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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作者人格権②

【著作者人格権の侵害とみなす行為(法1136項(現11項)関係)】

被控訴人は,甲1部分において平成4年当時の最新情報として記載したことが,控訴人らによって,平成114月に出版された甲2書籍の甲2部分においても,そのまま掲載されており,このことは,被控訴人の社会的評価を低下させるものであり,甲1部分の一部の著作者である被控訴人の名誉又は声望を害する方法によりその著作物が利用されたものである,と主張し,原判決は,これを著作権法1135項【注:現6項。以下同じ】の「著作者の名誉又は声望を害する著作物の利用行為」に当たると認定した。しかし,当裁判所は,本件については,次に述べる理由により,控訴人らの上記行為は,同項の「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」には当たらない,と判断する。
(略)
著作権法1135項に規定されている「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」とは,著作者の創作意図を外れた利用をされることによって,その著作物の価値を大きく損ねるような形で利用されることをいう,と解するのが相当である(本件に即していえば,教科書的書籍である甲1書籍を,全く別な目的で利用し,その著作物の価値を大きく損なうような場合が考えられる)。これに対し,上記のような著作物の利用行為は,甲2書籍を甲1書籍と同様に教科書的な書籍として利用しようとするものであり,しかも,甲1書籍の出版後6年近く経過したため,大学関係者による改訂作業により古くなった内容を改めたものが甲2書籍であるから,その改訂された甲2書籍の表現の一部に原著作者である被控訴人の意に添わない部分があったとしても,これは,上記規定が想定している場合には該当しないというべきである。これは,むしろ,被控訴人が,その著作部分について,無断で改訂版を出版され,その氏名表示権及び同一性保持権を害されたことによる損害の中の一事情として考慮されれば足りる範囲の事柄であって,これをもって,著作者の名誉又は声望を害する著作物の利用行為とすることまではできないというべきである。
<平成140716日東京高等裁判所[平成14()1254]>

著作権法1135項【注:現6項。以下同じ】の規定が,著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為を著作者人格権の侵害とみなすと定めているのは,著作者の民法上の名誉権の保護とは別に,その著作物の利用行為という側面から,著作者の名誉又は声望を保つ権利を実質的に保護する趣旨に出たものであることに照らせば,同項所定の著作者人格権侵害の成否は,他人の著作物の利用態様に着目して,当該著作物利用行為が,社会的に見て,著作者の名誉又は声望を害するおそれがあると認められるような行為であるか否かによって決せられるべきである。したがって,他人の言語の著作物の一部を引用して利用した場合において,殊更に前後の文脈を無視して断片的な引用のつぎはぎを行うことにより,引用された著作物の趣旨をゆがめ,その内容を誤解させるような態様でこれを利用したときは,同一性保持権の侵害の成否の点はさておき,これに接した一般読者の普通の注意と読み方を基準として,そのような利用態様のゆえに,引用された著作物の著作者の名誉又は声望が害されるおそれがあると認められる限り,同項所定の著作者人格権の侵害となることはあり得るが,その引用自体,全体として正確性を欠くものでなく,前後の文脈等に照らして,当該著作物の趣旨を損なうとはいえないときは,他人の著作物の利用態様により著作者の名誉又は声望を害するおそれがあるとはいえないのであるから,当該引用された著作物の内容を批判,非難する内容を含むものであったとしても,同項所定の著作者人格権の侵害には当たらないと解すべきである。
(略)
その場合において,当該引用に係る著作物の内容を批判,非難する表現が,別途名誉毀損の不法行為を構成するかどうかは別論である。なぜならば,著作権法1135項は,上記のとおり,著作物の利用行為に着目した規定であって,名誉毀損の不法行為の成否とは場面を異にするからである。
<平成141127日東京高等裁判所[平成14()2205]>

著作権法113条6項は,著作物を創作した著作者の創作意図を外れた利用がされることによってその創作意図に疑いを抱かせたり,著作物に表現されている芸術的価値を損なうような形で著作物が利用されることにより,著作者の社会的名誉声望が害されるのを防ぐ趣旨であると認められるから,同項の「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」とは,社会的に見て,著作者の創作意図や著作物の芸術的価値を害するような著作物の利用行為をいうと解すべきである(。)
<平成26912日東京地方裁判所[平成24()29975]>

