自然と野鳥たちの四季 のようにのように〜
 

 

2001年2月道東撮影日記

2/9〜2/15

ああ〜ぁ、不景気の波をもろに受け今回の道東行は超緊縮型、日程予算共々かなりの自粛切迫型なのである。それでもおいらは行ってしまう。ああ、何故にそうまでして行くのか行かねばならぬのか?この旅の先には・・・・・何も見えんぞォ、今回は。
 
2月 9日(金)晴れ

  岡山から新幹線で名古屋に向かう。釧路へ入るなら名古屋発のJAS、空の便がなかなか都合が良く、最近は毎回このコースを取る。ところが今年は「早割」が廃止され、ならばやむなし一週間の往復割引、緊縮予算と相まってコンパクトな道東行と相成った次第であります。それにしても携帯でメールの若者、マナーもへったくれもないクソガキがいるものだ。日記の初っぱなから言葉が悪いけど、新大阪から乗り込んできたサラリーマン風の若い二人連れ、小生下りる名古屋まで延々やりおって、よ〜みんな我慢しとるもんだねえ。馬鹿ガキどもめ、親はどんな教育したんだ!まったく!
 ところで早6年目になる僕の携帯、もちろんメールのメの字も送れない携帯。この旅の出がけに娘たちから、「そんなの持ってて恥ずかしくない〜」などと言われたものだから、それまで意識さえしていなかった空港の所持品チェックで、ポケットから取り出すのが極度に恥ずかしく思えてきてしまった。早、帰りの空港チェックのことまで気になっている始末である。
 不凍港と言われる釧路港が14年ぶりに凍りついてしまうほどの今年の冬である。港沖に流れ出ている流氷を眼下に見ながら、定刻より5分早く釧路空港着。2月生れの僕には有難い誕生月割引(4割引!)のあるオリックスレンタカーでカローラ四駆を借り受け、一路鶴居村へ。15時30分着。何とまあどえらいホテルになったもんだで「民宿泰都」。主人の和田さん(有名なタンチョウ写真家の和田さんです)、パイプでも燻らしながら出てくるんじゃなかろうか、そんな雰囲気である。温泉を掘り出し、昨年暮れに「ホテル泰都」として新装のオープン。温泉のみ利用の客も多そうで、以前よりは盗難への注意も要るかもしれない。クロネコで一足先に到着していた荷を捌き、早速渡辺トメさんの給餌場へ出入りするタンチョウの飛行を狙いに出掛ける。いきなり昨年の旅で出会ったキンカン君と鉢合わせ。彼も本日北海道入りという。尾岱沼(野付半島の近く)ではすでに、ガキ大将T氏や流氷どぼんジーサンM氏が顔をそろえ、ニコン氏もまもなく加わるらしい。僕の旅にとって、T氏やM氏たちは童話の世界の登場人物なのかもしれない。
 そんなわけで(どんなわけで?)悪ガキたちの顔がちらつきだしたせいで本日の撮影はまったくのバツ。早くもペンタ645の調子が悪い。泰都に帰り夕食。コック長は和田さん自身。これは僕の個人的考えだが、厨房は誰か任せる人を雇い、和田さんはもっとオールマイティーに動き、撮影に指導に時間の多くを割いた方が良いように思う。若干唯一の弱点、食事の人気も上がるのではと・・・要らぬお世話で和田さんゴメンね。
 もちろん部屋は感激ものの行き届き具合、そして何より温泉がいい!特に露天風呂が最高にいい!ややぬるめだけど泉質も素晴らしい!何と言っても眩いばかりの星空を見上げながらの露天は最高に近い。「近い」と言うのは熱めが好きな僕にとっては幾分ぬるめだからだが・・・外気温マイナス5度位か。いい、とにかくいい!(それにしてもこの辺の人はみんな筋肉質、ええ体してまっせほんまに。鏡に映る柔らかな肉質の誰かさんとはえらい違いじゃ。)
 キンカン君も同宿。夜飲み過ぎて、撮影のこと野鳥のこと訳の解らんこと、一杯しゃべりすぎたかもしれぬ、許せキンカン君!
 「原潜グリーンビル衝突事件!」 :我が国の総理が誰であったか忘れてしまったが、ハナクソ以下の人物であることは確かである。アメリカの意図的なものを感じる。大憤慨!!
 予報ではこの一週間、道東の天候はおおむね良好。気温も例年より低そうで期待もふくらむが、だからといって良い写真が撮れると限らないのが自然写真の面白いところなのである。明日からはもっと短い日記にしようと思った瞬間完全熟睡。たぶん午後11時頃。

