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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

地図・図形著作物

【地図一般】

一般に、地図は、地球上の現象を所定の記号によって、客観的に表現するものにすぎないものであつて、個性的表現の余地が少く、文字、音楽、造形美術上の著作に比して、著作権による保護を受ける範囲が狭いのが通例ではあるが、各種素材の取捨選択、配列及びその表示の方法に関しては、地図作成者の個性、学識、経験等が重要な役割を果たすものであるから、なおそこに創作性の表出があるものということができる。そして、右素材の選択、配列及び表現方法を総合したところに、地図の著作物性を認めることができる。
<昭和530922日富山地方裁判所[昭和46()33]>

一般に、地図は、地形や土地の利用状況等を所定の記号等を用いて客観的に表現するものであって、個性的表現の余地が少なく、文学、音楽、造形美術上の著作に比して創作性を認め得る余地が少ないのが通例である。それでも、記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法に関しては、地図作成者の個性、学識、経験、現地調査の程度等が重要な役割を果たし得るものであるから、なおそこに創作性が表われ得るものということができる。そして、地図の著作物性は、右記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法を総合して、判断すべきものである。
そこで、原告著作物に掲げられた地図について検討すると、例えば「竜源寺」の地図では、全体の構成は、現実の地形や建物の位置関係がそのようになっている以上、これ以外の形にはなり得ないと考えられるが、読者が最も関心があると思われる「近藤勇胸像」や「近藤勇と理心流の碑」等を、実物に近い形にしながら適宜省略し、デフォルメした形で記載した点には創作性が認められ、この点が同地図の本質的特徴をなしているから、著作物性を認めることができる。他方、たとえば「関田家及び大長寺周辺」の地図などは、既存の地図を基に、史跡やバス停留所の名前を記入したという以外には、さしたる変容を加えていないので、特段の創作性は認められない。
<平成130123日東京地方裁判所[平成11()13552]>

一般に,地図は,地形や土地の利用状況等の地球上の現象を所定の記号によって,客観的に表現するものであるから,個性的表現の余地が少なく,文学,音楽,造形美術上の著作に比して,著作権による保護を受ける範囲が狭いのが通例である。しかし,地図において記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法に関しては,地図作成者の個性,学識,経験等が重要な役割を果たし得るものであるから,なおそこに創作性が表われ得るものということができる。そこで,地図の著作物性は,記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法を総合して,判断すべきものである。
<平成200131日東京地方裁判所[平成17()16218]>

【図形著作物一般】

表に著作物性が認められる場合は、表の形式そのものが特別のものであったり、表を構成する項目の選択やその記載の順序などに特別の工夫が見られる場合に限られるものである。
<平成120308日名古屋地方裁判所[平成4()2130]>

著作権法にいう著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであるが、控訴人が知恵蔵の素材であると主張する柱、ノンブル、ツメの態様、分野の見出し、項目、解説本文等に使用された文字の大きさ、書体、使用された罫、約物の形状などが配置される本件レイアウト・フォーマット用紙及び控訴人が知恵蔵の素材であると主張する柱、ノンブル、ツメの態様、分野の見出し、項目、解説本文等に使用された文字の大きさ、書体、使用された罫、約物の形状は、編集著作物である知恵蔵の編集過程における紙面の割付け方針を示すものであって、それが知恵蔵の編集過程を離れて独自の創作性を有し独自の表現をもたらすものと認めるべき特段の事情のない限り、それ自体に独立して著作物性を認めることはできない。
(略)
本件レイアウト・フォーマット用紙の作成も、控訴人の知的活動の結果であるということはいえても、それは、知恵蔵の刊行までの間の編集過程において示された編集あるいは割付け作業のアイデアが視覚化された段階のものにとどまり、そこに、選択され配列された分野別の「ニュートレンド」、「新語話題語」、「用語」等の解説記事や図表・写真を中心とする編集著作物である知恵蔵とは別に、本件レイアウト・フォーマット用紙自体に著作権法上保護されるべき独立の著作権が成立するものと認めることはできない。
<平成111028日東京高等裁判所[平成10()2983]>

「天・人・地・総・外」の五格を構成する字画数によって姓名判断を行うことや姓名判断に際して,一字姓,一字名の場合に,上下に各一を加えるということ自体は,アイデアである。(本件)図形は,そのような姓名判断法に基づく極めて単純な図形であって,このような図形は,上記姓名判断法に基づく限り,誰が作成しても同様の表現とならざるを得ないから,表現上の創作性を有するものとして著作権法によって保護される著作物には該当しない。
<平成141126日東京地方裁判所[平成14()5467]>

本件構成【注:「形の最小単位は直角三角形であり,この三角形二つの各最大辺を線対称的に合わせて四角形を構成し,この四角形五つを円環的につなげた形二つをさらにつなげた形」と表現される構成のこと】自体は,そのような形の衣服を作成するという抽象的な思想又はアイデアにすぎず,上記思想又はアイデアを編み物として具現化する過程において,編み目の方向の変化,編み目の重なり,各モチーフの色の選択等によって具体的表現となるに至るものであるから,原告編み図に本件構成が表示されている点は,思想又はアイデアを表示したにとどまるものというべきであり,この点をもって,原告編み図に著作物性を認めることはできない。
<平成231226日東京地方裁判所[平成22()39994]>

