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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

編集著作物③

【スクール・講座情報誌】

控訴人情報誌東海版の分野別モノクロ情報ページは,広告主から出稿されたスクール・講座情報を素材として,これらの素材を,読者の検索及び比較検討を容易にするため,五十音順等の既存の基準ではなく,控訴人の独自に定めた分類,配列方針に従って配列したものであり,その具体的配列は創作性を有するものと認められるから,編集著作物に該当するということができる。しかしながら,上記の配置方針自体は,スクール名,住所,最寄駅,コース名,地図などの読者が当然に必要とする情報を誌面に割り付ける際の方針,すなわち,アイデアにすぎず,表現それ自体ではない部分である。また,上記の分類自体も,同様にアイデアにすぎず,表現それ自体ではない部分であると認められる上,仮に,分類項目を素材としてとらえることができるとしても,スクール・講座情報を掲載する情報誌において,読者による検索の便宜のため,同種のスクールをまとめて分類する必要があることは,当然のことであり,その分類項目も,英会話,外国語,パソコン,資格など,実用性の高いスクール・講座情報を先に,音楽,海外,スポーツなど,趣味性の高いスクール・講座情報を後に,かつ,類似するものが近接したページに掲載されるよう19種類のツメ見出しの分類に従って配列したにすぎないものであるから,その選択,配列に表現上の創作性を認めることはできない。
<平成170329日東京高等裁判所[平成16()2327]>

【アイコン一覧表】

各種情報誌において,アイコンは,誌面に記載された情報を,キーワードやロゴなどを用いて簡潔に表示したものであり,少ないスペースに多くの情報を掲載し,読者による情報相互間の比較が容易にできるよう,一般的に広く用いられ,その場合,読者にアイコンの意味が理解できるよう,使用されるアイコンを整理し,これに簡潔な説明を付したアイコン一覧表を作成して掲載することは,当裁判所に顕著である。そして,控訴人情報誌及び被控訴人情報誌のように,広告主から出稿されたスクール・講座情報を掲載した情報誌において,控訴人通学アイコン一覧表上段「スクール便利ポイント」の説明,同中段「特長アイコン」の説明及び同下段「○得情報アイコン」の説明は,読者が当然に関心を持つ点であり,その内容である,①「スクール便利ポイント」の「駅前」,「シャワー完備」,「駐車場有り」など,②「特長アイコン」の「予約制」,「土日OK」,「初心者対象」など,③「○得情報アイコン」の「給付制度対象」,「分割分納」などは,いずれも上記関心を持つ点に係る必要な情報であると認められるから,これら各情報に係るアイコン71種類を選択したことに,創作性があるとは認められない。また,これら各情報を,①同一覧表上段「スクール便利ポイント」の説明に関する「スクール便利ポイント」(23種類),②同中段「特長アイコン」の説明に関する「特長アイコン」及び③同下段「○得情報アイコン」の説明)に関する「○得情報アイコン」の三つに分類した点も,スクール・講座情報のうち,①には主としてスクール情報に関するアイコンを,②には主として講座情報に関するアイコンを,③には支払情報に関するアイコンを分類したにすぎないと認められ,その分類,配列に創作性があるということはできない。
したがって,控訴人通学アイコン一覧表は,アイコンの選択,配列に創作性があるということはできないから,編集著作物に該当するということはできない。
<平成170329日東京高等裁判所[平成16()2327]>