著作権法1136項所定の行為に該当するか否かは,著作物の利用態様に着目して,社会的に見て,著作者の名誉又は声望を害するおそれがあると認められるか否かによって,決せられるべきである(。)
<平成27428日知的財産高等裁判所[平成27()10005]>

著作権法1136項は,著作者の名誉声望を害する態様での著作物利用行為に対して,著作者人格権侵害行為とみなすものであるところ,被告記述部分は,控訴人の著作物と表現上の類似性を欠き,元の著作物の創作的表現は感得できないのであるから,控訴人の著作物を利用したとはいえない。したがって,被告記述部分について著作者人格権の侵害は成り立たず,同条項適用の前提を欠いている。また,著作者の名誉声望とは,著作者がその品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価をいい,人が自己の人格的価値について有する主観的な評価は含まれないと解されるところ,被告記述部分に,控訴人の社会的評価を低下させるものが含まれているということはできない。
<平成250910日 知的財産高等裁判所[平成25()10039]>

著作権法113条6項の「名誉又は声望を害する方法」とは,単なる主観的な名誉感情の低下ではなく,客観的な社会的,外部的評価の低下をもたらすような行為をいい,対象となる著作物に対する意見ないし論評などは,それが誹謗中傷にわたるものでない限り,「名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」に該当するとはいえないというべきところ,原告が指摘する被告記事の表現部分は,被告記事の著者の原告記事に対する意見ないし論評又は原告記事から受けた印象を記載したものにすぎず,原告又は原告記事を誹謗中傷するものとは認められないから,たとえ,被告記事の表現によって,原告の意図と著しく異なる意図を持つものとして受け取られる可能性があるとしても,そのことをもって,原告の「名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」と認めることは相当でないというべきである。 したがって,被告記事によって,原告記事に係る原告の名誉・声望権が侵害されたということはできない。
<平成28819日東京地方裁判所[平成28()3218]>
【控訴審も同旨】
著作物に対する意見ないし論評などは,それが誹謗中傷にわたるものでない限り,著作権法113条6項の「名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」に該当するとはいえないところ,被控訴人記事が控訴人又は控訴人記事を誹謗中傷するものとは認められないことは,前記引用の原判決が認定説示するとおりである。
<平成29124日知的財産高等裁判所 [平成28()10091]>

被告は,自作自演の投稿であったにもかかわらず,被告が本件似顔絵を入手した経緯については触れることなく,あたかも,被告が本件サイト上に「天皇陛下にみんなでありがとうを伝えたい。」「陛下プロジェクト」なる企画を立ち上げ,プロのクリエーターに天皇の似顔絵を描いて投稿するよう募ったところ,原告がその趣旨に賛同して本件似顔絵を2回にわたり投稿してきたかのような外形を整えて,本件似顔絵の写真を画像投稿サイトにアップロードしたものである(本件行為)。本件似顔絵には,「C様へ」及び「A」という原告の自筆のサインがされていたところ,「C様」は,被告が本件サイトにおいて使用していたハンドルネームであった。
上記の企画は,一般人からみた場合,被告の意図にかかわりなく,一定の政治的傾向ないし思想的立場に基づくものとの評価を受ける可能性が大きいものであり,このような企画に,プロの漫画家が,自己の筆名を明らかにして2回にわたり天皇の似顔絵を投稿することは,一般人からみて,当該漫画家が上記の政治的傾向ないし思想的立場に強く共鳴,賛同しているとの評価を受け得る行為である。しかも,被告は,本件サイトに,原告の筆名のみならず,第二次世界大戦時の日本を舞台とする『特攻の島』という作品名も摘示して,上記画像投稿サイト上の上記写真へのリンク先を掲示したものである。
そうすると,本件行為は,原告やその作品がこのような政治的傾向ないし思想的立場からの一面的な評価を受けるおそれを生じさせるものであって,原告の名誉又は声望を害する方法により本件似顔絵を利用したものとして,原告の著作者人格権を侵害するものとみなされるということができる。
<平成251211日知的財産高等裁判所[平成25()10064]>

