自然と野鳥たちの四季 のようにのように〜
 
 
 正直、直前6日前までのオーロラ旅行の印象が強過ぎて、今回の道東撮影行は気持ちの高ぶりが起こらず、行く前から些かテンション下がり気味。結果は推して知るべしで、当然収穫も少なく、只々くたびれ儲けの旅となったのでした。この旅行記も、お見せ出来る写真はもとより書くべきことも無くて、今回は止めておこうと思っていたのですが、でもまあ一応、自分自身への小さな旅のメモとしてくらいは残しておくべきかなと...
 脈絡は無く、ごく断片的支離滅裂日記。それでも読んでみようかなどという無謀で奇特な方、どうかメモ書きということでお許し下さい。
 
追伸:なにせ一夜漬けのメモ日記。たまに読み返し加筆してます(^^ゞ
 
2月17日(火)岡山駅のホームを
 吹き抜ける風がやけに冷たくて耳が痛い。いやまぁ他にも耳の痛いことはたくさんあるのだけれど、ともかく今朝は肉体的に耳が痛いのである。オーロラの旅と違い、ひとりの旅。はや人生とはナンぞや等とチラリ、ろくでもない考えに頭がグラリ。風邪も治りきらず、鼻水鼻詰まり、喉のイガラっぽさ、幾らかの熱もある。ウゥそれにしても耳が痛い、鼻水がタレてくるぅ..
 関ヶ原は雪も無く新幹線は快調そのもので、釧路空港の天候だけが気掛かり。名古屋空港での機内持ち込み品チェックはゆるやかで、勿論バンクーバー空港ほど高圧的であるはずもない。なんせ日本語が通じるのだから、怖いものなんて無いのである。風邪薬のせいなのか、胃がチクチク。あれこれバタバタしていて今夜の羅臼の宿へ先送りの荷物を出し遅れてしまったのだが、もう着いている頃だろうか。
 釧路到着。雪の量は例年並み。気温は少し高めで曇天。もちろん今年も距離無制限のレンタカー、少し小型の乗用車タイプの四駆を一路羅臼へと走らせる。とりあえず路面は快適。お決まりのコース、鶴居からコッタロを抜け、時折雪の舞う道東を北上。たいした出会いもなく、無事宿に到着。
 明日からの撮影モードに切り替える御神酒をいただきながら、今年の道東での第1食、贅沢な夕食に舌鼓。明朝の船に乗る予定の同宿の方々、年輩の方が多いのだがみんな子供のように目がキラキラ。良い夢を!
 