【交通事故相談者記入表】

ある編集物が編集著作物として著作権法上の保護を受けるためには,素材の選択又は配列によって創作性を有することが必要である(著作権法12条1項)。
本件1審被告ファイルには,「氏名・フリガナ」,「年齢・性別・職業」,「住所・TEL」,「メールアドレス」,「事故日」,「事故発生状況」,「あなた」(判決注:相談希望者),「加害者」,「受傷部位」,「傷病名」,「症状」,「治療経過」,「初診治療先」,「治療先2」,「治療先3」,「あなたの保険」,「保険会社・共済名」,「加害者の保険」,「保険会社名」の欄が順に設けられ,それぞれ左欄には上記の各項目タイトルが,右欄には各項目に対応する情報を記載する体裁となっていること,これらの各欄に引き続いて,「相談内容・お問い合わせ」欄が設けられ,その下に情報を記載するための空白が設けられていることが認められる。また,本件1審被告ファイルの「事故発生状況」,「あなた」,「加害者」,「受傷部位」,「傷病名」,「治療経過」,「あなたの保険」,「保険会社・共済名」,「加害者の保険」,「保険会社名」の右欄には,複数の選択肢とそれに対応したチェックボックスが設けられていることが認められる。
まず,相談者から相談に先立ち交通事故に関する必要な情報を把握するという本件1審被告ファイルの性質上,①相談者個人特定情報,②交通事故の具体的状況,③相談者の受傷及び治療の状況並びに④事故関係者の保険加入状況に関する情報のほか,⑤具体的な相談希望内容についての情報を収集する必要があることは,当然のことであると考えられる。本件1審被告ファイルは,「氏名・フリガナ」,「年齢・性別・職業」,「住所・TEL」,「メールアドレス」,「事故日」,「事故発生状況」,「あなた」,「加害者」,「受傷部位」,「傷病名」,「症状」,「治療経過」,「初診治療先」,「治療先2」,「治療先3」,「あなたの保険」,「保険会社・共済名」,「加害者の保険」,「保険会社名」の欄を順に設け,これらの各欄に引き続いて,「相談内容・お問い合わせ」欄を設け,その下に情報を記載するための空白を設けているが,これらの事項は,上記の本件1審被告ファイルの性質上,当然に設けられるべき項目であって,その順番も,上記①から⑤の順に,それぞれの必要項目を適宜並べたに過ぎないというほかないから,これらの項目を上記のとおり設けたことによって,素材の選択又は配列による創作性があるということはできない。
また,上記のような本件1審被告ファイルの性質上,これらの事項に関連する具体的な項目の選択についても自ずと限定されるところ,本件1審被告ファイルのチェックボックスを付した各項目は,いずれもありふれたものというほかなく,そのような項目を適宜並べたものというほかないから,素材の選択又は配列による創作性があるということはできない。この点について,1審被告は,特に,「事故発生状況」及び「傷病名」の項目の選択について主張するが,「事故発生状況」についての「□追突」,「□正面衝突」,「□出合い頭衝突」,「□信号無視」,「□無免許」,「□飲酒」という項目及び「傷病名」についての「□脳挫傷」,「□捻挫挫傷」,「□打撲」,「□脱臼」,「□骨折」,「□靱帯損傷」,「□醜状痕」,「□偽関節変形」,「□神経症状」,「□CRPS」,「□機能障害」,「□神経麻痺」,「□筋損傷,「□その他(    )」という項目は,交通事故においては通常見られる事故態様及び傷病名であって,素材の選択又は配列による創作性があるということはできない。なお,1審被告が主張するように,事故現場の図面や「事故当日の天候」,「道路の見とおしの状況」,「道路状況」,「標識や信号機の有無や場所」,「交通量」などを記載させることも考えられるが,これらの項目は,事故態様そのものである「□追突」,「□正面衝突」,「□出合い頭衝突」,「□信号無視」,「□無免許」,「□飲酒」といった項目に比べて必要性が高いとはいえず,上記の事故現場の図面や「事故当日の天候」等の項目がないことは,素材の選択又は配列による創作性があることを基礎づけるということはできない。
さらに,チェックボックスを,上記のような項目と組み合わせて配置したからといって,素材の選択又は配列による創作性が認められるものではない。
そして,他に本件1審被告ファイルにおいて素材の選択又は配列による創作性があると認めるに足りる証拠はないから,本件1審被告ファイルが編集著作物に当たるとは認められない。
<平成29105日知的財産高等裁判所[平成29()10042]>

【製品取扱説明書】

編集著作物とは,編集物で,素材の選択又は配列によって創作性を有するものであり(著作権法12条1項),編集著作物として著作権法の保護を受けるためには,素材の選択,配列に係る具体的な表現形式において,創作性が認められることが必要である。
控訴人説明書は,控訴人車両の装備及び機器等の操作方法等を解説した取扱説明書であるから,説明の対象として控訴人車両の装備,機器を選択することは当然であるところ,控訴人説明書で説明されている装備や機器は控訴人車両に搭載された装備,機器であり,取扱説明書による説明が必要なものであると推認できるから,控訴人説明書に掲載した装備,機器の選択の点に作成者の個性が表れているということはできないし,また,その説明の順番にも作成者の個性が表れているということはできない。したがって,これらの点について,素材の選択又は配列に創作性を認めることはできない。
また,控訴人説明書は,説明対象として選択した装備,機器について,項目立てに階層を設けず,並列的に項目立てをし,それらの項目について順次説明しているが,このような記載方法は一般的なものであるから,この点において素材の配列に創作性を認めることはできない。
<平成30620日知的財産高等裁判所[平成29()10103]>

