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掲載日 平成19年12月15日 |
この見聞録は、昭和26年(1951)に谷合家(武州多摩郡三田領二俣尾村の名主)の古文書を整理していたときに偶然発見されました。発見した元市文化財保護委員の清水 利氏が、バラバラで散乱していたものを苦心惨憺の末まとめたものです。表題も無かったため、「谷合氏見聞録」と名付けたそうです。谷合氏は、永禄6年(1563)、三田弾正少弼綱秀が二俣尾村の辛垣城にて没落の際、綱秀の遺子を預かって土着したといわれる三田の旧臣・谷合太郎重久信を祖とし、その7代目に当たる谷合七兵衛吉治が32歳の元禄11年(1698)から延享元年(1744)までの47年間の出来事を記録したものです。五代将軍・徳川綱吉から八代将軍・吉宗に至る江戸時代中期の世情を知る事の出来る貴重な史料です。将軍家に関する慶弔・幕府の役職の交代・幕府からのお触れ・江戸の人口・江戸の火災・貨幣改鋳・朝鮮および琉球使節の来朝や元禄15年(1702)の赤穂浪士の討ち入りなど江戸から50㎞程も離れた西のはずれ青梅まで江戸市内の情報が具に伝わっていることに驚きます。また、青梅地方については、天候に因る作物の出来・不出来、それに伴う諸物価の高下や農民の生活、入会論争・筏通行に関する訴訟などの諸問題や神社・仏閣の普請・開帳と幅広く書かれていますが、特に天候については詳しくかかれており、氷雨・大雪・大風・旱・胡桃大の雹が降ったことや彗星と思われる記述もあり、とても興味深いものがあります。政治経済・天変地異・宗教・気象と多岐に渡って書かれている史料として昭和43年に市の有形文化財に指定されました。市史料集第19号に全文が、また多摩郷土研究会の『多摩郷土研究』11号、12号に解説が載っています。
なお、市史資料集19号の『谷合氏見聞録』は今年度末ごろに復刻版を教育委員会より発行の予定です。
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市文化財保護指導員 儘田 小夜子 |
参考資料 『青梅ゆかりの文化財』より |
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