Ome navi
Aoume
  • 更新日 2011年10月20日
  • 朝 茶あさちゃ

    朝早く山へ炭焼きに行くふたりの兄弟に、母親は、あついお茶を入れてくれた。

    せっかちな兄は、もう そそくさとカゴを背負(セオ)って出かけようとしている。

    「おっ母(カア)、茶なんか飲んでたら、おてんとうさまが頭の上にあがっちまうよ。」

    「でもお前、朝茶だけは飲んでいくもんだよ。」

    「そんなあついもの飲んじゃいられねえよ。  じゃ、おら先に行くぞ。」

    弟は、ゆっくり朝茶を飲み、梅干(ウメボシ)まで食った。

    一方、先にでかけた兄は、いつまでも弟がこないので、山道の途中の大きな木の下でひと休みした。

    すると、なんだか急に眠くなってきた。  つい、うつら、うつら。

    そのうち弟がやってきた。  木の下で眠りこけている兄の顔を見てびっくり、血の気が失せてまっ青なのだ。

    そっとあたりを見まわすと、大木の上から大蛇(ダイジャ)がらんらんと光る目で見下ろし、なまぐさい息をふきかけているではないか。

    (さては、兄さの生き血を吸おうとしていたんだな。)

    弟は、いそいで兄を起こした。

    「おそいじゃねえか。  何をしてただあ。」

    「おら、おっ母にいわれたから、茶を飲んできただよ。」

    これを聞いた木の上の大蛇。

    (なに?  蛇(茶)を飲んできただと?   この男、蛇を飲むとは恐ろしいやつ。)

    大蛇は、そう思ってするするとどこかに行ってしまった。

    「朝茶は、魔よけだから、どんなに早く出かけるときでも飲んでいくもんだよ。」

    と、いわれている。

    朝、緑茶のいっぱいは、心も体もしゃっきりと目ざめさせてくれる。