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カネダ著作権事務所

著作権判例エッセンス

著作権等管理事業

本件行為【注:「参加人がほとんど全ての放送事業者との間で本件包括徴収による利用許諾契約を締結しこれに基づく放送使用料の徴収をする行為」のこと】が独占禁止法2条5項にいう「他の事業者の事業活動を排除」する行為に該当するか否かは,本件行為につき,自らの市場支配力の形成,維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものであり,他の管理事業者の本件市場への参入を著しく困難にするなどの効果を有するものといえるか否かによって決すべきものである(最高裁平成22年12月17日第二小法廷判決参照)。そして,本件行為が上記の効果を有するものといえるか否かについては,本件市場を含む音楽著作権管理事業に係る市場の状況,参加人及び他の管理事業者の上記市場における地位及び競争条件の差異,放送利用における音楽著作物の特性,本件行為の態様や継続期間等の諸要素を総合的に考慮して判断されるべきものと解される。
<平成27428最高裁判所第三小法廷[平成26(行ヒ)75]>

1審被告らは,自ら制作したオリジナル曲を演奏することは,1審原告に著作権管理を信託している著作者自身が許諾しているのであるから,不法行為に当たらないと主張する。
しかし,1審原告と著作権信託契約を締結した委託者は,その契約期間中,全ての著作権及び将来取得する全ての著作権を,信託財産として1審原告に移転しているから,1審原告管理著作物の著作権者は,1審原告である。そうすると,利用者が誰であっても,1審原告の許諾を得ずに1審原告管理著作物を利用した場合には,当該利用行為は著作権侵害に当たるといわざるを得ない。
このことは,著作権信託契約約款11条が,自作曲の自己利用に関し,著作物の関係権利者の全員の同意を得た自己利用(委託者がその提示につき対価を得る場合を除く。)については,あらかじめ受託者の承諾を得て,管理委託の範囲についての留保又は制限をすることができると定めていることからも,裏付けられるところである。
以上のとおり,演奏者が1審原告に著作権管理を信託した楽曲を演奏する場合であっても,1審原告の許諾を得ない楽曲の演奏が,1審原告の著作権侵害に当たることは明らかであり,1審原告には使用料相当額の損害の発生が認められるから,著作権侵害の不法行為が成立する。
(略)
仮に,1審原告が1審被告らに対し締結を求めていた包括的契約が違法なものであると認められたとしても,これをもって1審被告らの無許諾での1審原告管理著作物の利用行為が適法な行為に転化するということはできず,無許諾での利用に対する使用料相当損害金の請求や差止請求を制限すべき理由に当たるということもできない。
この点に関し,1審被告らは,最高裁平成27年4月28日第三小法廷判決を引用して,上記判示は,ライブハウスにも当てはまるものであり,1審原告が,1審被告らに締結を求めていた包括的契約は独占禁止法に違反する違法なものであるから,本件各請求は権利濫用に当たり許されないと主張する。
しかし,独占禁止法違反であるからといって,直ちに私法上の効力が無効であると解すべきではないし(最高裁昭和52年6月20日第二小法廷判決参照),1審被告ら引用の上記判決は,1審原告が,ほとんど全ての放送事業者との間で,音楽著作物について包括許諾による利用許諾契約を締結し,その金額の算定に放送利用割合が反映されない徴収方法により放送使用料を徴収する行為が,他の著作権等管理事業者の事業活動を排除するものであると認めたものであって,同判決は,ライブハウスに対する包括的利用許諾契約がおよそ違法であると判断したものではないから,本件とは事案を異にし,同判決の判旨が本件に影響するものでないことは明らかである。
したがって,1審被告らの上記主張は採用することができない。
(略)
1審被告らは,1審原告による利用許諾の拒否を前提とする差止請求には理由がない旨主張する。
しかし,本件の差止請求は,1審原告と1審被告らとの間で1審原告管理著作物に係る利用許諾契約が締結されていないことを前提としており(なお,1審原告による利用許諾が双務契約によりされるものであり,契約の成立には当事者双方の意思の合致を要することは,前記のとおりである。),1審原告による利用許諾の拒否を前提としているものではない。
もっとも,著作権等管理事業法16条には「著作権等管理事業者は,正当な理由がなければ,取り扱っている著作物等の利用の許諾を拒んではならない」と規定されていることからすると,1審原告は,利用者からの利用許諾の申入れを正当な理由なく拒否できないから,1審被告らが,使用料規程に定められた方法において許諾の申込みをした場合には1審原告はこれを拒否することができないというべきであって,1審被告らは,1審原告との間で,容易に,1審原告管理著作物に係る利用許諾契約を締結することができ,契約締結後は,同契約に従って1審原告管理著作物を利用できるはずである。
ところで,1審被告らは,1審原告が,「1審原告管理著作物1曲の使用につき140円を1審被告Y1が本件店舗におけるライブの出演者から徴収してその積算額を1審原告に支払い,1審原告がこれを正当な著作権者に分配する」という内容の許諾の申入れに応じなかったことをもって,1審原告が利用許諾を拒否していると主張しているものと解されるが,上記方法は,使用料規程に定められていない方法であるところ,1審原告が,文化庁長官に届け出た使用料規程に定められた方法以外の方法による契約の締結に応じないことは,事務処理の煩雑性を回避して手数料を低廉に保つために必要な合理的な措置であると考えられるから,1審原告には,許諾の申入れを拒否する正当な理由があるといえる。
1審被告らは,使用料規程に「社交場における演奏等のうち,利用の態様に鑑み本規定により難い場合の使用料は,利用者と協議のうえ,本規定の額の範囲内で決定する。」という記載があることから,1審原告は,使用料規程によらない方法での申込みも受諾すべきである旨の主張もしているが,上記規定の文言に照らすと,同規定は,1審原告管理著作物の「利用の態様」が,通常の社交場等における利用の態様とは異なるために,使用料規程に定められた方法を適用することが相当ではない場合に対応するための例外的な規定であると考えられるから,同規定が存在することをもって,1審原告が利用者に対し,当該利用者が希望する使用料規程に規定される方法以外の方法において,利用許諾をすべき義務があるということはできない。
<平成281019日知的財産高等裁判所[平成28()10041]>

