自然と野鳥たちの四季 のようにのように〜
 

いろいろあって今年はすべての宿に1泊ずつの旅。覚悟していたとはいえ、何とも慌ただしい撮影行でした。
 
4日(土)晴れ 岡山→名古屋→釧路→鶴居
 朝、自宅の玄関を出るときウグイスの声。もちろんこの季節にさえずりが聞こえるわけではありません。玄関ドアを開けたときに10種類の野鳥の声がランダムに流れる仕掛けなのですが、ウグイスの声というのは何故か幸運の予感がするのです。たいていは外れだったり突然の出会いなんて無い年も多いのですが、たまぁに当たりや大当たりの年があるからどうにも始末が悪いのです。さてさて十七年目の懲りない道東行、幸運の出会いはあるのでしょうか。
 岡山は快晴なのに、この冬いちばんの寒気団とかで列車に遅れが出ている。姫路あたりから微かに積雪が見える。吹雪の関ヶ原を越えた辺りで車内アナウンス、パンタグラフの故障点検で岐阜羽島に緊急停車なのだそうです。大きく遅れて名古屋駅に到着しました。「札幌行き欠航」「女満別行き欠航」、名古屋空港では北行きの欠航が相次いで表示されています。飛んだのは我が釧路行きJAL機のみ、定刻の55分遅れで離陸です。幸運でした。飛行機の点滅ランプはヒメボタルの発光に似ています。糸魚川のフォッサマグナを境に西と東で点滅の速さが違うのだそうです。不思議ですね。
 今年の道東は路面がかなり怪しそうです。雪は少ないのですが日陰なんてヤバそーなとこばかりでツルツル。いつも以上に運転には気を遣いそうです。菊池牧場の空は少し色付いたのですが、早めに引き上げて宿で荷解きに精を出します。それにしても今年は替えの衣類が多すぎたようです。例年こんな多かったかなぁとは思っていたのですが、やはり3〜4割多すぎました。なんとも。
 今夜はホテルTAITO、お馴染みの鶴居の宿です。ま、まずは福司で一杯♪
☆ここは温泉も露天も最高です。宿の雰囲気も良くてお気に入りなのです。
☆鶴居のストアで購入した喜多里の昆布焼酎は激マズでした!
5日(日)晴れ マイナス18℃ 鶴居→霧多布

 午前5時起床。空一面に星が眩く瞬いています。一年ぶりの挨拶がてら、とりあえず夜明け前の音羽橋へ向かいます。橋の上には既に沢山の三脚がぎっしりとひしめき合っています。みんなの気合いにただただ敬服です。そのままコッタロへ向かい、峠で朝焼けを撮影しました。釧路空港でレンタカーを借りたのですが、当然ながら少し大きいクラスの方が沢山の荷も積み込めますし、何より助手席にカメラや望遠レンズを置くのに勝手が良くて快適なのです。湿原に着いた頃には明るくなっていて霧氷を少しだけ撮影。エゾシカにも出逢えず、ここで早速この旅第1号の不愉快カメラマンに出くわしてしまいました。そろそろ切り上げて宿へ帰れということでしょう。
 朝食を済ませて9時過ぎにチェックアウト。再びコッタロを通り、厚岸経由で霧多布へ向かいます。コッタロから厚岸の町へ抜ける間中、道路端のいたるところからカラ類を中心に沢山の鳥たちの声が聞こえてきます。こんな年は初めてです。わざわざ人間の近くまで山を降りてきてリスクを大きくしなくたって、人里を少し離れれば彼等の食べ物はあるってことなのでしょうか。だから今年、どこの餌台にも小鳥たちが少ないのかもしれません。霧多布に近付き、琵琶瀬でコクガン、ウミアイサ、他の水鳥たちを観察です。今年は雪のせいで昨年乗り入れたところから入れません。どうやらここでの撮影は難しそうです。仕方なく霧多布岬の周辺をウロウロと徘徊して、明朝の朝日狙いのポイントを決定。宿に入りユキホオジロの微かな情報と落石のシロハヤブサ情報をいただきました。日本列島で大流行の風力発電塔の鳥被害はここでも大きな問題となっているようです。各地でオジロワシ等すでに何羽も巻き込まれて死んでいるのです。
