ヒュー、ヒュルルル・・・・。
眉毛(マツゲ)まで凍りつきそうな風が、高水山の方から吹きおろしてくる。
仕事帰りやお使い帰りの男も女も、衿(エリ)をかき合わせ、足早に通りぬけて行く。
柚木三丁目の都バス停留所付近の吉野街道である。 ここは、むかしから「百いらず」といわれている。
高水颪(オロシ)がまっ向から吹きつけ、ここへ来たとたんに身ぶるいが出る。
ここを通る人は、道に百文(ヒャクモン)落ちていても、拾わずに大急ぎで通りぬけたそうである。