2月10日(土)曇り
 午前4時起床。民宿時代にあった玄関先の寒暖計が無くなってしまったので正確なところは解らないが、たぶんマイナス15度前後か。5時ちょうど、音羽橋着。雪裡川で眠るタンチョウを朝焼けで狙える場所として有名なポイント、土曜日でもあり、早くから大勢のカメラマン達が沢山の三脚を打ってある(三脚を置き、場所取りしている)が、どうやら色付く様子はなく、良いシーンも期待できず早々に撤収。コッタロ湿原へ向かう。ハギマシコ35羽、オオワシ2羽、当然のごとくエゾシカ。朝食後、伊藤サンクチュアリーに立ち寄り挨拶。今年のサンクのタンチョウは最大300羽、現在180羽、渡辺トメさんち220羽、阿寒観察センター180羽位だそうである。再びコッタロへ。オジロとカラスのおっかけっこ。そしてコッタロの入り口付近でオオモズ。かなりの近接撮影。ただしバックは真っ白。2年前にもこの近くで出会ったことがあるが、やはりここには居るのだ。直線道路の100メートル先でも何やら車から降りて撮影者が2名。オオマシコ4〜5羽を撮っていたというが既に姿は見えない。マヒワ80〜100羽。今年はここ数年のうちでもエゾシカが特に多く、近い。昨年、歓喜して見つけたエゾフクロウには会えず。コッタロ湿原への塘路側からの入り口となる踏切で、季節限定運行のSL湿原号を待つ。4〜5本並んだ三脚の10メートル程前方で、後から来た地元の若者2人がカメラを構えようとする。僕の優しい注意を素直に聞き入れ場所を変えてくれた。ここはまだ、物騒な殺人事件にはならないようである。厚かましいのではなく撮影自体をよく知らないのだろうか。SL通過後、標津方面へ向かう。すぐ近くで聞こえるSLの汽笛にハタとひらめき、先回りして昨年狙った跨線橋からのカットを狙うべくカローラはぶっ飛んで行く。車を止め小走りに橋の上へ急ぐ。SLはもうそこまで来ており間一髪のセーフ。撮るだけは撮った、という感じである。以後、こんな事は辞めようと反省。危険すぎます。
 道を間違いつつ一路、本別海町へ。走古丹(風蓮湖の北)も例年になくエゾシカが多い。毎年コミミズクの情報に振り回される辺りを小一時間車を転がすが、また今年もハズレかぁと諦めかけていた双眼鏡の中へ飛び込んできたのは、なんとあの童話の世界のオジサンたち、手を振る不思議の国の仲間達である!口汚い罵り合いの親交のエールを交換する。野付の夕日はダメだからここでシカの夕日を撮るんだそうな。だまされたと思ってここでやれ、というので、じゃあだまされたとここに決める。たいしたことなく終了。・・・だまされた。この近辺、他にはチュウヒ3羽、ケアシノスリと間違いそうなくらい白っぽいノスリ1羽。T氏の夕食の誘いを断り、宿に向かう。時間が時間、今更今夜の食事は要らなくなったとは言えない。とても嬉しく楽しみな誘いなのだけれど、主義に反することは出来ない。な〜んてね!(だまされたエゾシカ)
  春別川河口の白鳥台、民宿白鳥屋着。明日のご当地雪祭り(白鳥祭りだったかも、ごく小規模です)工事の関係者が多い。南東の広い部屋をいただいて、ひとりでどう使おうかと強行スケジュールに早くもくたびれ始めた頭が悩んでしまう。ここから朝日が充分狙えるが、T氏のお言葉「明日はここがポイント」へ、明朝行かぬ訳にはいくまい。最近この宿をあまり利用しない彼等の不満のひとつはどうもトイレにあるらしい。寒い冷たいボットン便所、ここまで来て水洗便所じゃなくったってとも思うのだが、シリを凍らすような真下から吹き上げてくる「逆流白鳥屋おろし」(そんなの或るわけないっ!)は些か辛い。かつての羅臼町森下旅館に比べれば殿様のような便所ではあるのだけれど。
 明日は5時起床、5時半に宿の北東100メートル地点で童話の世界の仲間達と、四角い太陽ゲット予定である。
2月11日(日)晴れ