 今日は「エトピリカ村」という民宿で温泉はありません。近くに町営の「ゆうゆ」という温泉施設があるのですが、その風力発電エネルギー利用施設なので行きません。
 明後日の羅臼の空模様をいちおうは気にしながら、すでに偏屈オジサンは酔い機嫌。「なるようにしかならん」と床についたのでありました。
☆ここはアットホームでお気に入りの宿。近辺の鳥情報がたっぷり。
☆何処でも手に入る芋焼酎「黒霧島」は飲みやすい。

6日(月)晴れ マイナス11℃ 霧多布→野付
 岬の展望台下から朝日を狙います。たまに顔を見せてくれそうにはなるですが肝心なとき雲に隠れてしまいました。僕に似てシャイなのかもしれませぬ。足下は蓮葉氷に埋め尽くされていて、微妙な朝の光の変化をとても美しく感じました。昨年コヒバリがいた辺りに、今年はユキホオジロ5羽がいて近いというのですが見つけられませんでした。落石から根室をぐるりと廻って走古丹へ入ります。エゾシカはいつも通りにのんびりと食んでいます。今年出会うキタキツネたちは、病気なのか毛並みの悪い個体が多いような気がします。野付ではハギマシコ3羽、カワラヒワ1羽のみ。予定通りの不作です。毎年期待の野付の夕陽は... まあ... まぁ。そんな今日の幕引きでありました。明日夕方の羅臼入り予定を吹雪予報の為に変更です。明日は屈斜路、明後日に羅臼。
 今夜は野付の民宿「海の宿みさき」、初めての投宿です。温泉に浸かり夕食を済ませた午後7時あたりから爆睡モードに入ってしまったようで、午後10時20分に目覚めて歯磨きetc. 11時、真面目に就寝です。
 本日、野付で一年ぶりの悪童さんとツァイツェン。元気エエなぁみんな(*^_^*)
☆宿の温泉、少し閉塞感があるけれど泉質は良いです。料理もまずまず。部屋も小綺麗で民宿らしい宿でした。
☆何処だったかで仕入れた「コーヒー焼酎」は激マズッ!!
☆焼酎「十割」はいけます。
7日(火)薄曇り のち雪  野付→屈斜路
 今朝は白鳥台近くのいつもの場所でいつものように朝日を狙います。そしていつものように水平線を雲が覆っていてアウト。朝食後、昨年までは毎年お世話になっていた元民宿白鳥屋さんを訪れたのですがお留守の様子。挨拶もできず少し心残りでした。時間に余裕もあったので大回りして養老牛辺りのクマゲラ探しに向かうことにしました。白鳥台から小一時間も走ったでしょうか、なんと!養老牛手前の俣落で捕食中の猛禽を30メートル右手の雪原に発見しました!まさか!ウソだろーっ!大きくてヤケに白っぽく見えたからさぁ大変です!ガガガッ、グググッっとブレーキ踏んで緊急停止。猛然とバック。。ハトくらいの大きさの鳥を食べていたのですが、こちらの激しい殺気に驚いて200メートル程離れた木まで飛んでしまいました。ちゃんと完食しろーっ(T^T) スンマセン大事なお食事を\(_"_) その姿を双眼鏡で観察すれば... やはりなんと、初見のシロハヤブサです!!逃した魚(鳥?)の大きさに後悔しながら記録写真。当然の結末だけど... ぁぁぁ、渦巻く悔しさ心は土砂降り猛吹雪!(×_×;)
 ダメージの大きさに打ちひしがれながらクラクラと屈斜路湖畔に漂着です。オオハクチョウはどれもこれもが人懐こい、っていうか厚かましいと言うべきなのか、今年はひと切れ目の食パンから寄り集ってきて、成鳥幼鳥問わずみぃ〜んなみんな手渡し給餌なのです。なぁーんじゃろねこりゃ。そりゃぁオジサン慰めてくれるのは嬉しいけどなぁ。おまいらオオハクチョウのプライドちゅうもんないんかい?