原告は,被告○○が本件各イラストの複製物である被告イラストを本件ポリ袋に使用する行為は,本件各イラストを劣化させた上,イラスト単体ではなく模様の一部として使用し,ポリ袋という,安っぽく,およそ芸術性を感じさせることのない素材に使用するものであって,本件各イラストの芸術的価値を著しく損ねるものであり,原告の名誉又は声望を害する方法による本件各イラストの利用に当たるといえるから,著作者人格権のみなし侵害行為(著作権法1136項)に該当する旨主張する。
しかしながら,本件各イラストは,原告が,被告○○が販売する餃子・焼売の商品を詰めて包装する紙の箱のパッケージ(カートン)に使用する目的で制作した商業的デザインであって,原告は,本件各イラストの複製物である被告イラストを被告○○の餃子・焼売の商品のパッケージ(カートン)に印刷して使用することを承諾していたものであるところ,本件ポリ袋は,被告○○の商品を入れる包装袋として使用されており,カートンとは包装の形態は異なるが,被告○○の商品を包装するという点ではカートンと共通していること,本件ポリ袋に付された被告イラストの構成態様等に照らすならば,被告○○が本件各イラストの複製物である被告イラストを本件ポリ袋に使用することによって,絵本作家である原告が社会から受ける客観的な評価の低下を来たし,その社会的名誉又は声望が毀損されたものとまで認めることはできない。
<平成240927日 東京地方裁判所[平成22()36664]>

1136項の「著作者の名誉又は声望」とは,著作者がその品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価,すなわち社会的名誉声望を指すものであって,人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価,すなわち名誉感情は含まれないものと解すべきである(最高裁判所昭和61年5月30日第二小法廷判決参照)。
本件についてみると,被告の行為は,原告著作物を原告らの許可を得ることなく複製し,DVD-Rに記録して複製物1枚を作成し,本件オークションサイトにおいて,原告著作物を複製したもの(データ)を第三者の発行したDVDのおまけとして頒布する旨記述し,原告著作物の複製物を落札者に送付したというものである。原告Aが,原告著作物を「オマケとして」「お付けします」などと記述されたことによって名誉感情を害されたことは理解できるとしても,上記記述を付して原告著作物の複製の頒布が一度申し出されたことによって,それを見た通常人が,原告著作物の内容が,上記第三者の発行したDVDに付加価値を与えるものであると考えることはあっても,原告著作物には価値がないと認識することが通常であるとまではいえないから,被告が,上記記述をしたことや,無断で原告著作物を複製,頒布をした行為が,原告Aの社会的評価を低下させる行為であるということはできない。そうすると,被告が,原告Aの名誉又は声望を害する方法により原告著作物を利用したと認めることはできない。
<平成28122日 東京地方裁判所[平成27()9469]>

【名誉回復等の措置(法115条関係)】

法【注:旧著作権法】36条ノ2は、著作者人格権の侵害をなした者に対して、著作者の声望名誉を回復するに適当なる処分を請求することができる旨規定するが、右規定にいう著作者の声望名誉とは、著作者がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的声望名誉を指すものであつて、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まれないものと解すべきである(最高裁昭和451218日第二小法廷判決参照)。
<昭和61530最高裁判所第二小法廷[昭和58()516]>

著作者は,故意又は過失によりその著作者人格権を侵害した者に対し,著作者の名誉若しくは声望を回復するために,適当な措置を請求することができ(著作権法115条),「適当な措置」には謝罪広告の掲載も含まれるが,同条にいう「名誉若しくは声望」とは,著作者がその品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価,すなわち社会的名誉・声望を指すものであって,人が自分自身の人格的価値について有する主観的な評価,すなわち名誉感情を含むものではないと解される。
<平成27521日知的財産高等裁判所[平成26()10003]>

原告は,著作権侵害をも理由として謝罪広告の掲載を求めるようであるが,謝罪広告掲載請求は著作者人格権侵害のみがその根拠となるから(著作権法115条参照),原告の主張は失当である。
<平成27625日東京地方裁判所[平成26()19866]>