原告は,原告取扱説明書中の説明文,イラスト,絵表示を素材ととらえ,どのような説明文(文章内容及び文字の大小・太細,下線の有無など),イラスト,絵表示を使用しているかを素材の選択と考え,説明文,イラスト,絵表示の相互の位置関係等を素材の配列と考えて主張を展開しているもの解され,これに対し被告は,上記選択や配列はいずれもありふれたものであると主張している。
そこで,原告の主張する説明文,イラスト,絵表示自体が著作権法121項の「素材」ととらえられるとして,その編集著作物性の有無を検討する。
原告取扱説明書中の個々の説明文や原告製品のイラストや絵表示自体は,著作物性における創作性を問題とすることはできても,編集著作物性を検討する場合は,個々の説明文,イラスト,絵表示の相互の位置関係の「配列」の創作性を検討する余地が考えられるにとどまる。
この点について,原告が原告取扱説明書の配列における創作性と主張するところは,原告製品の使用方法,特徴点,生じ得る問題とその対処方法,手入れ方法,各部の名称等,安全上の注意事項及び警告事項等の章立て,使用方法の説明においては時系列に沿って説明文を配列していること,生じ得る問題点とその対処方法の説明において,問題点を頁の左に,対処方法を頁の右に配置していること,禁止事項についてはイラストに「×」印を付していること,注意事項と警告事項を分け,各事項の説明においては頁の左側に絵表示を,その右側上段に各事項を,その右側下段に説明文を配置していること,説明文に沿って適宜イラストをその横や下に配置していること,注意事項等の前には絵表示を置いて注意事項等であることの注意喚起を促していること,以上の点と解される。しかしながら,これらの点は,製品の取扱説明書における,章立て,文章,イラスト,絵表示の配列としてありふれたものといわざるを得ない。
したがって,仮に本件において素材の配列の創作性を検討する余地が考えられるとしても,原告の主張する点において創作性を肯定することはできない。
以上のとおり,原告取扱説明書には編集著作物性を認めることはできない(。)
<平成170208日大阪地方裁判所[平成15()12778]/平成171215日大阪高等裁判所[平成17()742]>

本件のような製品の取扱説明書においては,その性質上,次のような内容や表記方法が要求され,かつ,広く採用されていると考えられる。したがって,製品の取扱説明書に係る編集著作物性を判断するにあたっては,これらの内容や表記方法は,原則としてありふれた表記であるということができる。
() 製品の概要(機能,構造,部品やその名称),取扱方法,発生しうるトラブルやその対処方法,注意ないし禁止事項などを,文章や図面・イラストによって説明する。
() 説明内容を示すタイトルを付けたり,説明内容の重要度に応じて,文字の大きさや太さに変化を付ける,強調のための文字飾りを付す,注意を促すマークを付すなどする。
() 説明内容を理解しやすくするため,説明文の近くに,製品を簡単にデフォルメしたイラストや,製品そのものの写真を掲載する。
原告は,原告各取扱説明書に表現された創意工夫として,①図面,記号,マーク,具体例の使用,②各種団体公認の表記,③取扱説明書の趣旨及び安全上の遵守事項の記載の先行,④文字サイズ,文字飾り,インパクトのある単語,マークによる強調,⑤イラスト図面・記号の使用,記載場所,大きさ等の工夫を挙げる。
しかしながら,取扱説明書においては,一般に,わかりやすく伝える,安全性を図るといった点が要求されるため,前記(イ)のような内容・表記が広く採用されているものであるから,上記①,④,⑤の工夫は,通常行われているありふれたものといえる。また,上記①及び④と,⑤のうち記載場所以外の要素は,既に選択・配列された要素に係る表記上の工夫であって,そもそも,「素材の選択」にも「素材の配列」にも該当しない。
また,上記②については,原告各製品のアピールポイントの1つであるが,アピールすべきポイントが限られると,これらの要素を取扱説明書に記載する素材として選択することやその配列は,自ずと限定されることになり,創作性があるとは認められない。
さらに,上記③については,設置方法,使用方法,取扱説明書の趣旨(取扱説明書の説明),安全上の遵守事項を,どのような順序で配列するかについてであるが,まず,取扱説明書の趣旨が最初に述べられることは当然である。取扱説明書の中心となるべき,設置方法と使用方法については,製品は使用の前に設置する必要があることから,上記の順に配列されるべきである。安全上の遵守事項の記載位置については選択の余地があるが,通常,設置方法,使用方法の前か後という選択しか考えられず,しかも,その内容が重要であることから,前に記載されることはむしろ普通であると考えられる。したがって,原告各取扱説明書について,その順序に原告の権利を発生させるような創作性は認め難い。
原告各取扱説明書に係る,素材の選択・配列の創作性を示す具体的表現として原告が主張する箇所のうち,前記のとおりありふれた表記といえる部分以外のものは,レイアウト上の工夫をいうものにすぎない。
また,原告各取扱説明書の各頁を見ても,写真,図面,説明文の配置については,製品の取扱説明書として一般的なものであるといえ,これを超えた創作性を認めることはできない。
以上のとおりであるから,原告各取扱説明書は,編集著作物とは認められない。
<平成231215日大阪地方裁判所[平成22()11439]>