 4時40分起床。いや〜それにしても昨夜はよく飲んだものだ。ウィスキーのボトルがほとんど空いている。いったい誰が飲んだんだ〜?ってか?酒飲み放題の旅ではないのだ。今日からは少し自粛せねば(少し!)。きっと宿の主人は僕がチェックアウトした後、部屋に転がる空き瓶を見て毎度呆れかえっているに違いない。
 今日の朝日もダメ。晴天には違いないのだが東の空低く厚い雲に覆われている。ハクチョウもダメ。昨日、野付の
夕日を狙った人に聞くと四駆でトドワラに入り込む輩がいたそうで最悪だったようだ。SLにしてもそうだし、あまりに身勝手なマナーの悪いカメラマンが増えすぎている。悲しいことだ。
 走古丹〜根室へ向け走るが何の出会いもない。民宿風蓮の松尾さんの奥さんから近辺の情報をお聞きする。すぐそばのネイチャーセンターで指導員の方からも情報をいただく。昨年も感じたことだけど、ここの指導員の方は本当に親切丁寧で、実に感じ良く気持ちいい。いきなりやってくる僕のような正体不明な輩にもそんな応対をしてくれるのである。ユキホオジロとオオホシハジロの情報をいただく。センターで缶入りのお茶を買う。そういえばほとんどの自販機が、何故かこの季節なのに冷たいものばかり。冷やす手間は要らないからかなりの電気代節約にはなるのだろう。帰りしな、センター入り口の雪の上に同じお茶の空き缶が捨ててあるのに気付く。さっき館内で僕が買ったお茶とまったく同じ銘柄の缶で、何やら疑われそうな、どっきりカメラに狙われているかのような落ち着かぬ気分。急いで風蓮から走古丹へ向かう。チュウヒと少し遊ぶ。どちらかというと「弄ばれた」と言う表現のほうが正しいかもしれない。シカも夕日も出そうになく、早々に引き上げこの日記を書いている。
 こちらに来て衝撃を受けた事がある。僕も顔のでかさ頭の大きさでは少々自身があるが(なんのこっちゃ)、こっちに来て吹っ飛んでしまった。昨日今日と、超特大の人類に出くわしたのであります。審査員に西川のりお氏を呼んで、「大頭顔デカ大賞」を開けば世界に通用するような人材がごろごろと発掘されるかもしれない。あぁ、今までの人生で最大の衝撃。
 本日、小生48回目の誕生日。本日の宿も白鳥屋、連泊。

