2001年2月道東撮影日記
2/9〜2/15
ああ〜ぁ、不景気の波をもろに受け今回の道東行は超緊縮型、日程予算共々かなりの自粛切迫型なのである。それでもおいらは行ってしまう。ああ、何故にそうまでして行くのか行かねばならぬのか?この旅の先には・・・・・何も見えんぞォ、今回は。 |
2月 9日(金)晴れ |
岡山から新幹線で名古屋に向かう。釧路へ入るなら名古屋発のJAS、空の便がなかなか都合が良く、最近は毎回このコースを取る。ところが今年は「早割」が廃止され、ならばやむなし一週間の往復割引、緊縮予算と相まってコンパクトな道東行と相成った次第であります。それにしても携帯でメールの若者、マナーもへったくれもないクソガキがいるものだ。日記の初っぱなから言葉が悪いけど、新大阪から乗り込んできたサラリーマン風の若い二人連れ、小生下りる名古屋まで延々やりおって、よ〜みんな我慢しとるもんだねえ。馬鹿ガキどもめ、親はどんな教育したんだ!まったく! |
2月10日(土)曇り |
午前4時起床。民宿時代にあった玄関先の寒暖計が無くなってしまったので正確なところは解らないが、たぶんマイナス15度前後か。5時ちょうど、音羽橋着。雪裡川で眠るタンチョウを朝焼けで狙える場所として有名なポイント、土曜日でもあり、早くから大勢のカメラマン達が沢山の三脚を打ってある(三脚を置き、場所取りしている)が、どうやら色付く様子はなく、良いシーンも期待できず早々に撤収。コッタロ湿原へ向かう。ハギマシコ35羽、オオワシ2羽、当然のごとくエゾシカ。朝食後、伊藤サンクチュアリーに立ち寄り挨拶。今年のサンクのタンチョウは最大300羽、現在180羽、渡辺トメさんち220羽、阿寒観察センター180羽位だそうである。再びコッタロへ。オジロとカラスのおっかけっこ。そしてコッタロの入り口付近でオオモズ。かなりの近接撮影。ただしバックは真っ白。2年前にもこの近くで出会ったことがあるが、やはりここには居るのだ。直線道路の100メートル先でも何やら車から降りて撮影者が2名。オオマシコ4〜5羽を撮っていたというが既に姿は見えない。マヒワ80〜100羽。今年はここ数年のうちでもエゾシカが特に多く、近い。昨年、歓喜して見つけたエゾフクロウには会えず。コッタロ湿原への塘路側からの入り口となる踏切で、季節限定運行のSL湿原号を待つ。4〜5本並んだ三脚の10メートル程前方で、後から来た地元の若者2人がカメラを構えようとする。僕の優しい注意を素直に聞き入れ場所を変えてくれた。ここはまだ、物騒な殺人事件にはならないようである。厚かましいのではなく撮影自体をよく知らないのだろうか。SL通過後、標津方面へ向かう。すぐ近くで聞こえるSLの汽笛にハタとひらめき、先回りして昨年狙った跨線橋からのカットを狙うべくカローラはぶっ飛んで行く。車を止め小走りに橋の上へ急ぐ。SLはもうそこまで来ており間一髪のセーフ。撮るだけは撮った、という感じである。以後、こんな事は辞めようと反省。危険すぎます。 道を間違いつつ一路、本別海町へ。走古丹(風蓮湖の北)も例年になくエゾシカが多い。毎年コミミズクの情報に振り回される辺りを小一時間車を転がすが、また今年もハズレかぁと諦めかけていた双眼鏡の中へ飛び込んできたのは、なんとあの童話の世界のオジサンたち、手を振る不思議の国の仲間達である!口汚い罵り合いの親交のエールを交換する。野付の夕日はダメだからここでシカの夕日を撮るんだそうな。だまされたと思ってここでやれ、というので、じゃあだまされたとここに決める。たいしたことなく終了。・・・だまされた。この近辺、他にはチュウヒ3羽、ケアシノスリと間違いそうなくらい白っぽいノスリ1羽。T氏の夕食の誘いを断り、宿に向かう。時間が時間、今更今夜の食事は要らなくなったとは言えない。とても嬉しく楽しみな誘いなのだけれど、主義に反することは出来ない。な〜んてね!(だまされたエゾシカ) 春別川河口の白鳥台、民宿白鳥屋着。明日のご当地雪祭り(白鳥祭りだったかも、ごく小規模です)工事の関係者が多い。南東の広い部屋をいただいて、ひとりでどう使おうかと強行スケジュールに早くもくたびれ始めた頭が悩んでしまう。