべきであるから,独占的排他的なものであるとはいえない。
したがって,本件書籍について独占的排他的な出版権の設定を受けたとの被告○○社の主張は採用することができない。
<平成230304日東京地方裁判所[平成21()6368]>

【出版権の侵害性】

出版権者は,著作権者との間の契約で定めるところにより,頒布の目的をもって,その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利を専有する(著作権法80条【1項1号】)。
本件において,債権者○○社は債権者甲との間の契約により本件著作物の出版権を取得したが,その内容は本件著作物を原作のまま印刷し文書として複製するというものである。
他方,債務者M出版の出版に係る債務者書籍は,本件著作物を翻案した部分を含むものであるが,本件著作物の複製物でないことは明らかである。
したがって,債権者○○社の出版権侵害を理由とする申立ては,理由がない。
<平成131219日東京地方裁判所[平成13()22103]>

出版権者は,設定行為で定めるところにより,頒布の目的をもって,その出版権の目的である著作物を,原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利を専有する(著作権法801項【1号】)。
したがって,被告が,原告の有する出版権を侵害したというためには,被告が,頒布の目的をもって,その出版権の目的である著作物を,原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製したことが必要である。
<平成171226日東京地方裁判所[平成17()10125]>

原告会社の被告らに対する請求は,出版権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求であって,本件出版契約に基づく請求ではないから,被告らによる被告用紙の販売により原告会社の出版権に対する侵害が生じているか否かは,被告用紙が本件用紙を「原作のまま」(著作権法801項【1号】)複製したものといえるか否かによって判断すべきであって,被告用紙が本件用紙に単に類似しているというだけでは足りず,また,本件出版契約書第5条の「同一内容または著しく類似」といえるか否かとの基準によって判断すべきものでもない。
そして,「原作のまま」複製したものとは,出版権の対象である著作物をそのまま再現したものをいい,したがって,誤字・脱字・仮名遣い等を補正したにとどまるものを除き,当該著作物の内容を変更したものは,「原作のまま」複製したとはいえないものと解するのが相当である。
<平成190612日大阪地方裁判所[平成17()153]>

被控訴人は,本件条例に従い,本件意見書を含む住民意見を抜粋ないし要約した記載のある本件評価書を作成し,これを福島県知事に送付するとともに,本件評価書を公告し,これを縦覧に供したものである。
このように,被控訴人は,本件評価書において,原著作物である本件意見書を「頒布の目的をもって」複製しているものではないし,「原作のまま」複製したものでもない。そうすると,本件評価書の作成やその縦覧のための複製によって,本件意見書について出版権侵害は成立しないというべきである。
<平成260521日知的財産高等裁判所[平成25()10082]>

出版権者は,設定行為で定めるところにより,頒布の目的をもって,その出版権の目的である著作物を,原作のまま印刷その他の機械的又は科学的方法により文書又は図画として複製する権利を専有し(著作権法80条1項1号),被告が,原告の出版権を侵害したというためには,被告が,頒布の目的をもって,その出版権の目的である著作物を複製したことが必要である。
また,原告が出版権を有する著作物について,被告が本件出版物において複製したというためには,本件出版物が,被告によって,原告が出版権を有する著作物に依拠して作成されたことを要する。
<平成301115日東京地方裁判所[平成29()22922]>

【出版者の義務】

出版許諾契約においては、出版者は著作物を原稿の内容のまま複製すべき義務があり、右内容に改変を加えることはできず、もし著作者の承諾なしに改変を加えて複製した場合には債務不履行の責任を生ずるとともに、著作者人格権である同一性保持権(著作権法第20条第1項)侵害の責任を負うべきである。
<昭和620219日東京高等裁判所[昭和61()833]>

出版許諾契約に基づいて、出版者があらためて複製ないし増刷する場合にも、著作権法第82条第2項の通知を要するかについては、右通知義務が、著作者の人格的利益を保護する目的に出た著作者の著作物を修正増減する権利を確保しようとするものであつて、著作者の人格権に由来するものであるから、これを積極に解するのが相当であり、前記法条が類推適用されるものといわなければならない。
<昭和481031日東京地方裁判所[昭和48()5424]>

【著作者の権利】

本件出版許諾契約が出版権設定契約でない以上,原告には,出版権設定契約の成立を前提とした著作権法82条所定の諸権利(修正増減する権利,増刷の際に通知を受ける権利)は当然には認められない。
<平成131130日東京地方裁判所[平成12()15312]>

一覧に戻る