 予報では夕方には吹雪出すということだったのですが、どうやら崩れは思ったほどには酷く無さそうです。まだチェックインには早く、仕方なく美幌峠の途中まで走りましたが撮影向きの場所が有るとも思えません。やっと3時過ぎにチェックインしてお気に入りの露天へ直行しました。今年は屋根まで付いて立派になったような... でもなんか少し落ち着かないような... そんな風情です。餌台に来る鳥たちは少なくて、撮影は明朝まで待った方がよさそうでした。アカゲラ数羽、カラ類、etc.
 今夜もモットーの早めの就寝たっぷり睡眠。明日の夢を見るのです。(部屋に置かれた「ご案内」に初めて目を通してアリャリャ。パピリオさん、酒の持ち込み禁止だったのですねぇ...) いちおうナイショの酒盛りにしました... (^◇^;)
☆温泉、特に露天は素晴らしいです。是非一度! 鳥の声に溢れた宿です。
☆屈斜路原野ゲストハウス、昼オンリーのレストランで寿司ランチ1000円也。味良しボリューム感ありでコストパフォーマンス大でした!
8日(水)雪 −5℃の暖かな朝  屈斜路→羅臼
 こんな天気の日は露天風呂、優雅な朝です。ふわふわと舞い降りる雪を眺めながら暫しの長湯。やはり最高です♪
 予報では午後から雪の量が増えそうで、羅臼の天候が今日も気がかりです。野付の夕日は望み薄そうだから、少し早く羅臼に入ろうか。昨日から腰の具合が良くなかったのは、民宿みさきの敷布団下のマットの所為かもしれない。せんべい布団の方が貧乏人には良いのだろう。パピリオに昨年も泊まっていた大阪から来た女性。僕がのんびり露天に浸かるよりも早くから出掛けていて、夜明け前の屈斜路湖で撮影していたのだという。みんな凄いです、エネルギッシュなのです。
 チェックアウトはしたものの、羅臼入りするには幾ら何でも時間がありすぎます。コッタロの展望台に登って12時過ぎ通過予定のSL湿原号を狙うことにしました。フゥフゥと息を切らし汗をかきながらやっと登り付くと、すでに道内のご夫婦が長玉を三脚に載せてスタンバイ状態です。挨拶して割り込ませていただきました。何処をどう通過してゆくものやら見当さえ付きませんからレンズ選びに四苦八苦です。銀塩なら中望遠で釧路川を画面下に入れる構図も面白そうだし長玉もなかなか良さそうです。うぅむ...
 やはり野付の夕陽は諦めて、早々に羅臼入りを決定しました。さっきまで晴れていたと思ったらいつの間にか雪に変わっています。車のライトを点けたり消したりしながら羅臼に入れば晴天でした。でも流氷で港は完全封鎖のようです。とはいえ、まぁとにかく、ここまで来たら明朝を待つしかありません旅人は。
 今夜の宿は「ラウスクル」、羅臼の港から15分ばかり岬方向に走ったあたりです。既に路面はツルツル。明朝、羅臼港までの道筋はかなり神経を使いそうです。
 ここ数年の中では涼しい(?)けれど、まだまだまだまだ物足りぬ寒さです。
☆ここの夕食はボリュームたっぷりで、何より新鮮!
☆露天はないけれど泉質の良い温泉です。
9日(木)雪 のち晴れ  羅臼→シラルトロ

 今朝はミスターフリースマンと化して、いざ出陣です。
 5時45分発予定の船には乗り込んだのですが、湾内にも氷が張っていてすぐには出られず漁船の出漁を待ち待機です。結局、今日の漁は休みと決まり仕方なくガリガリと氷を割って出港、湾のすぐ外20〜30メートルの辺りで餌まきです。朝日はどこかに昇っているはずなのに、絵にならない時が流れてゆきますが仕方ありません。いちおうパシャパシャ撮りはしたのですが、なにやらデジイチのテストに来たような朝です。
 下船後、宿に戻って朝食。荷を造り直して、野付、コッタロを経由してシラルトロの宿へ向かいます。それにしても、ひと晩ずつの宿替わりっていうのはじつにもって慌ただしい。解ってはいたけれど大変です、やっぱり。
 コッタロは小吹雪でした。昨年のように封鎖されると厄介だからと思い、早めにシラルトロ方向へUターンし、塘路の踏切まで戻った頃には空は青空。15時30分、今夜も初めての宿、ロッジシラルトロに到着しました。ドタンバタンと玄関の出入りを繰り返して荷物を運び込み、大声を出しても誰も出て来てくれません。なんかちょっとアヤシィ〜よな...