 風邪? そういえば今朝までは引いていたような気が...
 羅臼町/ペンションラウスクル泊(0153-89-2036)
2月18日(水)午前五時、羅臼港に集合
 持ち込みと宿に常備のふたつの目覚まし時計を4時と4時05分に合わせ床に就いたのだが、3時55分シッカと目覚める。やっぱ気合いが違っております(^_^;)
 夜明け前の船に乗り込み流氷の海へ。氷は近いのだが朝日は顔を出さない。例年になくオジロワシが少なくオオワシばかりがやけに目に付く。新たに手に入れたアイテム、バフィン社製のマイナス100度対応ブーツを試そうと靴下一枚で乗船したのだが、さすがに鉄板1枚の船上では爪先が冷たい。2月の道東を甘く見ると痛い目に遭うのだ。
 収穫無く下船。遅い朝食を摂りに宿へ戻り、荷を積み直して羅臼を後にする。
 野付湾内の氷が溶けて、さざ波の立つ海面が大きく広がっている。溶けかかった氷の上にカワアイサ60〜70羽。反対の根室海峡側にはかなりの量の流氷が接岸している。風も無く穏やかな天候。雪の量は平年並だけれど、やはり暖かい。
 目の前をオオワシが横切ってゆく。
 灯台の傍の駐車場で日向ぼっこしながら、タイヤ廻りにこびり付いた雪を太陽熱で落とす。陽も西に傾きいつもの夕日ポイントに向かえば、すでに観光バスまで来ていててんやわんや。そんな中でも一際目立つのはもっちろん、お伽の国の悪童さんたち。イヤもとえ、少しだけ人相の悪いオジサンたち。そんな一員に違和感無くすぐさま加われるのが哀しいところ。さっそくのご挨拶。えー日和でんなぁ(*^_^*)
 期待した夕日は拝めず、宿へ。旅は始まったばかり、また明日があるさ〜♪
 別海町/民宿白鳥屋泊(0153-86-2538)
2月19日(木)朝日も楽しめず
 オオハクチョウも絵にならない。仕方なく宿の前の給餌場でポップコーンの餌やり。オオハクチョウは数回、手から直接食べてくれたのだが、あれだけテレビで騒がれていると、さすがに鳥インフルエンザのことが気になってしまう。いちおう宿に帰り手洗い。冷たく痺れ掛けた指先に残るくちばしの感触が、蛇口から出る暖かい温泉の湯に溶かされ鮮明に蘇る。
 走古丹のエゾシカは、昨年ほどではないけれどやはりニアミスが多い。霧多布岬まで足を伸ばすが、めぼしい出会いもなく野付に戻る。今日も夕日は... 難しいねぇ...
 早めの温泉独り占めで疲れを落とそう。うっうぅ〜〜〜ん、イエローナイフの疲れが流れてゆく〜♪(ここの湯は正真正銘の名湯です)
 別海町/民宿白鳥屋泊(0153-86-2538)
2月20日(金)どこかにきっと
 朝日は昇っていることでありませう。さっさと切り上げて中標津から屈斜路湖畔へ向かう。新しいクマゲラの食痕さえ見つけられず、早々と屈斜路湖畔の砂湯到着。いつもの年に較べ観光客が少なく思えるのは、やはり鳥インフルエンザの影響なのだろうか。或る方から情報をいただいていて、写真雑誌にもオオハクチョウの撮影ポイントとして紹介されることの多いコタンの湯を下見がてら訪れる。ちょうど管理人さんが清掃中で、二言三言言葉を交わし湖を覗く。ここはしかし丸見えほぼ混浴の小さな小さな露天風呂。いくら何でもここでの撮影は出来ない。どんなにトラベってもトラブってはいけない。近くには和琴温泉という混浴露天もあるのだが、最近の人たちは実に開けっぴろげというべきか。旅の恥は掻き捨てなのか、純粋に露天が好きなだけなのか。ここで最後に出会った数人の若い男のグループ、目はギラギラと挙動不審な怪しい輩。この屈斜路の大自然にはあまりにもそぐわぬ不協和音であった。
 ワタリガラス二羽が森の上空をクゥルロンクゥルォンと鳴き、物悲しいエゾシカの声が森の奥に消えていった。
 屈斜路湖畔/ガストホフパピリオ泊(0154-84-2201)
2月21日(土)ここは別世界
 屈斜路の森にほんの少し入っただけなのに、パピリオの餌台は時を忘れさせる豊かさ、小宇宙。
 今日も小雪混じりの朝、手袋を脱ぎ捨ててもさほど冷たくない気温。一日をここの餌台で過ごすことに決める。もちろん期待外れの天候なのだけれど、こればかりは仕方のないこと。カメラを持ち外に出てじっと動かず、餌台を訪れる鳥たちを堪能する。
 入れ替わり立ち替わりにやってくる鳥や小動物たちを見ていると、いつしか音のない瞑想の世界に迷い込み解脱してしまいそうである。
 屈斜路湖畔/ガストホフパピリオ泊(0154-84-2201)
2月22日(日)やわらかな森の声に
 誘われるように部屋の窓を開けると、薄いミルク色の朝が音もなく広がり体を包み込んでゆく。
 ゆったりとした朝食を摂り、少し外に出て鳥たちを撮影する。昨日と同様な天候で、朝日夕日に走り回る興奮とは対極にある一日。不思議な場所だ。
