むかし、吹上峠(フキアゲトウゲ)付近には、ヘビがたくさんいた。
ある人が山仕事で吹上峠の近くへ行ったときのことである。
シュル、シュル・・・・・、風もないのに草がゆれて、気味の悪い音がする。 ふと、前方の山道を見ると、何十匹ものヘビが集まっていた。
ヘビたちは、ぬらりぬらりと互いに重なりあい、くねりあい、赤い舌をちろちろ出しては動きまわっていた。
まわりの草むらからは、さらにつぎつぎとヘビが出てきて、仲間に加わり、畳六畳もの広さの中は、ヘビでいっぱいになっていた。
さすがに、ヘビを見慣れた男も、ぞわぞわと鳥肌(トリハダ)がたってきた。