ここから朝日が充分狙えるが、T氏のお言葉「明日はここがポイント」へ、明朝行かぬ訳にはいくまい。最近この宿をあまり利用しない彼等の不満のひとつはどうもトイレにあるらしい。寒い冷たいボットン便所、ここまで来て水洗便所じゃなくったってとも思うのだが、シリを凍らすような真下から吹き上げてくる「逆流白鳥屋おろし」(そんなの或るわけないっ!)は些か辛い。かつての羅臼町森下旅館に比べれば殿様のような便所ではあるのだけれど。 明日は5時起床、5時半に宿の北東100メートル地点で童話の世界の仲間達と、四角い太陽ゲット予定である。 |
2月11日(日)晴れ |
4時40分起床。いや〜それにしても昨夜はよく飲んだものだ。ウィスキーのボトルがほとんど空いている。いったい誰が飲んだんだ〜?ってか?酒飲み放題の旅ではないのだ。今日からは少し自粛せねば(少し!)。きっと宿の主人は僕がチェックアウトした後、部屋に転がる空き瓶を見て毎度呆れかえっているに違いない。 |
2月12日(月)ほぼ晴れ |
5時起床。カーテンを開け空を見上げれば星が瞬いている。今日こそはいい太陽が拝めるに違いないと支度を急ぐ。前夜のうちにカメラやフィルムは勿論、着用予定の衣類などを用意して床につくのだが、着込むのも一苦労なのである。気温マイナス22度、白鳥台今年最高の寒さだという。心躍らせ日の出を待つ。6時24分、なんとなんと、雲ひとつないように見えた水平線上に僅かな低い雲があり、その上からジンワリとお出まし。また今日もツイてない一日が始まる予感。朝食後、養老牛へ向かう。ホテル大一のシマフクロウも気になるけれど、今回の旅の目的にはない。エゾフクロウはいないかと車窓から横目でチラチラ探すがいるのはノスリのみ。養老牛温泉近くで昨年感動したあの杉木立を目指すが日が弱く期待できそうにない。つまらぬ雪景をパシャリ。今年はカラスの声が妙に「アホーアホー」と耳に聞こえる。開陽台へ初めて上る。眺望も悪くなく、朝日夕日ともそれなりには絵が作れそうだ。セイコーマートで昼食購入、12時40分野付着。羅臼は吹雪いてるように見える。今夕、明日そして明後日、大丈夫だろうか天候が気にかかる。 |
2月13日(火)曇り |
かなり冷え込んではいるようだが昨日ほどではない。午前5時30分港に集合だったらしい。船長の小林さんからは、6時までに来ればいいと聞かされていたのだが、ちゃんと教えてくれなければ困るではないか。さもあらんと、こちらも抜け目なく5時10分着ではある。既に5〜6人乗船、場所取り完了。5時40分出港。一晩で大きく動く流氷がかなり遠いらしいが、6時出港のつもりで港に着いたら船は既に無し、などという夜明け前厳寒の羅臼だまし討ちの憂き目に会うところであった。仕事も辞め一年の約半分を道東で遊ぶという毎年の顔なじみ千葉のT氏に、暗闇の船上でバッタリ。数日前から羅臼浸りだそうである。「民宿まるみ」に宿を取り、まるみの船に乗らずゴジラの船に乗るのだそうな。実はスケソウダラ不漁の羅臼にあって、儲かっているのは観光船を持つ「民宿まるみ」と「ゴジラ」だけというもっぱらの評判。互いに宿を新築したり増築したりで、不況羅臼何処吹く風の両者なのである。「スケソウ漁 肩で風切る観光船」「おらが海 そこのけそこのけ観光船」であろうか。 |
2月14日(水)快晴 |
朝4時半起床。5時羅臼港着。これでも3番目、乗船客数13名にて出港。これ以上の人数では撮影は出来ない。ゴジラの小林さんは儲かってええかもしれんが、写真撮りたいもんには苦痛以外の何ものでもない。今日はやけにゴメ(カモメ)のフンがレンズに三脚に降りかかる。それが一瞬で凍り付いてしまうのだ。快晴ながら今日もダメ。流氷と呼べるようなものはなく、一面が真っ平らな氷なものだからとてもじゃないが絵にはならない。ワシを呼び寄せるためスケソウのザッパを氷上にまくと、目ざといカモメたちがまず集まってきて遠慮なく食べ始める。そして何処で見ていたのかと思うほどのワシたちが集まってくるのだ。一羽また一羽と安全を確かめるようにザッパを横取りし、そのうちに船の周りはワシだらけ。