【著作者の死後における人格的利益の保護(法60条関係)】

本件各手紙が掲載された本件書籍を出版した被告らの行為は、本件各手紙に係る原告らの複製権を侵害する行為に該当し、また、「Gが生存しているとしたならばその公表権の侵害となるべき行為」(著作権法60条)に該当する。
<平成111018日東京地方裁判所[平成10()8761]>
【控訴審も同旨】
本件各手紙が、もともと私信であって公表を予期しないで書かれたものであることに照らせば(例えば、本件手紙⑮には、「貴兄が小生から、かういふ警告を受けたといふことは極秘にして下さい。」との記載がある。右のような記載は、少なくとも書かれた当時は公表を予期しない私信であるからこそ書かれたことが明らかである。)、控訴人ら主張に係るその余の事情を考慮しても、本件各手紙の公表がF【注:原審のGのこと】の意を害しないものと認めることはできない。
<平成120523日東京高等裁判所[平成11()5631]>

被告が本件雑誌に掲載した本件広告は、本件エスキース【注:「エスキース」とは「建築家が建築物を設計するに当たり、その構想をフリーハンドで描いたスケッチ」のこと】が、その色調の濃度を大幅に薄くした上で、A4版の頁全面にわたって下絵として使用され、その上に、本件書籍に関する広告(書籍の題号、紹介文、構成、内容の要約、企画者、監修者の表示、定価、注文方法等)が頁全面にわたって重ねて印刷されていることが認められる。
被告の右行為は、本件エスキースの表現を大幅に改変したものというべきであるから、著作者が存しているとするならばその同一性保持権の侵害となるべき行為に当たる。
<平成120830日東京地方裁判所[平成11()29127]>
【控訴審も同旨】
本件エスキースの全面に広告を重ねて印刷して公表する行為は,これが著作者の承諾なくなされた場合,著作者にとって,いわば自己の作品の全面に無断で落書きされたに等しいものであるから,著作者に著しい不快感を与えることは明白であり,著作権法60条ただし書にいう「当該著作者の意を害しないと認められる場合」に該当しないことが明らかである。
<平成130918日東京高等裁判所[平成12()4816]>

著作者人格権は一身専属の権利であり,本来,著作者が存しなくなった後においてはその保護の根拠が失われるものであるが(法59条),著作権法は,著作者が存しなくなった後においても,一定の限度でその人格的利益の保護を図っている(法60条)。
この場合において,著作権法60条但書は,著作物の改変に該当する行為であっても,その行為の性質及び程度,社会的事情の変動その他によりその行為が著作者の意を害しないと認められる場合には,許容されることを規定している。
そして,著作者の意を害しないという点は,上記の各点に照らして客観的に認められることを要するものであるところ,本件においては,本件工事は,公共目的のために必要に応じた大きさの建物を建築するためのものであって,しかも,その方法においても,著作物の現状を可能な限り復元するものであるから,著作者の意を害しないものとして,同条但書の適用を受けるものというべきである。
したがって,仮に本件工事について著作権法2022号が適用されないとしても,同法60条但書の適用により,本件工事は許容されるというべきである。
<平成150611日東京地方裁判所[平成15()22031]>

本件書籍の160頁には、本文中に、デール・カーネギー自身が読者に直接話しかける形で、「このようなノウハウを皆さんにお伝えして本当にうれしいのは、全国のさまざまな人々から『成功ノウハウ』を家庭や職場で利用して成果をあげている、という手紙をいただくことです。このような私の紹介するノウハウを使って、こんないいことがあったということがありましたら、その経験を手紙でお寄せ下さい〔日本での宛先…SSI D・カーネギー・プログラムス係〕。」との記載があること、上記記載は本件著作物中には存在しないこと、以上の事実が認められる。この「SSI D・カーネギー プログラムス」は、被告○○が本件カセットテープセットの販売事業について使用している名称であり、故デール・カーネギーとは何の関係もないから、かかる者への読者体験談募集のために前記のごとき記載を付け加えることは、故人の意に反する態様でなされた原著作物の改変であり、著作者であるデール・カーネギーが生存しているとしたならば、その著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為(著作権法60条違反)であるといわざるを得ない。
<平成140228日東京高等裁判所[平成12()5295]>

本件原観音像は,木彫十一面観音菩薩立像であって,11体の化仏が付された仏頭部,体部(躯体部),両手,光背及び台座から構成されているところ,11体の化仏が付された仏頭部が,著作者であるEの思想又は感情を本件原観音像に表現する上で重要な部分であることは明らかである。
そうすると,本件原観音像の仏頭部のすげ替えは,本件原観音像の重要な部分の改変に当たるものであって,Eの意に反するものと認められるから,本件原観音像を公衆に提供していた被告○○寺による上記仏頭部のすげ替え行為は,Eが存しているとしたならばその著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為(著作権法60条本文)に該当するものと認めるのが相当である。
<平成210528日東京地方裁判所[平成19()23883]>

