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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作権の譲渡②

【譲渡契約解除の効果】

本件プログラムをめぐる契約関係【注:関係契約書には「本契約の失効後も、第15条(発明考案)、第16条(著作権[契約に基づき開発されたソフトウェアの著作権は甲(被控訴人)に帰属する。])、(の)規定は、尚その効力を有するものとする。」との条項があった】において,基本的には,控訴人による本件プログラムの開発期間中は,控訴人は,合意されたところに基づき,順次,プログラムを開発して,これを被控訴人に納入する義務を負うのに対し,被控訴人は,開発に応じて,合意された開発費の支払義務を負い,順次,納入されるプログラムの著作権等の権利を取得するという継続的な関係が存在し,プログラムの納入後は,控訴人には,製品の競争力維持のために特別な協力を行う義務が存在し,被控訴人には,「歩合開発費」の支払義務が存在するという継続的な関係があることが認められる。
上記継続的な関係においては,被控訴人が,順次,納入されたプログラムの権利を取得するものであるところ,その権利を基礎として,新たな法律関係が発生するものであるし,開発の受託者である控訴人も,委託者である被控訴人から指示されて被控訴人のために開発を行い,被控訴人に納入したプログラムについて,控訴人と被控訴人間の契約関係解消の場合,その開発作業の対価として受け取った金員の返還を想定しているとは考えられず,契約の性質及び当事者の合理的意思からも,本件における継続的な関係の解消は将来に向かってのみ効力を有すると解するのが相当である。
そうすると,控訴人による本件解除は,仮に,解除原因が存在し,解除の意思表示が有効であるとしても,遡及効はなく,将来に向かって効力を生じるものであると解されるのであって,そうとすれば,控訴人は,将来の競争力維持のための協力義務を免れるものの,本件解除によって,従前の法律関係を解消されるものではなく,被控訴人に帰属した権利が,控訴人に復帰するものではないと解するのが相当である。
<平成180831日知的財産高等裁判所[平成17()10070]>

本件契約第10条【注:①甲(被控訴人)が,前条の解約により本契約を終了させたときは,乙(控訴人)はそれまでに甲より受領した金員を甲に返還しなければならない。②甲は,本契約を解約した場合においても,本契約によって取得した著作権,及び乙がそれまで取得した本件成果物の素材の所有権はすべて甲に独占的に帰属するものとする。】は,被控訴人による解約により契約が終了した場合には,被控訴人が控訴人に対して既払金の返還を求めることができるとする定めを置く一方で(同条①),本件契約によって控訴人から被控訴人が取得した著作権及び本件成果物の素材の所有権を失わないとする特則を規定しており(同条②),被控訴人に片面的に有利な規定となっている。
確かに,本件契約第9(10)を除く同条の他の号を見ると,受託者が順調に受託業務を遂行していない場合や委託者に成果物の著作権等を取得させることが困難となった場合など(同条(1)(3)),どちらか一方の金銭的信用力が極めて悪化した場合や破綻した場合など(同条(4)(7)),受託者に著しい不行跡があった場合など(同条(8)(9))であり,このような場合に委託者が契約を解約したときには,委託者が既に支払済みの金銭を回収するとともに,責めのない委託者が将来的な著作権等の権利をめぐる紛争に巻き込まれる懸念をなくし,あるいは,契約違反をした受託者への制裁又は違反の予防として,受託者から委託者に納入された映像素材の著作権等の権利を引き続き委託者が保有し続けるとしてもやむを得ないものであり,契約当事者双方もそのように解釈して本件契約を締結したものと推認される。したがって,本件契約第10条は,そのような場合にはこれを全面的に適用しても必ずしも合理性に欠けるものではないといえ,言葉を換えれば,本件契約第10条に定める契約解約後の権利関係の調整規定が全面的に適用されるのは,そのような場合に限られると解される。しかしながら,逆に,本件契約第10条が念頭においていないような場合については,同条の定める契約解除後の権利関係の調整をそのまま適用する前提を欠くことになり,これを当事者間の利害調整や衡平の観点から適宜調整の上適用することが,本件契約の合理的解釈といえる。
(中略)以上の点を考慮すると,本件は,本件契約第10条が本来的に想定する事例とは異なるものであり,契約の合理的解釈として,同条②に基づく権利等の維持の効果を認める必要性は高く,その適用はあると解されるものの,同条①に基づく既払金の返還の効果は,これを認める必要性は低いだけでなく,その時機も逸していて殊更に大きな負担を控訴人に強いるのであるから,その適用はないと解するのが相当である。
そうすると,本件契約の解約の結果,被控訴人は,控訴人に対し,本件作品を返還する必要はなく,本件映像動画の著作権等の取得も継続されるが,既払金の返還を求めることはできないというべきである。
<平成260423日知的財産高等裁判所[平成25()10080]>

