特派員報告4
JHO・DAIGIN

平成23年12月24日(土)

 日本では政権交代を果たした民主党が政治とカネの問題で苦しんでいます。交通事故死者より多い、年間三万人を超える自殺者を出す不名誉な国の首相が、所信演説で命を守る政治を繰り返し表明したのは、揶揄を控えてむしろ当然と受け止めるべきなのでしょうが、そのための具体的政策を論ずべき国会が、首相と幹事長のカネを巡る論戦に終始しているのは特派員の目から見ても納得ができません。明日の食料を買うカネもなくて自ら命を絶つ国民は、そんなときに所得制限も設けないで子供手当と称する大判振る舞いをすることの是非を大いに論じ合ってほしいと思っているのですが、国会ではもっぱら首相と幹事長の億単位の不自然なカネの流れの追求に時間が費やされています。医療や介護や教育に費用がかかりすぎるから、財布の紐をゆるめられないでいる国民は、そんなときに高速道路の無料化を優先すべきかどうかを議論してほしいと思っているのですが、相変わらず首相と幹事長の政治資金の問題ばかりがマスコミを賑わしています。海という自然の堀で囲まれて、内向きの権力闘争に明け暮れた民族は、結局そういう性格を身につけるのでしょうか。人類を、はるか遠方を見つめて歩く民族と、足下ばかりを気にして歩を進める民族に分けるとしたら、日本民族は間違いなく後者に属しています。瀕死の病人に救命処置を施そうとする人に、救急救命士の資格を持っているかどうかを問題にするようなお国振りなのです。大局はあなた任せにしておいて、矮小な事柄には異常なくらい熱心になる。アメリカと手を切るべきか、自衛隊は憲法違反か、集団的自衛権は必要か、少子高齢化にふさわしい社会構造とはどんなものか、将来過疎は保護すべきなのか切り捨てるべきかといった、この国の行く末に関わるような重大な事柄については思考を停止し、議員の収賄や学歴詐称や政治資金虚偽記載など、決して民族の行く末を左右しないような些末な問題にはメディアを上げて熱心になる傾向があります。国民も分刻みで借金が増えてゆく不安からは目を背け、折角政治の表舞台に上げた政党やリーダーをこき下ろして溜飲を下げるところがあるのです。内戦が起きず、アメリカの傘の下で陸続きの外患がないとなれば、よほど心して学問というよりは人間教育をしなければ、政治家も役人も小粒で近視眼的な人間ばかりで構成されるようになるでしょう。海の状況よりも船内の清掃が気かがりな乗組員ばかりで航海する船の乗客たちは、進路が海図を大きく逸れていることにも気がつかず、またしても船長を代えて、もっとしっかり掃除をせいと怒りを露わにするのです。この国とお付き合いをする我々は、長期展望を要する事柄について取り決めをする時は、その辺りの国民性を理解して交渉を進める必要がありそうです。