2月12日(月)ほぼ晴れ

 5時起床。カーテンを開け空を見上げれば星が瞬いている。今日こそはいい太陽が拝めるに違いないと支度を急ぐ。前夜のうちにカメラやフィルムは勿論、着用予定の衣類などを用意して床につくのだが、着込むのも一苦労なのである。気温マイナス22度、白鳥台今年最高の寒さだという。心躍らせ日の出を待つ。6時24分、なんとなんと、雲ひとつないように見えた水平線上に僅かな低い雲があり、その上からジンワリとお出まし。また今日もツイてない一日が始まる予感。朝食後、養老牛へ向かう。ホテル大一のシマフクロウも気になるけれど、今回の旅の目的にはない。エゾフクロウはいないかと車窓から横目でチラチラ探すがいるのはノスリのみ。養老牛温泉近くで昨年感動したあの杉木立を目指すが日が弱く期待できそうにない。つまらぬ雪景をパシャリ。今年はカラスの声が妙に「アホーアホー」と耳に聞こえる。開陽台へ初めて上る。眺望も悪くなく、朝日夕日ともそれなりには絵が作れそうだ。セイコーマートで昼食購入、12時40分野付着。羅臼は吹雪いてるように見える。今夕、明日そして明後日、大丈夫だろうか天候が気にかかる。
 カメラの不調が続いている。ペンタ67はシャッターが降りない。ニコン600ミリAFはオートフォーカスが効かない。F4のフォーカス切り替えレバーが動かない。etc.
 野付半島へ車で入ることが許される最先端の灯台近く、駐車場でこの日記を書いていると例の仲間達がやって来た。M氏解体のアザラシを足下に、クナシリ方向にクロガモ6つがいと何やら他に2つがい。必携の「フィールドガイド日本の野鳥」はリュックの奥深くに入り込んでいてすぐには取り出せない。ひげ面逞しくなったキンカン君も合流。現在は快晴!本日の「最高」気温は、人間の住む世界を少し広げるかもしれないマイナス10度(これが最高気温なのだ!)。今日こそは!
 やっぱりダメ。恨めしげに西の空を眺めながら一路羅臼へ。野付のつけねで(駄洒落ではないです)悪童達とお別れ。ひょっとするともう二度と会うことはないのかもしれない仲間達。ナイスなやつら、みんなサンクス!ありがとう北海道!!
 
野付先端部から羅臼まで約55分。午後6時過ぎ羅臼第一ホテル着。 今年は1階の部屋を割り当てられたけど、昨年の2階のほうが数段グレードが高い。少々不愉快。食事もあまり良いとは言えないので来年は・・・来年はこの旅はない・・・・・かも。
 明日の流氷観光船は何と10数人、小さなゴジラ船にそんなに乗っけて写真撮れるのかよぉ。午前6時出港の予定。明日に早くも暗雲が・・・・・

