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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

利用の許諾②

【黙示の利用許諾(認定例)】

5回被告大学懸賞論文授賞式及び受賞祝賀会が昭和58120日に行われ、原告も、これに参加したが、その際、被告大学学務部学務課職員として、被告大学懸賞論文に関する事務を担当していたBが、原告に対し、優秀賞受賞論文である原告論文を被告雑誌の同年23月合併号に掲載することになった旨伝えたところ、原告は、これに対して異議を唱えるなど、特別の意思表示をしないまま、Bと雑談を続けた、原告は、同年216日付消印の郵便をもって、被告大学通信教育部の訴外Cあてに書簡を送ったが、これには「授賞式の時に、学務課の担当の方が、雑誌「法政」にも載せると言っておりましたので、正しい原稿を渡して下さるようにお願いいたします。」との記載がある、以上の事実が認められる。
右認定の事実によれば、被告は、第5回懸賞論文募集に当たって、応募者に対し、応募論文の著作権の帰属、出版等の利用に関する事項を何ら明らかにしていないのであるから、被告雑誌発行の趣旨及び被告大学懸賞論文の制度の趣旨が前記被告の主張のとおりであるとしても、そのことから直ちに、応募者の応募行為が、応募論文の著作権の贈与、出版権の設定又は出版の許諾等の意思表示に当たるものと認定することは困難である。また、原告は、右認定の応募歴、受賞歴を有しているから、第5回懸賞論文に応募する際には、もし、優秀賞を受賞すれば、自分の論文が被告雑誌に掲載されることもありうるといった程度の認識を有していたであろうことは認定しえないではないが、第4回懸賞論文までの優秀賞受賞論文のすべてが被告雑誌に掲載されたわけでもなく、原告自身、優秀賞を受賞しながら、被告雑誌に掲載されなかったという経験を有しているといった右認定の事実に照らすと、原告の第5回懸賞論文の応募行為自体が、直ちに被告に対する著作権の贈与、出版権の設定又は出版の許諾の意思表示であると認定することも困難である。しかしながら、右認定の事実によれば、Bが、原告に対し、原告論文を被告雑誌に掲載することになった旨伝えたという事実は、これをもって、被告大学懸賞論文の事務担当者が、原告に対し、原告論文の出版の許諾を求めた行為に当たると認定することができ、また、これに対する原告の態度は、右に対する黙示の承諾に当たると認定することができる。そして、右認定の事実は、原告の右承諾の意思を裏付けるものであるということができる。この点について、原告は、Bとの会話は、祝賀会での飲酒中になされた雑談にすぎないから、承諾の意思表示というようなものではない旨主張するが、仮に飲酒中の雑談であったとしても、飲酒中であったため、意思表示に瑕疵があったという事実についての主張立証はなく、かえって、原告の意思表示が承諾の意思表示であることを裏付けるに足りる事実が認められるのであるから、原告の右主張は、採用することができない。
<平成21116日東京地方裁判所[昭和61()2867]>
【控訴審も同旨】
控訴人は昭和58120日に開催された第5回被控訴人大学懸賞論文授賞式及び受賞祝賀会において、右懸賞論文の事務を担当していた同大学学務部学務課職員のAから本件論文を本件雑誌へ掲載することになった旨の申入れを受けたのに対して何らの異議を述べていない上、その後、本件論文の本件雑誌への掲載を前提とした内容の書簡を被控訴人大学宛に送付していることからすると、控訴人は、前記の受賞祝賀会の席におけるAからの論文掲載の申入れに対して、黙示の承諾をしたものと推認するのが相当というべきである。
<平成31219日東京高等裁判所[平成2()4279]>

上記引用に係る認定事実,ことに①平成41月上旬,控訴人がイスラエルの被控訴人B方に滞在した際,被控訴人が控訴人に対し,コルチャックの生涯の劇化の構想を述べ,被控訴人Bがその脚本を書くのに控訴人著作を参考にしてよいかと尋ねたところ,控訴人は,「一緒に雑魚寝をし,飯を食べた仲。それに,その本は○○君が活躍し,△△さんのおかげで出たもの。本はもちろん手許の資料も好きなだけ使ってください。だが友人の間でそんなことを聞く方がおかしい。」と述べていること,②控訴人は,本件戯曲の第1稿(控訴人著作の複製・翻案と認められる部分が既に描写されている。)について,気がついた点について被控訴人Bの原稿に自ら手を入れたり,被控訴人宛の書簡等で指摘し,また,控訴人の講演において,本件戯曲の第1稿の一部を一般聴衆に披露していること,③控訴人は,本件戯曲の最終稿である第4稿についても,サムエルとギエナのエピソードは事実無根との指摘を行ったものの,控訴人著作の利用自体については特に異議を述べていないことなどに照らすと,控訴人は,被控訴人Bに対し,本件戯曲制作に当たって控訴人著作を使用することについて,包括的許諾を行ったものと認めるのが相当である。
<平成140918日大阪高等裁判所[平成14()287]>

