村上の鮭 Murakami salmon 村上市



村上の鮭 青砥部平治

塩引き鮭

雪景色の中、家々の軒下に塩鮭が連なる光景は、越後村上の冬の風物詩。朝日山地を水源とし、西流して村上市で日本海に注ぎこむ三面川は古くから「鮭の川」として知られ、土地の人々は鮭を「イヨボヤ」(村上の方言でサケのこと)と呼んできた。
三面川に生まれた鮭は、北大西洋で育ち、4~5年後に産卵のため、再び生まれた川を目指す。川にはそれぞれ土地固有の有機物・無機物が溶け込んでおり、鮭は臭覚で自分の生まれた川を識別していると言われている。
冬季に日本の各河川の母川で生まれた鮭の稚魚は、しばらく母川河口流域でくらし、寒流が戻る初夏までにはオホーツク海へ回流して1年目はそこで過ごす。
2年目からベーリング海とアラスカ湾を回遊しながら肥育し、体が成熟する4年目に千島列島沿いに、日本海側の各河川へは宗谷海峡を南下し産卵のため生まれた川を目指して戻ってくる。鮭は、海洋で生活して川へ戻ったもののうち、平均的に90%以上が母川支流へ帰るといわれている。
日本海から、対馬海流を遡って三面川に辿り着くまで、その距離2万km。
三面川の鮭はダイレクトに川に戻るのではなく、一旦沖合いを通り過ぎてから、新潟沖,或いはその先で反転して、沿岸を北上し、主に川の匂いを探しながら三面川まで達しているとされている。
三面川の鮭は、日本の鮭の中で最長とも言われる回遊距離が、脂肪が少なく身の締まった鮭を育てるのだ。
この鮭の味をさらに引き立てる「塩引き」は、江戸時代より行われている村上独自の加工法である。塩引きづくりが始まるのは、11月中旬。5~7㎏の雄鮭だけを選んで新鮮なうちに腹を裂いて内臓を取り除き水洗いし、天然塩をひく。約1週間後、塩を切って再度水洗いし、尾を上にして梁に吊るす。こうして約1ヶ月、風干し発酵させて完成する。
この旨みを引き出すのが、村上独自の地形。海と山とに挟まれたこの地の冬は程良い風と気温0~8度、湿度70%前後の気候が続く。日本海からは北西の季節風が吹きつけるが、村上の北には海岸線沿いに低い山が連なるため、強すぎず弱すぎず、風干しに最適の風となる。また湿度が低すぎると、ただの干物になってしまうが、逆に80%以上の多湿地域では、旨み成分が発酵しないうちに腐敗してしまう。塩引き鮭は、まさにこの地でしか生まれえないといわれる。数ある村上の鮭料理の中でも、例年大人気を誇るこの塩引鮭こそは まさに「村上ならでは」の逸品といえる。
この塩引き鮭を、さらに約1年風干し発酵させ、固くなった身を酒にひたして食するのが「鮭びたし」。
今なお鮭の里として知られる村上は、内臓を使った「なわた汁」や、心臓を焼いた「どんびこ」など、百種以上もの伝統の鮭料理法で、鮭を頭から尻尾まで、身はもちろん頭や内蔵、中骨や皮に至るまで捨てることなく味わい尽くしている。

千年鮭 きっかわ

嘉永3年(1850)創業のきっかわは、三面川の鮭漁場入札にも携わっていた老舗。



鮭の酒びたし

村上は塩引鮭が有名で、この塩引鮭とは新巻鮭とは違い、鮭を塩づけしたままでなく1週間位塩漬けしたのち、5時間位流水につけ塩抜きしてから、頭を下にしてつるし寒風に2・3日あて、乾かして仕上げるもの。
この塩引鮭を軒に下げて7月まで干しておき、毎年7月6日・7日の村上大祭に村上の地酒にひたして柔らかくして食べるものが、鮭の酒びたしという。新潟県の海岸部でも村上は北部にあるので、気温が低く風も強いのです。この気温と風の強さが村上の珍味「鮭の酒びたし」をつくりあげる。

≪製造販売会社≫



特上塩引鮭 切身

村上地方の「塩引き」はモノが違う。三面川という鮭の好漁場に恵まれ、古くから鮭をいとおしみ、大切に味わうためにさまざまな工夫を施してきた村上の人々。
(株)又上は、加工品の美味しさはその8割が原料で決まると考える。残りの1割は、塩や味噌や醤油など調味料であり、原料をさらに美味しくする引き立て役だ。そして、最後の1割はこの土地の気候風土を生かす工夫と技からなっている。
火にかけると身肉はぷっくりもりあがり、皮と身の間では脂がじりじりはぜてくる。焼き立てを皿に盛り、箸ではらりとくずして口に運べば、バッチリ効いた塩味の向こうから、じんわり広がるみずみずしいうま味がたまらない。



鮭の生ハム

11月下旬、時雨模様の天気が続き、北西の季節風が吹き始めると、塩引き鮭作りが始まる。下処理した鮭に塩を引き、室内で陰干しにして、小窓から呼び込んだ風に当てながらじっくりと乾燥、発酵させていく。
村上の町には、北に位置する山脈があるため、絶妙の季節風が吹く土地柄で、独特の発酵環境が生まれ北西の風を受け塩を引いた鮭が美味しくアミノ酸発酵を起こすという。

鮭の生ハムの作り方は、基本的に塩引きと同じだが、ある程度乾燥した所で進み過ぎないような状態にし、低温で熟成を深め、まろやかな味わいに仕立てていくのが工夫だという。また仕上がりの見極めが難しく、熟成が長ければ塩がきつくなり、早ければうま味が足りなくなる。
うま味と塩加減が絶妙なバランスを保ったまろやかさは、塩引きの伝統を支える村上の風土と、子供を慈しむような思いがあって生まれる味なのだ。
その口に広がるふくよかな味わいは「こんな味わい初めて」「これはすごいね」など、大勢の方々から高い評価を受けている。







鮭の酒びたしの宿


鮭の酒びたしの店
なな草
なな草(古町)

新潟地場もん 越たんたん 新潟駅前店 (新潟駅前)

穏坐 dining オンザダイニング (新潟駅南口・けやき通り)

ホテルオークラ新潟 や彦 (新潟古町)























鮭とごはんの組み立て方

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  • 作者:佐藤 友美子
  • 出版社:誠文堂新光社
  • 発売日: 2021年05月25日頃

年取りと正月の料理

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  • 作者:日本調理科学会
  • 出版社:農山漁村文化協会
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恋しるこ

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  • 出版社:角川春樹事務所
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鮭の酒びたし