保科正興の塚 阿賀町



🔗媛姫毒殺事件

会津藩家老職にあった保科正興は政争に破れて失脚、貞享3年(1686)にこの地会津藩領鹿瀬町日出谷水沢(現阿賀町日出谷)へ流された。
万治元年(1658)、 藩主保科正之の継室となったお万の方(聖光院)の長女媛姫が上杉家に嫁した後、側室の子である四女松姫が格上の前田家に嫁したことを許せず、松姫を毒殺しようとするが、媛姫が誤って毒を飲み死んでしまう。媛姫は急病死とされた。
藩主正之は 会津家訓(かきん)15カ条を定めた際、第4条に「婦女子の言、一切聞くべからず」という項目を入れ、女性が政治向きに口を出すことを固く戒め、お万の方とは距離を置いていた。
しかしこの事件の後もお万の方は、2代藩主正経の生母として、藩政に絶大な影響力を保った。この専横に対し、反対する派閥と正興の派閥との間で政争となった。正興は藩主保科正之の養祖父保科正直の弟保科正勝の孫で、27歳のとき家老職となり、お万の方(聖光院)の姪を妻として、お万の方の意向を受けて藩政において重きをなしていた。
しかし、天和元年(1681)2代藩主正経が隠居し、異母弟正容が3代目藩主となると、お万の方の後ろ盾が無くなった。
政争に敗れた正興は、お万の方(聖光院)の専横を阻止できなかったとして37歳のとき、突如家老職を解かれ国許会津に蟄居を命ぜられ、貞享3年(1686)に全知行を召し上げられるとともに罪人として水沢の地に流刑となった。

水沢の高松家に流刑となったのち、村人から「民部さま」と呼ばれ親しまれた。正興が謹慎した高松家には辞世の歌と言われるものが残る。
( )たるひ ( ) ( )たへとくら ( ) ( )つのよ ( ) ( )つかせをち ( ) ( )すらひのお ( )
には秘められた言葉が隠されている。

その後許されることなく、元禄2年(1689)8月に死去。享年43歳。墓は高松家の裏山、地元では「さすらいの丘」と呼ばれる地にある。
現在の墓石は後世建立されたもので、以前建てられたと思われる旧墓石は十字に切断され、現在も地面に倒れたままとなっている。藩政を乱した罪人にたいする、追及のきびしさがうかがわれる。







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媛姫毒殺事件

会津藩主保科正之は正室菊姫が亡くなった後、側室於万の方を継室とした。於万の方とは仲睦まじく4男5女設けた。ほかにお志保の他4人の側室がいて6人の子をもうけ、合わせて15人の子だくさんであった。
於万の方の長女媛姫は承応2年(1654)、将軍家の仲介で米沢藩3代目上杉綱勝に嫁いでいた。
万治元年(1658)、将軍家の命令で側室お志保の方の子松姫(10歳)が、加賀藩100万石の藩主前田綱紀(15歳)の正室として嫁入りすることとなった。
婚礼は7月26日と決まった。その前日、於万の方の計らいで、江戸の会津藩邸で、松姫嫁入りの祝宴が開かれることになり、上杉家に嫁いだ媛姫も里帰りし出席することとなった。
かねがね、側室の子が自分の産んだ子より格上の大名に嫁ぐことを苦々しく思っていた於万の方は、この機会を利用して、松姫を毒殺しようと計画する。
松姫のお膳に毒を仕込んで殺害するよう家臣に命じた。松姫の前にお膳が置かれようとした時、何となく胸騒ぎを覚えた松姫付きの老女野村が、媛姫より先にいただいては失礼になると、そのお膳を媛姫の前に置いてしまった。
毒のことなど一切知らない媛姫はそのお膳に箸をつけた。その夜、米沢藩邸に帰った媛姫は猛烈な腹痛に襲われ、翌々日の28日ついに亡くなってしう。18歳という若さであった。
死亡の原因が毒殺であるということを知った正之は、関係者を処罰したが、首謀者の於万の方は2代藩主候補正経の母ということで、罪は負わせられなかった。しかし正之は存命中は於万の方を遠ざけていたという。
正之にとって媛姫事件の後遺症は大きく、のちに家訓を定めたとき、第4条に「婦女子の言、一切聞くべからず」という項目を入れ、女性が政治向きに口を出すことを固く戒めた。また、迷惑をかけた上杉家に対しては、何かと心を砕いていたという。
特に、米沢藩上杉綱勝は媛姫の死亡後、継室を迎えるが、寛文4年(1664)閏5月7日に嗣子なく、世嗣も指名しないまま急死する。享年26。本来ならば上杉氏は無嗣子断絶となるところであったが、保科正之の仲介で、綱勝の妹富子が嫁いでいた高家吉良義央との間に産まれたばかりの長男三之助が末期養子として綱勝の跡を継ぐことで家名断絶を防ぎこれを救っている。
吉良義央は後に江戸城内で浅野長矩により刃傷を受け、赤穂事件の一方の当事者となった人物である。

余談ではあるが戊辰戦争時、米沢藩は会津藩と新政府軍の間に立って仲介に努めたが、これは米沢藩がかつての保科正之への恩義があったからといわれている。その行動はかえって新政府軍から疑いの目を向けられる結果を招き、奥羽列藩同盟に参加することとなった。


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