上記認定の事実によれば,テレビ朝日の番組「ザ・スクープ」の制作スタッフは,本件刑事事件がえん罪事件であることを証明するための報道活動をしている旨の自己紹介をした上で控訴人に取材をしており,控訴人は,この取材に応じて,自己の生活状況等を述べ,併せて,自らが作成した取調べ状況のイラスト(本件イラスト)を渡して積極的に協力していたのであるから,将来,「ザ・スクープ」により本件刑事事件に関する報道がされ,控訴人の情報提供がその報道の一資料として用いられることを十分に理解した上で,取材に協力していたものというべきである。
そして,報道活動の一環として,何らかの形で番組の内容が書籍に掲載されることは,通常,予想されることであるところ,本件番組も本件書籍も,全体として,本件刑事事件をえん罪事件として扱い,控訴人が真犯人であることに疑問を呈する内容であり,控訴人は,控訴人の支援者から,出版された本件書籍を受け取っていたにもかかわらず,これに対して,被控訴人らないしテレビ朝日に対して何らの苦情の申入れや抗議等をすることもなく,本件訴訟の提起までの約10年間を経過したものである。
以上のような事情の下においては,控訴人は,被控訴人らに対し,本件番組を制作・放送すること,本件イラスト,本件手紙等を掲載して本件書籍を制作・出版すること,並びに,被控訴人らが,本件番組及び本件書籍制作のための情報提供をすること等について,少なくとも事後的に黙示の承諾をしたものと認めるのが相当である。
<平成180228日知的財産高等裁判所[平成17()10110]>

原告は,被告が著作権を有するような写真集に,本件各人形の使用を許諾する意思はなく,また許諾した事実もない旨主張する。
しかしながら,原告は,被告から本件写真集を制作する話を持ちかけられ,写真集の制作に向けた打合せに参加し,謝辞を起案し,ゲラ刷りの写真集を確認する等して,その制作に種々協力しており,被告ないし○○から30万円の支払も受けているのであるから,原告は本件各人形を使用して写真集を制作することを許諾していたというほかはない。
確かに,原告は,本件写真集の著作権が自分に帰属するものと考えていたようにうかがわれるし,また,自分に著作権が帰属しないのであれば本件各人形の使用を許諾しなかったと供述しているが,それは原告の内心の事情にすぎず,他者が外部から知り得ることではない。すなわち,本件写真集の制作に当たり,原告は本件各人形が使用されることに何の異議も唱えていないし,かえって,上記のように色々と協力しているのであり,これについて著作権が自己に帰属することが前提である旨を被告その他の関係者に表示していたと認めるべき証拠はないし,また,被告がその旨を原告に告げる等して欺罔した等のことを認めるに足りる証拠もない。
したがって,被告が内心で著作権の帰属についてどのように考えていたにせよ,原告は本件各人形の使用を許諾したと認められるのであり,被告が本件各人形についての原告の著作権を違法に侵害したとか,それが不法行為になると認めることはできない。
<平成190131日横浜地方裁判所[平成16()3460]>

もっとも,原審における控訴人の供述は,承諾の事実を真っ向から否定するのに対し,これに対する被控訴人の供述は,承諾の事実を前提にするものの,その具体性に欠けるきらいもないわけではないが,平成121120日,控訴人が被控訴人に宛てて送信した本件電子メールの文面は,「Y様:学会のときにちょっとお話しましたが,我々の共同論文2本(貴兄担当分と小生担当分)を,早いところ,どのジャーナルでも良いからpublishしてしまいませんか(高望みせずに)? publicationが宙ぶらりんですと,いつまでも貴兄の博士論文が出版できませんから。しばらくたっていますから,一度,お会いして,方針を決めたいと思いますが,ご都合は如何でしょうか。X」というものであって,被控訴人が本件博士論文を出版する前に,控訴人と被控訴人とで共同して本件各原著を出版することを提案しているものであって,その提案の前提として,被控訴人が本件博士論文を一橋大学に提出していることを理解し,かつ,本件博士論文が国立国会図書館等において一般の閲読に供されるものとなることを了承していたことも考慮に入れていることが,当該文面上から明らかであるばかりでなく,本件博士論文の提出については,控訴人に何ら異論がなかったことも明らかであるから,これをもってしても,控訴人において,被控訴人が本件博士論文に控訴人との共同研究に係る本件各原著を収録することを承諾していた事実を優に推認し得るものといわなければならない。
<平成220329日知的財産高等裁判所[平成21()10053]>