 チェックアウトを済ませてのんびり、コッタロ湿原、鶴居に向かう。
 少し吹雪始めたコッタロの峠でマヒワの群に出会う。話では、今年はマヒワの群にベニヒワが混じっているというのだが、見付けることは出来なかった。アイスバーンで吹雪の峠、撮影もままならず早々に切り上げざるを得ない。雪の舞う伊藤サンクチュアリでタンチョウの姿に暫し見とれ、珍しくカメラを持ち出して小1時間の撮影。ここで撮影するのは何年ぶりであったろうか。
 今夜の宿の温泉も最高級。ただし日帰り温泉利用の一般客が多いので、ここは夜11時頃から入れば大浴場も露天も独り占め。来年こそは、露天で熱燗一杯やってやろうと企んでいる。
 鶴居村/ホテル泰都泊(0154-64-2010)
2月23日(月)予報は午後から吹雪
 朝はまだ小雪で、朝食後サンクチュアリ周辺を一回りして、コッタロへ向け車を走らせるがノスリ以外の出会いはない。無駄に一日を過ごすわけにも行かず、さらに少し北の小さな森を目指す。もう時折吹雪き始めていて、国道から脇道へ入り数キロ、かなり怪しい天候である。鳥たちとの偶然の出会いの少なかった今回の旅で、何としても逢っておきたかった鳥、エゾフクロウ。吹雪のなかでも当然のように樹洞に身を鎮める姿。何という神々しさ。息を呑む美しさであろう。おまえもそこに座れと諭し、禅問答のような問いかけを雪に託し私に送ってくる。なんという悠然とした姿、輝き。森を流れるすべての雪が風が、神の言葉のひとつひとつに身を変えて私の体を通り抜けてゆくような不思議な感覚。
 レンズフードの奥、ガラス面にまで雪が積もる中、フィルム1本をあっという間に撮りきり、雪にまみれて車へ戻る。
 猛吹雪となった帰り道、雪の壁が瞬間に視界ゼロを引き起こす恐怖。何度も何度も車を止めながら来たときの記憶と微かな視界を重ね合わせ、対向車の無いことだけをひたすら願い、必死の思いで神の住む森を離れた。
 コッタロは当然の道路封鎖。猛吹雪の中、釧路市内に迂回して、何とかまだ封鎖されていなかった鶴居へ辿り着いた。
 鶴居村/ホテル泰都泊(0154-64-2010)
2月24日(火)音羽橋は快晴
 一晩中吹雪き続けた街も夜明け前には星が降るように輝いている。今朝こそは音羽橋、もはや恒例となった最後の朝の冷え込みではあるけれど、絵にならない。
 路面状態は極めて悪く、主要幹線でさえ除雪が間に合わない。帰りの飛行機はどうやら心配なさそうだが、釧路市内に出てお土産を買わねばならない。
 暖かくて融けかけた路面の氷が、今朝の冷え込みで一気に分厚く固まってしまい、すべての道路がツルツルピカピカの完全アイスバーン状態。特に釧路市内はとんでもない恐怖路面である。もちろん私も赤信号の交差点へは超スロー。歩くよりもゆっくりしたスピードです。ところがこれでも止まらないのです。この速度でもブレーキ踏んだら最悪状態、延々スリップの恐怖。どうしようもないカーリング状態、無力な歯痒さ情け無さ。エンジンブレーキはローに落とし、細心の注意を払ってゆかなければ必ず事故に直結します。断言。。この朝、釧路市内を走行中、僅かな時間に目の前で2件のスリップ事故を目撃。地元の人でさえこの有様、トーシロは走るべきじゃないのですね、きっと(..;)
 ブラックアイスバーンなどは何度も経験していたけれど、15年の冬の道東旅行でも一番怖かった今年の路面でした。
 
 羽田に降り立ち、帰りは東京から新幹線。それにしてもなんでこんなに混んでいるのだろう。疲れた顔のサラリーマンありワイワイうるさい家族連れあり何処か旅行帰りの小グループあり。みんな弁当食べたりしてるけど、ここでウィスキーやるとクサイかな〜牛タンジャーキー臭うかな〜(^_^;) なぁんて♪そのうち禁酒禁煙車両ってことになるかもしれません。
 それぞれの新幹線、想い巡る車内、各々の旅の匂い。
 ふと新幹線の窓に映るしょぼくれた顔、疲れ果てた顔に気付いてドキリ。明日は早朝から県北での撮影。さぁて、フンドシ締め直さねば。あぁ、またひとつ顔のシワが増えたような...

 

(冬の道東らしい風景と、のんべらしい風景と)
(羅臼沖の流氷と鳥たち→重いファイルです)
  
宿で毎晩一杯やりながらメモ書きしていた日記を、なんと紛失! 携帯に打ち込んで残っていたメモと手帳を頼りに、薄れかかった記憶を呼び起こしつつ... 悪しからず m(_ _)m

 

© NOBUYOSHI NAKAGIRI
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自然と野鳥たちの四季 のようにのように〜