本件書籍の題号【注:本件書籍は,「生命の實相<黒布表紙版>」の第16巻として出版された「神道篇日本国の世界的使命」から「第1章古事記講義」を抜き出したもので,その題号は「古事記と日本国の世界的使命-甦る『生命の實相』神道篇」であった】は,「古事記と日本国の世界的使命-甦る『生命の實相』神道篇」であり,「生命の實相<黒布表紙版>」第16巻「神道篇日本国の世界的使命」の「第1章古事記講義」の篇名及び章名と一致していないが,「甦る」の2文字が加わったこと以外は,使用されている用語も同一で,これを並べ替えたものであることに照らすならば,本件②の書籍1を上記題号とすることは,亡Aが存命であれば,その意に反する題号の改変には当たらないものと認められる。
総合すれば,亡Aを著作者とする「生命の實相<黒布表紙版>」の第16巻「神道篇日本国の世界的使命」の中の「第1章古事記講義」の部分について,題号を「古事記と日本国の世界的使命-甦る『生命の實相』神道篇」として本件書籍を出版することは,「亡Aの意を害しない」(著作権法60条ただし書)ものと認められる。
<平成230304日東京地方裁判所[平成21()6368]>

【著作者の死後における人格的利益の保護(法116条関係)】

著作者の死後における人格的利益の保護に関する規定である著作権法116条は、著作者の死後における人格的利益の保護の実効性を期するため、著作者の人格と親密な関係を有し、その生前の意思を最も適切に反映することができると考えられるその配偶者若しくは二親等内の血族又は著作者の遺言で指定された者が、その著作者人格権の侵害となるべき行為に対し、差止請求権又は名誉回復等措置請求権を行使し得ることとしている。そして、著作者人格権が、もともと著作者の一身に専属し、譲渡することができない権利であること(著作権法59条)からすれば、著作権法116条に定める遺族等以外の者は、著作者の死後において著作者人格権を保護するための措置を執ることはできないことはもちろん、その人格的利益の保護を求めることもできないと解するのが相当である。
<平成130130日東京地方裁判所[平成6()11425]>

著作権法59条においては,「著作者人格権は,その性質上著作者の一身に専属し,譲渡することができない。」と規定され,著作者の死亡とともに著作者人格権は消滅し,著作者人格権は,譲渡や相続の対象とならない性質のものであることが明確に示されており,これを前提とした上で,著作者の死後における人格的利益の保護を可能にするため,同法60条により,著作者の死後において,著作者が生存しているとしたならば,その著作者人格権の侵害となるべき行為が禁止され,かつ,同法116条において,同法60条に違反する行為等の侵害行為に対し,著作者の人格と密接な関係があり,著作者の生前の意思を最も適切に反映し得る者が差止請求権等を行使し得るものとされているのであるから,著作者死亡後における著作者人格権は,同法116条において認められた者が上記請求権等を行使するという限りで保護されるにすぎない。そして,同条1項は,著作者の遺族(死亡した著作者の配偶者,子,父母,孫,祖父母又は兄弟姉妹)が上記請求権を行使し得るものとし,同条3項には,「著作者又は実演家は,遺言により,遺族に代えて第1項の請求をすることができる者を指定することができる。」と規定されていることからすれば,著作者の遺族以外の者は,著作者の遺言による指定を受けることによってのみ,上記の請求権を行使することが可能になる。
<平成150611日東京地方裁判所[平成15()22031]>

著作者の遺族には著作者人格権侵害による損害賠償請求権は認められないところ(著作権法1161項)、Dの遺族である原告にはDの氏名表示権侵害による損害賠償請求権が認められる余地はない(。)
<平成120512日東京地方裁判所[平成10()16632]>

著作権法は、著作権法60条違反の効果として、差止めと名誉回復等の措置のみを認めており、損害賠償請求は認めていないから、原告は、著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為が存したことを理由として、被告らに対して損害賠償請求をすることはできない。
<平成120929日東京地方裁判所[平成10()21141]>

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