【住宅ローン金利比較表】

原告は,本件図表は,素材である「全国の金融機関の住宅ローン金利」の選択又は配列によって創作性を有する「編集著作物」(著作権法121項)である旨主張する。
そこで検討するに,本件図表は,各金融機関が提供する住宅ローン商品の金利情報について,全国又は各地域別の金融機関ごとに,その商品名,変動金利の数値,固定金利(1年,2年,3年,5年,7年,10年,15年,20年,25年,30年,35年の固定期間別)の数値を表示して金利を対比した表及びそれらの金利の低い順に昇降順に並べて対比した表であり,全国の金融機関の全てを対象に,その提供する全ての住宅ローン商品の金利情報を素材として選択したものであり,そのような選択はありふれたものであるから,素材の選択によって創作性を認めることはできない。
また,本件図表における素材の配列は,左から,「金融機関名(店舗情報へリンク)」,「キャンペーン商品名等(各金融機関の商品ページへリンク)」,「変動金利型年金利(%)」及び「固定金利型固定期間別年金利(%)」(1年,2年,3年,5年,7年,10年,15年,20年,25年,30年,35年の固定期間別)の順に配列したものであり,この種の住宅ローン金利の対比表に多くみられたありふれた配列であり,また,本件図表を構成する図表の中には,各地域ごとの各金融機関の住宅ローン商品を金利の低い順に昇降順に配列したものがあるが,このように金利の低い順に住宅ローン商品を配列することもありふれたものであるから,素材の配列によっても創作性を認めることはできない。
したがって,本件図表が編集著作物に当たるとの原告の主張は,理由がない。
<平成221221日東京地方裁判所[平成22()12322]>

【間取図作成ソフト】

原告は,原告ソフトのパーツの選択について編集著作権が存する旨主張しているが(パーツの配列については,和室,洋室,DK・LDKなどの各種類ごとに,そのサイズの順に並べられているにすぎないから,少なくともその配列に創作性を認めることはできない。),住宅の間取図を簡便に作成するためのものという間取図作成ソフトの性質上,そのパーツは,一般的な住宅において通常用いられる種類,サイズ,形状のものに自ずと限られることになり,例えば和室,洋室,DK・LDKを例にとってみると,その形状には縦横の長短はあるが,四角形を基本とするものに限られている上,畳の数によって3畳,4畳半,6畳,7畳半などと選択できるサイズは限定され,しかも,通常の住宅を想定していることから18畳程度を上限とするものであって,その選択の幅はかなり限定されたものとなっている。原告ソフトにおいて選択されたパーツの個数についてみても,その総数は150点を超える程度であるが,和室,洋室などの種類ごとに見れば,それぞれ3点ないし13点程度であってその数は決して多いものではない。
(略)
そうすると,原告ソフトや他社ソフトにおいて用意されているパーツは,いずれも一般的な住宅において通常用いられる種類,サイズ,形状のものが選択されており,その選択状況に違いがあっても,それは,当該ソフト自体の機能の違いから生じているにすぎず,また,その選択の仕方自体が原告ソフトに特有の個性を表現するまでに至っているとは認められない。
したがって,原告ソフトにおけるパーツの選択は,ごく実用的な観点からなされるものであって,編集者の思想又感情に基づく創作的行為としては評価し難い性質のものである上,間取図作成ソフトの分野においてありふれたものではないと認められる程度の,原告ソフトに特有の個性を帯有するものとは認められないから,原告ソフトは創作性を有する編集著作物に当たるとはいえない。
<平成190628日名古屋地方裁判所[平成18()3944]>

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