原告は,被告の債務不履行により,本件イラストの対価(本件著作権の譲渡対価)に相当する金額の損害を受けたと主張する。しかしながら,本件著作権譲渡契約が解除されたことにより,原告は,本件著作権を復帰的に取得するに至ったものであって,これを行使しうる地位にある以上,原告が本件著作権の譲渡対価相当額の損害を受けたと直ちに認めることは困難であり,このことは,原告が本件イラストを本件果実酒の包装等に使用するためにオーダーメイドで制作したものであったとしても変わることはない。
(略)
もっとも,被告は,本件著作権譲渡契約が解除されたことにより原状回復義務を負うところ(民法545条1項),被告は,同義務の内容として,解除までの間,本件著作権を利用したことによる利益(本件著作権譲渡契約の目的の使用利益)を返還する必要がある(最高裁昭和51年2月13日第二小法廷判決参照)。
<平成28229日 東京地方裁判所[平成25()28071]>

本件著作権譲渡契約においては,「乙(判決注・被告)がこの契約の条項に違反した場合には,甲(判決注・著作権譲渡人。)は,20日間の期間を定めた文書により,契約上の義務履行を催告し,その期間内に履行されないときは,この契約を解除すること,…ができるものとします。」,「契約期間の満了または契約の解除によりこの契約が終了した場合には,本件著作権は,当然甲(判決注・著作権譲渡人)に帰属するものとします。」との旨が約定されていたこと,本件楽曲の各作詞・作曲者(GLAYメンバーら)は,原告P1,原告P2,原告P3又は原告P4に対し,本件楽曲に係る著作権を譲渡する旨の合意をしたこと,原告P1,原告P2,原告P3及び原告P4は,平成17117日,原告P5に対し,本件楽曲に係る著作権を譲渡する旨の合意をしたことが認められる。
(略)
上記によれば,本件著作権譲渡契約は,被告の著作権印税の支払債務の履行遅滞により有効に解除され,これにより,本件楽曲の著作権は,本件著作権譲渡契約における譲渡人(GLAYメンバーら)に帰属した上で,GLAYメンバーらから原告P1,原告P2,原告P3又は原告P4に対し,次いで,同原告らから原告P5に対し,順次譲渡されたのであるから,原告らの本訴請求のうち,原告らと被告との間で,原告P5が本件楽曲の著作権を有することの確認を求める部分は理由がある。
<平成211022日東京地方裁判所[平成19()28131]>

【著作権の原始取得と登録の要否】

原告は流行歌「阿蘇の恋唄」を録音物に適法に写調したものであるから右曲の録音物著作権を原始的に取得したことになる。右著作権は著作財産権のみならず著作人格権をも包含するものであることは権利の性質上明らかであり又原告が右権利を原始的に取得したものなる以上、登録をもつて第三者対抗要件とする承継取得の場合と異り登録なくして第三者に対抗しうるものと解すべきである。
<昭和450303日大分地方裁判所[昭和41()507]>

【著作権移転登録の意義】

著作権の移転登録は,当事者の意思表示によって生じた著作権の権利変動を公示し,第三者に対する対抗要件となるものではあるが,移転登録の対象とされた著作権が発生していることや,その著作権の客体が法211号の「著作物」に該当することを公示すらするものでないことは,著作権の移転登録の制度上明らかであるから,文化庁長官は,著作権の移転登録申請があった際に,申請者に対し,その申請に係る登録がされたからといって著作権が発生するものではないとか,著作権の権利者という地位が保証されるものではないなどの説明を著作権の移転登録事務を担当する文化庁の担当職員(本件担当職員)にさせるべき職務上の法的義務を負うものとはいえないし,文化庁長官がかかる法的義務を負うものとする法令の定めや根拠はない。
<平成250620日知的財産高等裁判所[平成25()10015]>