 無事部屋に案内されて小休止、ふと思い立ち細岡展望台へ夕陽狙いに行くことにしました。約25分で到着。多少は色付いたけれど夕陽は雲間に消えて本日終了。ま、ここまで来てチャレンジせぬ訳にもいきませぬ故。
 17時20分、宿に帰ってこぢんまりとした温泉へ。どうやら宿泊客は小生ひとりのようです。外の露天に入ろうにもニッチモサッチモドアが開きません。「開かないはずはない」とやってきた宿の息子は、これでもかこれでもかとドアが捻れ壊れてしまいそうなほどに力を込めて... ほら開いた、とさ。ったくぅ...
 入浴中に部屋に持ち込まれた夕食は弁当風です。不味くはないのですが、旅の楽しみのひとつ夕食が目の前の弁当箱かと思うとなんだか少し興醒めです。ビジネスホテルとユースホステルと民宿を足して割ったような宿、というと解ってもらえるでしょうか。でも沢山の野鳥たちが餌台へひっきりなしにやって来るのは大満足でした。きっと居れば居るほどに落ち着く宿なのでしょう。
 明朝は5時20分起床でコッタロからの朝日を狙う予定です。天気予報では下り坂なので、うまく空が焼けるかもしれません...  明朝の撮影から帰ってきて、昨夜入りそびれた露天に再チャレンジするつもりです。
 それにしても、ほろ酔い機嫌とはいいながら宿で夜書くこの日記。いつの間にか、かなりの漢字書けない症候群に陥っていて困惑です。これもパソコン弊害なのでしょうか。
☆宿の温泉は温めですが、泉質は良。露天は小さいけれど素晴らしい眺望です(但し、立ち上がればですが)。
☆食事の量は少なめ、でも味は良。野鳥の会の協定旅館です。
☆不味くて高い「海童」なる「本格焼酎」を仕入れてしまい、ガックリ。

10日(金)曇り のち雪  シラルトロ→帯広
 結局、コッタロでの朝焼けはアウト。今年も朝日夕日は難しいようです。思い通りにお天道様まで手なずけようなんて頭が高〜ぃ!のでありましょう。それにしてもまだまだしつこいコッタロ詣で、まだまだまぁーだまだお参りは続きます。どこぞにエゾフクロウおらんかいなぁ。
 諦めて宿に帰り朝食。今朝ももちろん弁当風です。食事が部屋毎に運ばれるのは良いと思うし、料理の内容だって悪くないのに豪華に見えない。それが残念です。お薦めなのは、宿の餌台にやってくる鳥たちが絵になるってことでしょうか。ネコに襲われて今年はエゾリスが出て来ないそうなのですが、鳥たちだけでもとても楽しめます。ヤマゲラ、アカゲラ雌雄、シメ、ミヤマカケス、ヒヨドリ、コガラ、シジュウカラ、ゴジュウカラ、ツグミ。スズメだってそれなりの絵になります。これでエゾリスが出れば一日中窓越しに眺めていたって退屈はしないでしょう。朝の露天も心地良くて、少しぬるめだけど泉質は良です。餌台の鳥たちを散々楽しみ、10時10分出発です。今日は六花亭春採店から和商市場を経由して帯広に入る予定です。
 実は昨日、シラルトロのこの宿への登り道、温泉の熱で氷が溶け道路面から30センチ程も凹んだマンホールがあることに気付かずドスン。それが原因なのか、車からコンコンコンともコタコタコタとも聞こえるような小さな太鼓のような音が消えません。途中、中標津のガソリンスタンドで足回りにこびりついた雪氷を落とし、釧路市内に入ってガソリンスタンドでチェックしてもらうことにしました。店員さんに右後輪の軸に付いた氷を金槌で叩き割ってもらったのですが嫌ぁ〜な音は消えません。浦幌まで来てレンタカー会社に連絡し、今夜の宿に次の車を手配してもらいました。何処で事故るかもわかりませんから、何よりも新しい車になるのは安心です。それにしても釧路から帯広まで、なぁ〜んとも変わり映えのしない道程です。湿った雪が降りしきるベタベタの路面状態だったこともあって、長距離で精神的疲労が激しいだけの楽しくないドライブでした。明日明後日の土日は十勝のハクチョウ祭りだそうです。朝日絡みのオオハクチョウを狙うには難しいかもしれません。
