ネーミング考

平成14年11月24日

 キリンビールを飲みながら考えました。ウサギビールやクマビールというのがあったら変だなあ…っと。イヌビールが発売されても私は買わないような気がします。なぜキリンだと違和感がないのでしょう。そう言えば象印のジャーやタイガー魔法瓶、ライオン歯磨というのもありますが、製品を思う時、既にもとの動物のイメージはありません。ゼブラというボールペンは今も健在ですし、昔はラビットという名のスクーターもありました。慣れというのは不思議なものですね。ジャノメミシンなどという名前も、慣れているから聞き流していますが、「蛇の目」と漢字で書けば、かなり風変わりなネーミングです。

 要するに私たちの感性は、最初は違和感のあるネーミングでも、それを見聞きする度に心の平衡を失う苦痛に耐えられず、名前の持つ印象の方を修正してかえりみない、しなやかな性質を持っているのです。そして、奇妙な名前を修正する作業を通じて、商品は消費者の心に鮮やかな印象を残すのです。

 ところが、名前にキリンやゾウのような視覚的イメージが伴わず、文字による情報のみを伝えるネーミングの場合は事情が違います。

 名古屋高速から西に向かうと、東名阪自動車道と東名高速道路の分岐点がありますが、もとより高速で運転中に飛び込んでくる道路標識を最後まで丹念に読む時間的ゆとりはありませんから、最初の二文字程度を読んで咄嗟に全体を判断すると、東名阪も東名高速も区別がつきません。私はこれまでに二度ほど目的とは違う道路を選んで悔しい思いをしたことがあります。高速道路を使う時は急いでいるのです。なのに、たった一瞬の判断の誤りによって、しばらくはみすみす目的とは全く別の方向へ向かわねばならず、しかもその間の料金を取られるのです。私が犯す失敗は他の人ものでもあるとしたら、世間には同じように苦々しい思いで一区分の料金を支払った経験のあるドライバーが必ずいるはずです。そして、やり場のない憤りをどうすることもでぎず、きっと私同様、心の中でこう叫んだに違いありません。

「まぎらわしいネーミングするんじゃねえ!」