上記事実関係によれば,①東京放送は,○○社に対して本件オープニング映像の制作を依頼するに当たって,同映像に係る著作権処理をすべて済ませた物を納品するよう求め,○○社は,これを承諾して本件オープニング映像を制作し,東京放送に納品していること,②原告らは,本件オープニング映像用に本件楽曲を制作して同曲を○○社に納品し,本件楽曲が平成161月から「愛の劇場」のオープニング映像用のタイトルバックとして使用されていることを認識していたにもかかわらず,平成2012月までの約5年間,東京放送に対して本件楽曲の使用料を請求していないこと,③本件楽曲は,全体で7秒程度のごく短いものであり,○○社から原告らに支払われた20万円という金額は,「愛の劇場」のオープニング映像としての使用料を含むものであったとしても,特段不自然とはいえないこと,などが認められ,これらの事実に鑑みると,原告らは(原告Bについては原告Aを通して),○○社又は東京放送に対し,金20万円を対価として,本件楽曲を本件オープニング映像に使用することを許諾したものと認めるのが相当であ(る。)
<平成230324日東京地方裁判所[平成21()43011]>

上記の事情に加えて,餃子・焼売などの食品のパッケージに使用される図柄等は,当該食品の販売が継続する限り使用されることやその使用が長期間に及ぶことがあることは,一般的なことであるといえること,被告○○は,昭和2912月の設立以来,餃子・焼売等の惣菜の製造販売を業として行っており,昭和52年当時において,餃子・焼売の商品は被告○○の主力商品であったことを総合考慮すると,原告は,昭和52年ころ,本件各イラストの原画(本件原画)を基に着色をするなどして制作された被告イラストを被告○○が販売する餃子・焼売の商品のパッケージに印刷して使用することの承諾をすることにより,被告○○に対し,本件各イラストを被告○○が販売する餃子・焼売の商品のカートンに使用することについて,期間の制限なく,許諾したものと認めるのが相当である。
<平成240927東京地方裁判所[平成22()36664]>

原告は,被告らによる営業活動を全面的に支援して小動物用プラセンタ等の販売市場開拓を促進するために,被告会社との間で,被告会社に原告の資料やノウハウを提供して双方の事業の繁栄を図ること等の内容を含む本件契約を締結し,それに基づき被告会社に対して本件各物件を交付したこと,原告の交付した本件各物件の中には複製や加工等の容易なデータで提供したものも含まれていたこと,本件各物件に記載されている内容は,小動物用プラセンタ等の販売市場開拓を行うに際し必要又は有益な情報であること,また,本件各物件は,パンフレットやチラシ等,一般に公表することが前提のものばかりであり,これらの記載内容には既に広く知られた情報も多く含まれていた上,原告も本件各物件の内容を自らホームページに掲載していたから,原告自身これらの内容を広く公開して販売促進を図ろうとしていたものと考えられること,さらに,被告らが改めて原告に断ることなく被告サイトに本件各物件の複製等を掲載し,原告がこれを認識しながら特に異議を唱えていなかったことが認められ,これらの事情を総合考慮すれば,原告と被告会社の間においては,本件契約を締結して小動物用プラセンタ等の販売市場開拓を今後行っていくに際し,被告会社が本件各物件を複製したりホームページに掲載したりするなどして自由に利用することを当然の前提としていたものと認められるから,原告は,本件契約を締結するに当たり,被告会社に対し,本件契約期間中,本件各物件等を複製したりホームページに掲載したりするなどして自由に利用することを許諾していたものと認めるのが相当である。
<平成26828日東京地方裁判所[平成25()2695]>

