僧堂日記


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【入門物語3】旦過詰一日目
 yo-san  - 03/10/6(月) 11:42 -

引用なし
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   旦過詰一日目

こんなに辛いのは夢ではないかとそう信じたいことがある。
そう夢だったのでは

また震鈴の音が近づいてくる。
チリチリチリチリ・・・・・・・・・・・・・
「御願いいたします開静御願いいたします。」

やっぱり夢でなく現実だ、昨日と同じく布団を丸めて着替えをする。
マシンガンのような朝課と変な叫び声を聞いて(笑)粥座である。 恐い、また大勢が見てる前で食べないといけない、タクでお経が始まる 飯台看(はんだいかん、給仕役)が粥を注いで回る。自分の前に来た 親椀を手に乗せて注ぎ始めたら素早く手を滑らせてく切る、余り多く注がれると また速く食べれないからだ、お経も一緒に読まないといけないのだが 読めない、また適当に口だけ動かす(そういえば小学校のクラスで笛の発表会の時も 指だけ適当に動かしていた)お経と給仕が終わりタクの音で食べ始める。 既に昨日の経験から箸で食べるというのは無理があることを悟り箸は持ったままで 粥を飲むそして上澄みの湯を飲むと数粒の米が残るそれを箸で口に椀から落とす。 その時間約1分、口の中がやけどしたみたいに痛い、早く食べ終わったので前を見る みんな余裕の顔で食べてるし粥も一杯注いでるはずなのにもう食べ終わってる人まで居る まだ食べてる人もどうやら自分たちに食べるのを合わせてくれてるみたいだ。 ここで一つ学習したことそれは「粥は食べるに有らず、飲む」だ、そうすれば 箸の音も立たないし早く飲めるしかし音がするのですすってはいけない 口に流し込むのだ。しかし前を見ているとみんなこっちをにらみつけ始めた「やばい」 必死で目をそらせる。2杯の粥を食べ自鉢も取りあえず洗う、自鉢同士がぶつかりカチッ と音を立てる。
「うるさい!!」怒鳴られる。 恐い〜、そう思うと余計に手が震える、カチャカチャ余計にうるさく音が鳴る。

「うるさいといってるだろ〜静かに洗え」

また怒られる。
緊張感がその場を支配する。でも手のふるえは収まらない・・・・・ 何とか洗鉢を終わらせる、もう他の人たちは待ちくたびれてるようだ。 お経が始まり自鉢をかたずける、「もう終わりだ」そう思った。 お経が終わり退室のためにみんな一斉に立つ、なんと足がしびれて動かない みんなが立ってるのに自分だけまだ立てない、何とか必死で立つが今度は 歩けない!足を動かしびっこをひきながら何とか退室、「御願いいたします 粥座ありがとうございました」低頭中も動きはぎくしゃく、旦過寮に戻り 戸を閉めてから寝ころびもがき苦しんだ。なんか一日がもう終わったかと思うくらいだった。 しかしここからが本番だ、旦過詰めする者は日典掃除(にってんそうじ)を手伝うのだ。
着物にたすきをして腰上げをして頭にタオルの格好で掃除を手伝う しかし一生懸命に掃いてるのだが気が付くと私たち以外の一行は 既にずっと先に進んでいる。そっちに行きまた掃き始めるまた一行は ずっと先に進んでいる。これじゃ手伝うではなく足をひっぱてるだ。 事実ゴミ取り係りからすれば良い迷惑なのだがそれは参堂後、以降の 旦過詰めにより身を持って思い知ることになる。 そんなわけで早めに掃除を終わらされる。なにせ新到参堂するまでは これでもお客様あつかいなのだ、それに居ない方が掃除がはかどるのだ。
今日からは旦過詰めだ、ただひたすら坐禅をする。 晴れてるので窓と戸は開け放たれる坐り方を聞いて 半跏で坐ってみる10分もしないうちに痛くなってくる、 しかたないので足を組み直すまたすぐに痛くなってくる。 そうこうしてるうちに坐ってる時間よりも足が動いている 時間のほうが長くなってくる。
東司に行こう、すぐには立てないので足を延ばしマッサージ をしてから東司に行く、すると他の二人もまたきた。 連れションの好きなやからである(笑) 一息着いてまた坐り始める今度は眠い・・・ 気が付くと寝ていた足なんか既にのびきっている やばい見つかると怒られる、また坐りなおす、が寝てしまった。
ツンツン!!隣につつかれて起きる、雲板がなったのだ斎座だ なにせ朝は粥という名の湯なのでお腹はペコペコだでも恐怖の 飯台座が待っている。案の定量よりスピードを狙って余りよそらずにすます。 2回目などはみんなよそっているのだがよそるふりだけで済ます そして食べてるふりをする。今度はなんとか沢庵を残して赤椀だけは洗えた しかし実は次に少しご飯を残しておきそれに湯をかけお茶漬けを食べる儀式が あったのだ、もちろんご飯は全部食べちゃった、しかたなく湯だけ飲む 、その後洗鉢するのだがまた音がして叱られる、そして一日中坐りっぱなしだったので 足はしびれが切れて痛い、しかし低頭後、旦過寮は開け放たれてるので もがき苦しむことはできなかった。後はまたひたすら坐る。 これからの不安が頭をよぎる、さすがにお気楽には生活は出来そうもない。 目の前の戸になにかが来た、りすが来たのだった戸の所に止まって こっちを見てるこっちもりすを見るお互いに目を合わせたまま動かない 目がきょろきょろとしていてかわいい思わず笑みがこぼれてしまう。 のちに誰もがこのりすの励ましを受けていることが分かるが、事実 それは我らには励ましなのだ。 そのうちありとあらゆる音が耳に入ってくるささいな音も気になる。 足は痛いし、暇だしこれもきつい、ひたすら坐るただそれだけなのだ。 これを3日間もしないといけないのだ。
遠くでお経が聞こえる晩課だ、人がきてもう閉めて良いですよ という戸を閉める、戸を閉めても坐ってないといけないのだが もうあしが痛くてしょうがない足を延ばしてマッサージする。
夕食はまたおじやだ、でも旦過寮で食べれる。山盛り3杯 のおじやをぺろりと食べる、鍋を洗った湯も美味しく感じる。 鍋を洗い典座に返す「御願いいたします薬石ありがとうございました」 すると「ちゃんと洗ったか?昨日は汚かったぞ」と怒られる。 (それでもこれくらいではお客様扱いなのだ)
後は旦過寮で少し話をする一人でなくて本当に良かった。 昨日は雨だったから窓は閉め切ってたという話は実にうらやましかった。 さっき食べたばかりなのにもう腹が減る、腹減った〜と言う話になる。 そうすると一人がチョコレートを隠し持っていて分けてくれた、 うまかったな〜あのチョコの恩と味は未だに憶えてるしきっと 一生忘れないだろー そして開枕明日も同じ一日だと思いながら気絶するようにすぐに寝る。

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【入門物語3】旦過詰一日目 yo-san 03/10/6(月) 11:42
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【入門物語5】旦過詰三日目 yo-san 03/10/6(月) 11:44
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