④ 利用者は,上記①ないし③によって作成,強化した自己のチームを,携帯電話回線等を通じて,他の利用者などのチームと対戦させる。これによって,上記②の強化に必要なポイントを獲得できる。
⑤ 利用者は,上記選択肢のうち必要と思われる行為を適宜選択し,これを繰り返しながらチームを強化し,理想とするチームを作り上げていく。
確かに,原告ゲームが「選手ガチャ」,「スカウト」,「強化」,「オーダー」及び「試合」(リーグ)の五つの要素からなり,それらの各要素が相互に関係するように構成されており,先に認定した上記各要素の具体的内容によれば,原告ゲームは,大要,上記①ないし⑤の各表現を有するものであることが認められる。また,被告ゲームが「ガチャ」,「ミッション」,「オーダー」,「強化」及び「試合」の五つの要素からなり,それらの各要素が相互に関係するように構成されており,先に認定した上記各要素の具体的内容によれば,被告ゲームも,大要,上記①ないし⑤の各表現を有するものであることが認められる。
しかし,まず,原告ゲームと被告ゲームとの間に原告の主張する上記①ないし⑤の共通点があるとしても,原告ゲームと被告ゲームは具体的表現において相違点が多数認められるところであるから,被告ゲームは原告ゲームの複製には当たらない。
また,そもそもゲームソフトは通常の映画とは異なり,利用者が参加して楽しむというインタラクティブ性を有しているため,利用者が必要とする情報を表示し,又は利用者の選択肢を表示するための画面や操作手順を表示する必要があるところ,このような利用者の便宜のための画面や操作手順は,利用者の操作の容易性や一覧性等の機能的な面を重視せざるを得ないため,作成者がその思想・感情を創作的に表現する範囲は自ずと限定的なものとならざるを得ないばかりか,特に,本件における原告ゲーム及び被告ゲームは,野球という定型的で厳格なルールの定められたスポーツを題材とし,しかもプロ野球界の実在の球団及び選手を要素として使用し,かつトレーディングカードという定型的な遊び方のあるゲームを前提として構成されたSNSゲームであるから,そこには,野球というスポーツのルールに由来する一定の制約,プロ野球界の実在の球団及び選手の画像等を利用することに由来する一定の制約,トレーディングカードゲームの形態やルールに由来する一定の制約があるから,特に特徴的な点あるいは独自性があると認められない限り,創作性は認められないというべきである。
そして,原告の主張する上記①ないし⑤の内容は,飽くまでプロ野球選手カードゲームを題材とするSNSゲームとしての遊び方,進行方法若しくはゲームのルールであって,それ自体アイデアにすぎず具体的表現とはいえないし,仮に上記①ないし⑤の内容を何らかの表現と捉えるとしても,上記制約があることを考慮すると,原告ゲームに特徴的な点あるいは独自性があるとも認められないというべきであるから,原告ゲームと被告ゲームとの間に上記①ないし⑤の共通点があることをもって,被告ゲームは原告ゲームの翻案に当たるとはいえないと認めるのが相当である。
<平成25年11月29日東京地方裁判所[平成23(ワ)29184]>
一覧に戻る
|