【「第三者」(法77条)の意義】

著作権の移転を登録しなければ対抗できない「第三者」(著作権法77条)とは,登録の欠缺を主張するにつき正当の利益を有する者であると解されており(大審院昭和7527日判決参照),単なる著作権の侵害者はこれにはあたらない。
<平成190726日大阪地方裁判所[平成16()11546]>

著作権の移転を登録しなければ対抗できない「第三者」(著作権法77条)とは,登録の欠缺を主張するにつき正当の利益を有する者であると解されており(大審院昭和7527日判決参照),単に著作権の帰属を争っていたり,著作物の複製物を使用しているだけの者は,これには当たらない。
<平成210226日大阪地方裁判所[平成17()2641]>

原告は,本件ピクトグラムの著作権を取得したと認められるところ,著作権を取得した者は,著作権を侵害する不法行為者に対し,何ら対抗要件を要することなく自己の権利を対抗することができると解されるから,原告は,被告大阪市に対し,著作権侵害に基づく損害賠償を請求することができる。
<平成27924日大阪地方裁判所[平成25()1074]>

本件著作権については、著作権登録原簿への登録がされていないところ、本件信託契約による本件著作権の原告への移転は、右登録がなければ、第三者に対抗することができず、右第三者とは、登録の欠缺を主張するにつき、正当な利益を有する第三者をいうと解するのが相当である。
(略)
被告は、本件楽曲の作曲者である補助参加人から、本件楽曲を本件ビデオの背景音楽として複製して使用することについて許諾を受けた者であるから、本件著作権の移転に関する、原告の著作権登録原簿への登録の欠缺を主張するにつき、正当な利益を有する第三者であるというべきである。
以上の次第であるから、補助参加人から原告への本件信託契約に基づく本件著作権の移転につき、著作権登録原簿への登録をしていない原告は、右登録の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する第三者である被告に対して、本件著作権に基づく本訴請求を行うことは許されない。
<平成120630日東京地方裁判所[平成11()3101]>
【注】控訴審<平成130712日東京高等裁判所[平成12()3758]>では、「被控訴人が本件楽曲の複製許諾を得ていたとは認められず,被控訴人は,本件信託契約に基づく,補助参加人から控訴人への本件著作権の移転についての著作権登録原簿への登録の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者には当たらないものというべきである。」とし、被控訴人(1審被告)の損害賠償責任を認定した。

【「背信的悪意者」該当性】

【注】本件は、二重譲渡の一方当事者が相手方の対抗要件の欠如を主張し得ない「背信的悪意者」には該当しないと認定した事例である。
本件における「本件著作権」の「譲渡」(二重譲渡)の流れ(ルート)は、概ね次のとおり:
1のルート:[ダリ][被控訴人]
2のルート:[ダリ][スペイン国・文化省][補助参加人]
※「控訴人」は、上記[補助参加人]から本件著作権の利用許諾を受けた者である。
本件では、「控訴人は,ダリから被控訴人に対する本件著作権の移転について法律上の利害関係を有する第三者である。」と認定した上で、以下のように判示した。
本件著作権の移転の対抗要件についても,保護国である我が国の法令が準拠法となるから,著作権法771号,781項により,被控訴人は,本件著作権の取得について対抗要件である著作権の移転登録を了しない限り,控訴人に対し,本件著作権に基づく請求をすることはできないところ,被控訴人は,この登録を了していないので,控訴人に対し,本件著作権を対抗し,これに基づく請求をすることができない。
被控訴人は,ダリが被控訴人に対し,本件契約によりダリ作品に係る著作権を2004(平成16)511日まで譲渡したことから,文化省がダリ作品に係る著作権の利用権を補助参加人に譲渡した当時,スペイン国は無権利者であったと主張する。しかしながら,スペイン国は,本件遺言によりその法律上の地位を包括承継し,文化省が勅令によりその利用権を付与されたのであるから,ダリが本件契約により被控訴人に対してした本件著作権の譲渡と,ダリの包括承継人であるスペイン国から補助参加人への本件著作権の譲渡とは,対抗関係に立つのであって,いずれかの譲渡について登録がされるなど,一方が確定的に有効となるまでの間は,いずれの譲渡も権利者による譲渡というべきであるから,スペイン国からの譲渡を無権利者によるものということはできない。
被控訴人は,補助参加人について,本件契約が著作権の有効な譲渡契約であり被控訴人がその著作権者であることを知っており,スペイン国と結託して上記契約を締結したと主張する。しかしながら,スペイン国から補助参加人に本件著作権が譲渡された1995(平成7)当時,スペイン法人であり全世界のダリ作品に係る権利を扱うことが予定されていた補助参加人が,我が国において本件契約に係る著作権の譲渡が登録されていないことを知っていたなどということは,およそ考えられず,他に,補助参加人が本件著作権の移転登録が未了であることを奇貨として,あえて上記契約を締結したなど,対抗要件の欠如を主張し得ない第三者に当たることをうかがわせる証拠はない。
また,被控訴人は,補助参加人に対し警告したと主張するところ,我が国の法令の下で,第三者が上記背信的悪意者に該当するかどうかは,当該第三者が法律上の利害関係を有するに至った時点における認識を問題とするから,この点においても,被控訴人の主張は採用することができない。
さらに,被控訴人は,控訴人について,被控訴人の警告を無視して本件著作物の無断複製頒布に及んだと主張するが,補助参加人が背信的悪意者でない以上,補助参加人から本件著作権の利用許諾を受けた控訴人も,また,背信的悪意者であるとは認め難く,他に,控訴人が背信的悪意者に当たると認めるに足りる証拠はない。
<平成150528日東京高等裁判所[平成12()4759]>