2月13日(火)曇り

 かなり冷え込んではいるようだが昨日ほどではない。午前5時30分港に集合だったらしい。船長の小林さんからは、6時までに来ればいいと聞かされていたのだが、ちゃんと教えてくれなければ困るではないか。さもあらんと、こちらも抜け目なく5時10分着ではある。既に5〜6人乗船、場所取り完了。5時40分出港。一晩で大きく動く流氷がかなり遠いらしいが、6時出港のつもりで港に着いたら船は既に無し、などという夜明け前厳寒の羅臼だまし討ちの憂き目に会うところであった。仕事も辞め一年の約半分を道東で遊ぶという毎年の顔なじみ千葉のT氏に、暗闇の船上でバッタリ。数日前から羅臼浸りだそうである。「民宿まるみ」に宿を取り、まるみの船に乗らずゴジラの船に乗るのだそうな。実はスケソウダラ不漁の羅臼にあって、儲かっているのは観光船を持つ「民宿まるみ」と「ゴジラ」だけというもっぱらの評判。互いに宿を新築したり増築したりで、不況羅臼何処吹く風の両者なのである。「スケソウ漁 肩で風切る観光船」「おらが海 そこのけそこのけ観光船」であろうか。
 さて夜明け前の羅臼沖、ベタ凪だけど曇り空で、期待する朝日は望めそうにない。そのうちに日も
昇りワシたちの標本写真はとても撮りやすくなるが、オートフォーカスが効かないので飛行シーンのドアップが何とも撮りづらい。たいした写真も撮れず8時50分着岸。(おまけ1おまけ2)宿に帰り遅い朝食をいただく。他に予定もなくのんびりと望郷台でこの日記を書いている。この時期にしては珍しいほど仕事の電話が多く、道東に入る前から、岡山に帰った翌朝から早速仕事の予定なのに、有難いことにまた幾つかの仕事が入りそうで、贅沢な遊び疲れがとれる暇はなさそうだ。それにしても道東の海岸沿いは、僕の住む岡山市内でも果たしてここまで良いだろうかと思うほどに電波の状態が良く、最果ての地だからとなかなか電波状態を言い訳には出来ないのである。便利がいいようでもあり余計なお世話でもあるような・・・。思い出してしまった携帯電話数年前の大失敗。羅臼の観光船で沖合に出て、オオワシやオジロワシの乱舞する夢の世界に陶酔しているその時、うかつにも切り忘れていた携帯のベルは鳴ったのでありました。夢の国から超現実へ一気に引き戻されるこのギャップ、タイムマシンで時代を行き来する感覚とはきっとこのようなものに違いない。あの日あの時、同乗されてたみなさんホントごめんなさい、それも2度までも。
 とにかく今日は暫しゆっくりと望郷台で半日を過ごすことに決めた。評判の日本酒「北の勝」の小瓶を山頂でやる。風味が思っていたほど良くないのは保存状態の所為か?目の前に広がる大パノラマを肴にすれば、まあまあはいけるのである。僕が学生だった頃、そうか、もう少しで30年前になるのか。あ〜なんとも、今だにほとんど変わっていない性格や考え方、己が未熟さ低さに呆れてしまう。そのころの僕が「羅臼」と言う地名に抱いていたのは、自分自身の深くに潜む、行き着くべき最後の故郷、鉛色のさいはての地。通い詰め、この羅臼へ流れ着いたのは必然であったろうか。ああ未だ愚かなり、愚かなり。勇み、今年こそは羅臼の街を撮ろうという気概も、変容していく町並みになし崩しにされていくようで・・・・・暫し留処なく落ち込む。バカ!
 結局、山頂でやったこと、「北の勝」の味見と仕事の電話処理、おみやげの六花亭マルセイバターサンド購入の手配、瞑想の時間少々。ちょっと風邪気味である。岡山へ帰ってから忙しそうだからと、山頂で休みを取り過ぎ気が緩んでしまったのが原因だろうか。
 天気予報、明日も釧路市で−21度。これでも今日より3度位高いのだ。釧路市でその気温と言うことは内陸部では限りなく−30度に近いのです。

