同窓会

 四年に一度開催される中学の同窓会は、大晦日の朝から降り始めた大雪でキャンセルが相次いだが、幹事は冒頭の挨拶でそのことをひとしきり残念がったあと、

「実は…」

 と言いよどみ、二人の同窓生が亡くなったことを報告して一分間の黙祷を提案した。

 五十七歳…。誰が死んでも勿論思いがけないが、懐かしい級友の名前が物故者として報じられると、それはいかにも唐突だった。

 一人は女性で、クモ膜下出血だった。小学三年生の頃、数人が集まって彼女の家でかくれんぼをしたことがある。広くもない家には身を隠す場所といってなく、

「よし!スカートとズボンを取替えっこしてカーテンの向こうに隠れよう」

 私の言葉に従って、彼女は素早く腰から下を私のものと取り替えてカーテンの後ろに並んだ。

 カーテンの裾からのぞく足の様子で鬼は判断を誤って、作戦はまんまと成功したが、大笑いをした後で再度互いの衣服を取り替える段になって、にわかに得体の知れない気恥ずかしさに襲われたことを覚えている。

 もう一人は男性で、仕事上の悩みによる自殺説が囁かれた。舐めると色の変わるビー玉大の飴玉を一度に大量に頬張って、しばらく口中で転がしているが、やがて色とりどりに変化した飴玉をガバッと手のひらに取り出して見せるのが特技だった。保育園の頃である。

 二人ともしばらく会わないまま、二度と会えなくなった。黙祷を終えて酒盛りになったが、誰も二人の話をしなかった。そのことが同窓生の死の重さを物語っていた。これからの同窓会は黙祷で始まることが多くなる。黙祷を捧げられるのが自分ではないことを祈る一方で、誰もが自分かも知れないことを覚悟した。

 宴たけなわを見計らい、幹事たちがステージで賑やかに郡上節を歌った。会場狭しと輪になって踊る級友たちの顔は、昔の面影を留めたまま、それぞれに年を取っていた。