被控訴人は,控訴人が本件著作権の正当な承継者であることを熟知しながら,控訴人の円滑な事業の遂行を妨げ,又は,控訴人に対して本件著作権を高額で売却する等,加害又は利益を図る目的で,A及びBに働きかけて本件譲渡証明書及び単独申請承諾書に署名させ,本件譲渡登録を経由したものと推認することができ,したがって,被控訴人は背信的悪意者に該当するものと認めるのが相当である。
以上によれば,被控訴人は,控訴人への本件著作権の移転につき,対抗要件の欠缺を主張し得る法律上の利害関係を有する第三者(著作権法77条)には該当しない。
<平成200327日知的財産高等裁判所[平成19()10095]>

著作権の移転は,一般承継によるものを除き,登録しなければ,第三者に対抗することができない(著作権法77条)。被告らは,著作権法77条にいう第三者に当たるから,仮に本件小道具等が著作物であって原告が△△からその著作権の譲渡を受けたものであるとしても,原告は,移転登録を経ていないため,被告らが背信的悪意者に当たらない限り,譲渡を受けたとする本件小道具等の著作権を被告らに対抗することができない。
そこで,被告らが背信的悪意者に当たるか否かについて検討する。
被告らが,被告○○らと△△との間の本件協約締結の時点において,原告が△△から本件小道具等の著作権の譲渡を受けたことを認識していたことを認めるに足りる証拠はなく,原告の著作権の移転登録の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情があることも窺えないから,被告らが背信的悪意者に当たるということはできない。
<平成250328日 東京地方裁判所[平成22()31759]>

【著作権移転登録(二重譲渡)の諸事例】

以上によれば,B及びCからU商会に対する本件著作権の譲渡とB及びCから被告に対する本件著作権の譲渡とは二重譲渡の関係にあり,U商会又はその転得者と被告とは対抗関係に立つものと認められる。
よって,原告がU商会から本件著作権を承継していたとしても,我が国著作権法上,被告は,原告への本件著作権の移転につき,対抗要件の欠缺を主張し得る法律上の利害関係を有する第三者(著作権法77条)に該当するから,原告は,被告に対し,本件著作権の移転について登録(対抗要件)を了しない限り,本件著作権の移転を対抗することはできない。本件において,原告は,本件著作権の移転について登録を了していないから,被告に対する本訴請求はいずれも理由がない。
加えて,被告は,本件著作権の移転について,本件譲渡登録を了したから,我が国の著作権法上,被告に対する本件著作権の移転が確定的に有効となり,他方,原告は本件著作権を喪失することになる(。)
<平成191026日東京地方裁判所[平成18()7424]>

