片貝の戦い 小千谷市




小千谷陣屋跡 片貝の戦い佐川官兵衛

片貝の戦い

5月1日、長岡藩執政河井継之助が小千谷へ談判にゆくという情報が佐川のもとに入った。佐川は、小千谷の新政府軍本営を攻撃することをきっかけとして、長岡藩を奥羽列藩同盟側に引き込んでしまおうという作戦を立てた。
5月2日、佐川官兵衛が指揮する会津軍総勢はあえて長岡藩領を通過して小千谷に向かった。夜、片貝村へ進んで本陣を浄照寺においた。鎮将隊、朱雀四番士佐川中隊、市川砲兵隊、朱雀二番寄合隊土屋隊、結義隊、金田隊、新遊撃隊の総勢400人であった。佐川隊は朝日村から遅れて参戦した。
本陣の前方に土屋隊と市岡大砲隊を配備した。結義隊は右翼となり山の下から進み、諸隊は南進して一隊は鴻之巣村の北部へ進み、機先を制して地の利を占めた。他の一隊は東南へ進み、その最前線は山屋村南端の萱野の中に潜伏した。敵兵がいないと知ると、素早く、片貝の鴻巣村と山谷村南端の要地に、住民を使って樹木を切って陣地をつくった。金田隊は柏崎への要路である薬師峠へ向かった。

同2日夜半、新政府軍本営の軍監岩村精一郎のもとに、いち早くこの情報が住民からもたらされた。先鋒高田藩若狭隊二小隊に大砲二門、次に尾州正気隊に砲三門、後陣として軍監岩村を含む松代藩兵の総数400~500名をもって迎え撃つ作戦を立てた。
本隊は右翼となって小栗田から北の坂を上り、下山屋の東に陣取った。高田藩兵・尾州久野隊は小栗田で本隊と分かれて西に進み、鴻之巣村へ進んだ。尾州藩兵からなる左翼軍隊は、坪野村から山路を迂回して、裏無峠から片貝の会津軍の本陣を砲撃するため進んだ。
3日未明、山屋南方で両軍の斥候同士が遭遇し、会津軍の市岡大砲隊がまず砲撃を開始し戦闘となった。会津藩の奇襲攻撃で白兵戦となり、会津兵に押されて、新政府軍は後退した。
鴻之巣村方面の戦闘は、会津軍が機先を制し地の利を占めて優勢であった。高田藩の榊原若狭隊・尾州藩の久野長一隊・松代藩隊等を三手に分けて総攻撃したが、抜くことができなかった。佐川隊は一番隊の最右翼と二番隊の最佐翼に隊を二分し、官兵衛が直接指揮する一番隊が、山手で散兵し、鴻之巣村の新政府軍を攻撃したので、新政府軍はあわてて退却した。高田藩兵は味方の砲撃を、敵の砲撃と思い込み、その退却は混乱し醜態であった。最後まで踏みとどまった松代藩は孤立しながら砲撃を行ったが、前島左衛門等が戦死した。
会津軍は勝利をおさめると、一旦片貝村方面に引き上げた。

正午ごろ新政府軍が会津藩兵に押されて退却を始めると、軍監岩村は小千谷本営に「援軍を請う」の一報を入れた。
坪野村から山路を迂回して、裏無峠から片貝の会津軍の本陣を砲撃するため進んだ尾州藩兵からなる左翼隊が、山上に現れ砲撃を開始した。
新式の火器を装備する薩摩・長州藩の新手の大部隊が本道を進み、戦場に到着し攻撃を始める。
佐川一番小隊・市岡砲兵隊は山上の敵にあたり、土屋隊等は本道の右に散兵し、佐川二番小隊は左へ散兵して敵の大部隊を迎撃した。圧倒的な戦力差により会津兵は後退を始めた。これにより戦線は一気に新政府軍に有利となり、会津藩兵は片貝村まで撤退した。

会津藩兵は、撤退する際、長岡藩の「五間梯子」の肩章や藩旗を戦場に捨て置き、長岡藩も攻撃に参加していたと疑われるような偽造をおこなった。
この撤退では、人足が残らず逃亡したので、武器・弾薬の運送は兵隊・兵糧方が行った。遊軍として参戦した鎮将隊はいちはやく片貝村から五、六町先の山上へ撤退し、朱雀二番寄合隊土屋隊が殿軍をつとめ、敵の追撃を防いだ。そのため朱雀二番寄合隊土屋隊は大瓦解した。会津軍は深夜になって片貝村の本陣から脇野町に撤退した。一方新政府軍は片貝まで追撃し、会津軍が撤退したのを確認して小千谷へ帰陣した。

一方、薬師峠に進出し着陣した会津軍金田隊に対して、松代藩兵一小隊・飯田藩兵一小隊・尾州藩の別隊が攻撃した。散兵して草萱の下をくぐり、山をよじ、頂上近く至ると、喊声をあげて突撃したので乱戦となった。金田隊は必死に応戦したが、寡兵のためささえることができず、山続きに片貝村へ退却した。

この戦いに参戦した組頭の朱雀二番寄合隊土屋総蔵が負傷したので、鎮将隊の頭の伴百悦が、土屋に代わって寄合隊の頭を命じられた。
この戦いでは高田藩銃隊川井甚五郎(47歳)が戦死し、高田金谷山官軍墓地戦没将士之墓に合葬された。また戦闘のため鴻巣村で2軒、片貝村で13軒の民家が焼失した。

🔶浄照寺

会津藩が本陣とした。また墓地には、片貝の戦いで戦死した尾州藩士(新政府軍)の墓が6基並んでいる。

🔶会津藩士の墓(片貝山屋)

民家の庭の一角に、片貝の戦いで戦死した会津藩士3名の名が刻まれた墓が、ひっそりと佇んでいる。重傷を負い戦場に残された3人の会津藩士を、片貝山屋の人々は、集落の阿弥陀堂に匿まったが、甲斐なく亡くなってしまった。

〔戦死者〕
  • 朱雀寄合二番土屋隊小隊頭 斎藤清左衛門(28歳)
  • 朱雀寄合二番土屋隊 須貝佐蔵(24歳)
  • 朱雀寄合二番土屋隊 熊沢平助(26歳)

〔所在地〕小千谷市片貝山屋




前のページへ






















歴史道 Vol.15

歴史道 Vol.15

  • 作者:
  • 出版社:朝日新聞出版
  • 発売日: 2021年05月06日

偽りの明治維新

偽りの明治維新

  • 作者:星亮一
  • 出版社:大和書房
  • 発売日: 2008年01月