 今夜は「十勝ロイヤルホテル」、初めての宿です。安心感のある名前だし宿のホームページには家族的雰囲気と書いていましたから、明日の撮影場所まではかなり距離があったのですがここに決めたのです。ところが折角の夢見の旅は儚く潰えてしまいました。フロントも食堂(レストランとはとてもいえない)も感じ悪くて部屋も古い民宿並。料理に至っては普通の家庭の普段のご飯やおかずよりも不味くて量も少ないのです。他人の人相をとやかく言える柄でないのはナンとか自覚しているつもりですが、長期滞在の目つきの悪い輩がロビーにたむろしていてタバコはプカプカ廊下はドタバタ扉はバンバン、共同洗面所はゲロで詰まりっぱなし。朝食無し夕食込みで6000円の安宿とはいえ、ここ数十年記憶にないくらいの滅茶苦茶に不愉快な宿です。ここは温泉ではないし、今朝は露天で一風呂浴びてもいるから、今夜は道東旅行で初めての風呂入らずの記念すべき夜になるのか... とは思いつつもみやげ話にひと風呂... と思ったのが運の尽き、カルキ臭くて堪りませんでした。体に悪過ぎます。到底、十勝くんだりまで来て入る風呂ではありません。学生時代に旅した時の帯広の宿は国民宿舎で、知らずに入った大浴場が混浴でアッチョンブリケ。その宿を探せばよかったと反省、後の祭りでした。うぅ、早く真っ当な湯に浸かりたい。。
☆食事も風呂も上述の通りで旅が楽しくなくなってしまいます。二度と泊まることのない宿でした。
11日(土)快晴  帯広
 いつもなら釧路より1メートルは多いという帯広の雪なのに、今年は非常に少なくて道路は走りやすい。今朝は気温も低くないし風もないから外にいても拍子抜け、そんな朝です。十勝川のオオハクチョウと朝日はきっぱり諦めてエゾリスの撮影に集中することにしました。新しい車のナビに慣れるのに苦労しましたが、無事6時前に目的地到着です。何せ初めての広い境内だから何処に何があるのやら皆目見当が付きません。まだ薄暗い新雪の境内を双眼鏡片手にぐるり一回りすることにしました。聞こえてくるのはアカゲラのドラミングとゴジュウカラの声、キュッキュッと新雪を踏みしめる足音だけです。なんとも心地良くて清々しい森です。ゆっくりと一回りして早朝の空気を体中で吸い込んだ頃、高い木の枝に積もっていた雪がパラリパラリ、時にザザッと音を立て落ちてきます。まだ東の空が赤いうちから4匹のエゾリスがねぐらから出てきて、じゃれあいながら片っ端から雪を落とし枝移りしてゆきます。まるでアニメの中にひとりいるようで、どうにも締まりなく頬は緩みっ放しです。
 そのうちに石段の下でビニール袋を下げた人がひとり来ました。片手には三脚を持っているから、やはりエゾリスの撮影にやって来たのでしょうか。僕が持って来ていたエゾリス用のクルミはあっと言う間にカケスやゴジュウカラの胃袋に収まってしまいました。実は昨夜ついひもじさに負けて、酒のつまみとして半分は僕の胃袋に消えてしまっていたので如何とも想定外、いやしんぼの計算違いだったのです。それにしてもカケスのせいで、静かだった境内が騒がしくなってしまいました。クルミの餌は失敗だったなと思っていると突然、カケスに追われてエゾフクロウが目の前の大木の反対側に止まりました。何とか姿を見ようとするのですが下りの斜面が急勾配で先に行けません。後で気付いたのですが少し大回りして石段を下りてゆけばよかったのです、チャンスを逃してしまいました。フクロウが飛んでしまった後も上から少しエゾリスの様子を見ていたのですがやっと階段に気付き、降りてさきほどのカメラマン氏に声を掛けました。地元の方で何度もここへ撮影に来ているのだそうで、手に提げた袋の中は彼等の大好物の朝鮮五葉松の実なのだそうです。