更に被告は、仮に本件契約における被告会社代表者の意思表示が原告の強迫によりされたものではないとしても、本件契約【注:原・被告は、本件映画の著作権は原・被告の共有とすること、本件映画のプリント販売、上映等による収入は、原告の活動による場合は原告に70パーセント、被告に30パーセントの額を、被告の活動による場合は原告に30パーセント、被告に70パーセントの額をそれぞれ配分するものとすることなどの条項を含む本件契約を締結したことが認められる】は、本件映画の著作権が被告から国鉄に譲渡された後に締結されたものであるから、原告が本件映画の著作権を取得することはないとの趣旨の主張をする。しかしながら、仮に本件契約が被告から国鉄に本件映画の著作権が譲渡された後に締結されたものであるとすれば、本件契約による被告から原告に対する本件映画の著作権の譲渡は、いわゆる二重譲渡であるというべきところ、登録を譲渡の対抗要件とするに止まる旧著作権法下においては(同法第15条第1項【現771号】参照)、本件契約による譲渡の意思表示のみにより、被告から原告に対する本件映画の著作権の譲渡は有効に生じ、譲渡の当事者であつて第三者ではない被告はこれを争うことはできないものというべきである。被告の右主張は理由がない。
<昭和520228日東京地方裁判所[昭和44()1528]>

仮に、遺産財団管財人ポール・オニールがジョゼフ・カラスに対し本件著作権を譲渡し、この譲渡契約が有効であるとしても、遺産財団から控訴人に対する本件著作権譲渡による物権類似の支配関係の変動については、本件著作権の保護国である我が国の法令が準拠法となるから、本件著作権について、ジョゼフ・カラスに対する譲渡と控訴人に対する譲渡とが二重譲渡の関係に立つにすぎず、控訴人に対する本件著作権の移転が効力を失うものではない。
我が国著作権法上、被控訴人は、本件著作権について、譲渡を受け、又は利用許諾を受けるなど、控訴人が本件著作権譲渡の対抗要件を欠くことを主張し得る法律上の利害関係を有しないから、控訴人は、被控訴人に対し、対抗要件の具備を問うまでもなく、本件著作権を行使することができる。なお、本件著作権譲渡の法律効果について我が国著作権法が適用されるということは、著作権譲渡の対抗要件についても同様であることを意味するところ、控訴人は、遺産財団から本件著作権の譲渡を受けたことについて、我が国著作権法771号に基づく著作権の登録申請手続を行い、平成10825日に登録を受けた結果、上記対抗要件を具備していることは上記認定のとおりであるから、この点においても、被控訴人の主張は理由がない。
<平成130530日東京高等裁判所[平成12()7]>

ところで,破産管財人は,破産者の一般承継人ではなく,破産債権者のために独立の地位を与えられた破産財団の管理機関として,民法第177条にいわゆる第三者に当たるものと解すべきである(昭和38730日最高裁第3小法廷判決参照)。したがって,仮に,本件譲渡担保契約に基づいて○○から被告へ著作権が譲渡されたとしても,被告は,○○が破産宣告を受ける前に,著作権譲渡についての対抗要件たるプログラム登録原簿への移転登録手続を経由していなければ,原告に対してその譲受けを対抗することはできない。一方,本件において,被告が本件プログラムの譲受けについてかかる登録手続を経由していないことは,弁論の全趣旨により明らかである。したがって,本件譲渡担保契約に基づいて本件プログラムについての著作権を取得した旨の被告の主張は,主張自体失当である。
なお,被告は,本件プログラムが格納されたCD-ROMの引渡しを受けたことによって,対抗要件を備えたものとも主張する。しかし,プログラムの著作物に係る著作権の移転は,プログラムについての著作権登録原簿へ登録しなければ,第三者に対抗することはできないものであるから(著作権法771号,781項),この点における被告の主張も理由がない。
<平成150317日東京地方裁判所[平成14()21540]>

携快電話のその他のデータファイルは○○社が製作し,被告は○○社からその著作権等を承継取得した。一方で,原告商品のその他のデータファイルは,原告が○○社から使用許諾を得て原告商品の一部として販売している。そうすると,原告商品のその他のデータファイルのうち,携快電話のファイルと同一のものについては,被告と原告とは○○社を起点として,いわゆる二重譲渡と同様の関係にあるということができるから,被告が原告に対し,○○社からその他のデータファイルの著作権又は著作隣接権を承継取得したことを対抗するためには,著作権法771号所定の権利の移転登録を要するというべきである。しかし,被告は移転登録を得ていないのであるから,仮にその他のデータファイルについて著作権又は著作隣接権が成立するものが含まれていたとしても,原告が原告商品を販売する行為は,当該著作権又は著作隣接権の侵害とはならない。
<平成160128日東京地方裁判所[平成14()18628]>

