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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

データベース著作物

【データベース著作物性一般】

当該画像ファイルは,似顔絵を作るために顔を目,鼻,口,眉,頭髪等の各部分に分け,それらの部分ごとに複数の画像を作成し,データファイルのフォルダに保存しただけのものであって,「情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」とはいえないから,著作権法2110号の3所定の「データベース」には当たらない。
<平成160128日東京地方裁判所[平成15()5020]>

データベースについては,情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するものは,著作物として保護されるものであるところ(著作権法12条の2),データベースにおける創作性は,情報の選択又は体系的構成に,何らかの形で人間の創作活動の成果が表れ,制作者の個性が表れていることをもって足りるものあるが,データベースの著作物として保護されるのはあくまでも,具体的なデータベースに表現として表れた情報の選択や体系的構成であって,具体的な表現としての情報の選択や体系的構成と離れた情報の選択の方針や体系的構成の方針それ自体は保護の対象とはならないというべきである。
<平成26314日東京地方裁判所[平成21()16019]>

【タウンページデータベース】

タウンページデータベースの職業分類体系は、検索の利便性の観点から、個々の職業を分類し、これらを階層的に積み重ねることによって、全職業を網羅するように構成されたものであり、原告独自の工夫が施されたものであって、これに類するものが存するとは認められないから、そのような職業分類体系によって電話番号情報を職業別に分類したタウンページデータベースは、全体として、体系的な構成によって創作性を有するデータベースの著作物であるということができる。
<平成120317日東京地方裁判所[平成8()9325]>

リレーショナル・データベース】

原告データベースは,データベースの情報の単位であるレコードを別のレコードと関連付ける処理機能を持つ「リレーショナル・データベース」と呼ばれるものである。リレーショナル・データベースにおいては,入力される情報はテーブルと呼ばれる表に格納され,各テーブルはフィールド項目に細分され,あるテーブルのあるフィールド項目を他のテーブルのあるフィールド項目と一致させてテーブル間を関連付けることにより,既存の複数のテーブルから抽出したいフィールド項目だけを効率的に選択することができるのであるから,情報の選択又は体系的な構成によってデータベースの著作物と評価することができるための重要な要素は,情報が格納される表であるテーブルの内容(種類及び数),各テーブルに存在するフィールド項目の内容(種類及び数),各テーブル間の関連付けのあり方の点にあるものと解される。
<平成140221日東京地方裁判所[平成12()9426]>

原告CDDB【注:旅行業者向け原告システムに含まれる検索及び行程作成業務用データベースのことで、42個のマスターテーブルと405個のフィールド項目からなっている】は,データベースの情報の単位であるレコードを別のレコードと関連付ける処理機能を持ついわゆるリレーショナル・データベースである。リレーショナル・データベースにおいては,入力される情報はテーブルと呼ばれる表に格納され,各テーブルはフィールド項目に細分され,あるテーブルのあるフィールド項目を他のテーブルのあるフィールド項目と一致させてテーブル間を関連付けることにより,既存の複数のテーブルから抽出したいフィールド項目だけを効率的に選択することができるデータベースであるから,情報の選択又は体系的な構成によってデータベースの著作物と評価することができるための重要な要素は,情報が格納される表であるテーブルの内容(種類及び数),各テーブルに存在するフィールド項目の内容(種類及び数),各テーブル間の関連付けのあり方の点にあるものと解される。
上記のような観点も踏まえ,原告CDDBのようなリレーショナル・データベースについて情報の選択に創作性があるというためには,データベースの主題,用途やデータベースの提供対象等を考慮して決定された一定の収集方針に基づき収集された情報の中から,更に一定の選定基準に基づき情報を選定することが必要であり,また体系的構成に創作性があるというためには,収集,選定した情報を整理統合するために,情報の項目,構造,形式等を決定して様式を作成し,分類の体系を決定するなどのデータベースの体系の設定が行われることが必要であると解される。
ただし,データベースにおける創作性は,情報の選択又は体系的構成に,何らかの形で人間の創作活動の成果が表れ,制作者の個性が表れていることをもって足りるものと解される。
<平成26314日東京地方裁判所[平成21()16019]>
【控訴審も参照】
原告CDDBは,入力される個々の情報(データ)の集合体が,縦の列と横の行から構成される表であるテーブルに格納され,テーブルの縦の列は個々のデータの属性を表す「フィールド」に細分され,テーブルの横の行は,ユーザーが,最小単位の格納データとして検索等の操作をすることができる1件分のデータである「レコード」を構成し,複数のテーブル間に共通のフィールド(プライマリー・キー(主キー)等)を設定し,テーブル間を関連付けることにより,相互のテーブル内の他のフィールドに格納されている属性の異なるデータを抽出し,抽出したデータを統合・集計して検索することができる機能を有するいわゆるリレーショナルデータベースである。
著作権法12条の2第1項は,データベースで,その情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するものは,著作物として保護する旨規定しているところ,情報の選択又は体系的構成について選択の幅が存在し,特定のデータベースにおける情報の選択又は体系的構成に制作者の何らかの個性が表れていれば,その制作過程において制作者の思想又は感情が移入され,その思想又は感情を創作的に表現したものとして,当該データベースは情報の選択又は体系的構成によって創作性を有するものと認めてよいものと解される。
そして,リレーショナルデータベースにおける体系的構成の創作性を判断するに当たっては,データベースの体系的構成は,情報の集合物から特定の情報を効率的に検索することができるようにした論理構造であって,リレーショナルデータベースにおいては,テーブルの内容(種類及び数),各テーブルに存在するフィールド項目の内容(種類及び数),どのテーブルとどのテーブルをどのようなフィールド項目を用いてリレーション関係を持たせるかなどの複数のテーブル間の関連付け(リレーション)の態様等によって体系的構成が構築されていることを考慮する必要があるものと解される。また,リレーショナルデータベースにおいては,一般に,各テーブル内に格納されるデータの無駄な重複を減らし,検索効率を高めるために,フィールド項目に従属関係を設定して,新たなテーブルを設けたり,テーブル内に格納されているデータの更新を行う際にデータ間に不整合が起こらないようにするために,関連性の高いデータ群だけを別のテーブルに分離させるなどの正規化が行われており,その正規化の程度にも段階があることから,正規化がもたらす意義や正規化の程度についても考慮する必要があるものと解される。 <平成28119日知的財産高等裁判所[平成26()10038]>

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