一緒に撮影させてもらう了解を快くいただき、楽しく撮影継続です。小声で言葉を交わしていると8人のカメラツアーがやって来ました。少しは有名な撮影地になっているのでしょうか。エゾリスが出て来るであろう方向に向けて、ズラリ一斉にカメラの砲列が布かれました。でも再び現れたエゾフクロウをカラスが追っかけ、それをカメラマンたちが追っかけるという何処に行ってもよくある展開が繰り広げられ辟易です。フクロウを恐れたエゾリスはほとんど出ず仕舞いで、仕方なく小鳥に切り替えて少し撮影しました。アカゲラ雌雄、シジュウカラ、コガラ、シメ、ベニヒワ雌、シマエナガ、ヒヨドリ、カケス。
 早朝から昼過ぎまで、色々ありましたがそれなりにのんびりと鳥見を楽しめました。さすがに少し疲れて車に戻りこの日記を書いていると、真上から何かがフロントガラスやボンネットにパラパラ落ちてきます。窮屈に体をくねって見上げてみると、すぐ真上の枝でアカゲラ君がお食事中です。こちらも朝食抜きで空腹だったのを思い出し、残っていた昨日のコンビニおにぎりをひとつほおばったのですが、冷たくて少し硬めでした。
 今夜はシラルトロで紹介してもらった宿、もちろん初めての宿です。2時50分にチェックインしました。おかみさんは森久美子似で明るくふくよか、ご主人も優しそうで感じの良い方です。それになんといってもおじいちゃんがいいのです。前夜のこともあり、即、アットホームなお気に入りの宿に決定です! 露天風呂はモール泉という薄茶色が特徴で、浮遊物があってビミョーなのですが肌触りは抜群です。断然お薦めの宿なのですが今年はまだ内緒にします、教えたくありませぬ。みんな自分で探しましょう。万一見つけても小生の行く日は避けるように、頼みますよ♪(^◇^;)
 今日は朝昼ほとんど抜きだったから、風呂上がりの空きっ腹に芋焼酎の衝撃的な一杯は効きました。素晴らしいメニューの夕食後は、あまりにも心地よくて2時間のうたた寝をしていました。
 おぉ、今日は我が誕生日であったのか。やれやれ昨日の宿でなくて良かったと、ふと。
☆食事のボリュームも質も素晴らしく、温泉の泉質もとても良いです。
☆今年初めての宿の中でも断トツのお気に入り。トイレがウォシュレットなのには驚きましたよ。
12日(日)晴れ  帯広→鶴居
 5時15分起床。喉が少し痛くてヤバそうな予感です。昨日よりは冷え込んでいますが精々15度あたりでしょうか。フロントガラスのシバレを取っていたら車の時計は5時50分になっています。少し急いで6時10分到着です。すでに東の空は明るく赤く色付いています。昨日分けていただいた朝鮮五葉松の実を、手早く数カ所に置いてエゾリスを待ちます。上手くいけば1メートルの近距離にまで近寄って来て、足下をくぐることもあるのだそうです。雪が降らなかったので昨日の我々の足跡やリスたちの食べかすが散らばっていて綺麗でないのが残念ですが仕方ありません。昨日の食事が足らなかったのでしょう、早くからエゾリス5匹が現れて目の前を走り回っています。それにしてもなんという愛らしい仕草でしょうか。昨日ひとつ歳が増えたオジサンは、朝からデロ〜ンと目尻を下げっぱなしで堪能させてもらいました。
 7時前、突然キタキツネが左手5メートルの近さに姿を現してビックリ。向こうも驚いた様子で、絵に描いたように飛び上がって一目散です。超警戒モードだったリスたちは、5分もすると降りてきて何事もなかったかのように食事を始めました。フクロウの時と違って木の中程までは逃げるものの、登ってこないと判ってる相手にはそれなりの対応をするのでしょうか。そう思うと、木登りの得意なネコはリスにとって大変厄介な存在に違いありません。何処に行ってもネコがリスを襲ったという話ばかりを耳にしますから。いっそ三味線にでもして... (^_^;