【使用許諾契約上の許諾者たる地位の承継(譲渡)】

原告は,被告らに対し,○○デザイン研究所から本件各使用許諾契約の許諾者たる地位を承継したとして,同契約上の権利を主張し得るかについて
原告が,平成19年6月1日に○○デザイン研究所の事業を統合する際に,P1が○○デザイン研究所において作成したVIデザイン等の著作権全てを○○デザイン研究所から包括的に譲り受ける合意をしたことについては,原告代表者と○○デザイン研究所の代表であったP1との間で認識が合致しており,その後同年9月に○○デザイン研究所が解散清算していること等からしても,当事者間において本件ピクトグラム等を含む著作権(後記のとおり本件ピクトグラム等は著作物性を有すると認められる。)が譲渡された事実が認められ,そうである以上,本件各使用許諾契約上の地位も譲渡されたと認められる。
被告らは,事業の全部譲渡に該当するとして,必要な株主総会特別決議がないことから譲渡はなく,仮に譲渡があったとしても総会決議がなく無効である旨主張するが,原告が○○デザイン研究所における雇用関係や顧客を承継していないことからすれば,事業の全部譲渡には該当せず,被告の主張は採用できない。
そして,本件各使用許諾契約における許諾者の義務は,許諾者からの権利不行使を主とするものであり,本件ピクトグラムの著作権者が誰であるかによって履行方法が特に変わるものではないことからすれば,本件ピクトグラムの著作権の譲渡と共に,被許諾者たる被告△△の承諾なくして本件各使用許諾契約の許諾者たる地位が有効に移転されたと認めるのが相当である(賃貸人たる地位の移転に関するものではあるが最高裁判所昭和46年4月23日判決参照)。
しかし,著作物の使用許諾契約の許諾者たる地位の譲受人が,使用料の請求等,契約に基づく権利を積極的に行使する場合には,これを対抗関係というかは別として,賃貸人たる地位の移転の場合に必要となる権利保護要件としての登記と同様,著作権の登録を備えることが必要であると解される(賃貸人たる地位の移転に関するものではあるが最高裁判所昭和49年3月19日判決参照)。
この点について,原告は,被告らは平成23年5月以降の協議において原告が著作権者であることを認めていたと主張するが,証拠に照らして採用できない。
したがって,原告は,被告らに対し,著作権の登録なくして本件各使用許諾契約上の地位を主張することはできない。
よって,その余の点について判断するまでもなく,本件各使用許諾契約の有効期間内に作成された本件ピクトグラム等について,原告の被告らに対する,本件各使用許諾契約による原状回復義務及びその違反に基づく請求は理由がない。
<平成27924日大阪地方裁判所[平成25()1074]>
【参考:上記で言及された最高裁判例】
ところで、土地の賃貸借契約における賃貸人の地位の譲渡は、賃貸人の義務の移転を伴なうものではあるけれども、賃貸人の義務は賃貸人が何ぴとであるかによつて履行方法が特に異なるわけのものではなく、また、土地所有権の移転があつたときに新所有者にその義務の承継を認めることがむしろ賃借人にとつて有利であるというのを妨げないから、一般の債務の引受の場合と異なり、特段の事情のある場合を除き、新所有者が旧所有者の賃貸人としての権利義務を承継するには、賃借人の承諾を必要とせず、旧所有者と新所有者間の契約をもつてこれをなすことができると解するのが相当である。
<昭和46423日最高裁判所第二小法廷[昭和45()46]>
本件宅地の賃借人としてその賃借地上に登記ある建物を所有する上告人は本件宅地の所有権の得喪につき利害関係を有する第三者であるから、民法177条の規定上、被上告人としては上告人に対し本件宅地の所有権の移転につきその登記を経由しなければこれを上告人に対抗することができず、したがつてまた、賃貸人たる地位を主張することができないものと解するのが、相当である(大審院昭和八年(オ)第六〇号同年五月九日判決参照)。
<昭和49319日最高裁判所第三小法廷[ 昭和47()1121]>

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