Ome navi
Aoume
  • 更新日 2011年10月20日
  • 御岳山のお犬様 みたけさんのおいぬさま

    むかし、日本武尊(やまとたけるのみこと)は、東夷(とうい)(東国の武士)征伐のため兵をひきいて、はるばる関東に下向された。

    尊は、御岳山上に陣営を置き、東国一円を平定した。 ある時、兵をひきいて西北の山伝いに戦に向かおうとすると、とつぜん一頭の白い大鹿があらわれた。

    大鹿はらんらんと眼を光らせ、剣のように鋭い大角をふり立てて、山道をいっぱいにふさいだ。 まるで「この先、一歩も通さぬ」といわんばかり。一行は恐ろしさにすくみあがった。

    尊は、すばやく家臣に命じて大鹿の正体を占わせた。 すると、大鹿は山鬼の化身であることがわかった。

    尊は、そばにはえていた山蒜(やまびる)を取るやいなや、大鹿めがけてハッシとばかりに投げつけた。 すると山蒜は、みごと大鹿の眼に当たり、大鹿はどうとばかり倒れてしまった。 だが、それと同時にあたりは地鳴りしはじめ、ふしぎな白い霧がわきあがってきて、一寸先も見えなくなった。 一行は、右往左往するばかり。

    と、霧の中に白い狼が走り出てきた。 狼は「ついてこい!」というように、霧の中を後をふりかえりふりかえり進んでいく。

    「神の助けじゃ、狼の後に続け!」尊の一声で一行は狼の後に従った。 するとまもなく、ふしぎな霧の中から脱出し、視界のひらけたところに出た。

    尊は、白狼に感謝して、 「汝は、これより御岳山へ帰り、本陣の火災、盗難を守護するように」といった。

    白狼は、静かに尊に頭を下げると御岳山に向かって走り去っていった。これが、御岳山の火災、盗難の守護神「お犬様」だということである。