 釧路から来たというカメラマン氏との別れ際に、厚かましくも来年用にと朝鮮五葉松の実をまた分けていただきました。感謝。。
 楽しい撮影を11時前に切り上げて最終宿泊地鶴居へ向けて出発です。2時間20分の道程。少しアクセルを踏みすぎたような気もしたけれど、鶴居まではさほどの距離でもない、かなぁ... ただただ退屈な道が延々と続くのですが。菊池牧場で今回最後の夕陽を狙おうと思ったのですが、疲れていて集中力が途切れがちでした。空は少し色付き、絵が作れない状態でないのに早々と切り上げてしまいました。ちょっと後悔です。やはり1宿ずつの旅は少々きついかなぁ。かなりバテバテなのでした。
 最後の宿は、この旅の最初の宿でもあるTAITOにチェックインです。夕食後、うたた寝から目覚めて午後11時20分、12時迄の温泉に直行です。まあ目覚ましを23:00にかけてのうたた寝だから計画的ではあるのです。大浴場を通り抜けて露天に飛び出し、酔いも残ってツルツル滑る足元を気にして迂闊に金属製の手摺りを掴みでもしようものなら大変、瞬間で掌が張り付いてしまいます。まるで逮捕されたフリチンの酔っ払い... そんな目にはあいたくありませんから、酔っぱらっていたって最低限の用心だけは欠かせませぬ。
 さてさて、満天の星ではなかったけれど明日はきっとやっぱり、最後の日の冷え込みが待っていそうです。喉の痛みが少し気になるけれど、夜空に向かって感謝。みんな素晴らしい旅をありがとう。それにしても今夜は冷え込んでいます。
☆ここの露天は夜ひとりで。パピリオの露天は日中に。最高です。
☆「岩いずみ」はイケますが、ワケわからん赤い瓶に入った焼酎と「一刻者」は不味かった。
13日(月)晴れ  鶴居→釧路→名古屋→岡山
 予想通りとはいえ、これは一体なんなのでしょう。ただの巡り合わせにしてはあまりにも不思議な最後の日の冷え込み、今回最高のマイナス20度ジャストです。
 すでに東の空が焼け始めています。そうです、ちょっと寝過ごしてしまったのです。フロントガラスのシバレだって簡単には取れませんから、大焦りの朝が始まります。コッタロで朝日を撮るつもりなら宿を5時半には出発しないとダメなのに、これではとても間に合いません。とにかく飛ばせるだけ飛ばし、峠を越えてコッタロへ一直線です。すでに素晴らしい色付きが落ちかけた頃に到着。撮影。風邪気味でもあり、気が乗らぬままに今年の戦いは終ってしまいました。やはり早起きがすべて、いまさらですけれど。
 宿に帰る途中で、なんとマイナス20℃の街をうろつくネコ発見!ネコはコタツで丸くなる、なぁんて唄が信じられません。とうとう危険な進化を始めたのでしょうか。
 朝食を済ませて、8時すぎから荷造りを開始です。それにしても頻繁に電話やメールが入ってきます。どうにも今日は月曜日だから仕方ありません。汗だくになりながら荷物3個を完成。やはり不要な衣類が多過ぎですが、汗をかいたせいか風邪は何処かへ飛んでったようです。
 出逢いを求めて走り回り、走行距離は約2100キロ。宿のことやら衣類のことやら他にも反省することは沢山あったけれど、素敵な出逢いも少しあったから良しとしましょう。今年の楽しい旅が無事に終わりました。

 

 

 名古屋空港からJR駅に向かうバスの車窓に満月がゆらゆら昇っています。外は肌寒い風が舞うプラス6度。ついさっきまでマイナス20度でさえ寒いとは感じなかったのに。
 薄汚れたオレンジ色のグラデーションの前を、ビルの灯りが流れてゆく。

 

© NOBUYOSHI NAKAGIRI
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自然と野鳥たちの四季 のようにのように〜