2月14日(水)快晴

 朝4時半起床。5時羅臼港着。これでも3番目、乗船客数13名にて出港。これ以上の人数では撮影は出来ない。ゴジラの小林さんは儲かってええかもしれんが、写真撮りたいもんには苦痛以外の何ものでもない。今日はやけにゴメ(カモメ)のフンがレンズに三脚に降りかかる。それが一瞬で凍り付いてしまうのだ。快晴ながら今日もダメ。流氷と呼べるようなものはなく、一面が真っ平らな氷なものだからとてもじゃないが絵にはならない。ワシを呼び寄せるためスケソウのザッパを氷上にまくと、目ざといカモメたちがまず集まってきて遠慮なく食べ始める。そして何処で見ていたのかと思うほどのワシたちが集まってくるのだ。一羽また一羽と安全を確かめるようにザッパを横取りし、そのうちに船の周りはワシだらけ。逆にこっちが拍子抜けしてしまうほどである。不思議なのは、何故カモメを狙わないのかということ。何度かテレビで見たことがある、食に窮したワシがカモメを襲うシーン。ここなら幾らでも捕まえ放題であるのに、より楽な方を選ぶのだろうか。空気が澄んでいるため朝日も難しく、目の前で繰り広げられるワシたちの乱舞を指をくわえて見ているしかない。撮りたかった野鳥が、ピントの合わない近距離でニッと笑ってる、そんなもどかしさ。つまらないカットを何本か写し、8時55分着岸。ホテルに帰る。遅い朝食を気持ちよく食べさせてくれるのはありがたい。荷をまとめ9時半出発。ところがところが一大事、何と今朝、船の上でゴメから浴びせられた瞬間冷凍フン爆弾が溶け始めたのだ。対処に大わらわ、結構始末が悪い。最後の望郷台に上りパノラマを撮影。今日は望郷台のラウンジが開いている。てっきり冬場は営業していないのかと思っていたが、そうではなかったようで「昨日は休み」と当然のようにおっしゃる。人当たりの良い、話好きそうな男性が応対してくれる。
 鶴居へ向かう。時間が少しありそうだったので釧路市内まで南下し、六花亭春採店を探し当て土産物を買い込む。ここの本店支店他、関連の店はどこも丁寧な応対で非常に好感が持てる。マルセイバターサンドの旨さも頷けると言うものである。その足で和商市場へ向かうが一方通行が多く駐車場になかなか入れない。改めて己が鈍くささにくたびれる。馴染みの「魚萬」で女将の顔にまた騙されてお土産のカニを買い込む。いや失礼、目一杯のサービスに有難く感激モードでありましたョ。
  あ〜っ、これでやっと自由に撮影が出来る・・・・・あと僅か一日。しかし夕景、やっぱりサッパリのバツ、呪われているのではなかろうかと思いたくなるような今回の朝日夕日である。最後の宿、ホテル泰都へ。今日は1階の部屋、今晩と明朝の荷造りを考慮してくれたのであろう。荷の出し入れにはことのほかありがたい。とにかく露天へ直行する。今日は小雪舞う舞台。最高二重丸の露天であることは保証できる。少しぬるめかなと思われる方は露天の湯の出口付近に陣取ると良い。客はさして多くはなさそうである。やはり気になること、料理の手際。民宿の時は何とも思わなかった流れがホテルになると難しい。やはり料理は専任コックに任せるべきだと思うのだが、いかがなものだろうか。
 今、鳥笛をやる人がテレビに出ている。背広姿である。これなのだ、鳥をやる人間もたまには背広姿を見せた方が良い。いつも砕けた格好は、本人は良いつもりでも背広組を説得する力に欠ける。少し反省、ちょっと勉強。
 中標津の今日の最低気温は−26.9度。明日は−25度の予想である。さてさて最後のお楽しみ、明朝の音羽橋はいかがなものでありましょう。
 さあ〜明日の荷造りは大変だぞ〜〜〜っ!