本件インストールは,被告が,原告の一部門のような地位にある状況下において,原告と被告において共通のシステムを使うことにより発注業務等を効率化する目的でされたことからすると,原告の上記許諾はバージョンアップされた本件プログラム等の使用についての許諾も包含するものと認められる。
また,被告は,原告が本件インストールに係るプログラムの使用を問題とする態度を示した平成25年1月以降も,遅くとも平成25年11月まではその使用を継続したものであるが,企業で使用される業務管理システムを他のソフトウェアに移行するには相応の準備期間を要すること,本件インストールの許諾が,原被告間のそれまでの友好的関係を前提としたものであって,一定の継続的使用についての期待が生じていたことなどからすると,無償の許諾といえども,許諾者の撤回により直ちにその使用の継続が著作権侵害等を構成する違法なものとなるとみるべきではなく,上記のようなシステムの移行等のための相当期間内の本件プログラム等の使用は,なお使用許諾の範囲内のものというべきである。
<平成27528日大阪地方裁判所[平成25()10396]>

原告が,被告○○から,広告宣伝用の写真の撮影を依頼されて原告各写真を作成したこと,原告が,被告○○に対し,◇◇を通じ,「カタログ写真」の撮影代金として31万5000円を請求したこと,及び被告○○に対し,「写真は御社のものですので,どのようにご使用されてもよろしい」,「どのように使うかは御社次第」などと述べていたことからすると,原告は,被告○○が原告各写真を広告宣伝用として自由に利用することを前提として,写真撮影を請け負い,また,その成果物である原告各写真のデータを被告○○に交付したということができる。
そうすると,原告は,被告○○に対し,少なくとも広告宣伝目的においては,改変することや掲載する媒体の選択等も含めて自由に利用できるものとして,原告各写真の利用を許諾したと認めるのが相当である。
(略)
そして,広告の素材である写真の加工等を含む広告の製作や広告宣伝行為を第三者に依頼することは通常行われることであるから,原告は,被告○○が,第三者に指示をして原告各写真を改変させたり,原告各写真を用いた広告を頒布させることを想定した上で,被告○○に原告各写真の利用を許諾していたと認めることが相当である。
そうすると,被告△△が,被告○○の指示を受けて,△△誌に掲載する被告○○の広告ページの素材として,原告各写真を改変したこと及び改変した原告各写真を含む広告ページのデータを,△△誌の発行元であるセブン&アイ出版に送付した行為は,上記利用許諾の範囲内の行為というべきである。
<平成271120日東京地方裁判所[平成25()25251]>

前記認定の事実,とりわけ,①被控訴人の担当者が,本件書籍が○○書店が発行した「怪獣ウルトラ図鑑」の復刻版であることを明示した上で,控訴人に対し,原書籍に収録されたイラストの本件書籍における再使用についての許諾を求めたこと,②これに対し,控訴人は,原書籍に収録されたイラストの内容,あるいは本件書籍に収録される予定のイラストの内容について何らの質問も確認もすることなく,被控訴人に対し,本件書籍におけるイラスト使用許諾料の振込口座を指定し,その支払を受けたこと,③本件書籍は,○○書店が発行した「怪獣ウルトラ図鑑」(原書籍)の復刻版であり,原書籍に本件イラストが掲載されていたこと,④控訴人は,本件書籍の出版後,被控訴人から本件書籍の送付を受けたが,被控訴人に対し,本件イラストが掲載されていることについて直ちに異議を述べることはなく,かえって,自身のホームページにおいて,「Xの絵や図解も沢山掲載されています」などと本件書籍を積極的に紹介する記事を掲載していたこと,⑤控訴人は,○○書店の担当者から,本件書籍とは別の書籍におけるイラストの使用に関し連絡を受けたことを契機として,本件書籍におけるイラストの権利処理,特に,氏名表示の方法や使用許諾料の額について異議を述べるようになったものの,被控訴人に対しては,平成26年になって初めて,控訴人と○○書店との間のやり取りを伝えた上で,○○書店との間の問題を解決するための助力を依頼し,その際にも,控訴人が被控訴人に対しては2年前に承諾したことは認識していると表明していたことを総合すれば,控訴人は,遅くとも使用許諾料の振込先として控訴人名義の銀行口座を通知した平成24年2月5日には,被控訴人に対し,本件書籍における本件イラストの再使用について許諾したものというべきである。
<平成28629日知的財産高等裁判所[平成28()10019]>

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