実験結果等のデータ自体は,事実又はアイディアであって,著作物ではない以上,そのようなデータを一般的な手法に基づき表現したのみのグラフは,多少の表現の幅はあり得るものであっても,なお,著作物としての創作性を有しないものと解すべきである。なぜなら,上記のようなグラフまでを著作物として保護することになれば,事実又はアイディアについては万人の共通財産として著作権法上の自由な利用が許されるべきであるとの趣旨に反する結果となるからである。
<平成170525日知的財産高等裁判所[平成17()10038]>

原告チャートを作成するに至った技術的知見ないしアイデア自体に独自性や新規性があるとしても,その技術的知見ないしアイデア自体は,著作権法により保護されるべきものということはできず,著作権法は,その技術的知見ないしアイデアに基づいて個性的な表現方法が可能である場合に,個性的に具体的に表現されたものについてこれを保護するものであり,原告チャートについては,その技術的知見ないしアイデアそのものがそのまま表現されているものといわざるを得ない。
<平成171117日東京地方裁判所[平成16()19816]>

【建築設計図一般】

建築物の設計図は,設計士としての専門的知識に基づき,依頼者からの様々な要望,及び,立地その他の環境的条件と法的規制等の条件を総合的に勘案して決定される設計事項をベースとして作成されるものであり,その創作性は,作図上の表現方法やその具体的な表現内容に作成者の個性が発揮されている場合に認められると解すべきである。もっとも,その作図上の表現方法や建築物の具体的な表現内容が,実用的,機能的で,ありふれたものであったり,選択の余地がほとんどないような場合には,創作的な表現とはいえないというべきである。
<平成27525日知的財産高等裁判所[平成26()10130]>

建築設計図は、一般に、学術的性質を有する図面にあたり、そして建築家がその知識と技術を駆使して作成したものでそこに創作性が認められる限り、著作権法1016号の著作物性を肯定し得ると解され(る。)
<平成30409日福島地方裁判所[平成2()105]>

建築設計図は、学識、経験、個性によって決定された設計者の思想が図面として表現されたものであり、学術的な表現であるということができるから、その表現に創作性が認められるものについては、著作物性が認められる。
建築設計図を著作物として保護するのは、建築の著作物(法1015号)のように、建築物によって表現された美的形象を模倣建築による盗用から保護する趣旨ではないから、美術性又は芸術性を備えることは必要ない。
また、法は保護の要件として、創作性があることを要求しているだけであって、創作性が高いものであることは要求していないから、設計する建物はありふれたものでもよく、特に新奇なものである必要もない。そして、図面に設計者の思想が創作的に表現されていれば、著作物性としては十分であり、建物の建築図面として、その図面により建築するについて十分であるかどうかという図面の完全性が要求されるものでもない。
<平成120308日名古屋地方裁判所[平成4()2130]>

建築設計図面については,表現方法又は表現された学術的な思想に創作性が認められるものであれば著作物に該当するものというべきであるが,作図上の工夫や図面により表現されたがありふれたものであって,創作性が認められない場合には,当該図面をもって著作物ということはできない。
<平成141219日東京地方裁判所[平成14()2978]>

設計図は,そのすべてが当然に著作権法上の保護の対象となるものではない。設計図が著作物に該当するというためには,その表現方法や内容に,作成者の個性が発揮されていることが必要であって,その作図上の表現方法や内容が,ありふれたものであったり,そもそも選択の余地がないような場合には,作成者の個性が全く発揮されていないものとして,著作物には当たらないというべきである。
<平成150226日東京地方裁判所[平成13()20223]>

「学術的な性質を有する図面」としての設計図の創作性は,作図の対象である物品や建築物を設計するための設計思想の創作性をいうものではなく,作図上の表現としての工夫に作成者の個性が表現されている場合に認められると解すべきであって,設計思想そのものは,アイデアなど表現それ自体ではないものとして著作権法の保護の対象とはならないというべきである。
<平成26117日東京地方裁判所[平成25()2728]>

作図の対象となる建築物に「建築の著作物」若しくは「美術の著作物」等として著作物性が認められる場合に,その図面にその対象物の創作性が再生されていれば,作図上の工夫のない図面でも著作物性が認められる余地がある(。)
<平成26117日東京地方裁判所[平成25()2728]>

【機械設計図一般】

原告本件設計図は、原告の設計担当の従業員らが研究開発の過程で得た技術的な知見を反映したもので、機械工学上の技術思想を表現した面を有し、かつその表現内容(描かれた形状及び寸法)には創作性があると認められる。したがって、原告本件設計図はそれぞれ丸棒矯正機に関する機械工学上の技術思想を創作的に表現した学術的な性質を有する図面(著作権法1016号)たる著作物にあたるというべきである。
<平成40430日大阪地方裁判所[昭和61()4752]>

本件原告設計図は,その記載からみて,放電プラズマ燒結機という機械の設計図であり,同一の機械を設計図に表現するときは,主として線を用い,これに当業者間で共通に使用されている記号や数値を付加して二次元的に表現するものであって,その性質上,表現の選択の幅が限定されていると言わざるを得ず,同一の機械を設計図に表現するときは,おのずから類似の表現にならざるを得ないものであるから,これが創作的に表現された著作物である(著作権法211号)ということはでき(ない。)
<平成190828日知的財産高等裁判所[平成19()10015]>

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