著作権等管理事業者は,正当な理由がなければ,取り扱っている著作物等の利用の許諾を拒んではならない(著作権等管理事業法16条)。同法は,管理事業者の登録制度や委託契約約款及び使用料規程の届出・公示等により,著作権等の管理を委託する者を保護するとともに,著作物等の利用を円滑にし,もって文化の発展に寄与することを目的とする(同法1条参照)。そして,著作権者は利用許諾をするか否かを自由に決定できる(著作権法63条1項参照)ことも考慮すると,上記条項にいう「正当な理由」の有無は,著作権者(著作権の管理委託者)の保護と著作権の円滑な利用という法の趣旨を勘案して,許諾業務が恣意的に運用されることを防ぐという観点から判断すべきである。
被控訴人協会は,過去の管理著作物を許諾なしに利用した者から利用許諾の申込みがあった場合に,過去の著作権侵害行為に係る使用料相当額を放置したまま利用許諾することは,管理著作物の利用許諾を受けて使用料を払っている誠実な利用者との間の公平を欠くとして,昭和22年ごろから,過去の管理著作物の無許諾利用に係る使用料相当額の清算を利用許諾の条件としている。このような場合にも利用を許諾しなければならないとすると,許諾を拒んで爾後の使用を違法ならしめることにより,過去の侵害行為に係る使用料相当額の損害填補を事実上促進するという効果が失われることになるから(著作権法119条参照),著作権者の利益に反すると解され,また,管理著作物の利用許諾を受けて使用料を払っている誠実な利用者との間の公平を欠くため,著作権の集中管理に対する信頼を損ない,これによる著作権の円滑な利用を害するおそれがあり,このような場合に利用許諾を拒んでも,許諾業務が恣意的に運用されるとはいえない。したがって,被控訴人協会の上記取扱いは,著作権等管理事業法16条の趣旨に反しないというべきである。なお,このような取扱いは正当な財産権の行使であって,表現の自由を考慮に入れるとしても,公序良俗に反し違法とはいえない。
本件についてこれをみると,控訴人は,本件店舗の開店以来,被控訴人協会と音楽著作権の利用許諾契約をしたことはなく,自らその申請をしたこともなく,被控訴人協会は,遅くとも平成16年5月14日以降,控訴人に,過去の著作権侵害に対する損害金の支払と利用許諾契約の締結を求めたが,控訴人は,仮執行宣言付判決に基づく支払を別として,これに応じていない。そして,本件店舗では開店以来継続的に管理著作物が演奏されていたと認められる。このような事情によれば,控訴人から利用許諾の申込みがあった場合に,過去の管理著作物の無許諾利用に係る使用料相当額の清算を利用許諾の条件とすることは,著作権法等管理事業法16条の趣旨に反しないと評価できる。
これに対し,本件店舗で管理著作物を演奏しようとする第三者が利用許諾の申込みをした場合に,控訴人も利用主体と認められるという理由で利用許諾を拒むことは,当該第三者の管理著作物利用を過度に制約するおそれがあり,また,著作権者の利益という観点からは,控訴人に対し過去の使用料相当額の清算を促すという点では間接的である一方,当該利用許諾をすれば得られたはずの使用料収入が得られないという不利益もあるのであって,第三者が利用許諾の申込みをした場合に,被控訴人協会が,控訴人による清算を利用許諾の条件とすることは,同法16条の趣旨に反し許されないと解される。
しかし,本件店舗で管理著作物を演奏しようとする第三者からの利用許諾を被控訴人が拒んだことにより,控訴人が被った信用の失墜,営業損害についての具体的事実及び損害を認めるに足りる証拠はない。
<平成200917日大阪高等裁判所[平成19()2557]>

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