2月15日(木)晴れ

 未明、最後の気力を振り絞り音羽橋へ直行。12年前、鶴居村で最初にお世話になった宿「丹頂の家」の大将「トーさん」、その後失礼したままだったのに、未明の橋の上で気持ち良い挨拶をいただきホント嬉しかったです。12年間の道東通い「始まり」の宿でした、ありがとう。さて今日も天気は良さそうだけど大して望めそうにない呪われた朝日。懲りずにコッタロまで足を延ばすが収穫らしきものはなし(期待を裏切らないのはエゾシカ君のみ)。宿に帰り朝食を済ませ最後の荷造りに励む。室内、特に客室内の温度湿度管理はさすが和田さん、泰都が最高である。目に見えにくいけどさすが写真家の気配り、一流ですョ。宅急便をフロントに預け、10時ジャストチェックアウト。身軽になり手元にはニコンF5と600ミリそして24〜120ミリと85ミリ&カーボン三脚の超軽量装備。ほぼいつものお帰り装備である。大好きなコッタロ湿原へ最後のお別れに。どうやらSLの通過時間と重なりそうで、麓に車を置き、急ぎ初めての小山に雪道を登る。平日の昼前、こんな時間でも既にカメラマン2人が三脚を構えSLの通過を待っている。手前にコッタロ湿原、後方には塘路湖が入るのでロケーションはとても良い。ただ少しパンチ力に欠ける絵ではある。身軽に携帯した24〜120ミリで連写。下山。別れを惜しみ見送りに出てきてくれたエゾシカ君達に見送られ、一路西へ、阿寒観察センターへ。昼食はいつもコンビニ利用か一切摂らないのが日課となっている道東の旅で、唯一の外食がセンター内の食堂のラーメンなのです。3つある道東の有名なタンチョウ観察所のなかで、もっとものんびりゆったり楽々と観察の出来る場所、逆に言えば何を撮るかをハッキリ決めて行かないと折角のロケーションを生かせず、結果一番落ち込む危険性がある場所かも知れない。
  タンチョウたちが跳ねるたび舞い上がる粉雪に、12年間通った思い出が浮かび上がりまた消えていく。
 午後4時、レンタカーを返却し釧路空港へ。空港のロビーの椅子に腰を下ろした途端、頭の中に蘇る冷や汗噴出の思い出がある。何年か前の釧路空港寝過ごし事件である。その年もレンタカーで走り回り、存分に大自然との出会いを楽しんだ直後の空港ロビー。安堵感からか一気に睡魔が襲ってきたのです。待ち時間が1時間半ばかりあったのも油断の原因かも知れないが、ほんとの夢の国に入ったのです。夢の中、耳の奥で何やら僕の名前を呼ぶ可愛い女性の声が・・・ニヤニヤッとしながら、間違いなくニヤニヤッとしながら薄目をあけると「・・・最終のお呼び出し・・・中桐暢良様・・・!」ときたもんだ!大慌て、よだれも拭かず一目散に手荷物チェックを受け、付いてこいと言いながら小走りで先導する係員の後を追う。大汗ダラリでやっと飛行機に乗り込むが周りの視線は冷たくきつい。当然だ、定刻を5〜6分オーバーしての離陸である。ところがである。何と飛行機はどう見ても真っ直ぐ札幌千歳空港を目指しているのだ。そう言えば確かほぼ同時刻に千歳行きがあったはずである。ゥワァーッ、すべて自分が悪いけどえらいことになってしまった!降ろしてくれっ、と叫ぶわけにもいかんし、ただただ天を仰ぐのみ、いや地を見下ろすのみ。ところがところが日高の上空を過ぎた辺りから急に南下を始めたのです
。またぞろ汗が、安堵の汗がしたたり落ちてきたのでありました。ああ、良き思い出がいっぱい!
  そう言えばこの10年間はまったく欠航に悩まされたことがない。道東に通い始めた最初の2年は、何故か帰りの便が必ず欠航で、夜行列車を乗り継ぎ、夜が明ければやっと青森辺り。家に辿り着く頃にはまた日付の変わる時間であった。重い機材をかつぎ、バスと歩きで通ったあのころの思い出は生涯忘れることはないだろう。
 
 テーマを何も持たずにやって来た今年の旅。写真が撮れないのは最初から解りきっていたことかもしれない。そう思い始めると、このまま終われんじゃないかとまたぞろ虫が騒ぎ出す予感。さよなら北海道、ありがとう道東、そして良き友たち。
  また来年・・・・・帰って来たいなぁ〜。

 
 昨今、厳寒期の羅臼では見られなかったはずのトビが2月にいることもあるようで、地球規模での環境の変化を感じざるをえません。いつまでも残しておきたい「故郷」道東。この地もまた、いつの間にか「心の故郷」になってしまうのでしょうか。

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2001年2月道東撮影旅行、写真リスト
2/10・コッタロのオオモズ 2/10・夕日のエゾシカ 2/11・野付半島の夜明け
2/12・養老牛雪景 2/12・ビロードキンクロ 2/13・羅臼の流氷
2/13・オジロワシの飛翔 2/13・氷上のオジロワシ 2/13・氷上のオジロワシ-2
2/14・朝日の中のカモメ 2/14・朝日と遊ぶワシ 2/14・朝日のオジロワシ
2/15・コッタロ湿原のエゾシカ 2/15・コッタロ湿原を行くSL  

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自然と野鳥たちの四季 のようにのように〜