逆にこっちが拍子抜けしてしまうほどである。不思議なのは、何故カモメを狙わないのかということ。何度かテレビで見たことがある、食に窮したワシがカモメを襲うシーン。ここなら幾らでも捕まえ放題であるのに、より楽な方を選ぶのだろうか。空気が澄んでいるため朝日も難しく、目の前で繰り広げられるワシたちの乱舞を指をくわえて見ているしかない。撮りたかった野鳥が、ピントの合わない近距離でニッと笑ってる、そんなもどかしさ。つまらないカットを何本か写し、8時55分着岸。ホテルに帰る。遅い朝食を気持ちよく食べさせてくれるのはありがたい。荷をまとめ9時半出発。ところがところが一大事、何と今朝、船の上でゴメから浴びせられた瞬間冷凍フン爆弾が溶け始めたのだ。対処に大わらわ、結構始末が悪い。最後の望郷台に上りパノラマを撮影。今日は望郷台のラウンジが開いている。てっきり冬場は営業していないのかと思っていたが、そうではなかったようで「昨日は休み」と当然のようにおっしゃる。人当たりの良い、話好きそうな男性が応対してくれる。 |
2月15日(木)晴れ |
未明、最後の気力を振り絞り音羽橋へ直行。12年前、鶴居村で最初にお世話になった宿「丹頂の家」の大将「トーさん」、その後失礼したままだったのに、未明の橋の上で気持ち良い挨拶をいただきホント嬉しかったです。12年間の道東通い「始まり」の宿でした、ありがとう。さて今日も天気は良さそうだけど大して望めそうにない呪われた朝日。懲りずにコッタロまで足を延ばすが収穫らしきものはなし(期待を裏切らないのはエゾシカ君のみ)。宿に帰り朝食を済ませ最後の荷造りに励む。室内、特に客室内の温度湿度管理はさすが和田さん、泰都が最高である。目に見えにくいけどさすが写真家の気配り、一流ですョ。宅急便をフロントに預け、10時ジャストチェックアウト。身軽になり手元にはニコンF5と600ミリそして24〜120ミリと85ミリ&カーボン三脚の超軽量装備。ほぼいつものお帰り装備である。大好きなコッタロ湿原へ最後のお別れに。どうやらSLの通過時間と重なりそうで、麓に車を置き、急ぎ初めての小山に雪道を登る。平日の昼前、こんな時間でも既にカメラマン2人が三脚を構えSLの通過を待っている。手前にコッタロ湿原、後方には塘路湖が入るのでロケーションはとても良い。ただ少しパンチ力に欠ける絵ではある。身軽に携帯した24〜120ミリで連写。下山。別れを惜しみ見送りに出てきてくれたエゾシカ君達に見送られ、一路西へ、阿寒観察センターへ。昼食はいつもコンビニ利用か一切摂らないのが日課となっている道東の旅で、唯一の外食がセンター内の食堂のラーメンなのです。3つある道東の有名なタンチョウ観察所のなかで、もっとものんびりゆったり楽々と観察の出来る場所、逆に言えば何を撮るかをハッキリ決めて行かないと折角のロケーションを生かせず、結果一番落ち込む危険性がある場所かも知れない。 |
昨今、厳寒期の羅臼では見られなかったはずのトビが2月にいることもあるようで、地球規模での環境の変化を感じざるをえません。いつまでも残しておきたい「故郷」道東。この地もまた、いつの間にか「心の故郷」になってしまうのでしょうか。 |
2001年2月道東撮影旅行、写真リスト | ||
2/10・コッタロのオオモズ | 2/10・夕日のエゾシカ | 2/11・野付半島の夜明け |
2/12・養老牛雪景 | 2/12・ビロードキンクロ | 2/13・羅臼の流氷 |
2/13・オジロワシの飛翔 | 2/13・氷上のオジロワシ | 2/13・氷上のオジロワシ-2 |
2/14・朝日の中のカモメ | 2/14・朝日と遊ぶワシ | 2/14・朝日のオジロワシ |
2/15・コッタロ湿原のエゾシカ | 2/15・コッタロ湿原を行くSL |
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NOBUYOSHI NAKAGIRI
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