6日目 ジャスパーの長〜い一日 by Mik
午前中にウィスラーマウンテンへ、午後はパトリシア湖で乗馬
さらに夜は野生動物探索
名物ウィスラーマウンテンのゴンドラ(トラム)に6日目にしてやっと乗ることになった。「ゴンドラに乗るにはオープン間もなくの朝早くか、夕方4時過ぎ頃が混んでなくていいですよ。」という先日のガイドの方のアドバイスに忠実に従って私たちがゴンドラ乗り場の駐車場に着いたのは朝8時半過ぎ頃。お客はまばらなのですぐに乗れそうだ。料金は一人16ドル。空模様はというと、雲に覆われてはいるが、薄く日射しがあるので晴れてきそうな予感がする。乗り込むと、若いお兄さんがいろいろと説明をしてくれる。初めは町並みや遠い山脈が見え隠れしていたのだが、程なく真っ白な霧というか雲というか、とにかく視界ゼロの空域に突入。360度のパノラマは大丈夫だろうかと心配になる。
下界での予感とは裏腹に頂上付近の気候は思わしくなく、寒いし雲はあるし何も見えないしで見事に期待を裏切られてしまった。ま、こんなこともあるさ。天気はいいに越したことはないけど、悪くても天気は天気。それもまたロッキーの自然の一部だと思いつつ、時折雲の中に見え隠れする幾つもの湖の水の青さを目に焼き付けて下界へ降りた。正直言ってお天気が悪いため寒かったのだ。正午近くであったが、乗り場は既にゴンドラを待つ人々の長い列。早く登ってよかったな、と思ったのだった。
今日の体験その2は、乗馬。2年前バンフで1時間の乗馬を初めて経験して以来2度目。ホースライディングのおウマちゃんはちゃーんと前を歩くウマの後ろにくっついて歩くよう訓練されているので心配はほとんどいらなかった。私が乗った馬なぞは常に前の馬のお尻に鼻をタッチさせて歩いていた。馬って賢いものだ。今回も1時間のコース。近くのパトリシア湖周辺を歩くことになるはずである。
ところが今回ピラミッド・ライディング・ステーブルで乗った馬ときたら、それはそれは食いしん坊なのだ。歩いている間中常に草を求めてあっちふらふら、こっちふらふら。素晴らしい景色を堪能するどころか、馬の道草にハラハラ、ヒヤヒヤのし通し。馬にも一応、前を行く馬について行かねば、という義務感はあるらしいので、道草食って後れをとったと感じるやいなや私の馬(バディという名だった)は速足になるのだ。しかも、コースは時々アップダウンのあるコースだったので、下りで速足になったりすると、私の心臓はもうバクバクになってしまう。30分位経ったときには緊張がピークでまだ後半分あるのか、とちょっと泣きたい気分だった。でもようやく馬の動きのリズムに自分の上半身の動きを重ねればいいのだ、と気づいたら後はとても楽だった。また、私の手綱の持ち方もちょっと長すぎたのだ。手綱は短めに握る、馬が変な方を向いたら強く手綱を引いて引き戻す、これが肝心だ。ガイドのお姉さんがいろいろ解説してくれるのもちょっと離れていたため聞きづらく、その意味でも楽しめなかったという部分はあるが、アップダウンがあった分風景の素晴らしさは想像以上だった。日射しは強いのに、身体のすみからすみまで風が渡っていくような涼しさ。様々な緑に彩られた林と湖を縫って馬で闊歩する爽快感。やはりやみつきになりそうだ。
今日の体験その3は野生動物探索ツアー。私たちはレンタカーを借りているのでいつでも自由に動き回れるのだが、ガイドツアーに参加すれば野生動物ウォッチングの穴場に連れていってもらえるのではないかと期待して申し込みをした。実際は二日前に行ったマリーン湖へ連れて行かれただけではあったが、ガイドの方の面白い話や情報を耳に入れることも役に立つので私たちは結構楽しんだ。何より真っ暗な闇の中、慣れない右側通行運転をしなくてもいいというのは気が楽だ。そしてこの日、闇に覆われつつあったマリーン湖のほとりで、私たちは幸運にも大きな雌のムースに出会うことが出来たのだ。
湖についてすぐ、遠くで何か動くものが見えたので近寄っていったのだが、Watsは見つけられずに後戻りしていた。ところが同行したご夫婦の奥さんのほうが草むらの中にすっぽりと身体を沈ませて休んでいるムースに気づき静かに近づいていったのだ。ムースは静かに座っていた。私たちが近づいても全く動じることなくただ静かに座っていた。顔立ちは馬そっくり。人間を見たら一目散に逃げてしまうのではないかと心配だったが、ムースはただじっとしているだけ。弱い茜色の残光の中でのんびり一日を振り返っているかのようなムース。わずか4〜5メートルの距離でムースと対面し、しみじみとジャスパーの自然の豊かさを実感した。わずかな時間とはいえ、野生動物の生の一部をこうして目の当たりに見られただけで私たちは興奮のるつぼだった。お互いに、こんなに野生動物に出会えるなんて超ラッキー!と心の中で歓声を上げていた。
そして最後に今日のおまけ、それはオーロラ観測!私たちはオーロラを見ようと深夜のジャスパーを徘徊したのだ(車でだけどね)。というのも、野生動物探索ツアーのガイドの方が「最近よくオーロラが見られるよ」などと言われるものだから、これはぜひぜひ見てみなければソン、と意気込んだのである。結果から言うと、残念ながらオーロラには巡り会えなかったのだが、夜空を見上げた私たちは、あまりの光景に息を飲み込んでしまった。大空を埋め尽くす星、星、星、・・・・・そしていくつもの流れ星。絶句。あんなに素晴らしい星空を目にしたのは初めてだ。北海道で見た星もこれほどではない。もう、この素晴らしさはうなるより他にはない、と心から思った。