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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

侵害とみなす行為(法113条)

12号関係】

著作権法11312号は、著作権侵害行為、著作者人格権侵害の行為や著作権法60条の規定に違反する行為によって作成された物がいったん流通過程に置かれた後に、それを更に転売・貸与する者を全部権利侵害とすることには問題があるために、その場合に限って「情を知って」との要件を付加しているものと解すべきであり、控訴人らは、本件各手紙を本件書籍に掲載して出版した当の本人であって、物がいったん流通過程に置かれた後に、それを更に転売・貸与する者ではないから、控訴人らの行為は、同法11312号にいう「頒布」の問題として扱われるべき事柄ではないというべきである。
控訴人らは、本件各手紙を本件書籍に掲載して出版行為をすること自体が許されなかったのであるから、右違法な行為によって自らが作成した物を自ら頒布することもまた許されないことは、むしろ自明である。すなわち、本件各手紙を本件書籍に掲載して出版したうえで頒布するという控訴人らの一連の行為全体が、全部であれ一部であれ、複製権を侵害する行為及び著作権法60条の規定に違反する行為に該当するというべきである。
<平成120523日東京高等裁判所[平成11()5631]>

著作権法11312号は、著作者人格権侵害の行為等によって作成された物がいったん流通過程に置かれた後に、それを更に転売・貸与する行為を全部権利侵害とすることには問題があるために、その場合に限って「情を知って」との要件を付加しているものと解すべきであり、被控訴人会社は、被控訴人写真を(本件)カタログに掲載して発行した当の本人であって、物がいったん流通過程に置かれた後に、それを更に転売・貸与する者ではないから、被控訴人会社の行為は、同法11312号にいう「頒布」の問題として扱われるべき事柄ではないというべきである。被控訴人会社は、被控訴人写真を(本件)カタログに掲載して発行すること自体が許されなかったのであるから、その違法な行為によって自らが作成した物を自ら頒布することもまた許されないことは、むしろ自明である。すなわち、被控訴人写真を被控訴人カタログに掲載して発行及び頒布するという控訴人会社の一連の行為全体が、全部であれ一部であれ、同一性保持権侵害の行為に該当するというべきである。
<平成130621日東京高等裁判所[平成12()750]>

控訴人学院は,遅くとも,一審判決正本が送達された平成144月中旬ころまでには,本件書籍が本件複製権を侵害する行為によって作成された物であることを知ったから,これを販売,頒布する行為は,本件著作物の複製物の知情頒布行為として本件著作権を侵害する行為とみなされる。控訴人らは,本件訴訟において本件著作権の侵害が争われている以上,判決確定前に一審判決正本の送達により著作権法11312号所定の「情を知って」の要件が充足されるものではないと主張するが,本件書籍の印刷,出版が本件複製権の侵害に当たるとする一審判決が送達されれば,遅くともそのころまでには,控訴人学院について「情を知って」の要件が充足されたと認められる。
<平成150718日東京高等裁判所[平成14()3136]>

控訴人による頒布の差止めについては,著作権法11312号の適用があるとしても,遅くとも控訴人に対し原判決書が送達されたことにより同号の「情を知つて」の要件を満たすことになると認められるので,被控訴人は,著作権法11312号,1121項に基づいて,その頒布の差止めを求めることができる。
<平成200730日知的財産高等裁判所[平成19()10082]>

著作権法11312号の「情を知って」とは,取引の安全を確保する必要から主観的要件が設けられた趣旨や同号違反には刑事罰が科せられること(最高裁平成744日第三小法廷決定参照)を考慮すると,単に侵害の警告を受けているとか侵害を理由とする訴えが提起されたとの事情を知るだけでは,これを肯定するに足らず,少なくとも,仮処分,判決等の公権的判断において,著作権を侵害する行為によって作成された物であることが示されたことを認識する必要があると解される(。)
<平成220804日知的財産高等裁判所[平成22()10033]>

2項(現5項)関係】

著作権法は、プログラム著作物に関して、著作者がこれを使用する権利を専有する旨の規定を置いていない。しかも、同法1132項は、「プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によって作成された複製物を業務上電子計算機において使用する行為は、これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知っていた場合に限り、当該著作権を侵害する行為とみなす。」と規定しているところ、同条項は、プログラムを使用する行為のうち、一定の要件を満たすものに限って、プログラムに係る著作権を侵害する行為とみなすというものであるから、プログラムを使用する行為一般が著作権法上本来的には著作権侵害にならないことを当然の前提としているということになる。
<平成120516日東京地方裁判所[平成10()17018]>

被告は,本件事業に使用するサーバを準備し,これに本件ソフトウェアをインストールしたことが認められるが,実際にインストールしたのは原告【注:本件ソフトウェアの著作権者】であり,上記インストールを原告の本件ソフトウェアに係るプログラム著作権を侵害する複製行為ということはできない。
したがって,被告が,その後,本件ソフトウェアの使用を継続しているものの,著作権法1132項の適用もなく,被告の本件ソフトウェアの使用の継続のみをもって,本件ソフトウェアに関するプログラム著作権を侵害しているということはできない。
<平成220311日大阪地方裁判所[平成19()15556]>

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